岩本誠吾の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(岩本誠吾君) 京都産業大学の岩本でございます。
 国際法の中でも、国際人道法、従来の戦争法、戦時国際法を専攻しております。
 本日は、LAWSに関する意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 最後に対人地雷についても一言付け加えさせていただきます。大使とのお話とかぶる部分もあろうかと思いますが、国際人道法の観点から、お手元の資料に基づきまして報告させていただきます。
 近年、人工知能、AIの研究開発は急速に進み、二〇四〇年から五〇年の間に人間と同等の汎用型人工知能、AGIが開発され、その三十年後には人間を凌駕するほどの超知能、スーパーインテリジェンスが出現すると言われております。最近では、十年前倒しとなっているとの研究者の発言もございます。
 AIは、当然、民生用だけでなく軍事用にも活用されます。もっとも、AIの軍事利用の自律性全てが国際法的に問題となるわけではなく、問題となりますのは、兵器自体が標的を選定し、追尾し、攻撃するという戦闘用の完全自律型兵器です。
 兵器に関する国際法は、武力紛争時の兵器使用の使用禁止に関する国際人道法と、平時に兵器の廃棄・削減、開発・生産・保有などの禁止に関する軍縮法があります。
 国際人道法には、兵器自体に関する兵器法、例えば不必要な苦痛を与える兵器、無差別的な性格を有する兵器、環境を破壊する兵器を禁止する法原則があります。また、兵器は合法でもその使用によって違法行為となる標的化法、そこには、区別、比例、予防の法原則があります。お手元の資料の三ページの図一、二にありますように、無人兵器の中でも遠隔操作型の兵器や起動後に中止することができる半自律・監視型兵器は、人間の判断が介入するので、従来の兵器と同様に合法兵器となります。
 他方、人間の判断、関与、制御なく機械が判断して攻撃する完全自律型兵器、特にLAWSは兵器法及び標的化法に違反するので禁止すべきではないかと、ジュネーブにおいて二〇一四年以降、CCW締約国会議の枠内でその規制について議論されてきました。しかし、この十年間、LAWSに関する指針原則以外に具体的な成果がなく、今日に至っております。
 その主な原因として五つ考えられます。
 第一に、十か国ほどのAI兵器開発国とそれ以外の非開発国の対立です。図三にありますように、兵器開発国は法規制に消極的であり、非開発国は法規制に積極的となります。消極派の中にも、追加的な法規制が不要と考える国と、まずは政治宣言や行動準則といった非法的な文書を作成しようとする国に区分されます。積極派も、兵器使用の人道法条約派と、兵器の研究開発を禁止しようとする軍縮条約派に分かれます。
 第二に、非開発国は機械が区別原則や比例原則を適用できないから違法だと主張しますが、開発国は、状況により、例えば海域では区別原則や比例原則の適用は可能であると反論します。
 第三に、自律型兵器の危険性から、人間の制御、ヒューマンコントロールや人間の関与の必要性は合意されていますが、その場面について意見対立があります。研究開発、生産、配備、訓練、戦場への投入、そして兵器の起動までのそれぞれの段階で人間の制御が働いているので十分であるとする考えと、兵器の起動後も誤作動や機能不全から意図しない行動や結果をもたらす場合には修正や中止させるために起動後も介入できなければならないとする考えが対立しております。
 第四に、議論の中で国際人道法と軍縮法の混乱、混同があります。CCWはあくまで通常兵器の使用禁止、制限の国際人道法の枠の条約であるにもかかわらず、そこに兵器の開発、製造、配備の禁止といった軍縮法を盛り込もうとするから議論がまとまらないということになります。
 第五に、CCWの手続規則はコンセンサス方式で、軍事大国も小国も同意が必要となります。そのため、成果物は望ましいことと可能なことの妥協となりますが、軍事大国が参加することで、一〇〇%は満足はないとしても、軍事大国も法的に拘束されることになります。
 今後のLAWS規制の議論に対する教訓となる事例として、対人地雷規制とクラスター弾規制が挙げられます。対人地雷は、地雷使用の緩やかな法規制の、一九八〇年、CCW第二議定書、それと厳しい法規制となった一九九六年の改正地雷議定書は、使用の禁止、制限に関する人道法の枠内で合意されました。しかし、CCW枠内は前述したようにコンセンサス方式の手続規則のために完全禁止という一〇〇%の要求は実現できず、CC枠外の有志連合方式で完全に対人地雷を全廃するために一九九七年の対人地雷禁止条約という軍縮条約が策定されました。
