福田達夫の発言 (本会議)
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○福田達夫君 自由民主党の福田達夫でございます。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、先般の石破総理の所信表明演説に対して質問いたします。(拍手)
我々は、今、大きな時代の転換点にあります。
三年にわたったコロナ禍は、世界中の人々の考え方を変え、国際的な産業構造の転換を加速させました。ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化は、世界の分断を深めています。
その大転換の時代に、各国は、変化の先にある新しい世界を目指して果敢な挑戦を進めています。我が国は、さらに、四半世紀続いたデフレからの脱却、そして、その過程である物価の上昇という難題に挑んでいる最中であります。
この十年以上にわたり、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進めることにより、もはやデフレではないという状況にたどり着き、この三年は物価上昇の世界に入りました。
しかし、四半世紀に及ぶデフレ構造は、我が国全体に閉塞感をもたらし、平均賃金やGDPの伸びは主要先進国を大きく下回っているのも事実であります。デフレ下では、よい製品を生み出しても高く売れず、働きが正しく評価されず、賃金も上がらず、経済も成長しない。その状態が四半世紀に及んだ結果として、世界の物価、賃金との差が拡大しました。内外価格差の問題、いわゆる安い日本であります。デフレ構造に逆戻りするわけにはいかない、このことを改めて社会の共通認識としなければなりません。
そのことをまず申し上げた上で、石破政権の内外の諸課題に対する基本姿勢について質問いたします。
総理、今、何より重要なのは、ひたむきに働く方々の頑張りが正しく評価され、給料が上がり続ける、当たり前の安心社会を取り戻すことではないでしょうか。
それを実現するまでの間、物価高が国民生活や事業活動を脅かすことがないよう、これまでも累次の負担軽減策を講じてきました。先般閣議決定された経済対策にも具体的な政策メニューが盛り込まれましたが、国民の皆様がイメージできるような説明を総理からいただきたいと思います。
短期的には、足下の不安を払拭するための支援は必要です。しかし、上がり続ける給料こそが中長期的な答えであります。十年以上にわたる経済再生に向けた取組によって、株価は歴史的な高値水準、雇用者数は過去最高を更新、三十三年ぶりとなる大幅な賃上げや、過去最大となる設備投資など、成長と分配の好循環の機運は生まれ始めています。
ただし、輸入インフレが始まった二〇二一年から考えれば、消費者物価はこの三年間で約一〇%上昇、生活関連物資に限れば約二〇%上昇しています。一方、賃金の引上げ幅は約八%。まだまだ賃金の引上げ幅は上がり負けしている状態であります。また、景気の状況も、産業ごと、地域ごとにまだら模様となっています。
私は、地元群馬において、金融関係者、企業調査、労務の専門家、スーパーや家電などの小売業の社長さんなどに四半期ごとに一堂に会していただく群馬景気定点観測を行っています。
そこで気がつくのは、どの視点からも、地域のキャッシュフロー圧力が弱まっているという事実であります。例えば、スーパーで買物をするお客様の一日当たりの支払い額は、このところ伸びなくなってきています。物価上昇は、落ち着いてきたとはいえ、止まったわけではありませんから、家計が生活防衛に入っていることがうかがえます。他方で、統計を見ると、久しぶりに家計の貯蓄率が増加しています。これからも物価が上昇し続けることを予想しての備えでありましょう。
しかし、インフレの世界では、今日の百円は明日には九十八円に価値が下落してしまいます。経済学は、経済的利益を最大化しようとするホモエコノミクスを前提として構築されていますが、三十年にわたるデフレ環境下で、デフレ経済しか経験していない、特に現在五十代以下の人は、デフレ環境に合わせて縮小的に合理的な行動を取るホモデフレエコノミクスとなってしまっているのではないか。
二〇二一年の物価上昇局面の当初より、我が党の中では、物価上昇をてこにしてでもデフレからの完全脱却を求める、そういう議論を進めてまいりました。デフレに最適化した日本人の縮小均衡的な行動様式を変容させる、すなわち、日本社会の常識を変えることこそが、経済対策が効果を発揮させるための大前提であります。
