河西宏一の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○河西委員 公明党の河西宏一です。
本日は、国民投票におけるネットの適正利用、特にフェイクニュース対策をテーマとして、衆議院法制局また国立国会図書館から御説明をいただきました。
フェイクニュース対策は、法治国家たる我が国の根幹を左右する憲法改正をめぐる国民投票において極めて重要な対策であり、国民投票広報協議会の役割は大変重たいものがあります。
広報協議会の役割は、第一に、国民投票公報の作成、第二に、投票所に掲示する憲法改正案の要旨作成、第三に、広報協議会及び政党等の放送、新聞広告に関する事務、そして第四に、その他憲法改正の広報に関する事務がございますが、フェイクニュース対策は、この第四の、その他憲法改正の広報に関する事務に当たり、その内容の明確化を図るべく、これまで様々な御議論がございました。
その上で、AIなど急速な技術の進展やフェイクニュースの巧妙化に伴い、求められる対策の内容も日進月歩で複雑に変化しているように感じます。
そこで、本日は、フェイクニュースが社会的影響を及ぼすそれぞれの段階において必要と思われる対策は何か、情報の作成、公開、拡散、受容の四段階に整理し、意見を申し述べたいと思います。
第一に、作成段階です。
フェイクニュースは、何らかの意図を持って作成される偽情報であります。この作成を防ぐためには、偽情報が民主主義にとっていかに脅威であり、社会を不安定化させるのか、広報協議会がガイドライン等を通じた周知啓発に努めるとともに、他方で、外国等による偽情報の作成について、その意思を取り除き、あるいは抑止する、政府の外交及び安全保障上の努力が求められます。
第二に、公開段階です。
フェイクニュース発信への抑止策として、意見表明を行う者等の発信元に関する情報の表示を義務づけることが考えられます。また、現在、国内で開発中の、情報の起源を表示するオリジネータープロファイルのような技術がウェブブラウザーやSNS等に標準搭載されれば、併せて活用することも有効と考えられます。
イスラエルの歴史学者、ユバル・ノア・ハラリ氏が指摘したように、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどマスコミ四媒体とSNS等のインターネット媒体の最大の相違は、何をトップニュースにするのかを生身の人間が決めているのか、あるいはAIのアルゴリズムが決めているのかという点にあります。このアルゴリズムによるエコーチェンバーやフィルターバブルが分断を生み、それがフェイクニュースを起源とする場合は最悪のシナリオと言えます。
したがって、公開段階で、広報協議会が作成し憲法改正の賛否両方の意見を公平かつ平等に示した公報を、アルゴリズムとは切り離し優先的に表示させるようなシステムの構築及び稼働をSNS事業者等に要請することも有効な対策になり得ると考えます。
第三に、拡散段階です。
この段階に至りますと、フェイクニュースはアルゴリズムによって不可逆的に拡散されていくことになり、ますますファクトチェック機能が重要となります。
本日、衆議院法制局より御報告のあったように、このファクトチェックを広報協議会が行うのか、あるいは民間団体が行うのか、その実施主体について御議論があるところであります。当審査会における参考人の御発言や、国立国会図書館の調査等、海外における運用等の事例を踏まえ、第一義的には、国は、表現の自由を保障する観点から、ファクトチェックは民間団体が行うべきであり、当該民間団体への支援や、あるいは、ファクトチェック結果をアルゴリズムに反映させる仕組みをSNS事業者等と連携して構築することが求められると考えます。
その上で、外国等が明らかな意図を持って作成また拡散したフェイクニュースが公共の利益に重大な侵害を及ぼすと判断される場合等の国による対処については、令和四年十二月に閣議決定された国家安全保障戦略の、偽情報等の拡散を含め、認知領域における情報戦への対応能力を強化するとの方針に基づき議論すべきではないかと考えております。
最後、第四は、受容段階であります。
一度拡散され受容された偽情報の影響を完全に一掃することは困難で、ディープフェイクに至っては、それが架空の内容だと分かっていても、後遺症のように人間の思考に拭い切れない影響を残す可能性すらあります。
したがって、いわばゼロフェイクではなくてウィズフェイクを前提に、国民一人一人がいわば免疫としてフェイクニュース等への批判的能力を身につける環境づくりが広報協議会に求められてくるものと考えております。
そのためには、慶応大学の山本龍彦教授が提唱されたいわゆる情報的健康の観点から、自分とは反対の意見も含めバランスよく情報に触れる公開討論会等の機会を最大限活用すること、また、コンテンツの生成主体がAIか否かをパーセンテージで示すような、正誤判断を補助するツールの提供も場合によっては有効ではないかと考えております。
加えまして、政党や政治家自身が、憲法改正への賛否に係る意見表明と併せ、対立を超えて多様な意見に触れることの重要性や、国民を分断しない、させないとの強い意思を積極的に発信していくことが求められるのは言うまでもございません。最終的にはこうした私たち政治家の覚悟や良識も問われている、このようにも思うことを申し述べまして、発言を終わります。