鈴木達治郎の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○鈴木参考人 おはようございます。
それでは、私の方は、三点お話しさせていただきたいと思います。
まず最初に、もちろん、前回もお話ししましたが、この委員会ではできるだけ、推進、反対にかかわらず、重要な課題に優先順位を置いていただきたいということで、三つ、今日は、再稼働に関わる問題は避難計画問題に重点を当てたいと思います、それから次世代革新炉の研究開発、それから人材確保に、お話ししたいと思います。
では、次のスライドをお願いします。
再稼働に関わる問題で、御存じのとおり、左側の方は水戸地裁の判決で、再稼働は、避難計画問題が大きな理由になって、差止めが命じられました。特に複合災害、これが大きな問題になっていると思うんですけれども、住民の方が、この地域は人口が多いので、重大な、かつ深刻な被害を与えることになりかねないという判断がされました。
右側は、最近ですけれども、能登地震を踏まえて、新たに避難計画に変更が必要ではないかということについて、内閣府も来られて、新潟でヒアリング、説明会をやったということなので、そのときのニュースなんですが、地元の方々の関心を聞くと、やはり十分でない、国の説明を聞いても安心できないということで、しっかりしてほしいというコメントがなされています。
次のスライドをお願いします。
これはNHKが調べた調査で、私がやったわけではないんですけれども、なかなかいい調査で、複合災害への対応が十分ではない、不十分ではないかということで、全国を調査されまして、左側は、道路が寸断された場合の避難道路の復旧、確保は誰がするのかというのがはっきりしていないということで、十九道府県のうち六道県しか明記されていない。
右側は、PAZ、いわゆる半径五キロ以内の避難圏で、すぐに避難できる、しなきゃいけないとなっているんですが、避難できない場合は屋内退避場所を確保することになっているんですね。この場合、これも、調査しますと、十六か所のうち五か所しか確保されていないという調査結果であります。
次のスライドをお願いします。
これは、人口に対してどれぐらい収容人数が確保されているかという、これもNHKの調査なんですが、何と三か所で一〇%以下のところがあったということで、福井大学の安田先生のコメントなんですけれども、やはり人口が多いところは見直す必要があるのではないか、これも国がちゃんと見直してもらわないと困るというふうにおっしゃっています。
次をお願いいたします。
避難計画の仕組みなんですけれども、どうなっているかというと、国の方では中央防災会議と原子力規制委員会が基本的な考え方を示して、県、市町村の防災会議、市町村防災会議で避難計画を作る、それを、地域原子力防災協議会、それから原子力防災会議と、幾つも会議があるんですけれども、これが最終的には了承するということになっていまして、地域原子力防災協議会では確認、原子力防災会議では了承。誰も審査や承認をしないことになっています。
ということは、自治体がしっかりとしてやらなきゃいけないとなるんですが、これは自治体、先ほど申しましたように、国がしっかりしていないとなかなか難しいということで、これで見ると、政府には責任がないように見える。規制委員会も対策指針を作成するのみでありまして、私個人的には、規制基準の中に避難計画の審査も入れるべきだという考えなんですけれども、たとえそれができなかったとしても、誰が評価、担保するのかということを明確にする必要があるのではないか。
例えば、原子力規制委員会が審査する、あるいは原子力防災会議が最後に、了承になっていますけれども、ここで原子力規制委員会の助言を得て審査、承認するというふうに法律改正が必要ではないかと思います。
では、次、お願いいたします。
次世代革新炉の研究開発に関わる課題なんですけれども、革新軽水炉と呼ばれているものをよく見ると、実は実質的には余り革新ではなくて、既にもう国際市場で導入が計画されているものが多いので、これは既存の軽水炉の改良型と言っていいかと思います。既に安全審査も通っている海外のものも多いですね。もちろん安全性は高いんですけれども、特に注目されているのが小型モジュール炉と言われているものですが、これも従来型の、以前からかなり研究開発されてきたものであって、特に革新というわけではないんですが。
最近、このSMRの中で、高純度低濃縮ウランという、高濃縮ウランというのは二〇%以上で核兵器に転用できるものなんですが、そのぎりぎりまで燃焼度を高めたものをHALEUという言葉で呼んでいるんですけれども、これが注目されているんですが、高純度低濃縮ウランは濃縮度が高いので、ひょっとしたら核兵器に転用できるのではないかという論文が出されています。この検証をする必要があります。
また、このような濃縮度の高いものは、基本的には高燃焼度で直接処分を前提にしているものが多いので、我が国の政策と整合性があるかどうかの検証も必要だと思います。
それから、SMRは最近のデジタル技術を駆使しておりまして、例えば、スモール・モジュール・リアクターは四つ、五つ同時に同じサイトに造って、それを一つの制御場所でやるということで、デジタル技術で制御するということが非常に取り入れられているわけですが、デジタル技術を採用すればするほどサイバー攻撃に対する脆弱性があるというふうに指摘されていまして、核テロに対する検討も必要になります。
いずれにしても、日本市場に導入するとすれば新しい規制基準が必要になる可能性がありまして、慎重な安全審査が必要であり、経済性評価や環境評価も必要である。核燃サイクルについても評価する必要があると思います。
次、お願いいたします。
