河西宏一の発言 (憲法審査会)

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○河西委員 中道改革連合・無所属の河西宏一です。
 本日は、緊急政令、緊急財政処分に関して意見を申し上げます。
 まず、前提となる概念整理について、私が令和六年五月九日の当審査会で申し上げた点を改めて確認をさせていただきます。
 近時の学説では、緊急事態の概念について精緻な議論が行われており、早稲田大学の愛敬浩二教授は、平時の統治機構をもってしては対処できない程度のものを非常事態と分類する一方、緊急事態は、平時の法制度、法運用とは異なる対応を必要とする概念を広く含むと整理をされております。特別な立法や法運用が行われても、平時の統治機構の下で立憲的統制が十分に機能するのであれば、それは緊急事態ではあっても非常事態ではないとの御指摘であります。
 また、東北大学の奥村公輔教授は、非常事態を、戦争、内乱、恐慌、大規模自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない事態、緊急事態を、テロの多発や感染症の蔓延など、平時の統治機構をもって対処できる事態と整理をされております。
 両先生に若干の差はあるものの、いずれも、平時の統治機構による対処が可能か否かを基準に両者を区別しておられます。この整理に照らせば、当審査会で議論してきた選挙困難事態は、平時の統治機構をもって対処可能であり、立憲的な憲法秩序を維持しながら対応すべき緊急事態の一つとして位置づけられます。したがって、議員任期延長は、行政監視機能を確保し、人権保障と権力分立、すなわち立憲的憲法秩序の維持に資するものと整理できます。
 他方、緊急政令や緊急財政処分は、議員任期を延長してもなお国会の立法機能維持が困難で、平時の統治機構では対処不可能ないわゆる非常事態を念頭に議論されるべき事柄であります。論点の次元が異なる以上、やはり議員任期延長とは区別して発議すべきであります。国会法六十八条の三及び憲法改正国民投票法四十七条の趣旨、すなわち個別発議の原則にも合致する考え方であります。
 この点について、緊急政令や緊急財政処分も、一旦憲法上に位置づけてしまえば緊急事態条項であるという整理も可能ですが、たとえ実定法に位置づけたとしても、十分な民主的統制が確保されないままであれば濫用の可能性は残るのであって、その実質においては非常事態的なものと言うべきです。
 その上で、緊急政令、緊急財政処分そのものに関する基本的見解を五点申し上げます。
 第一に、憲法で内閣に白紙委任的な緊急政令制定権、緊急財政処分権を認めることは、国の唯一の立法機関たる国会の責任放棄につながりかねず、認めるべきではありません。憲法四十一条の国の唯一の立法機関との規定及び八十三条以下の財政民主主義規定は国民主権の理念を体現するものであり、その例外を設けるには極めて慎重でなければなりません。
 第二に、我が国の危機管理法制は相当程度整備されております。例えば、災害対策基本法百九条及び百九条の二では、生活必需品の譲渡制限、価格統制、金銭債務支払い延期、海外支援の受入れについて緊急政令規定が整備されています。さらに、災害救助法七条、八条の従事命令等を始め、新型インフルエンザ等対策特別措置法、武力攻撃事態等対処法、国民保護法、自衛隊法、警察法等において、各事態における危機管理のために必要な規定が設けられています。
 第三に、対応の基軸は、個別法による具体的政令委任の整備充実及び予備費の活用に置くべきであります。一九六二年の災害対策基本法改正時の参考人質疑において、東京大学の小林直樹先生や一橋大学の田上穣治先生は、要件及び委任事項の限定、国会の事後承認という暫定性を理由に、当該規定が憲法四十一条に反しないと述べておられます。災害、感染症、武力攻撃、テロと、事態の性質が多様である以上、政令委任事項で憲法であらかじめ限定列挙することは困難で、個別法制での対応こそが現実的かつ立憲的であります。
 第四に、仮に憲法に規定するとしても、四十一条の例外規定ではなく、内閣は、あらかじめ法律の定めるところにより、当該法律で定める事項に係る政令を制定し又は財政上の支出その他処分を行うことができる旨の確認規定にとどめるべきであります。
 第五に、繰り返しですが、緊急政令、緊急財政処分は、議員任期延長とは異なる次元の論点であり、個別発議の原則に照らして別個に検討、発議されるべきであります。
 以上を踏まえまして、我が党においては、選挙困難事態を想定した議員任期延長に加え、臨時国会の召集期限、解散権の制約といった、いずれも国会機能維持を目的とした包括的テーマに沿って建設的な議論に努めてまいりたいと思います。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 河西宏一

日付: 2026-04-23

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会