串岡弘昭の発言 (消費者問題に関する特別委員会)

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○串岡参考人 皆さん、よろしくお願いいたします。
 ちょっと声がかれておりますけれども。本日は、本特別委員会にお呼びいただきまして、大変ありがとうございます。深く感謝を申し上げます。
 本心を申し上げれば、この公益通報者保護法が成立を期された二〇〇二年から二〇〇四年の間にこういう審議があるところへお呼びいただけたらうれしかったと思うわけです。
 ただし、ここで、議員の皆さん方に、公益通報者はどういう苦悩にあるのかということを少しお話をしたいと思います。
 その前に、この公益通報者保護法の成立時の問題点を申し上げたいと思うんです。
 この法律は国民生活局で審議されておりましたんですけれども、その当時、私もあるテレビで一緒になったりした国民生活局の松本恒雄氏は、最初の、二〇〇四年に成立して二〇〇六年の四月一日から施行されたこの法律について、こういうことを申しております。
 何も松本先生を批判するという気持ちは毛頭ありません。当時は、内部告発者を守るなんというのは密告社会をつくるのかというような雰囲気が非常にあった時代ですから、まあ、松本先生の苦労は分かるという思いでありまして、批判するつもりはありませんが、どういうことを言っておられるかを申し上げまして、話を始めたいと思うんです。
 この公益通報者保護法を松本先生は、企業のコンプライアンス、法令遵守を促進するものとして意義がある、内部告発をしやすくすることは法案の主たる狙いではない、ヘルプラインを整備するなど、問題が発生した場合早期に是正する体制を企業につくらせるというのが、直接書いていないがこの法案の狙いだ、そうしておかないと問題が外に漏れて世論の批判を招き倒産しかねませんよというメッセージを伝える、法案が成立すれば経営のトップの意識は変わっていくだろう、こういう気持ちを訴えておられるわけです。
 これに対して、私は二〇一八年に経営行動学会というのに呼ばれていまして、そこで講演をさせていただいたんですけれども、そこで、松本先生の法案の認識に対してこのように申しております。
 直接書いてあることが法案の狙いではなく、書いてないことが法案の狙いであっては、誰がそのようなことを判断できるのかということです。一体、この公益通報者保護法という名前はどういう意味合いを持つのか。誰が見たって、公益通報者保護法は公益通報者を守る法律だと思うわけです。
 公益通報者は、このように二〇〇四年に成立しました。ところが、この法律過程で、内部告発者は誰一人として意見を聞かれておりません。そういう内部告発者から話を聞くという発想自体がなかったんです。これが公益通報者保護法が実効性を伴わない法律として今日に至っている決定的な原因だと私は考えております。
 その最大の理由はどういうことかといいますと、内部告発者が最も信頼を置いて通報できる通報先が最も通報しにくい法律として成立してしまっております。そして、例外なく報復を受けてきた事業所への通報が、あたかも最も通報しやすい、通報すべき通報先とされてしまったということであります。
 私の例をちょっと申し上げたいと思います。
 私は、岐阜でトナミ運輸の営業所におりまして、営業活動をしておりました。東海道路線連盟、五十社という大手の運輸会社の闇カルテルを告発したわけですけれども。
 そこでどのように闇カルテルが結ばれていくかをお伝えしますと、闇カルテルというような違法行為を行うには、そこに、それを正当化する論理というものが必ず存在いたします。それは何かと申しますと、運輸業界は非常に競争が激しい過当競争である、過当競争の下に、認可運賃は非常に低く運輸省に抑えられている、こういう考えがありました。過当競争の下で共存共栄を図らなきゃならない。そういう中で、運輸省に対して認可をしてもらうという運賃であります。二五%、三〇%認可申請しても一五%になるとか、そういうふうにして非常に被害者意識の強い業界でありましたということが、闇カルテルを結んでいく原因でありました。
 認可運賃ですから幅があったんですけれども、最高運賃にしなさい、それでやろうじゃないか、そのためにはダンピング競争にならないようにカルテルを結ぼうということで、それに違反した業者には岐阜では制裁を加えようということで、どんな制裁が考えられていたかと申しますと、その会社が新規としてほかの運輸会社から荷物を取った場合は返しなさいというふうに。返す必要はない、正当な商行為ですから返さなくてもいいということになりますと、事前に納めてあった違約金を、その取られた運輸会社には返す。それでも引き続いて自由に競争をやってお客さんを取っていったら、そのお客さんを岐阜各地で排除しなきゃなりませんので、今度はそこの運輸会社が持っているお客さんをただででも運んで営業できないようにしよう、こういう協定でありましたので、私は、これは独禁法に違反するという形で、告発に踏み切る決断をしたわけであります。
 その決断の最初の持っていく先は、当然、独禁法違反でありますから、公正取引委員会が通報先になります。運輸省の認可事項でありますから、同じ行政機関で、運輸省にも自動車局がありますから、そこが行政機関の通報先になります。
