小笠原一郎の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(小笠原一郎君) どうもありがとうございます。
 ただいま御紹介にあずかりました小笠原一郎でございます。
 このような機会を与えていただいて、大変光栄に存じます。
 私、昨年十二月に外務省を四十年間奉職しまして退官いたしました。外務省奉職中は、参議院の先生方に本当に御指導、御鞭撻いただきまして、特に私、そのうち二年間は参議院を担当する国会担当の参事官、審議官という役割を演じておりましたので、もうその期間も含めまして、もう大変なお世話になっておりました。この場を借りて厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 私、昨年退官するまで四年ほどジュネーブにございます軍縮会議日本政府代表部の特命全権大使を務めておりまして、今回の議題である二つのテーマ、自律型致死兵器システムに関わる議論、それから対人地雷禁止条約に関わる議論、これに関する国際会議に参加をして、日本政府を代表して活動してまいりました。今日は、特にその期間の出来事、昨年末までの最新の出来事を含めて皆様に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、お手元に資料を配っております。前半が自律型致死兵器システムに関するものでございまして、後半に地雷に関する資料を御用意しております。
 この資料に入る前に一言、どのような国際環境の下で我々の議論が行われていたかということを一言申し上げたいと思います。
 特に、このLAWS、なかなか遅々として合意形成が進まないということでいろいろ批判をされておりますが、やっぱり、非常に大国間の対立、競争というものが前面に出る国際環境の中で、国際約束を形成する、国際合意を形成するということが非常に難しくなっている、そういった環境の中でLAWSに関する議論は営々と進められてきておりました。
 私は、個人的には、その中でも、特に私どもがやっております議論は全会一致で決定を行わなきゃなりませんので、全ての人が同意してくれる、逆に言うと、一か国、全ての国が拒否権を持っているという中で議論を進めてまいりましたので、一定の成果は生んだのではないかと思っております。
 他方、対人地雷の方は、そのような大国間の競争、対立というものから比較的自由な状況に置かれております。この対人地雷禁止条約ができた経緯から申し上げましても、冷戦が終わって、対立の時代が終わって、その後二十年間ほど国際協調の時代、特に西側の勝利によって終わった冷戦の後の二十年間の協力の時代、そういった背景の中から出てきたものだというふうに考えております。
 今現在も、この対人地雷に関する条約の方も全会一致で意思決定をしておりますが、実は主要な大国が加盟国に含まれておりません。中国、それからロシア、アメリカ、インド、パキスタン、イスラエル、そういった国々はいずれもこの対人地雷禁止条約には含まれていないということで、合意形成が比較的容易な分野でございます。
 そういった大きな違いがある二つの条約、条約体、交渉体でございますが、まず、資料に沿って、LAWS、自律型致死兵器システムに関わる議論の現状と、私どもLAWSと呼んでおりますので、ちょっと長うございますので、この場ではLAWSというふうに呼ばせていただきたいと思います。
 まず最初、この経緯でございますけれども、人間の関与なしに自律的に攻撃目標を設定する完全自律兵器のキラーロボット、こういったものの危険性というものがヒューマン・ライツ・ウォッチ等のNGOから指摘がございました。そういった国際社会における問題意識の高まりを受けて、特定通常兵器使用禁止制限条約という枠組み条約がございまして、その下で二〇一四年から非公式会合が行われ、二〇一七年からは政府専門家の会合が行われるということになっております。
 このCCWの考え方というのは、国際人道法の原則を個別の兵器に適用していくという考え方でございまして、国際人道法の主たる原則というのは、一つは、無差別な効果ですね、文民に対しても被害を及ぼすような形での害敵行為はやめようと、それからもう一つが、過剰な傷害、同じ軍事目的を達成できるのであれば人道的なコストのより少ない方法を選ぶべきではないかと、そういった観点から議論を続けておりまして、これまでに五つの議定書がそれぞれ個別の兵器についての禁止、制限の国際約束を結んでおります。
 したがって、経緯から申しますと、第六の議定書になることが念頭に置いて議論を続けているということではないかと思います。特にこの議論を行っている中で、この自律型兵器というものが実際に実戦で使用されるケースが増えてきております。最初はナゴルノ・カラバフ紛争における使用というものが注目されましたが、今やウクライナ戦争においては、自律性の多寡はいろいろ異なっていると思いますが、ドローンの多用というものが一つの特徴になっておりまして、まさに今後のゲームチェンジャーとしての大きな位置付けを持っているのではないかと思います。
