貞広斎子の発言 (文部科学委員会)
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○貞広参考人 皆様、おはようございます。千葉大学の貞広と申します。
本日は、このような時間をいただきまして、どうもありがとうございます。
本日、今回の政府提出法案の基となりました中央教育審議会答申、令和六年八月に取りまとめられました「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」に関わる経緯や議論等を踏まえつつ、意見の陳述をさせていただきます。
まず、答申に至る経緯でございます。
令和四年に勤務実態調査が実施され、令和五年四月にその速報値が公表、同年五月に文部科学大臣から中央教育審議会に諮問がなされ、中教審に特別部会が設置されました。私はその特別部会の部会長を拝命し、議論を進めてまいりました。
特別部会では、給特法等の法制的な枠組みを含め、教師を取り巻く環境整備につきまして、多様な専門性をお持ちの委員の方々に御参画いただき、一年以上にわたり総合的な審議を行ってまいりました。
議論で強く意識され、そこに通底していたのは、日本の先生方の善意と頑張りに敬意を表すること、さらに、それにお応えできるように、安定的かつ地域の財政力によらず、リソースを最大化、最大限活用し、お支えしたいという点でした。そして、その先により質の高い公教育の実現を見据えるということでもございました。
また、答申に至る過程では、教職員団体を含む関係団体からの意見書も踏まえて審議を行うとともに、国民の皆様からの意見募集の機会も設け、様々な御意見もいただきながら慎重に審議を重ねてまいりました。
次に、教師を取り巻く環境整備の目的を申し上げます。
日本の学校教育で知徳体にわたる全人的な質の高い教育を提供していることは国際的にも高く評価されています。これは、全国の優れた先生方の善意と献身的な努力に支えられた成果です。子供の学びを支える教師は公教育の要です。
一方、学校が対応する課題が複雑化、困難化する中、保護者や地域の方々からの御期待も高いことから、その結果として学校や教師の負担が増大してきたという実態もございます。したがって、長時間勤務の是正を図る必要がございます。
ただし、働き方改革の唯一の到達点は、いわゆる時短ではございません。長時間勤務の是正によって教師の健康を守ることは当然です。ただ、それらに加えまして、日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで教師のウェルビーイングや自らの人間性、創造性を高めること、学びの時間の確保により自らの授業等を磨くこと、そしてこれらの実現によって子供たちへのよりよい教育を実現すること、これを目的といたします。
教師の質や数、心や体のありようや学ぶ時間の確保は、子供たちへの教育の質に直結します。これらのことから、審議会では、教師を取り巻く環境整備が我が国の未来を左右する重要な課題であるとの認識で議論が進められました。
今後、学校は、働きやすさと働きがいの両立がなされた職場となり、その中で教師が生き生きと活躍し、さらに、教職生涯を通じて学び続け、持続的に成長できる環境であり続けることが必要です。そうした環境は、それ自体が学校教育を充実させるために重要なだけでなく、教師を志す多くの学生にとっても非常に重要なことだと考えます。
次に、答申のポイントについて申し上げます。
答申では、教師を学びの専門職と位置づけ、働きやすさと働きがいの両立に向けて、三つの柱、一つ目が、働き方改革の更なる加速化、二つ目が、学校の指導、運営体制の充実、そして三つ目が、教師の処遇改善、こちらを一体的、総合的に推進することを求めています。
その際、とりわけ給特法の法制的な在り方については、会議内外にも様々な御意見や評価があることにも鑑み、慎重に検討を重ねてまいりました。
学びの専門職たる教師は、日々変化する目の前の子供たちに寄り添い、思いも寄らない事態に臨機応変に対応してくれています。
そのため、会議では、どのような業務をどのように、どの程度まで行うのかについて、都度都度、管理職の職務命令を求めるのではなく、一人一人の子供たちへの教育的な見地から、教師自身の自発性、創造性に委ねる部分が大きいという御意見を多くいただきました。そして、そうした教師の職務等の特殊性を踏まえれば、勤務時間の内外を包括的に評価すること、そして、その処遇として教職調整額を本給相当として支給するという仕組みがふさわしいと整理いたしました。