来年以降も、物価は上がっても賃金も上がる安心感を最低でも三年は持続させる環境をつくり出し、人々のデフレマインドのくびきを断ち切り、社会常識を転換させることこそが現在の政治の最重要課題と考えますが、総理の考えを伺います。
最低賃金を全国単純平均で二千円を目指せないか。二〇一六年、今から八年前のある政府高官のこのような投げかけを受けて、総理補佐官の一人とともに動き始めたのが、雇用の七割を担う中小企業、小規模事業者群に賃上げの原資を確保するための政策、価格転嫁の促進の始まりでした。
それに先立つ二〇一四年、我が党の中小企業・小規模事業者政策調査会の提言書において、大企業の利益を従業員や取引先企業へ賃金や適正な取引価格で還元させる仕組みの必要性に言及しており、二〇一六年九月には下請Gメンによる調査もスタート。官邸が関係省庁連絡会議を設置してからは、動きは更に活発化し、その後八年にわたり、中小企業庁や公正取引委員会とともに様々な環境整備を重ねてきました。
型の保管手数料の有料化、約束手形の支払いサイト決済期限の短縮と利用の廃止、手形取引サイトの短縮。そして、昨年二月からは、アンケートに基づく、価格転嫁に後ろ向きな企業の社名公表にまで踏み切り、価格転嫁が非常識なことではないところまでは着実に進んでまいりました。
しかし、少なくとも全国約三百五十万者を超える中小企業、小規模事業者群が、賃上げを持続的にできるような面的な広がりを実現するところまでは達成できていないことも事実であります。中小企業の価格転嫁率は、最新の調査でも四九・七%にとどまっており、全く転嫁できなかった企業も二割、転嫁できていても十分ではない企業も多い状況です。
中小企業、小規模事業者群の価格転嫁は、賃上げを持続可能なものにするためのみならず、デフレから完全脱却するためにも、地域に暮らす人々を養う力を再生するためにも、鍵となる取組です。現在それを進めるのは、それぞれ二百人の職員を抱える中小企業庁と公正取引委員会、そして約三百人の下請Gメンです。これまでも確かな効果を上げてきましたが、全国家的課題の解決に対しては限界があります。
本来、地域に暮らす人々の生活に、より責任を負うべき地方自治体を、中小企業の賃上げ、取引適正化という大切なミッションの担い手に巻き込むことや、価格形成への公的機関の関与の仕方に留意の必要はあるものの、持続的な食料供給を可能とする価格形成の仕組みを構築することなども必要と考えますが、構造的な価格転嫁の実現に向けた取組について、総理の御所見を伺います。
また、やりがいや所得向上等の観点から、もっと働きたい、仕事を通じて成長したい、自己研さんや技能伝承、研修のために勤務時間以外の時間を使いたい、そういうお声を多くいただきます。そのような方々にとっての働き方改革の位置づけを、あくまでも労働者の健康をしっかり確認することを前提に、再検討する必要があると考えますが、総理の御所見を伺います。
昨年、岸田政権では、医療、介護、福祉分野で、今年度に二・五%、来年度に二%の賃上げを目指す方針を決定し、処遇改善に向けた診療報酬、介護報酬の改定が行われました。公務員の給与も、昨年には三十年ぶりの高水準となる引上げが行われ、今年の人事院勧告では過去最大の引上げ幅が示されました。また、公立学校教員の処遇改善についても、我が党内で二年前から議論され、この年末の予算編成に向け具体化が行われておりますが、給与の引上げが実現できれば、実に五十年ぶりとなります。
このように、政府が実現可能な分野で、率先して賃上げに向けた環境整備に取り組んでまいりました。持続的な賃上げの実現に向け、まず政府が賃上げに取り組み、好循環の流れを加速させていくことが重要と考えますが、総理の御所見を伺います。
経済の好循環において最も重要なのは、国民の皆さんに所得や賃金が増えたと実感していただくことです。しかしながら、いわゆる年収の壁があることによって、賃金が上がったにもかかわらず、就業調整を行おうと考えている方が多くいらっしゃることが改めて指摘されています。岸田政権で既に昨年から年収の壁・支援強化パッケージを実施していますが、制度の更なる見直しが急務であります。
総理は、さきの所信表明演説において、引上げについて言及されました。詳細については、自民党、公明党、そして国民民主党の三党で議論が行われている最中でありますが、年収百三万円の壁の引上げについてどのように取り組むのか、総理から国民の皆様にお伝えいただければと存じます。
成長型の経済へ移行し、好循環を実現させるためには、積極的な投資も不可欠です。
