岡野純子の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○岡野純子君 国民民主党の岡野純子です。
 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の改正案に対し、会派を代表して質問いたします。(拍手)
 私たち国民民主党は、働く者のための政党です。国民民主党結党以来、私たちは一貫して、下請法、独禁法の実効性強化を訴えてきました。その背景には、コロナ禍、原材料費やエネルギー、物流コストの高騰、さらには国際情勢の不安定化という、下請企業にとってはまさに生き残りを懸けた苦難の連続があります。
 材料費が高騰しているのに、値上げは認めないと発注元に言われた。もはや利益が出ないどころか赤字。何のために仕事をしているのか分からない。これ以上価格交渉をすると取引を切られるかもしれないという空気がある。明示的な圧力でなくても、下請側は沈黙せざるを得ない。
 寄せられたこれらの声は、法のグレーゾーンで許される問題ではありません。
 これまでの商慣行として、大企業の利益が優先され、下請企業やフリーランスの労働者が適正な対価を得られない仕組みが温存されてきました。力ある企業が、自らの利益確保のために、中小企業や個人事業主にしわ寄せを押しつける構造がまかり通ってきました。この構造的な不公正を正さない限り、どれだけ成長戦略を語っても、その果実は一部企業に集中し続けるでしょう。
 下請法は、その公正な分配を実現するための基盤です。本日は、この法改正の意義と、その内容は充足しているのかを明らかにしたく、発言いたします。
 トランプ政権の相互関税は九十日間の停止が示されましたが、自動車は依然二五%発動中のままですし、全体的にも先行きが不透明なことに変わりはありません。今後、アメリカ市場での価格転嫁が困難となれば日本国内の下請にしわ寄せが来ることは必至といった中、今般の改正は今後の日本経済を守る上で極めて重要です。政府は、グローバルな観点から、本法案の意義をどのように位置づけているのか、武藤経済産業大臣に伺います。
 また、春闘において中小企業の賃上げにマイナスの影響を与える可能性が高まっていますが、賃上げの流れは絶対に止めてはいけません。さらには、物価高と景気後退が同時に起こるスタグフレーションが発生する危険性もある中、強力な経済対策が必要と考えますが、国内対策、とりわけ、エネルギー、物流コストの削減、消費喚起といった足下の景気対策をどう進めていくのか、武藤大臣に方針を伺います。
 法案が成立したとしても、その先、現場に落ちていくまでのスピード感が肝要です。今回の改正内容を来年の賃上げにつなげていくことが重要であり、遅くとも来年一月までに施行すべきと考えます。政省令の策定やガイドラインの整備、さらには関係業界への啓発にどれだけ速やかに取りかかれるのか、その意欲を伊東公取担当大臣にお尋ねいたします。
 政府は、労務費の適正な転嫁のための価格交渉に関する指針を策定しています。しかし、実際の運用において元請企業の裁量に委ねられていることを懸念します。現行の自主的な転嫁の下では、経産省の調査によると約半数がコスト増を価格転嫁できていないという結果も出ている。そういった現状を、政府はどう具体的に是正するつもりでしょうか。武藤大臣にお尋ねいたします。
 自主的に交渉すれば取引を打ち切られるおそれがある現状では、転嫁交渉など絵に描いた餅であり、取引当事者間の力関係が変わらない限り、実効性は期待できません。交渉力の弱い中小企業が取引停止を恐れることなく交渉できる具体的な支援策、例えば、先ほど来出ておりますが、中小企業庁が既に取り組まれている、弁護士が法的助言をする下請かけこみ寺のように、中小企業が安心して交渉するための方策について、武藤大臣、お答えください。
 また、一定の原価上昇があった場合には転嫁を義務づける制度など、価格転嫁の強制力を法的に担保する考えはありませんか。一般市場では難しくても、例えば官公需の公共調達であれば標準価格が明らかであるため実行可能かと考えますが、公から動いて民を変えるという発想は、武藤大臣、いかがでしょうか。
 下請法の適用基準では、委託元の資本金が一千万円超三億円以下の場合、下請側は資本金一千万円以下の場合のみ適用対象とされています。これは、下請法が保護しようとしているのは特に小規模な事業者という前提に基づいているわけですが、この法律が作られたのは昭和三十一年。当時は、資本金一千万円を超える企業は、ある程度の経営体力があるとみなされていました。
 しかし、時を経て、企業の在り方は様変わりしています。例えば、IT系ベンチャー企業が、エンジェル投資などで資本金一千万円以上であっても、社員は数人で実績も浅いというケースは多く見られますし、地方の中小製造業者でも、町工場が設備更新のために、融資の都合上、資本金を一千万円以上に増資したり、大手メーカーの下請で依存度が高く、値下げ圧力に抵抗できなかったりするケースなど、形式的な資本金ではなく、経済的依存関係や交渉力の弱さを考慮すれば、実質的には保護すべき立場の事業者も存在します。行政リソースに限界があることは理解しますが、保護すべき企業とそうでない企業の合理的線引きについて、伊東公取担当大臣の考えを伺います。
 日本の下請法そのものは、制度としてはきめ細かいですが、守らせる力が弱いように思います。現場の声を拾う下請Gメンの尽力に敬意を表しつつも、より実効性を伴った摘発体制の構築が必要です。公正取引委員会に対しては、労働現場に寄り添った権限の行使、執行力の強化を政府として支えていくべきです。よりきめ細かく実態把握を行うために、下請Gメン、トラック・物流Gメンとも連携した取引調査体制を加速させるべきと考えますが、いかがでしょうか。武藤大臣に伺います。
