森本英香の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(森本英香君) 森本でございます。(資料映写)
今日は、お招きいただきまして、光栄でございます。
数年前まで役所におりましたので、慣れているつもりでありましたけれども、大変緊張してございますので、よろしくお願いいたします。
私の方からは、二点の観点から脱炭素社会に向けた方策についてお話し申し上げたいと思います。
一つは、需要面、ライフスタイル面での取組の一層の推進でございます。現在、既に供給面を中心にこのことを進められております。ただ、政府の資料でも、例えば、今後、規制・制度的な措置で市場の創出ということで、もちろん需要面も視野に入れて取り組まれていますけれども、これからこれを加速化する必要があるということで、この視点から申し上げたいというふうに考えてございます。
もう一点は、脱炭素とサーキュラーエコノミー、資源循環、それからDX、いわゆるデジタルトランスフォーメーションとの融合の必要性について強調させていただきたいというふうに考えています。
まず、今進められていることでございますけれども、シンプルに、若干独断でまとめさせていただいていますが、技術開発、イノベーション、これを進めてカーボンニュートラルの取組を進めましょうと。今までの化石燃料から水素あるいはアンモニアに転換をして進めていこうと。そのために、二十兆円の政府支援、これをセルモーターにして百五十兆円の官民投資を動かしていこうと。こういう動きになっているというふうに理解はしてございます。
この図で申しますと、この最初の十年間に百五十兆円の官民投資を実現をして、その間にイノベーションを進めて、それ以降、その新しいエネルギーを基に社会を構築していくと、こういうふうな絵柄かと思います。
これがその詳細になるわけですけれども、二十兆円規模の公共資金の投資を基に百五十兆円の官民投資を実現すると。上にありますように、適切な規制、支援を一体的に推進する、つまり、いわゆる技術開発で供給面を変えていくということに加えて、規制的な措置も入れて需要面も変えていくという視点で動かれていると思いますが、順番からいうと、やっぱり供給面中心なんだろうというふうに思います。若干私のバイアスが掛かっておりますけれども、鉄鋼であるとか化学であるとか、そういういわゆる多排出産業、ハード・トゥー・アベートという、産業からのCO2の排出が多いものですから、そこに力点が置かれているということであろうかと思います。
このGX推進戦略に基づく支援策においても支援の三条件というのがございまして、基本条件プラス産業競争力強化・経済成長、そして排出削減と、この真ん中のところがまさにその産業の構造を変えるという視点にあるかと思います。
詳細に見ますと、A、B、Cとございますけれども、AとかBはどちらかというと供給面の対策と、Cはまさに需要面も視野に入れて取組をするというのはございますけれども、やはり何といっても供給面に中心があるんだろうというふうに認識をしてございます。
もちろん、供給面を変えて、例えば自動車が環境に優しい自動車になる、あるいはそういうことになれば、それによって当然その需要側も変わるわけなので、需要面に、供給面の対策が需要面に効果がないということではありませんけれども、そればっかりではやはり足りないんだろうと思います。
つまり、需要側の対策に限界があって、ライフスタイルの転換というのも考えていかなくちゃいけないだろうというのが一点。それから、後で申しますカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーと関係あるんですが、クリティカルマテリアルによる対外依存による脆弱性もあるだろうと。更に言うと、物の生産、消費ということが基本的には炭素排出をもたらしますので、その視点はやっぱり不可欠なんだろうというふうに思います。最後の問題は一番根本的な問題ですけれども、この視点も置いておく必要があるだろうというふうに考えてございます。
そこで、二つの視点からお話をさせていただきたいというふうに考えてございます。