 このように、ホップ・ステップ・ジャンプ方式で二つの人道法条約の後に一つの軍縮条約が成立しました。軍事大国は今でも対人地雷禁止条約に加入していませんが、厳しい法規制の改正地雷議定書という法的受皿があるためにそれには加入しており、一定の法規制が軍事大国にも働いています。
 他方、クラスター弾規制も当初CCW枠内で議論されていましたが、CCW枠内での合意、すなわち人道法条約の成立を待たずに途中で、CC枠外の有志連合方式でクラスター弾条約という軍縮条約が採択されました。クラスター弾条約に加入しない軍事大国は、法的受皿となる国際人道法条約がないために、慣習法の国際法原則を除き、無法状態のまま放置される結果となりました。
 目的はあくまで軍事大国の法規制であって、軍縮条約は非常に重要な条約でありますが、条約であり、未加入の軍事大国に汚名化、スティグマタイゼーションの政治的効果はありますが、しかし、軍事大国が加入しなければその国には法規制が及びません。LAWS規制も、最終的には軍縮条約が望ましいとしても、まずは軍事大国の法的受皿を準備することが最重要課題であると思います。ましてや、現在は、人道法条約か軍縮条約かという法文書、いわゆる条約、これはハードローとよく言われますが、ハードローの議論に至る前の段階の政治宣言やベストプラクティス、行動準則といった非法的文書、いわゆるソフトローの議論ですらコンセンサスが成立していない状況です。
 このような閉塞的な状況の中で、昨年は大きな動きが見られました。それは、CC枠内での議論だけでなく、国連総会という別の議論をする場、プラットフォームが新たに追加されたということです。
 昨年の国連総会で、今年九月までにLAWSに関する各国の見解をまとめた報告書を事務総長に提出するよう要請するとともに、LAWSを今年度の国連総会の暫定議題として決定しました。今後、CCWが何も成果を上げなければ、多数派のAI非開発国により、核兵器禁止条約を成立させたようなプロセス、委任事項、マンデートとしてLAWSに関する条約交渉を進める総会決議を多数決で採択することも考えられます。この別のプラットフォームの存在は、存在意義を問うという意味でCCWに大きな刺激となります。
 昨年のもう一つの変化は、LAWSというAI兵器規制だけの議論ではなく、AIの軍事利用の国際会議、二月の軍事領域での責任あるAIサミット、それに関連する米国提案のAI、自律性の責任ある軍事利用政治宣言が公表されました。AIの軍事利用は、迅速な状況認識や脅威評価、被害評価など、様々なところの意思決定支援システムで既に実施されています。AIの軍事利用に関するベストプラクティスや行動準則などのソフトローの策定が進んでおります。
 さらに、LAWS議論は二〇一三年、一四年からですが、AI規制の議論は、資料の二十ページ、この水色の二十ページの表にありますように、二〇一九年から急速に進化してきました。特に、二〇二二年十一月末のチャットGPTのような生成AIが出現してから、昨年の広島プロセスといったように国際会議や各国において急速にAI規制が喫緊の課題となっております。
 このレジュメの図五のように、AIの民間利用や軍事利用の法規制がLAWS規制と同時並行して議論されており、LAWS規制の議論もそれらの動きに大いに影響を受けております。AIの全体的な規制動向やAIの軍事利用のベストプラクティスに共通した合意事項、例えば人間中心主義、人的制御、リスクベースアプローチ、意図せざる結果の検知、回避機能や機能不全時の不活性化機能などの安全装置を参考にLAWS規制の在り方を考えることができます。
 国連事務総長は度々、二〇二六年までにLAWSの禁止、制限に関する法文書作成を強く要求しております。CCW締約国会議も、政府専門家会議に、五年ごとに開催される二〇二六年の再検討会議に何らかの報告書を提出するように要請しております。この二〇二四年、二五年、二六年の三年間の間にCC枠内で何らかの成果を上げなければ、議論の中心が国連総会に移り、軍事大国を巻き込まない軍縮条約の議論になる可能性があります。そのために、人間の関与が及ばない完全自律型致死兵器を開発する意図がないと表明している日本は、CC枠内で重要な役割を果たすことができます。
 日本の役割として六点挙げました。