 昨年の公正取引委員会の指導件数は八千二百三十件、うち勧告対象は二十一件です。確かに、その企業の社会的信用を大きく毀損しますから、勧告に慎重になる姿勢は理解できます。しかし、現場の声を聞いていると、調和的指導では現状変更にも限界があるように感じます。諸外国では、より強力な是正措置が抑止力として機能している例も見られます。競争当局にはより毅然とした対応を求めますが、いかがでしょうか。
 一方で、当局による是正措置は、私的自治の原則に対する過度な介入という懸念もあります。その点、どのように均衡を保っているのか、伊東公取担当大臣に伺います。
 適用基準に従業員数を追加することで下請法逃れを防ぐ狙いがあるわけですが、例えば、資本金を意図的に減らしたり、子会社化で実質的な支配関係を隠したりするケースも考えられます。こうした抜け道への対策を実際の運用規定に盛り込んでいくべきと考えますが、いかがでしょうか。伊東公取担当大臣に伺います。
 長らく続いた、安く、早く、多くに価値を置いた経済構造の中で、取引の場には暗黙の了解あるいは慣習という名の圧力が根強く残っており、発注側の意識が変わらない限り、どれだけ法律を整備しても効果は限定的です。政府として、こうした企業文化や取引慣行を変えるための具体的な啓発をどのように講じていくのか、武藤大臣のお考えを伺います。
 今般の改正に先んじて、各分野の専門家が取引環境の在り方を検討することを目的とした企業取引委員会が立ち上げられています。その報告書を総括するまとめの章を読み、私は驚きました。まとめの文章は、このように始まります。「弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく その音が響きわたれば ブルースは加速していく 見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ」。よもや、行政文書でブルーハーツを目にするとは思いませんでしたが、それほどまでに、現場の生の声が集積された企業取引研究会において、今般の改正をもって何としても経済構造を変えねばならないという強い思いがあふれたゆえと理解できる、読み応えのある報告書でした。
 ここで言うところの弱い者とは、下請業者を指しているわけではありません。本筋での努力、すなわち、商品やサービスの価値向上を追求し、顧客に対してそれに見合った対価を訴求するということから逃げ、立場を利用して労働者の価値を評価することもなく買いたたく者、それこそが弱い者だと定義し、このような弱い者たちが連鎖してでき上がるサプライチェーンが果たして強い経済を生むのだろうかと記されています。
 真に強い経済を生み出す礎となるのは、取引最上位企業からサプライチェーンの広い裾野を支える一つ一つの企業が、優れた商品やサービスを創造し、競争力を高め、成果を分かち合う経済構造です。安い労働力を大量に投入することで経済成長を支えた時代から、労働者一人一人の生産性を高め、やりがいと誇りを持って働ける社会へのシフトが求められています。
 各企業が力をつけるためには、元請に近い立場の企業から自主行動計画遵守の徹底を呼びかけることも有意であると考えます。取引最上位企業から業界団体に取引適正化を働きかければ、ティア4、ティア5への波及も期待できることから、政府として強く要望していくべきと考えますが、いかがでしょうか。武藤大臣に伺います。
 荷主と運送事業者への下請法適用は期待されていたことですが、これをもってトラックドライバーの長時間荷待ちや無償荷役といった過酷な実態が解消されるのか、疑問です。御承知のとおり、物流業界の現場は、有効求人倍率が全職業の二倍近い状況であり、慢性的な人材不足が深刻な課題になっています。二〇二四年問題の影響も大きい中、改正物流関連二法の着実な執行も併せた具体的な改善策と、運送業者の声を反映する仕組みをどうつくるのか、武藤経産大臣にお聞きします。
 また、国民民主党は、運送業に係る標準的な運賃を確保した荷主への税優遇を行うことを政策として提案しています。そこへの見解も伺います。
 今回の改正には、下請という呼称の変更も含まれます。下請という言葉に限らず、万引き、いじめ、痴漢、パパ活、派遣切りなど、呼称によって問題の本質が見えにくくなったり、ネガティブなイメージが過剰に付与されたりする言葉はほかにもあり、呼称変更は評価できるものです。ただ、名称を変更した後も、省庁や国会の中で特定受注事業者取引適正化法、いわゆる下請法などと呼んでいては元も子もありませんので、どうか、変更後の呼称を徹底し、広く意識を変える一助としていただきますようお願いいたします。
 私たちは今、問われています。これまでの常識に依存し、誰かの犠牲の上に経済を成り立たせる道を選び続けるのか。それとも、知恵と工夫と努力に対して正当な報酬が支払われる経済社会を築いていくのか。この法改正を契機として、企業と労働者が互いに研さんし合える新しい経済モデルをつくっていくべきだと国民民主党は考えます。下請法は、その当たり前の経済の土台をつくる法律です。
 私は、政府が今般の法改正を単なる制度変更として終わらせるつもりはないと信じています。施行して終わりではなく、生きた法律として運用していく覚悟を最後に伊東公取担当大臣にお伺いし、働く人のその努力が真っ当に報われる社会の実現のために国民民主党として最大限尽力していく旨お誓い申し上げ、私からの質問といたします。
 トランプ関税で先が見通せず、国内産業が困難に直面している今こそ、国内は、対決よりも解決の姿勢でこの困難を乗り越えてまいりましょう。
 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣武藤容治君登壇〕

発言情報

speech_id: 121705254X01920250411_028

発言者: 岡野純子

speaker_id: 8476

日付: 2025-04-11

院: 衆議院

会議名: 本会議