小宮山涼一の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(小宮山涼一君) 東京大の小宮山と申します。(資料映写)
本日は、お話の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。
私からは、エネルギー安全保障をめぐる内外の情勢についてお話をさせていただきます。
まず、日本の現状に関してです。
日本を取り巻くエネルギー情勢は不確実性が高まっています。中国やインドのエネルギー市場でのプレゼンス拡大に加え、世界のエネルギー供給拠点である中東やロシアの動向も先行きが不確実な状況にあり、エネルギー安全保障が重要な課題となっています。日本のエネルギー自給率は約一五%と先進国でも低い水準で、原油の約九割を中東から輸入している現状です。
さらに、脱炭素への取組も重要な課題です。COP28では、二〇三〇年までに世界の再生可能エネルギー設備容量を三倍、二〇五〇年までに原子力も設備容量を三倍に拡大する目標が示されるなど、脱炭素電源投資の取組も必要になっています。
また、自然災害対策やエネルギー価格の安定にも注力し、持続的な経済成長を目指すことが重要であると考えられます。
まず、エネルギー安全保障の目的ですが、エネルギー価格の安定とエネルギー供給支障の未然の防止、また、供給支障発生の際の影響の最小化と早期復旧です。その強化には多面的な方策が必要であると考えられます。
具体的には、省エネルギーの推進による効率的なエネルギー利用、エネルギー自給率の向上による海外依存度の低減が挙げられます。さらに、輸入資源の分散化や備蓄の強化などを進め、資源調達リスクを低減することも重要です。加えて、地震や台風、大雨など、自然災害に強いエネルギー供給インフラの整備も不可欠な課題になります。
こちらのスライドは、最近のGDP上位十か国のエネルギー自給率を示しています。
御覧のとおり、日本の自給率は最も低く、海外のエネルギー情勢に大きく左右される状況です。持続的な経済成長を維持するためにも、原子力や再生可能エネルギーの活用などによるエネルギー自給率の向上が重要であると考えられます。
次の二枚のスライドでは、エネルギー価格の動向に関して説明いたします。
まず、こちらは世界の原油価格の推移です。
原油価格は、需要と供給のバランスに加え、その時々の世界情勢に大きく左右され、御覧のとおり、これまで大きな変動を見せています。特に、価格が高騰した際には世界経済への影響が懸念されます。日本のように資源を海外に依存する国では、その影響が顕著となります。また、自動車社会であり世界最大の石油消費国のアメリカでも、石油価格高騰は社会問題としてしばしば注目されてきました。
一方で、石油生産国にとっても、価格変動が余りに激しく、予見可能性が低下すれば、安定した収益の見通しが立てにくくなり、探鉱や開発への投資が進みにくくなるといった課題もあると考えられます。
こちらは、日本の燃料輸入価格と電気料金の推移です。
ウクライナ危機では、天然ガス、LNGの輸入価格が二〇二〇年初頭に比べ一時約三倍、石炭、一般炭は四倍以上に上昇し、電気料金も大幅に高騰しました。同様に、欧州でも、ウクライナ危機前に天然ガスの約四割をロシアに依存していたため、エネルギー価格が急騰しました。
今後も、世界的な脱炭素の流れで化石資源への開発投資が不足すれば、燃料価格の高騰リスクが高まる可能性もあります。そのため、価格高騰への備えが重要だと考えられます。
次に、エネルギー価格に大きな影響を与える世界のエネルギー需要の動向について説明します。
先進国ではエネルギー消費の伸びが頭打ちとなる一方、グローバルサウス、アジア新興国では消費が増加しており、今後もその傾向が続くと予想されています。このため、エネルギー安全保障への対応が一層重要になります。特に、国際的な電力需要の増加や環境意識の高まりを背景に、天然ガス需要が増加しています。アジアでは、中国やインドを中心にLNGの輸入が増加傾向にあり、LNGの安定供給が重要な課題と考えられます。
続いて、エネルギー供給について説明します。
こちらは、日本の化石燃料輸入先の内訳です。
原油は中東から九割以上輸入し、LNGや石炭はアジア太平洋地域に依存しています。例えば、LNGはオーストラリアやマレーシアなどからの輸入が中心ですが、一部の国では経済発展による内需の増加により将来的に輸出余力が低下する可能性もあります。さらに、ウクライナ危機後の不確実な世界情勢を踏まえると、日本も輸入先の動向把握を徹底し調達先の分散化を進めるなど、エネルギー安全保障の強化が重要であると考えられます。
こちらは、日本とも関わりの深いエネルギー生産国であるアメリカの動向です。
シェール革命により、アメリカは世界最大の産油国、産ガス国となりました。シェール革命は、原油輸出解禁や、石炭からガス火力へのシフトと二酸化炭素排出抑制、また関連産業の活性化を促し、国際的にはOPECプラスの枠組み形成の契機にもなるなど影響を与えました。