石破政権では、国内のAIや半導体産業を下支えするため、新たに公的支援を行う枠組みを設け、今後十年間で五十兆円を超える官民投資につなげる方針を掲げています。AIや半導体の活用が日本社会の隅々まで行き渡る当たり前のことになれば、生活の利便性を高め、地域の社会課題を解決することを通じ、地域に住まう普通の方々にも恩恵が及ぶことになります。
我が国は課題先進国です。現在の我が国が生み出す社会課題の解決力は、将来、アジアなどの諸外国においても活用することができます。岸田総理の掲げた新しい資本主義の要諦であったと理解しています。
そうした将来の稼ぎをつくり、日本人の新しい挑戦の場をつくる意味でも、投資をコストではなく成長のチャンスと捉え、このチャンスを官民共同で積極的に生かしていくことが、国民の安心、安全、日本経済の持続的な成長、そして人々の新しい活躍の場づくりであると信じますが、総理の御所見を伺います。
次に、外交、安全保障政策について伺います。
国際社会では、ロシアによるウクライナ侵略の長期化やイスラエル・パレスチナ情勢の急激な悪化などの力による現状の変更や、自国中心主義的な動きが目立つようになっています。一方で、グローバルサウスの台頭や、コロナ禍を経た価値観の変化などが急速に進んでいます。世界は、冷戦後、米国一強の時代を経て、新たな局面を迎えようとしています。
その中で、一時期はジャパン・パッシングとまで言われた日本は、国際的な発言力を回復してきました。二〇一六年に安倍総理が掲げた自由で開かれたインド太平洋、FOIPという概念は、この新たな局面に新機軸を打ち出すものであり、事前の綿密な準備もあって世界からも受け入れられました。これを引き継いだ岸田総理が取りまとめたG7広島サミットのコミュニケは、日本が主導したこのFOIPという地域枠組みが基調となる初めてのものとなりました。岸田総理は、さらに、エネルギーや気候変動といった複合的な変化を真正面から受け止めた、アジア太平洋地域の新しい取組として、アジア・ゼロエミッション共同体、AZEC構想を打ち出しています。
世界の形が変わり、価値観が変わり、相対的な国力バランスも変わる中だからこそ、我が国は、回復した国際的な発言力に乗せて、国際社会の結束を高め、米国や欧州各国との協調を高めるとともに、特にASEAN諸国との関係を一段と強化すべきと考えますが、総理の御所見を伺います。
我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況にあります。
政府は、一昨年、我が国の防衛力を抜本的に強化するため、新たな国家安全保障戦略などを策定しました。石破政権では、我が国防衛力の最大の基盤は自衛官であるとの認識の下、処遇改善や人材育成の強化など、必要な体制整備に向けた議論を行っていると承知しています。
国民の命や暮らしを守り抜く総合的な防衛体制の構築は急務です。リスクが多様化する中で、厳しい安全保障環境を踏まえ、国民の安心、安全に資する防衛力の強化、特に自衛官の処遇、勤務環境の改善に向けた総理の御所見を伺います。
サプライチェーンや技術開発、情報保全など、経済分野における安全保障の強化は喫緊かつ重要な課題です。
我が党は、二〇二〇年から経済安全保障の具体的な議論を始めており、経済安全保障推進法の制定やセキュリティークリアランス制度導入に向けた法整備など、様々な提言を行いながら、政府・与党一体での我が国の経済安全保障の確保、強化に向けた取組を進めてまいりました。
一方で、サイバー攻撃を始め、我が国の経済安全保障を揺るがす事案はますます巧妙化し、我々の経済社会システムに大きな影響を及ぼしています。様々な影響から国家国民を守り抜くためには、常に時代を先取りし、先手先手で万全の備えを講じていかなければなりません。
いわゆる能動的サイバー防御に向けた体制整備など、今後、経済安全保障の更なる強化が必要と考えますが、総理の御所見を伺います。
農業は国の基です。
私は、自民党の農産物輸出促進対策委員長として、稼げる農業という概念を掲げました。食料安全保障は、国民に食が届くだけでは終わりません。届けることを続けられる体制をつくることが必要です。国内で食を作り、加工し、運び、安全に販売する。それぞれの役割を担う人々のつながりである食料システム全体に利益が回り続け、持続的に稼ぐことができて初めて、届けることを続けることができる。そのような体制を構築することが、本当の意味の食料安全保障であると考えるからであります。
日本の食の水準は、世界的に見ても高い。農産物も、加工品も、そして外食店で供される品々も、そのまま海外に持っていっても高く評価される品質があります。しかし、それを続けるための経営力が、よいものを作り出す力ほどには十分ではないと感じています。
