畑野君枝の発言 (憲法審査会)

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○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 まず、今日の運営についてです。
 冒頭、法制局に緊急事態条項のイメージ案なるものを報告させました。前回、一部の会派から、条文のイメージ案を作るべきだという主張はありましたが、それは全体の合意になったものではありません。
 そもそも、法制局や審査会事務局は、中立公平な立場で審査会の運営に関わることが求められています。にもかかわらず、イメージ案なるものを作らせ、あたかも改憲議論が進んでいるかのように喧伝するやり方はやめるべきです。イメージ案といいますが、今後の更なる深掘りの議論の素材とされているように、その内容は、緊急事態条項が必要だと主張している政党の意見を並べたものだということも指摘しておきたいと思います。
 次に、緊急事態条項について幾つか意見を述べます。
 まず、緊急事態とは何かということです。
 この間の議論では、大規模災害、感染症の蔓延、戦争が挙げられてきました。しかし、東日本大震災やコロナ感染症の蔓延でも、緊急事態条項がないから対応できなかったという事態は起きていません。日本弁護士連合会が東日本大震災の被災自治体に行ったアンケートでも、憲法が人命救助の障害になったと答えた自治体はありませんでした。
 災害や感染症は、個別の法律で対応すべき問題です。とりわけ、災害時に救助や避難などに当たる地方自治体が人員や財源を確保していることが重要です。災害対応では、地方財政を抑圧し、合併など広域化によって対応を困難にさせてきた国の政策こそが問われるべきです。感染症対策も、コロナ禍で浮き彫りになったのは、病床や人員を減らし、医療や保健所の体制を削減してきた自民党政治の問題です。その責任を棚に上げ、憲法に責任を押しつけるのは筋違いです。
 にもかかわらず、緊急事態条項を憲法に盛り込む目的は、戦争を想定した体制の整備だと言わざるを得ません。自民党は緊急政令や緊急財政処分を主張していますが、これは、国会の権限を奪って内閣に権力を集中させ、人権の制限を可能にするものです。明治憲法下で濫用された緊急勅令をほうふつとさせるものです。高市政権が進める戦争する国づくりと一体であり、断じて認められません。
 国会議員の任期延長の議論も問題です。
 そもそも、国会議員の任期は国民の負託に基づくものです。日本国憲法は、前文の冒頭、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動しから始まり、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないように決意し、主権が国民に存すると宣言しています。この下で、国民の代表である衆議院議員の任期を四年、参議院議員は任期六年で三年ごとの半数改選とすることで、定期的に民意を国政に反映させ、権力を民主的に統制することを定め、国民主権の原理を徹底しています。
 選挙困難事態と称して一年も任期延長を認め、国民の選挙権を停止することが許されるでしょうか。主権者たる国民の参政権を侵害し、国民主権と民主主義をゆがめるものにほかなりません。
 前回言及のあったマッケルウェイン教授は、著書の中で次のように述べています。選挙の延期は、有権者の意思を問う機会を延期することと同義であり、国民の支持を失った政府が政権を維持することに道を開きかねないと指摘しています。
 長谷部恭男早稲田大学教授も、審査会の意見陳述で、任期の延長された衆議院と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続けると警鐘を鳴らしています。この憲法学者の指摘は、任期延長論の本質をつくものであり、歴史の教訓そのものです。
 日中戦争下の一九四一年、当時の政府は、衆議院議員の任期を立法措置によって一年間延長しました。挙国一致の戦争遂行体制の確立が必要なときに、短期間でも国民を選挙に没頭させることは不必要な議論を誘発するというのがその理由でした。選挙を延期し、国民の声を抑え込んだ下で、東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切り、無謀な戦争に突き進みました。
 この痛苦の反省から、戦後の日本は、権力者の都合による任期延長を防ぐために、法律ではなく憲法に国会議員の任期を規定したのです。国会議員の任期延長のために憲法を変えようというのは、この歴史の教訓を踏みにじるものです。
 憲法制定議会で金森徳次郎担当大臣は、国会議員の任期を自ら延ばすことは甚だ不適当であり、そのために憲法に任期を明記した、選挙で国会が国民と表裏一体化しているかどうかを現実に表すことが重要だと述べています。
 任期延長の口実として国会機能の維持が強調されていますが、その大前提は、国会は国民に正当に選挙された議員で構成されていることです。国民の信任を得ていない議員が長期にわたって居座ることは許されません。任期延長は、議員自らの保身のための議論でしかありません。
 このような改憲を国民が求めているでしょうか。国民が求めていない改憲のための議論はするべきではないと改めて申し上げて、発言を終わります。

発言情報

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発言者: 畑野君枝

日付: 2026-05-14

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会