平岩征樹の発言 (憲法審査会)
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○平岩委員 国民民主党の平岩征樹です。
昨年十月に初当選したばかりではありますが、憲法調査会において諸先輩方が積み重ねてきた議論の土台とルールを尊重し、議論に参加させていただきたいと思います。
さて、私からは、まず、憲法と情報に関する人権について、国民民主党がこれまで主張してきた前提を述べた上で、国民投票を実施するに当たって論点になり得る三つの点に絞って発言いたします。
国民民主党は、かねてから、情報自己決定権や思想、良心の形成過程の自由の保障を含むデータ基本権を憲法に明記すべきという立場を取ってきました。
デジタル時代の到来とAI社会の進展により、プロファイリングやターゲティングによって個人の思想、良心がその形成過程からゆがめられ、ひいては選挙等の公正に対する脅威となり得るという懸念はもはや杞憂ではありません。このような状況は現行憲法制定時には全く想定されておらず、時代に即した人権保障のアップデートが必要です。この観点から、当然、憲法改正の手続を定める国民投票においても、意見の形成過程における自由は最大限保障されなければなりません。
〔会長退席、船田会長代理着席〕
以下、国民投票に関する考え得る三つの論点を申し上げます。
第一に、ファクトチェックの限界についてです。
ここで述べるまでもなく、ネット、とりわけSNSの進化により、日々大量の情報が生み出され、高速に拡散されています。それらは、誰が発信したかも、真偽も不明であるにもかかわらず、SNSのアルゴリズムによって、さもそれが真実かのように表示されてしまいます。そして、情報のつくり手は、スマホを持つ全ての人、潜在的には国民だけでなく外国勢力をも含み得る一方、ファクトチェックを行えるのは、専門教育を受けた限られた人材、機関に限られます。よって、全ての情報の検証は現実的に不可能で、ファクトチェックは全て間に合わないという前提に立って議論を進める必要があると考えます。
これを防ぐ方法として、これまで議論されてきたような公式情報をしっかり整備するということは重要ですが、それを上回る速度と質、量の虚偽情報が出回る事態もかなり現実的に想定しなければなりません。先ほど御説明いただいたように、EUでは、デジタルサービス法により、大規模プラットフォームに対しリスク評価やアルゴリズムの透明性確保を義務づけていますが、こうした制度的対応も我が国の議論に参考になるものと考えます。
第二に、投票の効力についてです。
昨年のルーマニア大統領選挙では、ロシアの介入が疑われ、憲法裁判所によって無効の判決が出され、再選挙が予定されています。この事例では、まず、憲法上に、憲法裁判所に対して、百四十六条f、ルーマニア大統領選挙のために定められた手続の遵守を確保し、選挙結果を確認するという役割が付与されていました。そして、情報機関の捜査によりテクノロジーによる不正操作等が判明し、適切な役割が付与された裁判所に適切な情報が提供された結果、選挙の無効が判断されたと理解しています。
日本においては、昨年の兵庫県知事選挙において、デマを含む大量の誤情報が拡散された結果、選挙結果に影響を与えたことが示唆されていますが、選挙無効の判断には至っていません。
憲法改正をめぐる国民投票においても、情報の真偽を明らかにした上で、結果に与えた影響を評価し、投票の効力を適切に判断する仕組みが必要ですが、現在の国民投票法において再投票を規定した第百二十八条は、そのような事態を十分に想定されていません。また、警察を含めた情報機関や裁判所の体制も整備されているようには見えません。我が国においても、投票結果の効力判断に関する法整備、体制整備を検討すべきと考えます。
第三に、デマ情報への罰則と規制についてです。
二〇一六年の熊本地震においては、当時のツイッターにおいて、動物園からライオンが逃げ出したとのツイートがなされ、二万回以上リツイートされた結果、動物園には問合せの電話が殺到して業務を妨害することとなりました。デマの投稿者は三か月後に逮捕されたものの、不起訴となっています。
現行法では、デマの生成、拡散自体に罪はなく、偽計業務妨害や名誉毀損等によって対処しているのが現状です。また、民事裁判における損害賠償請求によって高額な賠償を認める例も出てきています。
しかし、憲法改正に伴う国民投票において、これらは実効性のある罰則となるのでしょうか。デマを生成した者が損害賠償として金銭的な負担を負うというのは想像し難く、また、厳重な刑事罰を負うということも想定されていないように思います。国家の根幹たる憲法改正において、注目集めや金もうけを目的としたデマ情報の拡散が予見される中、そうした行為のハードルが余りに低くなっているのではないかという懸念があります。
ほとんどの国民は、デマを自ら生成することはないでしょう。しかし、外国勢力も含めた少数の悪意ある者が大量の情報を生成すれば、それらがアルゴリズムを通じて流通し、大多数の善良な国民もそれを信じ、さらには拡散に手をかしてしまうということがあり得ます。多くの人々に影響を及ぼす構造が存在する以上、効力と規制について議論を避けることはできないように思います。
最後に、これらの問題は、ほかの論点に比して憲法審査会における議論の蓄積が乏しく、また、技術の進展により、その性質も日々変化しています。したがって、改めて有識者や事業者から意見を聴取する場を設けることが必要だということを申し上げ、私からの意見表明といたします。
〔船田会長代理退席、会長着席〕