西園勝秀の発言 (環境委員会)
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○西園委員 ありがとうございます。是非、安全なドローンの運航ができるように調整をお願いいたします。
本日、一冊の本をお持ちしました。これは、長野県にお住まいの宮崎学さんが、四十年以上にわたり熊の生態を追い続け、その成果をまとめられた「となりのツキノワグマ」という写真集です。
私は、先日、宮崎さんに直接お話を伺い、実際に熊のわなをかける現場にも御案内をいただきました。
こちらの資料を御覧ください。宮崎さんの横に、木に大きな傷がございます。これは、おりに捕獲された熊に対し、別の熊が威嚇のために暴れて、そして大きな傷をつけたということでございます。この傷、たった一つの情報で、捕獲された熊以外にも別の熊が近くにいるという事実が読み取れるものでございます。また、おりに捕獲された熊は激しく暴れるため、左の写真にあるように、わなを支える、強固に固定させていくという、これがなければ駄目だ、そういう御助言も頂戴しました。
資料の裏面を御覧ください。左側の、「となりのツキノワグマ」の表紙にある熊でございますけれども、両耳にタグがついておるのがお分かりかと思います。これは、二度にわたって人間に捕獲されたんですけれども、そのまま放したという状況で、さらに、その熊が子熊を連れてまた戻ってきた、こういう状況なんですね。宮崎さんによれば、捕獲された熊を放すと、人間は脅威ではないというふうに認識をし、そのことが子熊にも学習して伝わってしまうということをおっしゃっておられました。
また、宮崎さんは、人里に出没する熊が森の餌不足である、出没する原因が餌不足であるという一般的な説は誤りであり、個体数の圧倒的な増加によって生息域からあぶり出された熊が人里に出ている、それが実態だということをおっしゃっておられました。
その根拠となる山の実態について、時間の関係上、ほんの断片にはなりますが、私が宮崎さんから伺ったお話を少しここで御紹介をさせていただこうと思います。
宮崎さんは昭和二十四年のお生まれで、幼少期から里山で育ったこともあり、何の動物が鳴いているのか、図鑑などない時代から、百種類近くの鳥の鳴き声を聞き分けられるほど山の自然に精通した方です。姿が見えなくても、立体的に自然環境が把握できることが今も役立っているとおっしゃっておられます。
子供の頃は、人々の暮らしを支えるエネルギーはまきや炭であり、里山では日常的に木が伐採されていました。そのため、集落から尾根まで見渡せるほど見通しがよく、それが緩衝地帯となり、人間の生活圏と自然動物とのすみ分けができていました。しかし、高度経済成長期に入り、エネルギー源がまきや炭から、電気、ガス、石油へと転換し、人々が山の木を利用しなくなると、かつて見通しがよかった里山はうっそうとした森林へと変化しました。さらに、戦後の植林や林業の人手不足により山林の管理が十分に行われなくなった結果、人と野生動物を隔てていた緩衝地帯が失われました。
森林は豊かになり、野生動物の餌も増え、さらには保護を重視した熊対策により、熊の個体数が増え続けた結果、生息域からあぶれた若い個体や弱い個体が人里へ下りてくるようになったのが現在の状況であると宮崎さんは断言されておられます。
また、熊の食性について興味深いお話を伺いました。
熊はドングリだけを食べているわけではありません。山菜や果実、昆虫、さらには鹿やカモシカの死骸まで食べるなど、その餌は数百種類に及びます。しかも、個体や家系、地域によって食性は異なり、その違いはふんの分析からも確認できるとのことで、御紹介した写真集にも掲載されています。
本来、熊は、鋭い牙を持つ雑食性の大型哺乳類であり、死肉の臭いを嗅ぎつけ、土葬された人の墓を掘り返す習性もあったとのことでした。また、道路にまかれる融雪剤、塩化カルシウムが、塩分を必要とする鹿を道路周辺に誘引し、鹿の個体数が急増、餌の鹿が増えたことで熊が激増する要因になったとの指摘や、空き家のトイレにあるふん尿のミネラル、鉱山跡の人の汗の塩分など、人間の痕跡に動物が集まる現象も、結果として野生動物の行動に影響を与えているともおっしゃっておられました。
こうした知見を踏まえ、宮崎さんは二十年以上前から、地域ごとに適正な個体数を設定し、それを上回る場合は捕獲し、不足する場合は保護するといった適応的管理の必要性を提唱してこられました。
こちらの資料の右側の写真を御覧ください。これは、宮崎さんが撮影した熊の鼻紋の一部です。宮崎さんは、熊の鼻紋が人間の指紋のように個体ごとに異なることに着目し、鼻紋による個体識別の研究を続けておられます。この写真集が出版されたのは二〇一〇年であり、少なくとも十六年以上にわたり、個人で継続的に調査を続けておられます。
昨年十二月五日の環境委員会で、私の質問に対し石原大臣は、自動撮影カメラの画像解析や採取した熊の毛のDNA解析によって個体を識別し、生息数を推計する手法について答弁されました。あれから半年が経過しましたが、熊の個体識別や生息域の把握は現在どの程度進んでいるのでしょうか。
また、宮崎学さんが四十年以上にわたり積み重ねてこられた知見、とりわけ鼻紋による個体識別のような現場発の技術や情報は、今後の熊対策をより効率的かつ効果的に進める上で大変有益であると考えます。こうした民間の知見を積極的に収集、共有し、科学的な熊対策に生かしていくべきと考えますが、石原大臣の御見解をお聞かせ願います。