需要面、ライフスタイル面での取組ということでございますれば、まず、今既に取り組んでおられるところがございます。例えばカーボンプライシング、これによって炭素の値段というのが価格に組み込まれると。これはまさにその需要側を変えていく取組として非常に重要なものだろうというふうに思います。これがこれから動き出しますと。それからもう一つ、このGX製品自体の付加価値の向上ということで、GX価値の見える化、あるいはGX製品、サービス調達のインセンティブ付与、あるいは調達コストの低減という視点を持って取り組もうとされているということはまず間違いありませんと。それを更に加速していく必要があるだろうというのが私の申し上げたいことでございます。
水素につきましては、既に法案、法律を国会でまさに通していただいて、この価格差補填支援というのが盛り込まれています。これは供給側に対する取組でもございますが、同時に需要創造にもなるものでございます。それ以外にも、例えば産業とか発電事業における水素利用に向けた補助金であるとか、あるいは運輸、輸送や交通における水素の活用ということが取り組まれているというものでございます。
では、公共調達についてはどうかということなんですが、これは、日本にはグリーン購入法というのを作っていただいております。その中で、その基本方針の改定が今年の一月に行われまして、例えば鉄に関して言うと、基準一、つまり望ましい基準ということなんですけれども、削減実績量が付されている。これは鉄鋼連盟の方でグリーンスチールの基準というのを作られているんですけれども、それが証書として付いているということが公共調達における要件というふうに位置付けられているというものでございます。GXリーグでも率先的に購入をしようと、こうされています。
ただ、一言申し上げたいのは、この法律上の書きぶりなんですが、この義務化は余りされておりませんで、選択するよう努めなければならないというのが一番強い言い方になってございます。もちろん、中小企業とかいうことを考えますと、義務化することによるリスクというのは非常に大きいので、そこは非常に悩ましいものでありますが、後ほど御紹介するヨーロッパの取組では、物によってはですけれども、物によっては義務化をして、それによってその需要を高めていくという取組もありますので、その辺は考える余地があるのかなというふうに考えてございます。
ライフスタイルの変革ということなんですけれども、実はフランスでは気候変動対策・レジリエンス強化法というのが二〇二一年にできてございます。これは、先生方御承知のように、イエロージャケットという、いわゆるガソリン代が上がるのに対して非常に反対運動がありましたので、低所得者に対する配慮というものを考えて、その低所得者の経済負担にならないような、それに配慮したような削減方策というのを考えようと。そのやり方が若干ユニークでして、若干、直接民主的なんですけど、市民百五十人を集めてそこでアイデアを出してもらって、それを法律にすると、こういう取組がなされてございます。
全部で百四十九項目あるんですけど、例えばということで申し上げると、こういう化石燃料に関する広告を禁止する。例えば、走行一キロメートル当たり百二十三グラム以上というのはガソリン車で、ハイブリッドはそれより下なんですけれども、そういったものに対する広告を禁止するとか、あるいはユニークなところでは、量り売りを入れなさいとかですね、非常にユニークなものもたくさん入ってございます。飛行機でも、二時間半以内だったら飛行機は使うなとかですね、そういうのも入ってございます。
こういう取組はなかなか日本ですぐできるという感じはちょっと私はしないんですけれども、そういった意味で、今政府の方では地域に着目した取組というのがされています。このエネルギーの融通であるとかあるいは資源の融通といったときに、余り大きい規模ではなかなか難しいんですけれども、地域で目の届く範囲で進めていくということは非常に意味があるんじゃないかと思います。地域には都市部もあれば住宅地もある、農村や漁村もあると。こういったものについて、需要供給という切り口じゃなくて地域に着目して有機的な連携を進めるというのは、まさにこれから可能性があるんではないかというふうに考えております。
これは今進められているものでありますが、私が自治体の方と、首長さんなんかとお話ししたときには、なかなか地域脱炭素というのは地域における課題のその優先順位は余り高くないと。そうすると、地域課題のソリューション、例えば社会問題、防災あるいは農業の振興とかですね、そういうものに役立つという絵柄をつくることはとても重要だというふうに思います。これは一つの例でございますけれども、こんなパターンがあるのかなと思います。例えば、営農型の太陽電池、太陽光発電というのは、千葉県の匝瑳市で進められているものですけれども、電気と農業の二毛作で耕作放棄地なんかを活用していこうと、こういうものであります。
