船田元の発言 (憲法審査会)
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○船田委員 自由民主党の船田元であります。
今国会も終盤となってまいりましたが、憲法審査会の運営がこれまで比較的計画的に進められております。このことについては安堵をしております。憲法改正原案の策定にはまだ時間を要しますけれども、それに向けての歩みは着実に前進していると考えております。秋の臨時国会においても更に前に進めていきたいと考えております。
さて、本日のテーマであります憲法と現実の乖離については、憲法審査会の生みの親でもあります中山太郎先生が度々言及されていた、いわゆる三つの九条を掲げなければいけません。すなわち、九条二項と自衛隊の関係、七十九条と裁判官の報酬引下げの関係、八十九条と私学助成の問題についてであります。
まず、憲法九条二項が定める戦力の不保持と自衛隊の存在の問題は、率直に読んだ憲法の文言から、自衛隊の存在がどうして許されるのかといった疑問が生ずる、最も典型的な乖離であると思っています。
この問題に関して、歴代政府は、解釈により、自衛隊は合憲であると説明してきています。しかし、我が国を取り巻く安全保障環境の急激な変化、自衛隊の任務の多様化や深化、国民の安全保障や防衛に対する意識の高まり、また隊員の士気の維持などに鑑み、憲法の規範性を回復するという意味でも、憲法を改正して自衛隊の存在を明文で認めるべきであると思っています。
中山太郎先生は、湾岸戦争のとき、外務大臣としての経験から、この九条の問題で憲法と現実の乖離を強く認識されたようですが、その解決策までは明確に提示されていませんでした。
この点について、自民党はこれまで、二つの方法を提案してまいりました。一つは、九条二項を削除し、世界の普通の主権国家と同様に軍隊の保持を可能にする方法でありまして、二〇〇五年の自衛軍、二〇一二年の国防軍の提案がこれに当たります。もう一つは、現在の国民の意識に照らしまして、まずは自衛隊の明記のみ憲法改正を提案するというものであります。
後者の方法は、二〇一八年に発表した条文イメージたたき台素案、自民党が出しましたこのたたき台素案における改憲四項目の一つとして現在も提案しているものであります。これは自衛隊明記案などと言われているものですが、この略称についてはちょっと誤解されている面もあります。すなわち、我々自民党は、国の平和と独立、国及び国民の安全を保つといった、主権国家として当然の国防規定を創設することをきちんと定めた上で、それを担う実力組織としての自衛隊の保持を定めようとしているものであります。主眼は国防規定の創設にあることを見過ごしてはならないと思います。
次に、憲法七十九条六項と八十条二項は、裁判官の独立保障の観点から、裁判官の報酬は在任中減額することはできないと定めております。
しかし、国家公務員全体の給与引下げと同時の場合はこれらの趣旨に抵触しないとして、裁判官の報酬が引き下げられたことがあります。具体的には、二〇〇二年を最初として、二〇〇五年、それから震災復興関連の公務員給与引下げのあった二〇一二年に引下げが行われました。さらに、二〇一五年も行われております。
しかし、条文ではそのような留保は一切なく、絶対的な引下げ禁止と読むのが素直であります。もし一定の場合の引下げを容認するのであれば、そのような趣旨の表現を憲法に書き込んでおくべきである、このように思っています。
さらに、憲法八十九条、これは、公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対しまして公金を支出してはならない旨を規定しています。
一見、私立学校に対する公費助成を禁止しているように読めますが、実際には、一九七六年施行の私立学校振興助成法などに基づいて、私立学校への公費助成が行われてきました。政府は、私立学校法や私立学校振興助成法などに従って所轄庁の監督を受ければ公の支配に属すると言えるのであって、憲法違反ではないと解釈をしています。
しかし、この解釈において、支配という日本語の一般的な感覚とは異なるものであります。まさに典型的な憲法と現実の乖離と言えます。公の支配に属しないという表現ではなく、公の監督が及ばないといった、実態に即した表現に改めるべきではないかと考えます。
自民党は改憲四項目において、教育充実に関する憲法改正の提案とともに、このような憲法八十九条の改正も提案をしております。
以上、憲法と現実の乖離として、九条、七十九条、八十九条について意見を述べました。いわゆる三つの九条のいずれもが、時の政府の解釈によって合憲とされ、踏襲されてきたのでありますが、仮にそれを認めない政府が誕生した場合には、極めて大きな混乱を避けることはできません。長期にわたり安定的な体制を維持し、憲法の規範性を維持し、さらには憲法に対する国民の信頼を維持していくために、憲法解釈でなく、憲法改正によってこの問題を解決すべきだと考えます。今後の憲法改正の柱の一つとして、更に議論を進めていきたいと思います。
以上であります。