川合孝典の発言 (憲法審査会)
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○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
国民民主党は、憲法に対する問題意識と目指すべき方向性をこれまで人権保障分野と統治機構分野に分けて議論を行ってきておりますが、本日は、このうち、人権保障分野の中で、デジタル時代の人権保障の在り方ということについて問題提起をいたします。
現行憲法は、七十年以上前の一九四六年に制定されたものであるにもかかわらず、人権保障の分野に関して明文化された人権に関する条文は、その後に制定された比較的新しい諸外国の憲法典と比較しても、質、量共に遜色のない充実した内容となっており、この点は高く評価されるものと考えております。しかし、デジタル時代の到来やAI社会の進展によって、人権保障を取り巻く環境は急速に変貌しております。
具体的には、特定個人の行動、嗜好、健康状態、経済状態などの個人情報を用いたプロファイリングによって、個人の思想や良心の形成過程に影響を及ぼしており、その結果、自律した個人という憲法の前提に影響が生じております。
例えば、商業広告を送る際にターゲットとなる消費者の属性や行動履歴、趣味、嗜好などを把握するマイクロターゲティングや、ネット検索サイトが提供するアルゴリズム等により各人の嗜好や関心に限定された情報ばかりが提供され、自分が気に入りそうな情報に囲まれて視野狭窄に陥る、いわゆるフィルターバブルは、有権者の主体的な判断過程のゆがみや選挙等の公正に対する脅威といった民主主義のプロセスへの懸念を生じさせています。こうした現状から、我々は、自律した個人の尊厳といった近代立憲主義が目指した中核的な価値それ自体が脅かされる状況が生じているということを認識しなければなりません。
また、デジタル化の進展により、GAFAMなどの国家と対抗し得るほど、あるいはそれを凌駕するほどの新しい統治者の登場によって、自律的かつ多様な言論空間や、公正かつ自由な経済競争が明らかに阻害されるおそれが現実のものとなっております。
このような状況は、現行憲法制定時には全く想定されていなかった事象であり、こうした事象に対応して個人の尊厳を守り続けるためには、データ基本権、いわゆる情報自己決定権の保障など、時代に即した人権保障のアップデートの必要性について真剣に検討すべきと考えます。
以上述べたことを踏まえて、今後検討すべき論点として幾つか課題を抽出、整理すると、次のような検討項目が挙げられるだろうと考えております。
まず、デジタル化に対応するための基本理念として、憲法十三条に定める個人の尊重をサイバー空間にも拡張する必要があるものと考えられます。
その上で、各論的な人権保障規定として、まず憲法十四条関係では、AIを用いたプロファイリングや遺伝子解析技術の飛躍的発展によって生じるおそれがある遺伝的属性による差別の禁止規定を検討する必要があります。
また、個人の尊厳が脅かされている現状に鑑み、憲法十八条に定める奴隷的拘束及び苦役からの自由規定に関係するものとして、情報自己決定権の保障を規定することや、フィルターバブルによって個人の意思形成過程や認知傾向に過度な干渉が及ぶおそれがあることに鑑み、憲法十九条の思想及び良心の自由に、思想、良心の形成過程の自由、自律性の保障の追加を検討することなども挙げられます。
これらに加えて、プラットフォーム提供者の影響力が言論空間のみならず経済活動分野においても甚大な影響力を有している現状に鑑み、憲法二十一条の表現の自由に、精神的自由に関する熟議可能な言論空間の確保規定を追加することや、経済的自由に関する公正かつ自由な競争秩序の確保に関して、新しい統治者ともいうべきプラットフォーム提供者の責務やその環境整備に関する国の責務に関する規定を、職業選択の自由を規定する憲法二十二条に追加することについても検討されるべき事項であると考えています。
さらに、デジタル時代の民主主義の在り方として、選挙や国民投票の公正を確保するための規律についても、憲法上明確にしておく必要があるか否かについて検討する必要があるものと考えております。
以上、急速なデジタル化が進展する中、人権保障分野に限っても、憲法の規範力を維持する上で速やかに検討すべき課題がこれだけ抽出できるということを指摘し、国民民主党・新緑風会からの意見表明といたします。
以上です。