船田元の発言 (憲法審査会)
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○船田委員 自由民主党の船田元でございます。
自由民主党を代表して、参議院の緊急集会の射程について意見を述べたいと思います。
まず最初に、本日のテーマとなっている参議院の緊急集会の位置づけについてであります。
憲法四十二条で定められておりますが、日本国憲法は二院制を大原則としています。憲法五十四条に規定された参議院の緊急集会は、参議院の重要な権能であることは間違いはありませんが、この大原則との関係でいえば、両院同時活動の原則の例外に当たるものであり、あくまで臨時的、暫定的な対応を定めた制度だと思います。
この参議院の緊急集会が不測の災害への対応といった例外的な場合を想定して設けられたものであることは、憲法制定過程からも明らかであります。その意味においては、憲法五十四条は国会機能維持のための緊急事態条項とも言い得るかと思います。
すなわち、当時のGHQとの交渉において、日本側は、不測の災害により緊急の立法や財政措置を講ずる必要が生じた場合などを念頭に、衆議院解散時における緊急措置を憲法上規定すべきであると一貫して主張してきたのに対しまして、GHQ側がなかなかその必要性を認めず、参議院の国会代行機能というものを提案するなどして、最終的には本規定が設けられたということであります。
このことは、昭和二十一年の帝国議会における審議において、金森徳次郎憲法改正担当大臣が、民主政治を徹底する見地として、衆議院が解散され、急に議会を開くことができない特殊の場合において、参議院の緊急集会という方法をもって、予測すべからざる緊急の事態に対して暫定の措置を取り得る方途を規定した、そういう旨の答弁をしたことにも表れています。
以上のような参議院の緊急集会の位置づけを踏まえまして、参議院の緊急集会の射程に関する主な論点について意見を述べます。
まず、参議院の緊急集会が開催可能な場面についてであります。
現行憲法の条文上は衆議院の解散時に限られておりますが、衆議院議員の任期満了の場合も、衆議院が不在になるという意味では衆議院解散の場合と同様であることから、類推適用が可能であるという考え方が有力であると承知をしております。当然、これを否定するものではありませんが、異なる解釈の余地がないとは言えないことから、任期満了時にも参議院の緊急集会の開催が認められる旨を憲法に明記すべきではないかと思っています。
次に、参議院の緊急集会の期間についてであります。
憲法五十四条は、一項において、衆議院解散後四十日以内の総選挙の実施と、総選挙から三十日以内の特別会の召集を規定しており、それに続く第二項において、衆議院が解散された場合に、国に緊急の必要があると認めたときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができることとしています。
このように、憲法五十四条二項は同条一項を受けた規定である、いわゆる連関構造でありますが、そういう規定であることは文理上当然であり、参議院の緊急集会の活動期間は最大でも七十日程度と解釈するのが素直な考え方です。そして、このことは、近年、憲法審査会における議論を契機として意識的に議論されるようになってきました、総選挙の実施が見通せない場合についても妥当するものと考えられます。
そもそも、参議院の緊急集会は二院制の例外であり、安易に解釈を拡大することは避けるべきです。したがって、衆議院が存在せず、参議院の緊急集会で対応する期間が七十日に限られないとしても、これを大きく超えることは憲法の想定を超えることになります。実定憲法が想定していない事態に対処するために解釈で何らかの結論を導き出そうとする姿勢や、こうした事態に対処するための制度設計を議論していくことは、憲法改正発議権を与えられている国会議員の責務だと考えています。
次に、参議院の緊急集会の権限や案件についてであります。
まず、権限については、参議院の緊急集会が国会の代行機関であることから、原則として国会の権能の全てに及ぶということは理解いたしますが、その上で、国に緊急の必要があるときとされていることから、一定の限界があることも当然認めなければならないと思います。具体的には、憲法改正の発議や内閣不信任案決議はもちろんのこと、内閣総理大臣の指名、条約締結の承認、本予算の議決についても、一般的には緊急性の要件を満たす場合は少ないのではないかと考えます。
また、案件につきましては、参議院の緊急集会が、憲法の条文上、内閣の求めを前提としていることから、議員が発議できる議案等においては、内閣が示した案件に関連のあるものに限定されるのではないかというふうに思っております。
以上、参議院の緊急集会の射程に関する主な論点について意見を述べましたが、これは、昨年の夏、自民党の憲法改正実現本部の下に設置されましたワーキンググループにおいて、衆参の温度差を解消すべく、六回ほどにわたりまして真摯に議論を行った結果、収れんした見解を踏まえたものであります。
前回の選挙困難事態の立法事実、そして今回の参議院の緊急集会の射程ということで、二回にわたり、選挙困難事態における国会機能維持という大きなテーマについて議論を深めてまいりました。これを踏まえまして、各党内における衆参議員の間の意見の相違を解消していただくとともに、国会機能の維持のための具体的な制度設計についての議論を積極的に行い、各党各会派の共通認識を形成していくべきである、このことを御提案して、発言を終わります。