磐田朋子の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(磐田朋子君) 御紹介ありがとうございます。芝浦工業大学の磐田と申します。(資料映写)
本日は、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、地域における脱炭素の実情と実例といったところを御紹介してまいりたいと思います。
まず、私の自己紹介ですけれども、今、本学の方で、SDGsの推進であったりとか、理工系分野における女性活躍を中心としたダイバーシティー、DE&Iの推進なんかをさせていただいているんですけれども、元々の研究はエネルギーマネジメント研究というところで、再生可能エネルギーが大量に導入されてくる時代では需要側がいかにそれを制御するかといったところが必要になるだろうというところで、行動変容、デマンドレスポンスと呼ばれるところが研究分野となっております。
こうした研究背景に基づきまして、現在、環境省の方で実施されている脱炭素先行地域の評価委員とか、あるいは地方公共団体の地球温暖化対策実行計画の策定マニュアルなんかにも関わらせていただいておりまして、また、様々な自治体さんの方の環境審議会とかで、割と地域に近いところでこういった脱炭素の検討をさせていただいております。
今日はこちらのような内容でお話しさせていただこうと思うんですけれども、まず全体の基本方針からちょっと話してまいりたいと思います。
もう皆様御承知かと思うんですけれども、日本に入ってくるエネルギーの大体半分ぐらいが電力で、残り半分ぐらいが燃料とか原料、いわゆるガソリンであったりとかプラスチック原料であったりとか都市ガスとか、そういった燃料に使われているという状況ですので、どうしても脱炭素社会というと太陽光発電とか風力とか電力の再生可能エネルギーに発想が偏りがちなんですけれども、このように客観的に見ると、電力だけではなくて、そうした燃料、原料の脱炭素化も非常に重要となってきております。この燃料、原料がどのように使われているかというと、最終利用先の方では約七割が熱とか燃料として使われているという状況です。
この燃料、原料をどこまで脱炭素できるんだろうかといったところをちょっと検討してみますと、大体四割ぐらいが産業部門で使われていて、特に鉄鋼とかセメントとか、高温の熱が必要なところで不可欠になってきているという状況です。
ただ、その一方で、例えば家庭部門であればオール電化住宅なんかも出てきておりますし、そこで使われているエネルギーは都市ガスとか給湯とか割と低温熱をつくるのに使われているケースが多いので、この辺りが脱炭素、つまり化石燃料から電化の方にシフトをして、さらにそこの電力を再生可能エネルギーで導入するといった形で脱炭素化が進められるのではないかというふうに考えているところですし、輸送に関しても、御承知のとおり、電気自動車はもう技術的には出てきているという状況ですので、こうしたどうしても変えられない、燃料から変えられないところに関してはなかなか化石燃料からの脱却難しいところはありますけれども、低温熱であったり電化が進められるところに関してはどんどん脱炭素化を進めていこうというのが基本的な方針となっているかと思います。
また、産業に関しても、先ほどどうしても変えられない高温熱がありますよという話しましたけれども、こちらがヒートポンプ・蓄熱センターさんの方でかなり細かく産業部門の熱の使い方について調査されておりまして、低温熱、つまりは、洗浄であったりとか空調であったりとか百五十度以下の低い温度帯の熱であれば電化が可能であるといった試算も出ておりまして、全体としても、現在、熱として産業で使われているものの二七%相当のものが電化できるのではないかといった試算も出ているという状況です。
このような形で、できるだけ省エネを進めましょうというのは大前提であるんですけれども、その次のステップとしては、やはり電力だけではなく、こういった燃料、原料といったところの特に低温熱を中心とした電化を進めてまいりましょうと。どうしてもそういった電化が進められないような原料あるいは高温熱に関しては、何かしら水素のような形で脱炭素の燃料を入れていきましょうといったことが今回の第七次エネルギー基本計画でも変わらない大方針となっているという状況かと思います。
この電化に関しては、じゃ、再生可能エネルギー、もう御承知のとおり不安定な電源ですので、これを進めていくことで経済合理的に大量の蓄電池を入れなければならないといった試算も出ているという状況の中で、一つ対策として考えられているのが、私の専門分野でもございます需要側での調整という形になります。
例えば、再生可能エネルギーの発電量に合わせて需要側が空調とか照明を自動的にコントロールしたり、あるいは、欧米では結構進められているんですけれども、貯湯槽ですね、給湯が、大体電化がアメリカなんかだと半分ぐらい進んでいるんですけれども、熱を、電気を熱としてためたりすることで、余ってしまいがちな再生可能エネルギーを熱としてためるといった形で調整したりといった形も出てきております。蓄電池を最終的には調整力にというのが大前提ではあるんですけれども、なかなか費用的に厳しい現状では、このような様々な調整力の創出というものが必要になってくるであろうというふうに考えております。