 第一の点は、CCWの議論の整理です。二一年頃から、LAWSの致死性、リーサルを外して、AWS、自律兵器システムが議論されるようになりましたが、対人殺傷用の自律型兵器を規制するのか、対物破壊用の自律型兵器までも規制しようとするのか、区別して議論をする必要があります。対人用と対物用では、区別原則や比例原則の適用において法的義務の差が存在すると思われます。それと、人道法と軍縮法を区別して、あくまで軍事大国も同意する人道法の枠内、兵器使用の禁止、制限で議論する必要があります。
 第二点は、例えば包括的AI規制動向の中のリスクベースアプローチは、LAWS議論での人道法違反の自律兵器の禁止とそれ以外の合法的な自律兵器の規制という二層アプローチに通ずるものであり、包括的なAI規制やAIの軍事利用規制の動向を参考にする必要があります。
 第三点は、中国もロシアもAI規制では人的制御に賛成であり、LAWS規制においても、中ロを含む、まずは政治宣言、行動準則といったソフトローの合意形成に注力すべきであると思います。
 第四点は、CCW枠内でのコンセンサス形成の努力が必要であり、成果物なく途中でCCW枠外の有志連合方式、今回それが国連総会の場になるかもしれませんが、それを回避すべきだと思います。
 第五点は、ソフトローからハードローへ、それも、まずは人道法条約を、その成立後に軍縮法へと議論を進めるべきであります。あくまで、法規制レベルが低く甘いとしても、軍事大国規制の法的受皿が最重要課題であります。
 第六点は、最近のCCW議論の焦点が自律兵器の合法的使用に向けた具体的な条件設定に移りつつあるように思います。今後は、兵器の起動後も人間が介入できるような人的制御、機能不全の不活性化装置などのリスク軽減措置、昨年の政府専門家会議の報告書にも言及された自律兵器システムの標的タイプ、対人殺傷に限定するのか対物破壊も含むのか、運用の時間的期間、地理的範囲、使用回数、兵器の攻撃力の規模などが議論の対象となります。
 運用期間の制限事例として、改正地雷議定書では、遠隔散布地雷は投射後三十日以内の自己破壊装置、百二十日以内の自己不活性化装置が義務付けられております。運用領域の制限事例として、CCW第三議定書での空中投下の焼夷兵器は人口密集地での使用が禁じられています。今後、具体的な、このような制限条項を考慮して自律兵器の使用の禁止、制限を詰めていく作業が必要となってきますので、日本はその議論をリードすることが求められております。
 それでも、兵器、自律兵器自体が危険であり、禁止すべきと判断すれば、全面禁止の軍縮条約を国連総会で策定することも考えられます。いずれにせよ、LAWS規制はステップ・バイ・ステップ方式で進めるべきであると思います。
 最後に、対人地雷に関して一言述べたいと思います。
 この本資料の八十一ページの記事にありますように、ロシア・ウクライナ戦争において、対人地雷禁止条約未加入国であるロシアはウクライナに対して対人地雷を使用しております。他方、ウクライナは対人地雷禁止条約に関し加入しているために、対世的な義務として対人地雷は保有できません。ウクライナは条約当事国でありながら対人地雷の使用疑惑があるので調査する必要があり、もし保有し使用していれば条約違反となります。ここに対人地雷使用の非対称性が存在します。
 第二次世界大戦前であれば、諸国家間の紛争で条約当事国でない国が存在すれば、条約当事国であってもその条約義務を履行しなくて済むという総加入条項がありました。しかし、今は総加入条項は条約に加入されることなく、挿入されることなく、対人地雷禁止条約当事国は非当事国との戦闘行為において不利な立場に置かれます。それを不利と考えれば、条約当事国は条約から脱退するかもしれません。
 対人地雷禁止条約の当事国を増やすことも重要ではありますが、条約当事国が脱退しなくても済むように、核兵器の場合のように対人地雷禁止条約非当事国は条約当事国に対して対人地雷を使用しないと約束させる消極的安全保証、ネガティブ・セキュリティー・アシュアランスを検討することも必要ではないでしょうか。
 日本は、対人地雷禁止条約及びクラスター弾条約の当事国でありますから、それらの条約非当事国との戦闘において非対称的な立場、不利な立場に置かれる可能性があります。事前にこの非対称性問題を検討しておく必要があると思います。
 以上で御報告を終わらせていただきました。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岩本誠吾

speaker_id: 23134

日付: 2024-02-07

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会