林鉄兵の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○林参考人 私は、全日本自治団体労働組合、略称自治労で総合労働局長をしております林鉄兵といいます。
 本日は、呼んでいただきまして、ありがとうございます。
 この三月末まで大阪市役所の行政職員でもありましたので、守秘義務に反しない範囲で現場の実態を御紹介しつつ、この法案に期待をすること、法改正の趣旨を実効性あるものにするためにどういったことが課題なのかについて、自治体の現場からの視点で御説明をいたします。
 説明のポイントは、一ページでございます。
 総務省や自治労の調査によれば、カスハラの実態は職員、地方公務員にとって厳しいものがあります。法案の成立を期待するものですし、民間企業等のみならず、公務の分野でも対策が進むこと、カスハラの被害がなくなるよう具体的な取組を望むものです。
 他方、公務と民間の相違点としては、公権力の行使を背景としつつ、場合によっては私的領域に踏み込んで、生存権や命を守るためにやるべきことがございます。じゃ、そういうときにどうやって職員を守るかという点です。
 また、市役所で、カスハラ行為者を立入禁止処分に仮にした場合には、ほかの市役所でサービスが受けられるわけではないという代替性の問題もございます。
 代替性がないことの延長線にもなりますけれども、大声や居座りなど、行為そのものはカスハラに当たるのかもしれませんけれども、住民自身がコミュニケーションや発達などの障害があって、困り事を抱えているケースも考えられます。
 法律や条例、制度や市役所自体に問題があって、主権者や住民たる立場で異議申立て、正当な是正要求をしている場合、例えば、高度成長期の公害被害やその対策です。こういったことが、どういうふうにバランスを取れたものにするのかという課題がございます。
 法案の成立によってどういう社会を、どういう自治体の現場のありようを想定するのかといったイメージ合わせも、今後の委員会における審議の中でお願いしたいということで参りました。
 では、二ページをお願いします。
 総務省が地方公務員を対象にして、初めてのハラスメント調査を昨年末に実施をいたしました。実態を明らかにしたという点で、非常に重要であるというふうに考えています。カスハラについては、民間よりも多い割合で、受けたという回答内容になってございます。内容としては、威圧的な言動として、大声で責める、反社会的なつながりをほのめかす、精神的な攻撃としては、脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要などが挙げられます。
 また、こちらは自治労の調査になりますが、公務におけるカスハラの特徴として、行為者が同じ人、よく来庁する特定の住民によるカスハラ行為を指摘しておきたいというふうに思います。これは、自治体の業務範囲は広く、税を支払っていることを背景に住民の多くが利害関係者となり得ることもありますが、組合員から現場で聞く話からすると、いわゆるハードクレーマーによる被害の報告がございます。
 昨今、就職戦線では人材確保競争が激化していると言われますが、公務員の人気は低下傾向です。その中で休職者、退職者が増加していることは、カスハラだけが原因ではないとしても、持続的に一定の水準で行政サービスを提供するためには、憂慮すべき状況であるというふうに考えています。
 では、三ページをお願いします。
 民間企業等においては、契約自由の原則によって、例えば、あなたのような方はうちのお客さんではありませんので、二度と来ないでくださいと言うことが法律上は可能です、やるかどうかは別にして。
 しかし、自治体や国の機関には、住民の権利保障の関係からも、こういったことは許されていません。自治体は、そもそも住民の皆さんが、町の会費として住民税を集め、自分たちで議会を持ち、施策や予算を決定、執行部が実施をする住民自治が制度のベースにあります。
 ほかの自治体の保育所が充実をしているからそちらに申し込むということは、住居の移転をしない限り、基本的にはできません。仮に庁舎への出入りを遮断してしまえば、サービス提供に支障が出ることは容易に想像ができます。
 こうしたことから、自治体におけるカスハラ対策は、徐々に進んではいるものの、個人を特定されないよう名札を平仮名表記にすることや啓発ポスターの掲示、録音、録画にとどまっています。その原因として、公務の持つ代替性のなさと住民の権利行使と職員の保護のバランスを比較考量し、どこまでなら制限できるのかが議論し尽くされていないことも一因ではないかと考えています。