 この十年ほど議論を続けまして一体何が決定されたのかということですが、その最初のページの一番下に飛んでいただきますが、二〇一九年に十一の指針というものが決定されまして、これはお配りした資料の後ろの方にくっつけてございますけれども、その中でも特に、国際人道法がLAWSにも適用されること、人間の責任が確保されなければならないことといったことが合意されました。
 昨年、また更に進歩がございまして、まず、国際人道法の遵守の観点からの禁止、規制の考え方等について記載したLAWSの報告書が採択されております。この考え方というのは、本来的に国際人道法を守れないようなLAWSは使っちゃいけないということです。これは、考えてみると、本来駄目なものは駄目と言っているだけで、一種トートロジーではないかという意見もあろうかと思いますが、国際人道法がしっかり適用される、それが両立できないものは禁止されるということで一定の合意ができたということは一つの成果ではないかと思います。
 さらに、同じこの昨年の政府専門家会合の報告書におきまして、どういう点で国際人道法とLAWSが抵触する可能性が高いのかということについての合意ができてきております。それは、害敵行為を及ぼす対象である標的、これを機械に、標的の選択、これを機械に委ねるということは国際人道法との関係で非常に機微な問題を生じるのではないかということがこの報告の中に一致した認識として示されているということでございます。
 日本は、その次のページをめくっていただきます、この議論の当初から、基本的な考え方といたしまして、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性を有する兵器は開発する意図はないということを宣明しております。
 この完全自律型の致死性を有する兵器、これは自分のところでやるつもりはございませんよということは、ほとんど全ての国は言っているところでございます。ただ、それをどのように定義していくのかといったようなところが非常に難しい問題になっていると。
 それから、この十年間の経緯、議論の中でも具体的な取組としまして、アメリカ等と協調して幾つかの作業文書を提案しております。
 最後には、この二枚目の資料の一番下でございますけれども、国際人道法を基礎とした禁止と制限の方法に係る自律型兵器システムに関する条項案というものを提示しておりまして、かなり成果物に近い内容のものを我々は提示するということを行ってきております。昨年の報告の中での採択、国際人道法に遵守できるような、遵守するような形で使えないようなLAWSは使用すべきじゃないという考え方も、私たちのこの条項案というものの中にも含まれております。
 今どのような形で国際議論がいろいろ分かれているかと申しますと、その次のページをめくっていただきますと、そこに、矢印ですね、ポンチ絵を置かせていただいております。
 これ、今、議論の推進派、規制推進派と規制慎重派というふうに大きく分かれる、分けることができる、できようかと思いますが、主として、この成果文書が法的に拘束力のある文書とすべきか、法的な拘束力がある文書は志向しないかというところが一つの分かれ目となっております。
 これは、簡単に申し上げますと、LAWSに関する技術を持っている国々は国際的な規制を受けるということに対して非常に慎重、技術を持っていない国々はむしろ国際的な規制によって自分たちがそういった兵器の犠牲となることを避けたいというふうに思っているということで、大体このベクトルは分かれているのではないかと思います。
 慎重派の一番最右翼には、ロシア、あるいはインド、イスラエルという国々がおられます。その後ぐらいにアメリカですとか日本ですとか、この六か国がまとめて合同の提案を出しておりますが、こういった国々が続いてまいります。他方、非常に国際的な規制を推進しようという国々を見ていただくとよく分かると思うんですが、例えばインドに対するパキスタン、あるいはイスラエルに対するパレスチナといった関係で、隣国に自国の脅威となるような国々がそのLAWSに関する技術を持っているというところで非常に懸念を持っているという国々が規制の推進派の最右翼になっているというふうに私は感じております。
 次に、ちょっと紙を離れて申し上げますが、なかなかこの議論が進捗しない理由としては幾つかあると思います。
 一つは、これだんだん、今、私どもがやっております議論というのは、かなり軍備管理条約に近いような、使用のみならず、開発ですとか設計ですとか、そういったものにも踏み込んだ議論をしておりますけれども、そういった安全保障にやっぱり直結してくる、そういった議論、領域で議論をする上では、お互いに正直者がばかを見ないような、自分が正直者になって相手に裏をかかれるということを非常に懸念しますので、やはり、その国際的な規制に自分が服することで自分の安全保障上の立場が弱まるということをやっぱり強く懸念していると。先ほど申し上げましたように、国際的に対立の風潮が強まっておりますので、そういった信頼のレベルが低い中で、なかなかそういった安全保障に直結する分野での合意は形成しにくいと、これがやっぱり一番の基本だと思います。
