松尾明弘の発言 (憲法審査会)

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○松尾委員 立憲民主党の松尾明弘です。
 本日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 本日テーマとなっております憲法五十三条後段は、臨時会の召集要求に対して内閣はその召集を決定しなければならないと定めており、これが法的義務であることは、学説上も争いはありません。さらに、二〇二三年の最高裁判決においても、憲法五十三条後段が国会と内閣との間における権限の分配という観点からの規定であり、召集決定は法的義務であると判断されています。
 しかし、実際には、憲法五十三条後段に基づく議員の四分の一以上による臨時会の召集要求があったにもかかわらず、不当に臨時会の召集が遅らせられる事例が多発しています。
 具体的な例としては、二〇一七年六月、森友、加計学園問題の真相解明のため、野党議員が憲法五十三条後段に基づいて臨時会の召集を求めました。それにもかかわらず、召集されたのは九十八日後で、その日に衆議院が解散され、参議院も同時に閉会することになりました。この召集は、実質的には憲法五十三条前段に基づく臨時会で、憲法五十三条後段に基づく臨時会の召集要求に対する拒否と言え、明白な憲法違反です。
 このほかにも、二〇二〇年、二一年、二二年の三回にわたって、四分の一超の国会議員が臨時会の召集要求を行ったにもかかわらず、内閣が臨時会を召集したのは、それぞれ、四十七日後、八十日後、四十六日後という長期間後であって、不当に召集を遅滞する憲法違反が繰り返されています。
 憲法五十三条には召集期限は具体的に書かれていません。しかし、これは内閣に広範な裁量を認める趣旨ではありません。このことは、権力分立と人権保障の原理に立つ立憲主義の考え方からしても明らかです。
 召集期限については、社会通念上合理的な期間とする見解や、召集手続のために必要な期間、すなわち国会開会の手続及び準備のために客観的に必要と見られる相当な期間内で、できるだけ早い期間とする、そういった見解が学説上有力であり、その期間を超えて内閣の裁量はないものと解されます。この見解は、三権分立の下、内閣と国会が牽制し合うことによって濫用を防ぎ、国民の権利を守るという憲法の理念にも合致するものです。
 しばしば与党が述べる、召集の必要性は感じないという発言は、五十三条後段の要請を全く理解していないものです。五十三条後段は、内閣よりも議員の意思と判断を重視するものだからです。臨時会の権能は、内閣が提出する案件の審議に限られるものではなく、議員提出法案や質疑も可能ですから、内閣がそこに案件を提出する準備ができたかどうか、その他政治的な理由で召集の必要性や時期を決定することは許されません。
 現在、憲法五十三条後段の召集義務に違反した場合であっても、政治的責任が追及され得るのみです。しかし、自民党によるこれまでの憲法違反に対して、原因の究明及び政治的責任の追及は不十分であったと言わざるを得ません。
 憲法審査会の役割には、国会法百二条の六において、憲法及びこれに密接に関係する基本法制の調査が職務に含まれていると明記されていることからも明らかなとおり、憲法改正をすべきかどうかを論じるだけではなくて、憲法違反問題を含む日本国憲法の施行、遵守の状況に関する調査を行うことも含まれています。よって、過去の不当な召集遅滞について、当時の内閣が召集をしなかった原因を究明し政治的責任を追及することは、当憲法審査会の責務であると考えています。
 憲法審査会においては、過去の憲法違反に対する政治的責任の追及自体をまずは行うべきであって、それが済んだ後に、憲法五十三条後段を無視する内閣の不当な態度を正し、同様の憲法違反が繰り返されないために、召集期限を法定すべきかどうかを議論すべきと考えます。
 この議論には、合理的期間を一定に法定することができるのかという点、そして、法定するとすれば何日程度とすべきなのかという二つの論点があります。
 検討に当たり注目すべきは、二〇二三年の最高裁判決における宇賀裁判官の反対意見です。ここでは、二十日あれば十分と述べられています。これは憲法五十四条や地方自治法など他の法制度とも整合する数字です。また、二十日の理由として、二〇一二年の自民党憲法改正草案が憲法五十三条について二十日以内に臨時会を召集しなければならないとしていることも挙げられています。
 なお、立憲民主党も、二〇二二年に、他会派と合わせて、国会法において召集期限を二十日と明記する法案を提出しており、この意見とも符合するものです。
 二〇一七年を始め繰り返し生じている臨時会召集の大幅な遅れは、憲法五十三条の趣旨に明らかに反するものであり、立憲主義や議会制民主主義に対する重大な問題です。こうした経緯を踏まえれば、やはり何らかの立法的な手当ての必要性は否定できません。その具体的な方法については、国会法改正その他様々な選択肢があり得ると考えています。
 いずれにせよ、先ほど申し上げたとおり、まずは、合理的期間とは何か、その基準を明確にするためにも、過去の憲法違反事例について、憲法審査会における徹底した原因究明と政治的責任の追及が必要です。それらを踏まえた上で、結論ありきではない建設的な議論が行われるべきことを申し述べ、私からの意見陳述といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 松尾明弘

speaker_id: 11652

日付: 2025-04-24

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会