このように、日本政府の大方針と様々な対策について、実際に、じゃ、どこでやるのかというと、それは地域でやることになります。地域の方では、このような国の大方針に沿って地球温暖化対策の実行計画を策定する義務がございます。大規模な都市では、その地域全体の脱炭素化に関して計画をする区域施策編と呼ばれる実行計画を策定する義務があるんですけれども、なかなか、それが小規模自治体の方になりますと、マンパワーが不足していたり、あるいは基礎的な知識が不足していたりといった課題もございまして、なかなか小さな自治体ではそこの策定というのが難しいというのが実情かなというふうに思っております。
こうした様々な人口の自治体さんからいろいろ御相談を受けまして、どのような形でこの脱炭素の計画を策定したらいいのかということで、私の方からちょっと助言差し上げていることをかいつまんで御説明したいと思います。
まず、脱炭素に関して、どうしても対策を練ろうと思うと、節電行動をお願いしますとか、あるいはちょっとお金が掛かる省エネ機器に買い換えましょう、あるいは太陽光発電入れましょうといったコストが掛かるものに発想が行きがちなんですけれども、もう少し客観的に見て、そもそもCO2削減というのはどのようにして実現できるのかというのを構造的に考えるというやり方を環境省の方のマニュアルの方でも掲載しております。それがこちらにある茅恒等式というものなんですが、幾つか、CO2の排出量を項に、四項に分けて、一項だけを例えば削減したいとなると、例えば最後のCO2排出量、エネルギー当たりのCO2排出量を削減しようと思うとかなり費用を掛けてやらなければいけないところを、少しずつ、それぞれの項に関して二割ずつとか削減することによっても同じぐらいの削減量が得られるんだというところを知っていただくというお話をさせていただいております。
例えばなんですけれども、これがCO2の削減の構造に関するちょっと具体的な書き方になっているところなんですが、まず人口を減らすというのはなかなか難しい中で、じゃ、人口当たりの生活の満足度を減らしてみましょうと、それは要するに、生活の満足度を削って、努力の省エネによってこのCO2を削減しましょうと言っている対策がここに相当する対策になります。この項を下げるとなると、人によっては生活の満足度を下げてしまうという対策になりますので、なかなか環境に関心のない無関心層には取り組んでいただけないような無理のある対策になっているということがございますので、もう一つ、次の対策が考えられます。それが、生活の満足度、快適性を維持しながらもエネルギーの必要量を減らす対策になります。必要量を減らした上で、その必要量を賄う実際のエネルギー消費量を減らしましょうというのがいわゆる省エネ家電であったりとか省エネ対策という形になります。このような段階を経て、最終的にエネルギー消費量が減ったとして、最後の最後にどうしても必要となってしまうエネルギー消費は脱炭素のエネルギー源で供給しましょう、つまりは再生可能エネルギー等々ですね、そういったもので供給しましょうという、段階を経た対策が必要になるというふうに考えております。
この中で、どうしても自治体さんは、この最初の生活の満足度を削る対策であったり、緑色あるいは青色の省エネ対策、再エネ導入といったところに偏りがちなんですけれども、二番目のこの生活の満足度を維持しながら必要量を減らすという対策にも目を向けましょうということをお話しさせていただいております。
例えばですけれども、断熱効果が高いおうちを促進したりとか、パッシブ建築と言われる、できるだけ自然のエネルギーを利用したりする建築を促すような対策、これは生活の快適性、満足度を維持したままエネルギーの必要量を減らす対策に相当します。
そのほかにも、いわゆるヒートテックであったりとか、吸湿発熱の技術開発といった技術開発系のものも、こういった快適性を保ちながら必要量を減らすといったところに相当するかと思います。
そのほかにも、人によっては、例えば、もう子供が巣立っていってしまって、大きな一戸建てに一人で住んでいらっしゃる高齢者の方を集合住宅の方に移住をする、住み替えをする、促進を促すといったような対策であったり、あるいは、そもそもエネルギー使わなくても私は幸せですよと思えるような価値観に関する教育を実施するといったことも、こうした生活の満足度を維持しつつ必要量を減らすといった対策に相当します。
そのほかにも、例えば、町のコンパクト化であったり、シェアリングエコノミーを推進しましょう、あるいはIT技術で物流の無駄を減らしたりするといったことも、どれもこのコンパクト化であったり、DXを使って生活の満足度は維持したまま、エネルギーをそもそも使わないでも快適な生活にしましょうといった発想の転換につながる対策になりますので、自治体の方々には、短絡的に、何というか、よく世の中で言われているような対策だけではなくて、抜本的に、そもそも快適性を保ちながらエネルギーを使わない町づくりであったりとか対策というものもあるんですよといったことをお話しさせていただいているという状況です。