 二つ目の難しさとして、このLAWSというのは、まだその完全自律型の兵器というものは存在しないと。特に、この議論が始まった当初はかなりその距離は、実現までの距離は遠かったと思います。したがって、存在しない兵器について議論するということの難しさ、特に実戦でどういうふうに使われるかということの見地がない中で議論をしなければなりませんので、それをどういうふうに規制していくのかということについても非常に困難があったのではないかと思います。
 それから第四番目に、この分野は非常に技術進歩が速うございまして、私も感じるんですが、この十年前にLAWSの議論をここで始めたときには、多分、生成AIといったようなものがこれだけ広く使われるという状況には想定していなかったのではないかと思われます。したがって、私、この議論に参加していて、一定の成果、一定の広いコンセンサスの領域は広げてきたとは思うのですが、今の技術進歩に果たしてこれまでの蓄積の延長線上で議論をしていて意味のある成果ができるのかということは若干懸念されるところでございます。また、そういった懸念は広く共有されておりまして、このLAWSの枠を超えて、ごめんなさい、特定通常兵器使用禁止制限条約の領域を超えて今いろいろ議論をしようという試みも行われております。
 取りあえず、今のがLAWSに関する説明でございます。
 次に、対人地雷に関しての説明でございますが、もう時間もございませんので簡単に申し上げますと、対人地雷禁止条約というのは、通常兵器の分野で日本がこれまでも非常に成果を上げてきた分野でございます。日本は、この対人地雷禁止条約、オタワ条約というものでございますが、また、この地雷も、対人地雷禁止条約も非常に大きな成果を上げてきまして、この枠組みの中で、ここに書いてございますように、多くの対人地雷が廃棄され、また、多くの大変広範な領域にわたって対人地雷の汚染から解放されるということが進んでおります。
 特に私申し上げたいのは、この四ポツの我が国の取組のところでございますが、二〇二五年のこの対人地雷禁止条約、オタワ条約の第二十二回の締約国会議、この議長を私の後任の軍縮代表部大使である市川とみ子さんが務めるということで、既に去年の、昨年の十一月の段階で選出をされております。
 その前の、今年は五年に一回の運用検討会議の年でございまして、この運用検討会議はカンボジアが行うということになっております。昨年、二〇二三年の締約国会議の議長はドイツが務めているということで、私、この選出に当たっては私が参加しておりましたけれども、このドイツ、カンボジア、そして日本という三者がしっかりスクラムを組んで、この対人地雷禁止条約のより良い履行に努めていこうということで一致をしているところでございます。
 特に、カンボジアというのは日本の対人地雷禁止条約の取組において非常に重要な舞台となってきております。カンボジアに関しましては、その紛争を停止する政治的なプロセスに日本は深く関与いたしまして、その後の、紛争停止後の平和構築、この中で非常に重要な役割を演じた、地雷の廃棄、地雷の除去というところに非常に日本は官民を挙げて大きな取組をしております。その中では、例えば重機のコマツが、新しい、面で対人地雷を除去するような技術を開発してくれるとか、そういったことも行われております。
 それからまた、今、日本は非常にODAの分野で対人地雷に関して進めておりますことに、第三国、三国間協力というのがございます。これは、日本とカンボジア、そこでつくり上げたこれまでの知見とか実績を第三国にも共有していきたいということで、アンゴラですとか、あるいは今はウクライナ、そういった国々に第三国間、三国間の協力を進めるということをしておりまして、まさにこの日本とカンボジアで培ってきた地雷取組のモデル、これを世界的に広げていく、そういう非常に大きな良い機会になるのではないかと思っております。
 議長になりますと非常に忙しくなりますので、私は本来自分でやるべきだったんではないかと思いますが、後任が快く受けて、非常に意気に感じてくれていることを非常にうれしく思っております。
 取りあえず、私の方からは以上で冒頭の御説明に代えさせていただきたいと思います。

発言情報

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発言者: 小笠原一郎

speaker_id: 5288

日付: 2024-02-07

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会