例えば、地域での取組にも限界というか課題がございます。既に今現在、自治体だけが取り組むとかいうことではなくて、いろんな連携の取組はされています。例えば神戸市ですと、例えばここの自治体協議会であるとか商工会議所、あるいは銀行といったところが連携して取り組むというふうになされております。こういった連携がとても重要かなというふうに思います。
これは、面的に広げていくことができるかどうかがこの地域の取組の大きな課題、ポイントなのかなというふうに思います。地域ならでは、産業、業務、家庭、運輸の垣根を越えた連携、例えば、エネルギー消費の六割ぐらいは熱なので、熱の融通が考えられるんじゃないかというのはあります。
それからもう一つは、系統電力との連携なんですが、幹部の方はやはり再エネ重要だと、日本の自立のために重要だという認識がもう定着されていますけれども、やっぱり現場サイドでは再エネに対する偏見があるようでございます。といったものもやはり変えていく必要があるのかなというふうに思ってございます。
二番目に、サーキュラーエコノミーとそのDXとの融合ということなんでございますけれども、これヨーロッパが非常に進んでいるんですけれども、こういう、この数字にすごく意味があるわけじゃありませんが、再生エネルギーを利用、使うことによって脱炭素化というのは多分五五%ぐらいだと、残りの四五%は製品政策、製造とか利用の循環化とか、あるいはその合理化といったことによるんじゃないかと。これは一つのレポートのアウトプットであります。オランダでは三九%と言っております。ざっくり申し上げれば、四割ぐらいは、やはりサーキュラーエコノミーと申しますか、その資源政策も含めて考えなくちゃいけないんじゃないかということかと思います。
二つの側面があると思います。一つは、今脱炭素化を進めようとすると希少金属が必要だ、じゃ、そうした意味で、そういったものを確保しなければ脱炭素はできないという側面。それからもう一つは、もう少し明るい側面ですけれども、むしろそのDXをうまく活用することによって新しいビジネスと新しい産業というのが成立するんじゃないかと、こういう二つの側面があると思います。
ヨーロッパはそれを非常に強く認識していまして、このデマテリアリゼーションというのを進めております。この下にあります、よりクリーンで競争力のあるヨーロッパのための新しい循環経済行動計画と、こういうのを打ち出しまして、それに基づいて取組を進めているというものであります。これも同じで、要するに、いわゆるその資源の採取と加工というものを少し減らさないと、温室効果対策も難しいし、生物多様性対策も難しいと。だから、これを一体的に進めるんだと、こういう考え方であります。
実際に、このマスタープランであるグリーンディール、その下に新循環経済行動計画があって、それに基づいた個別規制がどんどんつくられています。このエコデザイン規則というのは既にできておりますし、電池規則というのもできております。それ以外に、化学物質対策の産業廃棄物枠組み指令とかRoHSとかREACHとか、そういったものもどんどんできていると、こういう形になっています。
ちょっと電池規則だけ御紹介したいんですけれども、電池規則も非常に、中身は非常に広範にわたっておりますけれども、この電池規則の中で、ここですね、最低限リサイクル含有水準というのがありまして、要するに、電池を作るときにコバルトとか鉛とかリチウムが必要ですと、そのうちの、例えばコバルトですと、一二%はリサイクルコバルトでないといけないというふうにこの電池規則ではなっているわけです。
これはどういう意味があるかというと、まず、リサイクルする側からすると、必ずこの市場があるということが明確になりますので、投資をしてリサイクルをどんどん進めていこうという形になりますし、生産者、この自動車側というのは、電池側も生産するときの配慮というのがなされると、こういう形で、ある意味市場をつくる性格があるのかなと思います。ある意味、非常に規制的な措置でこういうことを進めていこうということをされていると。