一般的な話になりますが、次世代革新炉、これから、いわゆる研究開発、国が研究開発をする場合の課題についてお話ししたいんですけれども、この研究開発、私自身は、将来の選択肢を確保するということで基本的には賛成なんですけれども、人材確保に役立ちますからね、ただし、現状において、ほかの研究開発課題との優先順位をまず考えていただきたい。安全確保はもちろんですけれども、廃棄物処分や福島第一廃炉など、研究開発課題はいっぱいあるわけですから、本当に今、次世代革新炉に重点を置くべきかどうかを検討していただきたい。
次世代革新炉として、エネルギー基本計画には、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった次世代革新炉が一括で書かれているんですけれども、実際は、それぞれの原子炉は技術成熟度が大きく異なりまして、核燃サイクルもそれぞれ異なるんですね。
例えば高温ガス炉は、既に実験炉や原型炉が運転していまして、基本はワンススルーです。それから、高速炉、ナトリウム冷却炉も既に原型炉まで運転していますし、フランスでは実証炉も運転しています。新たな革新型高速炉も提案されていますので、デザインによっては変わってくる。増殖をしないで、廃棄物燃焼に重点を置いているものもあります。それから、トリウム溶融塩炉は、つい最近、二〇二五年四月、今年の四月に中国が実験炉をまたやりました。六〇年代に開発は一度されているんですけれども、問題があって実用化はなくなったんですが、このトリウム溶融塩炉についても検討する必要がある。核融合は、当然まだ臨界に達していないので、恐らく我々のタイムスパンでは実用化は難しいのではないかと思いますが、このように、技術成熟度が違う。
ちょっと次のスライドを見ていただきたいんですが、これは近藤委員長が原子力委員長のときに我々が核燃サイクルの政策選択肢の検討をしたときの新型炉の評価なんですけれども、技術成熟度が違うんだということで、このTRLという、テクノロジー・レディネス・レベルという概念で国際的には評価がありまして、その技術成熟度に応じて研究開発計画を立てるということになっていますので、そのような計画にしていただきたいというのが私の願いです。
次、お願いいたします。
そうはいっても、これまで一体、日本は幾らお金を使って、どんな研究開発をやってきたかという評価、反省が余りされていないのではないかというのが私の、私自身もそうなんですけれども、反省しているところでありまして。ここに書かれていますが、日本ではいろいろな原子炉をやってきましたが、実用化しているものは一つもないということについてどう考えるのかということですね。もちろん研究開発で得られたプラス面もいっぱいあると思うんですが、これをまずやらなきゃいけない。この評価についてまずやらなきゃいけないと思うんです。
実は、私が原子力委員会にいたときに、近藤委員長のときに、事故直後ですから、原子力の将来がどうなるか分からないという状況の下で研究開発についての見解をまとめたものがありましたので、ちょっと論点を整理させていただいたので、抜粋ですけれども、三点。
まず、基礎基盤研究の着実な実施、これが非常に大事です。どうしても研究開発は、プロジェクト志向で物を作りたい、建てたいというふうに行ってしまうんですが、基礎基盤研究の方が大事でありまして、これが弱っています、日本の場合。特に原子力もそうです。学術や人材育成に非常に役立ちますので、基礎基盤研究の着実な実施がまず第一。
それから、実用化するに当たっては社会ニーズをちゃんと反映する必要があるので、公的に評価が必要だということですね。社会ニーズを反映するために、いろいろな原子炉、多様化が必要だと言っているんですが、最後のところが大事なことですね。技術というのは予期せぬ社会影響がありますので、これをちゃんと評価する必要があって、そのためには、理学、工学だけではなくて人文社会の方々も入れた、いわゆるELSIと言われている、倫理、法、社会的側面と呼ばれる幅広い視点から、自律性を持った包括的な評価組織という、この自律性を持ったが大事であります。今、学術会議が問題になっていますけれども、この自律性を是非保ったような評価組織をつくっていただきたいということを公的にもお願いしています。
次、お願いいたします。
最後に、人材確保の問題ですが、今ちょっと研究開発のお話をしましたが、大事なことは、最も必要な人材は何か。ここはやはりプライオリティーが大事ですね。それから、将来必要となるもの、将来にかかわらず必要になるものという、それぞれ、やはり目的をはっきりして人材確保政策を立てなきゃいけない。既存原発の安全な運転がまず大事ですよね。それから廃棄物処分、それから福島第一原発廃炉、最後に原子力の新設があります。それぞれ、これは異なる人材が必要になってきます。
したがって、これも当時の原子力委員会の見解文なんですけれども、これも事故直後に作った見解なので、将来どうなるか分からないということで書かれていますが、まずは人材需給マップを作ること。これについては、産業界、学界が中心となってやるのが望ましいと思うんですが、やはり政府の役割も一部必要になってくる。
実は、原子力産業協会の方で原子力人材育成戦略ロードマップというのを作られていて発表されているんですが、最近では去年の三月に作られているんです。これを見ていただくと分かるんですが、産業界が中心になっていると、どうもやはりはっきりしないところがある。将来の人材、分野ごとにですね、それが問題がないかと思っています。
それから、教育機関の原子力、放射線教育の整備、これも非常に大事でありまして、特に、放射線教育というのはいろいろな分野で必要になってきました。原子力の将来にかかわらず、これは必要である。
それから、社会人教育機能の整備、あるいは次の安全確保、核不拡散、核セキュリティー。特に、核不拡散、核セキュリティーというのは人材が不足しています。将来、やはりこれも、原子力がどうなろうと必要だと思います。
最後に、原子力業務へのインセンティブ強化ということで、奨学金とか留学制度とか、これも原子力分野への人を確保する意味で大事だと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)