川合孝典の発言 (憲法審査会)

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○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
 参議院憲法審査会の開催に当たり、国民民主党の問題意識と目指すべき方向性について、人権分野と統治機構分野に分けて簡潔に意見表明します。
 現行の日本国憲法は、人権尊重、国民主権、平和主義といった理念の下、政治プロセスの合理性、正統性を確保するため、国家権力の構成、統制と個人の人権保障を定めているものであり、全体として高く評価すべきものであります。今後もこの理念や体系は維持すべきと考えております。
 その前提に立ち、結党以来数次にわたって有識者との議論や市民との対話を行った結果、多くの課題が浮かび上がってまいりました。
 まず、人権分野ですが、現行憲法制定時には想定していなかった時代の変化に対して、憲法の定める基本的人権の保障に十分対応し切れていない点が指摘されております。デジタル化の進展により、AIを使った心理的プロファイリングなどが個人の主体的な生き方にも影響を与えるなど、実体空間、サイバー空間を問わず、自立した個人の尊厳が脅かされるような状況が現れているほか、AIとネット社会の融合により登場したプラットフォーム提供者による情報が社会的、政治的な分断を生じさせ、豊かな対話と熟議の確保を前提とした民主主義社会の基礎を揺るがす大きな脅威となっています。
 このような状況からは、人権保障のエアポケットが生まれつつあると言わざるを得ず、デジタル時代の到来や個人の生き方の変化、多様化に対応するためのアップデートが必要と考えます。
 次に、統治機構分野ですが、国際的に見ても、比較的規定が豊富な人権規定に比べて、相対的に条文の抽象度が高く、条文の分量が少ないため、法規範として規律統制する力が弱く、憲法の規律統制機能が働きにくい条文となっていることが多くの識者から指摘されております。その結果として、時の政権の都合で基本的な政治基盤の変更が容易に行われる事例もしばしば見られております。
 まず、規律密度が低い典型として挙げられる地方自治の分野では、僅か四か条しかなく、かつ、それぞれの条文も極めて抽象度の高い簡潔な条文にとどまっているため、地方自治の在り方自体が結局は国の法律によって左右されることとなっており、住民自治や団体自治といった地方自治の本旨は事実上形骸化しております。
 また、国政分野においては、これまでも恣意的とも言える衆議院解散権の行使が続くなど、内閣が余りにも強大な権限を握るようになる一方、憲法上の要件を満たしても臨時会が召集されないなど、国会による民主的統制が十分に機能しておりません。本来、政治部門の行き過ぎをチェックし、個人の人権の最後のとりでとなるべき裁判部門においても、政治部門の行為の憲法適合性を問う一般的なシステムが憲法上ビルトインされておらず、統治行為論によって違憲判断を差し控える事例が多いと言えます。
 日本国憲法の三大原理の一つとされる平和主義に関しても、本来なら憲法改正で対応すべき事項と真摯に向き合わず、一般国民にも国際社会にも容易に理解し難い政府解釈の積み重ねと変更を繰り返す形で現状を追認してきた結果、憲法九条は事実を規律し統制する力を失い、ひいては憲法の規範力自体に対する国民の信頼を失ってしまっているものと認識しております。
 さらに、戦力不保持、交戦権否認をうたう九条二項の下で、集団的自衛権の一部容認にまで踏み込むに至っては、憲法九条の規範力はいよいよ限界を超えたというべきであり、改めて、日本国民の自律的な意思により自衛権をいかに統制するかが今まさに問われているものと考えております。
 日本国憲法は、条文の抽象度が高く、また条文の分量が少ないため、解釈あるいは不文律で補わなければならない余地が相当に広いことが認識されていますが、その広い余地を解釈ないし不文律で埋める際に恣意性が働き過ぎると人の支配に陥る可能性があり、その積み重ねが三権分立のバランスをゆがめ、憲法の規範力とそれに対する国民の信頼を揺るがせ、結果的に法の支配の空洞化を招来せしめていると言わざるを得ません。
 このような事象に鑑みると、現行憲法の体系性を維持しつつも、適切な範囲でこの規律密度を高めることにより三権分立のゆがみを是正し、憲法の規範力とそれに対する国民の信頼を再構築して法の支配を貫徹させることは喫緊の課題になっているものと考えております。
 今後目指すべき方向性として、私たち国民民主党は、二十一世紀中葉に向けた新たな社会像、国家像を明確にするため、現行憲法の個人の尊重を核とした三つの基本原理である人権尊重、国民主権、平和主義については、これを確認の上、引き続き堅持することを宣言するとともに、個人の尊厳、地域の尊厳、そしてグローバリズムの時代にこそ国家の自立を確保するための国家の尊厳の具体化を通じて、目指すべきこの国の形を提示する国家目標を掲げて、その実現に向けて努力していく姿勢を明らかにするべきと考えます。
 以上、国民民主党・新緑風会の意見表明とします。

発言情報

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発言者: 川合孝典

speaker_id: 14892

日付: 2025-04-02

院: 参議院

会議名: 憲法審査会