もう一つありますのが、このサーキュラーエコノミーというのを進めるときには情報の共有というのはとても重要だということで、バッテリーに関してはバッテリーパスポートというものを要件にしています。
つまり、ここに下にたくさん書いてありますけれども、いろんな情報を共有できるシステム、具体的に言うと、例えばクラウドの中に情報を入れておいてQRコードで読み取れるような、こういう仕組みを考えられているようですけれども、こういう形でデータを共有しようと、そうしなければなかなかこのサーキュラーエコノミーを実現できない、こういう発想だというふうに考えています。
このパスポート、バッテリーについてだけじゃなくて、いろんな製品についてこのパスポートという考え方が盛り込まれようとしているんですけれども、これにはもちろんサーキュラーエコノミーを進めるという意味もございますけれども、もう一つは、こういうデータをしっかり握ることによって、言わばそのアドバンテージを取ろうと、こういうずるい、ずるいとは申しませんが、まあヨーロッパらしい、このルールメーキングを優先することによってアドバンテージを取ろう、こういうのが、ヨーロッパにはこういう姿勢があるということであります。非常に、何というんですか、多面的で、かつ、たくましい取組かなというふうに思います。
そういう意味でいうと、日本の取組は若干まだ遅れてはいるんですけれども、ここ最近、非常にこのことが動いておられまして、例えば昨年八月に第五次の循環基本計画、閣議決定いたしました。これは元々あった計画の第五次ということなんですが、今回、いわゆるその資源安全保障という視点、経済安全保障という視点も入れて、国家戦略という非常に、元々国家戦略ではあるんですが、格の高いものとして位置付けられたという形になっているかと思います。
また、その取組を進めるに当たって、各省がばらばらにやるんじゃなくて、できるだけ連携しようということで移行加速化パッケージとまとめられている、これは非常に良い取組だというふうに思います。ヨーロッパに対抗する意味でも必要な取組なんじゃないかなというふうに思ってございます。
大体以上なんですけれども、ここから先は、ある意味、問題提起として受け止めていただければ有り難いと思うんですが、先ほど、大量生産、大量消費、大量廃棄という社会構造そのものの突っ込みはどうするんだということをちょっと申し上げましたけれども、これ今度の環境基本計画でも引用されているんですけれども、二〇〇〇年の省庁再編の際に、いわゆる、堺屋太一経済企画庁長官が、これからは規格大量生産型じゃなくて、もっと知価の重要性、付加価値の重要性で考えなくちゃいけないんだと、それは産業構造だけじゃなくて、教育とか地域構造、情報文化の在り方まで考えていく必要があるんじゃないかと、こういう指摘をされたわけであります。
じゃ、今日どうかといったときに、このカーボンニュートラルであるとかサーキュラーエコノミーであるとかあるいはDXですね、デジタルトランスフォーメーションというのは、ある意味、この産業構造を変え、社会構造を変えるツールであり、チャンスなんじゃないかなというふうに思います。
これ、みずほ銀行がまとめられたものでありますけれども、これからは産業融合、今までの産業分類というのがある意味解けるんじゃないかというふうなことを指摘されています。
あるいは、これは寺島実郎さんの資料でありますけれども、日本は今、分岐点にありますと、今まではこの真ん中の工業生産力モデルというもので進められていたけれども、これから先は二つのハイブリッドだろうと。一つは、右になるんですか、イノベーションで、引き続き世界に冠たるというか、力を持って世界に働いていくという側面、それからもう一つは、ファンダメンタルズと書いてあるところですけれども、やはり社会の価値というんですかね、国民の安全と安定のための産業創生といった視点、この二つをうまく組み合わせた国づくりというのが必要なんじゃないかという御指摘だというふうに思うんですが、ある意味、この三つの、サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーションというのは、こういうものを進めていく非常にいいツールであり、いいチャンスなんじゃないかというふうに考えてございます。
済みません、雑駁でございますが、以上でございます。ありがとうございました。