このように、利便性、快適性を高める仕組みとか町づくりを計画、支援する対策を考えることによって、無関心層を含む多くの市民の方に受け入れていただけるような施策提案につながるというふうにも考えられますし、またこうした新しい考え方が技術とか仕組みのビジネスのイノベーション創出にもつながるといったところで、自治体さんにおかれましては、こういったビジネスを支援する対策を、補助金という限られたマスで支援するだけではなくて、地域に広がりのある対策の支援をお勧めしているという状況でございます。
このような対策について、例えば、先ほど森本先生からもお話がございましたけれども、市民会議のような形で、どんな形であれば快適性を失わずにエネルギーの必要量を減らせるんであろうかとか、あるいは地域の脱炭素に向けて自分たちも責任を持って進められる対策は何だろうかといったことで、こういった気候市民会議、開催されておりますし、私自身もちょっと関わっているんですけれども、日本においても様々な自治体で今気候市民会議、ミニパブリックスという人口比に応じて無作為に集めた市民団体、市民会議というものを開催したりといった形で様々な対策を練っているという状況です。
ただ、その中で、やはり無関心層をどうやって取り入れるのか、そういった方々に行動変容を促すのかといったところが議論になることがございます。私、よく市民会議でこうした質問をさせていただくんですけれども、地球温暖化問題は深刻な問題だと思いますかとか、一人一人の行動変容は重要だと思いますかといったことを手を挙げていただくと、ほとんどの全員の方がそう思いますという形で手を挙げていただくんですけれども、次の質問で、じゃ、あなたのおうちでは再生可能エネルギーの電力契約に切り替えましたかというと、私から大体目をそらす方がほとんどという状況でございます。
つまりは、頭で分かっていても行動に移すかどうかというのはまた別の問題という状況でございますので、ここをクリアする学術的な根拠として、例えば行動経済学であったりとか心理学の要素を取り入れた対策を実際に自治体等々、地域で打っていくということがとても重要なポイントになっております。
例えば、よくある情報提供、地球温暖化深刻な問題だよとか、再エネ、省エネというのが大事だよといった情報提供をすることによってもちろんその環境への意識というのは高まるので、それがベースになることは間違いございませんが、それだけではなかなかアクションにつながらないという状況です。
アクションにつながるもののその他の要素としては、実行可能感であったりコスト感あるいは規範感といったものが複合的に要因して初めて人はアクションに移すということが、これ有名な広瀬先生という社会心理学の先生が提唱したモデルになるんですけれども、分かっておりますので、こういったアクションにつながる要素、例えば仲間と一緒に身近に自分もできて、さらに自分に何かメリットがあると思える、そういった提案を具体的に提示して実際の行動を促すといったことも重要になってきております。
この中でもコスト感に関しては、例えば経済的な負担と経済的な利益だけをてんびんに掛けるのではなく、先ほども森本先生の方からもお話ありましたけれども、もう少し多面的な便益、例えば安心、安全な、例えば燃料費の高騰におびえずに済む、自給自足できる再生可能エネルギーを使うことによるリスクの低減であったりとか、あるいは健康的な暮らし、断熱を入れることによって健康的な暮らしとか、様々な非経済便益とこの経済的な便益を組み合わせることによって脱炭素化を進めていくということがポイントになっております。
ただ、人によって何にその非経済便益、重きを置いているかというのはそれぞれ多様ですので、画一的な何か一つの対策で済むというものではなく、多様な市民がいるという大前提で、人々、いろんな人に訴えかけられるような多様な便益を、何というんですかね、取り込んだ対策というものが大事な状況になっております。
その中の一つとして、環境省の脱炭素先行地域で重要視しているのは、単にその地域に再エネを入れるということだけではなく、様々な無関心層であったり市民の方に合意を得ながら、これを進めるに当たって非経済便益、例えばこの場合には地域に裨益する対策と一緒に脱炭素化策を入れましょうといったことを重視して選定させていただいているという状況です。
この選定におきましては、地域内でエネルギーの費用を経済循環することの利益の一部をそういった地域課題の解決にも使いましょうといった形で、地域にメリットのある、地域住民の人たちが再生可能エネルギー、自分たちの地域に入れて良かったねと、必要だよねと思ってもらえるような対策を組み合わせましょうといったところを重視しております。現在、八十一提案まで採択が進んでおりまして、二〇二五年までに百か所つくろうということで、本日も実はこの後、選定委員会があるという状況でございます。