ただし、現行の勤務状況が給特法の本来の趣旨、すなわち抑制的で許容範囲の時間外在校等時間に見合っているか否かについては、課題もあると考えます。そのため、働き方改革の推進のための仕組みづくりや教員定数の改善等によって、教師の時間外在校等時間の縮減を行い続けることが必須であるとも強調させていただいております。
次に、今回の法改正等について意見を申し上げます。
答申を踏まえまして、令和七年度予算には、教職調整額の引上げ等、教師の処遇改善に要する経費や、小学校教科担任制の拡充、中学校における生徒指導担当教師の配置拡充等に要する経費、教員業務支援員や副校長・教頭マネジメント支援員の配置拡充等、指導、運営体制の充実に係る経費を盛り込んでいただきました。
こうした予算措置に加えまして、今回の給特法改正案では、中教審答申の三つの柱に基づく重要な法制上の措置が盛り込まれています。
一つ目が、働き方改革のPDCAサイクルを構築するために、教育委員会に対して、教員の働き方や業務の現状と進捗状況を公開することと併せて、業務量の適切な管理と健康、福祉を確保するための実施計画の策定を義務づけることです。
学校における働き方改革は、令和元年の給特法改正以降、着実に進みつつある一方で、教育委員会や学校における取組状況に差が見られることがこれまでも課題となってまいりました。今回の措置により、教育委員会ごとの働き方改革の取組状況が可視化されるとともに、首長部局や保護者、地域が一体となって取組を推進していくことが可能になると考えております。
なお、この法律が成立した際には、計画の策定等に伴う業務自体が働き方改革の妨げになることがないよう、文部科学省において計画のひな形を適切な時期にお示しいただく必要がある旨も付言させていただきます。
二点目が、主務教諭の職の創設です。
中教審における議論でも、学校の組織的、機動的なマネジメント体制の構築に向けて、若手教師へのサポート機能の強化、子供の抱える課題への対応、学校横断的な取組への対応について、学校内外との連絡調整機能を充実させる必要、つまりマネジメント機能を充実させる必要が議論されました。主務教諭の職と新たな俸給表を創設することで、これらの学校の機能を充実させることが可能になると考えます。
三点目です。教職調整額の率の引上げと、義務教育等教員特別手当の学級担任への加算を可能とするための仕組みづくりです。
教師は、子供の人格の完成と我が国の未来を切り開く人材を育成するという極めて複雑、困難、そして崇高な職務を担っており、専門的な知識や技能が求められる高度専門職です。また、社会の変化に伴い、教師の業務の複雑性、困難性も増大しています。
こうした教師の職務の重要性と職責の高まりに応じた処遇とする必要がありますが、人確法に基づく一般行政職の公務員と比較した教師の給与優遇分は、現在では僅かとなっております。
給与改善だけでなく、働き方改革を徹底し、働きやすい勤務環境を整えていく必要があるのはもちろん当然ですけれども、民間企業の給与が上昇していく中、給与の改善というのも必要不可欠です。
また、教職調整額の引上げは、教師の給与のベースアップであり、人格の完成を目指して一人一人の子供たちの可能性を引き出し、成長を促すという深遠な営みを行う教職に対する社会からの尊敬と敬意の表現形でもあると考えられます。
給特法改正以来、約五十年ぶりの教職調整額の率の引上げと、働き方改革や指導、運営体制の充実を進める今回の一体改革は、今の学校現場の状況を鑑みるに、確実に実現するべき施策だと考えております。
教師を取り巻く環境整備は、国、都道府県、市町村、学校が、それぞれの権限と責任に基づき取組を進めるとともに、保護者や地域等、教育に関わる関係者がそれぞれ自分事として、社会全体で学校や教師を支えていく、こうした循環が必要だと考えます。
この法案が成立した際には、それぞれの仕組みを最大限有効活用していただき、教師が働きやすく、より働きがいのある職となり、子供たち一人一人がよりよい社会と幸福な人生のつくり手となっていく、そうした質の高い学校教育の実現を進めていただきたい、それを強く祈念いたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。
以上、整いませんが、陳述は以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)