アメリカのエネルギー自給率は一〇〇%を超え、オーストラリアやカタールなど主要なLNG輸出国となっています。石油自給率も向上し、中東依存度も大幅に低下しています。このような状況の中、日本にとってアメリカからのLNG輸入は、価格動向の注視も必要ですが、輸入先の分散化にも貢献すると考えられます。
次の四つのスライドでは、脱炭素電源の動向を紹介します。
世界全体の再エネの動向ですが、気候変動への取組の流れの中でクリーンなエネルギー源へのシフトへの機運が高まり、コスト低下などを背景として、太陽光発電や風力発電の導入が国際的に拡大しています。
また、国際エネルギー機関による世界での二〇五〇年までの二酸化炭素排出ネットゼロ実現のシナリオでも、再生可能エネルギー、太陽光発電や風力発電、そして原子力の拡大が必要であることが示唆されており、二〇二三年比で、設備容量ベースで二〇五〇年までに原子力を現状比二倍、太陽光や風力発電でも大幅に拡大するための投資が必要との推計も見られます。
次に、再生可能エネルギーの特徴と課題ですが、特徴として、ゼロエミッションを実現し、エネルギー自給率の向上や非常用電源としての活用など、多くの利点が挙げられます。特に、太陽光発電などはそれ自体の発電コストが安価になりつつあり、サプライチェーンの脱炭素へのニーズの高まりなどから、企業による再エネ調達も進んでいます。
しかし、課題もあります。電気出力の変動や不確実性への対応、大量導入のための送配電設備の整備や調整力の確保、さらには土地の確保も必要です。また、技術の国産化も重要な課題です。こうした課題解決を進めながら導入拡大が期待されます。
次に、原子力です。
ウクライナ危機後のエネルギー、電力価格の国際的な高騰やエネルギー安全保障の強化の面で、世界的に原子力が再評価されています。原子力は、天然ウラン一キログラムが石油十四トンに相当するように、エネルギー密度が非常に高く、少量の燃料で長期間発電できるため、エネルギー安全保障に大きく貢献します。また、ゼロエミッションで地球環境問題の対応にも貢献します。電力コストの抑制や電力系統の安定化にも役立ち、特に燃料価格高騰時の影響を受けにくいというメリットがあります。さらに、次世代革新炉では、安全性の強化や再エネとの共存を目指して、出力調整機能の開発も期待されています。
一方で、課題として、放射性廃棄物処理や安全性の確保、国民の信頼醸成が大前提です。新たな原子力建設に向けた投資環境の整備、また原子力人材の育成も大変重要な課題です。これらを踏まえ、原子力の適切な活用が求められます。
最近では、デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーションの進展により、今後十年間で日本の電力需要が増加に転じる可能性が指摘されています。特に、データセンターや半導体工場の建設が電力消費を押し上げると予想されています。この需要増加に対応するため、安定供給と脱炭素の両立を目指した十分な電源投資が必要となります。デジタルトランスフォーメーションなど、電気が様々な産業や社会活動を支えるエネルギーとなり、電気の社会的な価値が一層高まる可能性を踏まえれば、適切な電力供給力の確保がますます重要になると考えられます。
また、視点を地域に移しますと、地域のエネルギー安全保障、いわゆるエネルギーレジリエンスも大事な課題です。近年、地震や台風、大雨など、自然災害が深刻化する中、地域の安定供給対策がますます求められています。
エネルギーレジリエンスとは、平時には安定的なエネルギー供給を維持し、有事には供給障害の影響を最小限に抑え、迅速に復旧する能力を指します。これは、二〇二〇年のAPECで合意されたエネルギーレジリエンス原則でも示されています。自然災害に対して、ハード面の強化とソフト面の体制整備を通じて地域社会のエネルギー安定供給を守ることも大変大事です。
最後になりますが、エネルギー安全保障の方策を考える際には、脱炭素との両立を考慮し、経済合理性を踏まえた多様な技術の選択が重要です。省エネルギー技術、原子力、再生可能エネルギーなど、エネルギー安全保障と脱炭素の両立に資する技術が望まれます。
ただし、Sプラス3E、安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性を全て満たす単一のエネルギー源はいまだ存在せず、各技術には課題があります。例えば、太陽光や風力は出力の変動、原子力は社会受容性が課題となります。Sプラス3Eの視点に加え、技術動向や情勢の把握、イノベーションの可能性、技術自給率、国産化の可能性などの諸要因も考慮し、透明性のある議論を通じた技術選択とエネルギーベストミックスの構築が大切であると考えております。
最後のこちらは、本日の内容に関する私の論文一覧でございます。
私からは以上となります。御清聴、誠にありがとうございました。