阿部圭史の発言 (本会議)
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○阿部圭史君 日本維新の会の阿部圭史です。
私は、党を代表して、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)
本法案の政府原案は、基礎年金の底上げが除外されたことを捉えて、あんこのないあんパンであるということばかりが注目されてきました。しかし、本当の問題はそこではありません。本法案は、昨年の年金の財政検証の結果を基に議論されたものではございますが、問題はこの財政検証にあります。
運用利回りと賃金上昇率の差であるスプレッドは、基本シナリオとされた過去三十年投影ケースにおいては一・七という利回りの高い値を用いており、あたかも将来の年金財政が安全であるかのように見せています。これは国民に対するごまかしであります。
また、将来の人口の見込みとしては、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計の中位推計を用いてきました。しかし、一九九二年の財政検証から二〇一七年までの過去六回、実際の出生率は中位推計であったためしはありません。実際は推計をことごとく外してきており、実際の出生率は低下の一途をたどってきました。中位推計だから適正な推定だろうということは全くなく、低位推計を用いるべきであることは言うまでもありません。
しかしながら、二〇二四年の財政検証においても中位推計を用いて検証しています。これまで推計を外してきたという実態について全く触れず、実態に近いであろう低位推計を使わず中位推計を使うという姿勢こそが、国民の目を欺くものであるとしか言いようがありません。
政府が前提とする四十年就労の夫と専業主婦という世帯モデルは、夫婦共稼ぎや独身世帯が増えている現実の家族形態や就労状況とは全く合っておりません。夫婦共稼ぎをする理由は、子育てのためには一方の親の収入だけでは足りないという現実があるからです。かつては夫の収入だけでも子育てが可能であった時代の考え方を現在にも当てはめて、それがモデルケースとして所得代替率を考えること自体が、もはや何らの意味を持ちません。所得代替率は個人ベースで考えるべきものであります。
二〇二三年のOECDのデータを用いて、個人単位、男性、保険料差引き後の所得代替率で国際比較をすれば、日本の所得代替率は三八・八%にすぎません。イタリアは八〇%を超え、アメリカ、イギリス、ドイツが五〇%を超えていること、OECD平均で六六・三%であることを考えると、我が国日本は明らかに年金の給付が低いことが分かります。政府が用いている、いわゆる世帯モデルでは、あたかも五割を超えているかのように見せるためのごまかしにすぎません。
本法案に対して立憲民主党が提案した修正案を与党が受け入れましたが、基礎年金の底上げという表現は、余りにきれいに装飾された表現であります。
今般の問題の本質は、次の三点に集約されます。一つ目、厚生年金の積立金を基礎年金に投入すること。二つ目、基礎年金に税金を投入すること。三つ目、この税金の財源を明らかにしていないこと。この三つであります。
一つ目について、厚生年金は、第二号被保険者が長い年月をかけて働き、努力して積み上げてきたものであります。それを第一号と第三号の被保険者向けの資金にすることは、果たして適切と言えるのでしょうか。全くもって筋が通りません。二つ目及び三つ目について、税金を投入するための財源は明らかにされていません。無責任であり、不適切以外の何物でもなく、疑問を持たざるを得ません。
本法案では、保険料率の設定を見直すこともなく、第三号被保険者についての廃止を含めた見直しをすることもなく、長寿化している我が国においては根本的な問題である年金の支給開始年齢の引上げについても検討することもなく、ただただ、小手先のびほう策だけを俎上に上げて検討しているだけではありませんか。
私たち日本維新の会は、国民の皆さんの未来のために、なるべく多くの選択肢を次世代に残すべきであると考えています。考えるべきことを考えない、思考停止に陥ってしまっては、次世代に対する責任が取れないのではないでしょうか。ましてや、年金の実態を高めにごまかして、あたかも問題がないかのように見せる姿勢は、明らかに無責任であります。
国民年金を余り積み上げることができなかった方が大勢いる就職氷河期世代の一番上は五十歳代前半になっており、十数年たてばいよいよ給付が始まります。議論を先延ばしにすれば、給付される年金では生活ができない世帯が急激に増え、生活保護受給者が増え続ける未来が来ることが容易に予想されます。そうなってしまってから年金制度をどうするかという議論をしては遅過ぎるのです。今からでも、年金制度全体をどうするのかという、骨太で抜本的な制度論に関する議論を直ちに始めねばなりません。
年金という国民生活に密着した課題については、政争の具にするべきではありません。年金制度の抜本改革を行うに当たっては、国民のための社会保障制度の議論は政局にしないとの合意の下、政局や党派を超えて、国民一丸となった新しい議論の場が必要であります。
我々日本維新の会は、内閣総理大臣主宰による社会保障国民会議の設置を提案いたします。年金問題を政争の具とせず、国民一丸となり、真摯に未来の生活の安定のための議論を国会の場で尽くすべきです。
年金問題の本質を議論せず、五年後の財政検証まで先送りにする政府に対して、その姿勢を改めるべきことを強く求め、私からの反対討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)