政府は、さきの通常国会で農政の憲法と言われる食料・農業・農村基本法を改正し、農産物や資材の安定的な輸入や、スマート技術を活用した生産性の向上など、食料安全保障の確保に向けた取組を強化しました。また、日本がアジア・モンスーン地域の食料生産をリードする意欲的な枠組み、みどりの食料システム戦略も打ち出しています。
我が国の食料供給の総合力を高め、さらには世界にも貢献できる食料システム構築に向けた総理のお考えを伺います。
必要十分なエネルギーを継続的に確保することは、国民生活や社会経済活動にとって極めて重要です。しかしながら、我が国のエネルギー自給率は一三%。資源国ロシアにおけるウクライナ侵略や中東情勢の不安定化を受け、エネルギー供給への不安も高まっています。
我が国の電力需要は、AIやデータセンターの普及発展に伴って二〇五〇年までに四〇%増えるとも言われており、安定的なエネルギーの確保はまさに重要な国家課題です。現在、第七次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が行われていますが、今後の我が国のエネルギー政策をどのように進めていくお考えか。特に、新規制基準に適合すると認められた原発は、安全性の確保を最優先に、地元自治体の理解を得られたところから再稼働を進めていくべきだと考えますが、総理の御所見を伺います。
近年、気象災害が激甚化、頻発化しています。今年の夏も、全国各地で災害級の猛暑や線状降水帯による豪雨被害が相次ぎました。また、南海トラフ地震や首都直下地震など、巨大地震が発生する可能性も強く指摘されています。我々は、百年に一度と言われてきた大きな災害が、今や、いつどこでも発生し得るという現実と向かい合い、国民の命や暮らしを守り抜く体制を早急に整えなければなりません。
自然災害をなくすことはできません。しかし、二次被害を含め、被害を最小限に食い止めることはできるはずであります。災害対応の司令塔機能を担う防災庁の設置を表明された総理に、防災、減災に向けた御所見を伺います。
今年は、地方創生の取組が本格的に始まってから十年となります。
地方の元気なくして日本の再生なし。地域の活性化は、活力ある日本社会の再生の基盤となります。
国家的には、二〇六〇年に一億人程度の人口の維持を。地域的には、多様性ある人を生かす社会をどれだけ多くつくれるか。地方創生は、この二つの同時実現を目指す、息の長い取組であります。
その取組は、たゆまぬ継続を基本に、日本は世界に先駆けて人口減少、少子高齢化と向き合う課題先進国であるという健全な危機感を共有した上で、将来の創造という前向きな意識を持ち、誰一人取り残さない社会の実現を目指す、希望としての地方創生であるべきです。
また、地方創生の視点は、国内における東京と地方のバランスとして捉える傾向が強いですが、豊かさのみならず、世界と伍する地方社会を取り戻すとの視点も強く持つべきです。東京とのゼロサム的思考や国内の横並び思考に余りに拘泥することで、世界が大胆な挑戦で目覚ましく変化している事実を見落としてはなりません。
初代担当大臣として地方創生の推進に尽力されてこられた総理に、地方創生二・〇に向けた基本姿勢や理念をお伺いいたします。
これらの歴史的な仕事を果たすためにも、政治は国民の信を必要といたします。政治への信頼なくして、政策だけでなく、政治そのものを前に進めることはできません。そのために、我々は、政治資金や政治制度が国民の皆さんが納得し共感していただけるものとなるよう、不断の改革を行ってまいります。
信頼を得られる政治基盤を構築するための責任政党としての役割をどう考えるか。政治のあるべき姿、その中で政党の役割とは何か。政治改革の実現に向けた総理の決意を伺います。
継続的に賃金が増えることで、先行きが見通せ、生活に対する安心が育まれ、働けば報われると実感ができる社会。新しい挑戦の一歩を踏み出そうという意欲が生まれ、こうしたマインドが地方や中小企業、小規模事業者にまで浸透するような社会。現在の安心が人々の心に将来の希望を生み出す社会。国民お一人お一人が、新たな時代に応えて、新たな役割を身につけ、それがきちんと評価されていると実感ができる社会。
政治の役割は、成長戦略や経済対策をつくることだけではない。その先の社会づくりであることは言をまちません。
足下の難局に打ちかち、世界的な変化の時代だからこそ、つかめるチャンスを逃さず、更なる飛翔を目指す。我が国は一層成長できるという希望を取り戻すことが、デフレ脱却の向こうにある目標であり、政治はそのために常に国民とともにあり続ける。
このことを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