阿部圭史の発言 (憲法審査会)
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○阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史です。
我が党は、憲法改正国民投票法の実施に当たっては、表現、言論の自由に配慮し、過度な規制は行わず、国民投票広報協議会等を通じた正確な情報発信によって国民的議論を喚起することが重要であると考えております。
そもそも、先週の本審査会における橘法制局長の御説明の中にもあったとおり、国民投票法制定の基本理念は、国民投票運動はできるだけ自由に、規制は必要最小限にということです。その理念を大事にするべきであると考えます。その上で、ネット上のフェイクニュース等が社会問題化している現状に鑑み、情報リテラシー教育の推進を図ることが重要でございます。
一方、外国勢力からのフェイクニュースを通じた憲法改正国民投票プロセスへの介入は、断固として防がねばなりません。外国勢力からのサイバー攻撃、国民投票プロセスへの介入は情報戦、認知戦として捉えるべき課題であり、四月八日の衆議院本会議で可決された能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンス法案の役割も大きいと考えます。
政府が三年前の国家安全保障戦略で導入を宣言した能動的サイバー防御が、本法案によって本格的に第一歩を踏み出しました。しかし、あくまで第一歩でありまして、アクティブサイバーディフェンスはまだまだ強化すべき領域です。国民投票プロセスに当たっては、外国勢力からのフェイクニュースを通じた介入に対し、サイバーキルチェーンを通じてアクセス・無害化措置をどこまで実行できるかが問われているとも言えます。国民投票広報協議会と警察、自衛隊との連携が重要になってくるのではないでしょうか。
外国勢力からのサイバー攻撃、憲法改正国民投票プロセスへの介入は、全体に対する偽情報、ディスインフォメーションの拡散である場合や、有権者のプロファイリングを行った上で、特定の有権者層に対する政治的マイクロターゲティングが挙げられると思います。
外国勢力による選挙への干渉は、選挙コンサルタント会社ケンブリッジ・アナリティカの事例が皆様御存じのとおり挙げられます。二〇一六年の米国大統領選ではトランプ陣営を、イギリスのEU離脱を問う国民投票、通称ブレグジットでは離脱派をそれぞれ支援したとされるケンブリッジ・アナリティカが、フェイスブックのデータから詳細な心理的プロファイリングを行い、各フェイスブックユーザーを、神経症で極端に自意識過剰、陰謀論に傾きやすい、衝動的怒りに流されるなどと細かく分類をした上で、この分類に応じて政治広告を出して分類をしていたというふうにされております。
これらの事例は、民主主義の根幹を揺るがす事態でございます。令和四年十二月八日に本審査会にお越しいただいた慶応義塾大学の山本龍彦参考人も、「政治的マイクロターゲティングは、かなり効果的です。フェイクニュースにだまされやすい人にフェイクニュースをリコメンドすれば、その人の感情や意思決定を容易に操作できる。」と述べていらっしゃいます。
ケンブリッジ・アナリティカが自社を形容して、ビヘービア・チェンジ・エージェンシー、行動を変化させる組織であると定義していることからも分かるように、民主主義は外国勢力からハックされ得るということが分かります。
我が国の最高法規である憲法を改正する国民投票プロセスにおいても、同様のマイクロターゲティング広告を活用した投票の操作や、外国勢力の介入に対抗する措置を実行せねばなりません。
ケンブリッジ・アナリティカが関与した興味深い事例として、同社の元CEOは、カリブ海の島国であるトリニダード・トバゴの二〇一三年の選挙を挙げています。
同国の国民は大まかに黒人系とインド系の集団に分かれておりまして、同社はインド系の集団のために働いたと述べています。
同社は、黒人系のユースの世代、すなわち青少年世代をターゲットとし、ドゥー・ソー・キャンペーンと題して、いわゆる現在の政治や選挙というものに対して抵抗することがクールだという観念に基づきまして、選挙に行かないことがクールだという運動を展開しました。要するに、黒人系の若者に選挙に行かないように促したということです。
一方、インド系の若者は、たとえ選挙に行かないことがクールだという運動に浸ったとしても、各自の家という中で両親の教えに従う傾向にあることから、選挙に行くと想定されました。
このように、特定の社会層の無関心を高める広報活動によって、十八歳から三十五歳の投票率で四〇%もの差が出たことで、選挙結果で六%の差をもたらし、インド系に勝利をもたらしたとされています。
ごく最近の外国勢力による選挙への干渉として興味深い事例は、昨年十一月に行われたルーマニア大統領選挙です。
反EUや反NATOを掲げ、陰謀論や親ロシア的主張を展開し、当初泡沫候補であった土壌学者のカリン・ジョルジェスク氏が、中国のテクノロジー企業バイトダンス所有のSNSアプリ、ティックトックの動画の拡散を通じて急速に支持を集め、昨年十一月二十四日に行われたルーマニア大統領選挙の第一回投票で二三%の得票率で決選投票に進出しました。
しかし、政府の国家防衛最高評議会が機密文書を公開したところ、同氏のSNS戦略に親ロシア勢力の関与があったことを公表したことで、憲法裁判所が選挙を無効としたものです。
SNS上の異変が始まったのは選挙の二週間前。約二万五千のアカウントが突然活発にジョルジェスク氏に関する投稿を行ったとのことです。
ジョルジェスク氏は、憲法秩序の転覆を図った罪等で起訴されました。また、ルーマニア憲法裁判所は、去る三月十一日、来月、五月四日に行われる大統領選挙のやり直しについて、ジョルジェスク氏の立候補を禁止する最終判断を下しました。
ルーマニア情報庁や欧州委員会もティックトックの調査を行っているとのことです。欧州委員会は、本日の国立国会図書館の説明にもありました、偽情報などの対応をプラットフォーム企業に義務づけるEUのデジタルサービス法に基づき、昨年十二月三日に欧州議会での公聴会にティックトック技術担当者を呼んだところ、次のような証言がございました。ルーマニア大統領選挙で、第一回投票の前後一週間だけで、候補者に成り済ましたアカウント約一千件を削除。選挙前後の三か月間で、ルーマニア国内だけで七百万回の不正に押された「いいね」を削除。偽アカウントは六万六千件以上削除。
我が国でも、若者を中心にティックトックがかなり使われていることに加え、サイバー戦にたけた中国、ロシア、北朝鮮に囲まれています。憲法改正の国民投票プロセスを考えれば、より一層、アクティブサイバーディフェンスを含む体制の強化が望まれることが分かります。
ここで、五月二十二日に参考人聴取があるというふうにお聞きをしておりますけれども、二名の参考人の追加を提案したいと思います。一人目は、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏。二人目は、ティックトックの周受資CEOです。
枝野会長におかれては、何とぞ御高配賜りますようにお願い申し上げます。
以上、終わります。