 二〇一六年に大阪市が大阪地裁に訴えた、多数回にわたる濫用的な情報公開請求を含む面談強要行為等の差止め請求は容認をされ、これらを理由とする損害賠償請求も一部認められています。判決では、市民の声制度を利用した質問状の送付を多数行った、応対に当たった職員に侮蔑的、脅迫的な発言、大声で暴言、独自の見解に基づく意見を延々と述べる、超過勤務や精神的な苦痛による体調不良を訴える職員がいる、五十三件の公開請求によって約八千三百六十枚の文書を交付したといった事実が裁判上認められています。
 この事件ではありませんけれども、私自身も、ゴールデンウィークや正月前に、一件の請求で対象となる文書が数百枚や数千枚になるような案件を、現場の事務所や現場を統括する部署で対応したこともございます。その方は、自分の要望を聞いてもらえないことへの懲罰として、嫌がらせの手段として公開請求制度を悪用していたと受け止めています。公開手続をしたときも、閲覧のみで、コピーして持って帰ったのは二、三枚といったこともありました。
 別の自治体の例ですが、公立図書館では、利用カードを提示せず貸出しを求め、予約冊数の制限を超える受取を要求、長時間カウンターを占拠、レファレンス対応の特定の司書を指名、一日に百五十冊を超える貸出し、返却を繰り返す行為という迷惑行為を継続していた住民がいました。教育委員会規則に基づいて入館禁止処分を行ったところ、処分の違法性と国賠法上の違法行為が争われたこともございます。
 カスハラ行為を更に詳細に分類することで、多岐にわたる行政分野ごとで、実効性あるカスハラ対策として今後求められるであろう条例や規則、要綱改正などが見えてくるのではないかと考えており、そのためには、施行までに法律的な側面からの検討が必要であり、一定の時間や職員の体制も必要です。
 最後、四ページです。
 法案が成立すれば、雇用上の措置義務として、事業主がカスハラ対策をしなければなりません。公務における分野ごとの検討と同じように、分野ごとに業界団体を中心として検討がされるというふうに想定をしています。
 その際に、労働者を守ることは前提として、利害関係者である消費者や合理的配慮を必要とする障害者の意見も受け止めて検討がなされるべきです。今回の法改正が、カスハラから労働者を守るものであって、正当なクレームを排除することや合理的配慮として求められる水準を後退させることにつながらないよう、今後、バランスの取れた制度設計が現場でなされるよう、附帯決議も含め、御検討をお願い申し上げます。
 また、事業主が従業員に対してできることだけでは、限界がございます。図にしておりますけれども、濃い部分ですが、事業主ができることからはみ出している領域もカスハラ対策には必要です。継続的に取組が推進をされ、実効性のあるものとなるよう、業法や政省令の改正も含め、厚生労働省を中心とした関係省庁における取組の状況の確認や後押しもお願いしたいと思います。
 最後になりますが、地方公務員の多くは、自分の町の住民の皆さんのお役に立てるよう、真面目に一生懸命、公務に取り組んでいます。
 総務省の調査では、パワーハラスメントがあった職場の特徴として、人手が常に不足しているという回答が五割を超えています。このような状況でカスハラ対策を講じることになった場合に、単に、住民に対応する時間に上限を設ける自治体が出るのではないか、困り事を抱えた住民の訴えや要望をカスハラとして受け付けない、排除してしまうのではないかという懸念が拭えません。
 仮に立入禁止処分をするのであれば、事前に有識者で構成する第三者的な委員会に諮問することや、電話や対応の打切り件数が年間でどれぐらいあるのかといった事後的な確認がなければ、行政の過剰規制は検証できません。
 重ねてになりますが、公務も民間も、一方的ではない、バランスの取れた、かつ実効性のあるカスハラ対策が講じられますよう、法案の成立と厚生労働委員会におけます幅広な御議論をお願い申し上げて、私からの説明とします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121704260X01520250513_008

発言者: 林鉄兵

speaker_id: 15849

日付: 2025-05-13

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会