 しかし、私は、まずお客さんに知らせなきゃならない、こう思いましたので、読売新聞名古屋支局に訴えました。そして記事になりました。つまり、この私の通報の考え方が、メディアと行政機関、国民に知らせることができるメディアと、そしてこれを担当する行政機関、この二つへはセットとして申し出なきゃならないということだ、こう思っておりましたので、この二か所へは訴えました。
 メディアはなぜ信頼を置けるのか、特に新聞社はなぜ信頼を置けるのかということでありました。新聞は、いろいろ問題で、取材源の秘匿がありますので、これが新聞の生命線だと思っています。ですから、氏名を秘匿するということで、氏名の秘匿が徹底して守られております。漏れたという心配はまずありません。ですから、新聞社へ訴えました。
 それともう一つは、今言いましたように、公にできるものは公にしなきゃならない。
 この点でちょっと申し上げますと、労働法を見ていただければ分かると思うんですけれども、ほとんど罰則がついております。ちょうど私らが学生時代に労働法を少しかじりまして、そして、その本の中には、ここに東大の先生がおられますけれども、労働法の先生で藤木英雄という先生がおりまして、この先生はどういうことを申しているかといいますと、これが私は学んだことなのでございます。
 労働基準法については、国は、強行法的な基準、多くの場合、罰則の裏づけがあるをもって臨み、労働基準の強行法的定立又は行政機関による監督を広汎に予定するとあります。労働法概論の上巻にこういうことが書いてあります。行政機関とは労働基準監督署のことであるが、労働基準監督官は、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行います。
 これに対して、公益通報者には、よりによって、私は一番、日本の企業風土全般に、公益通報、内部告発者に報復しかないようなところへまず訴えやすいかのごとくこれを規定してしまったということは、私らとしては甚だ問題があることで、その根本の理念のところからこの法律を変えてもらわないと公益通報者は守れない、私はそういうふうに思っております。
 ですから、主にこのところ、労働者を守る法律であるかのごとく呈しておりますが、私、同じ、連絡を取り合ったりしました兵庫県の西宮冷蔵の、小事業者の人が良心の下に告発した件で、この事業者は潰れてしまいました。当時、虚偽記載があって、言って、むしろ西宮冷蔵さんは、実は牛肉偽装で国の税金を助けたにもかかわらず、営業停止を国土交通省から食らってしまう。
 これは例えて言えば、泥棒を突き出したら突き出した本人が逮捕されてしまったというかのごとき事案で、あの公益通報者保護法がなくても、国土交通大臣の方が、あなたはよく国民の税金を救ってくれましたということで表彰してあげるぐらいの配慮をすれば、水谷さんは倒産しなかったと思うんです。
 そういうことで、この法律、内部通報を申し上げましたが、私は、この内部通報のところに一つ非常に大きな問題がある。先ほど、松本先生が言われたようなことで、書いてあることが問題があると思うんです。
 大体、通報が生じ、まさに生じようとしていると信じると、思料すると書いてありましても、生じているものについてはこれは通報すべきでありますが、まさにまだ生じていないものを刑法のものとして通報できるのか。大体、ここら辺が大きな問題として、私は、そういうまだ発してもいないものをできないと思うんですよ。もし内部に通報するとすれば、まだ発生していないものだけで、発生しているものについては、常にやはり公にする。その次に、行政監督機関に訴える。そして、会社にそれでも訴える場合は、最後にです。
 私も事実、最後の方に会社に対して、率先してこの闇カルテルをやめるべき、トナミ運輸はやめるように働きかけてもらいたいと。その当時は綿貫議員でありまして、綿貫議員に私自身の思いを伝えようとしましたけれども、そこの秘書も、私と同期でトナミ運輸へ入りながら、次の年に秘書になっていましたので、そういう思いで行ったんですけれども、一切会ってもらえませんでした。
 今言いましたように、もし事業者に通報する場合は一番最後にしなきゃならない、もし訴えるなら。そして、事実、そういたしました。
 やはり、その場合に、一国の企業風土というものが、通報するような風土であるのかどうかというものが最も決め手になります。現時点において、この法律は一国の気風を変えるようなものまでには至っていないという思いであります。すなわち、私のような人間がどれだけでも出てくる可能性がある法律でしかない。私のような人間、内部告発をして、生涯、最後まで、そして最後、私は会社に残ったのは、まさに裁判をやるという以外のものではありません。
 ちょっと時間が来まして、こういう程度で終わりましたんですけれども、どこかの大学とか何かに、私が呼ばれるのは大学ぐらいしか呼ばれないんですけれども、企業で私を呼ぶ人は一人もおられないんですけれども、時間が来ましたので、この辺で、途中で終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 串岡弘昭

speaker_id: 21956

日付: 2025-04-22

院: 衆議院

会議名: 消費者問題に関する特別委員会