例えば、この先行地域で選ばれております長野県の小諸市さんの事例を御紹介しますと、小諸市さんでは中心市街地の空洞化が進んでいるという地域課題がございました。元々この地域では、立地適正化計画を立ててコンパクトシティーの実現に向けて動き出しておられたんですけれども、それによって地域の経済活性化したいという狙いがあった中で、さらに、この地域の中心部にある地域熱供給の蓄熱槽を活用して、不安定な再生可能エネルギーを地域で吸収したり熱として利用したりすることによって、地域で使い切る仕組みを導入するという形の提案をされております。
また、この地域の中でこういった蓄熱槽とか蓄電池、再生可能エネルギーが入ることによって、また自営線と呼ばれる自分の自前の電力網で各建物をつなぐことによって、災害時にでも避難所において自立的に再生可能エネルギーで運用できるような地域のレジリエンスを高めるという狙いもこの提案の中に入っておりますし、また、これを地域内の金融機関と連携をして、小売電力会社をこの地域の中で、何というか、提案をして、そのエネルギーコストを地域の事業者さんにまた還元され、地域の中でそのエネルギー費用が経済循環するような仕組みといったものもここで取り入れているということで採択がされた地域になっております。
また、そのほかの地域課題としても、例えば先ほども御紹介ありましたけれども、千葉県の匝瑳市さんのこのソーラーシェアリング、営農型太陽光発電なんかは、耕作放棄が進んでいる農業においてなかなか後継者が見付からない中で、農業以外にも発電収入という形で二つの収入源を得ることによって、農業、農家の収益を安定化させて後継者をつくり、そしてまた農地を維持しようといった狙いがあって採択された地域になっておりますし、この岡山県の真庭市さんでも、林業、元々盛んな地域ですけれども、さらに、広葉樹を利用したこのバイオマス発電とか地域の活性化といったところを狙いにしていらっしゃいます。また、この県が広域的な視点から脱炭素化を主導するといった取組も、秋田県さん、熊本県さんの方でも盛んに行われているという状況でございます。
このような形で八十一地域、採択はしたんですけれども、ただ一方で、既に走り出した地域では、実際にやろうと思うと様々な地域課題に直面しております。
例えばということで御紹介しますと、愛知県の岡崎市さんの方では、この岡崎さくら電力という自治体が五一%出資した地域新電力が中心となって地域の再生可能エネルギーを地域内循環させようということでスタートしたんですけれども、実際蓋開けてみると、昨今の燃料費の高騰のあおりを受けて、この地域新電力さんが、家庭とか一般の商業施設とか、小売に対してはこの産業、ビジネスを展開するのが難しいと、つまり、地域内経済循環するはずのこの主体がなかなかそのビジネスを広げるということが難しいということが分かったという状況です。
走り始めてからこういう課題に直面した中で、じゃ、どうしましょうかということで御相談して、隣の豊田市さんと連携して、小売電力の、何というか、活性化をしましょうといったところで動き出した事例もございますし、また、京都市さんの方でも、その代表的な脱炭素の地域として、寺社仏閣を脱炭素化することによって様々な観光客であったり修学旅行生とか学生にその脱炭素を知ってもらうということで走り出したんですけれども、実際蓋開けてみると、なかなか規制が、この文化遺産に対する規制が厳しくて、経済的に元が取れるような形での太陽光発電が難しいといったことが分かって、やり方を変えると。省エネと、省エネ設備の補助と組み合わせて自己保有型の太陽光発電を入れましょうといった形で動き出したり、あるいは地域新電力も、お寺のお坊さんが立ち上げた地域新電力が今度走り始めて、仲間としてその関係者にお声掛けをして、何というか、仲間の連携力を利用して、この広がり、この脱炭素の広がりを進めていこうといった形でも展開するようになったという形ですね、もう本当に走りながら課題に直面してはそれを解決するという形で今先行地域が進んでいるという状況でございます。
ちょっと、時間超過しているので、これまとめになりますけれども、様々な形でこの電化とカーボンニュートラル電源を地域に着実に進めていくということで三点ほどポイントをお話しさせていただきました。
また、このような、地域において本当に裨益する、地域にとっての、市民にとっての多様な便益を考慮できる脱炭素化施策というものは本当に多様な窓口が関わらないと進められないので、自治体の中でも横連携というものが非常に重要になってきております。こういった横連携の体制の強化というものを自治体にもお勧めしているという状況でございますし、また小規模自治体に関しては、こういった脱炭素化に関して、県であったり温暖化センターといった外部からの支援というものも実のところ不可欠だというところの実情を御説明させていただきたいと思います。
済みません、超過しまして。以上となります。ありがとうございました。