阿部圭史の発言 (憲法審査会)
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○阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史でございます。
我が党は憲法九条改正五項目を掲げております。憲法九条二項削除による集団的自衛権行使の全面容認、国家固有の権利である自衛権の明記、国防軍及び軍人の地位の明記、文民統制の明記、軍事裁判所の明記、以上の五つでございます。
現在の自民党の自衛隊明記案と、現在の我が党の案であり、かつ約十年前の自民党も掲げておられた憲法九条二項削除と国防軍創設案は、具体的に何が違うのでしょうか。
その違いを考える際には二つの観点が重要です。一つは、国家が何をできるかという作用法の観点、もう一つは、国家がどのような組織を持つかという組織法の観点であります。
結論から申し上げれば、自衛隊明記案は、作用法は現行憲法のままであり、組織法も現在の自衛隊組織の現状を追認するだけで、残念ながら、何も変わらないというふうに言えると思います。
我が党の、かつ約十年前の自民党の憲法九条二項削除と国防軍創設案は、作用法と組織法の双方を大きく変更いたします。
まず、作用法の観点から説明いたします。
結論から申し上げれば、作用法上の本質的な違いは二つに凝縮されると言えると思います。一つ目は、自衛隊明記案は限定的集団的自衛権である一方、憲法九条二項削除と国防軍創設案は全面的集団的自衛権であるということであります。二つ目は、自衛隊明記案は防衛出動後もポジティブリストにとどまる一方、憲法九条二項削除と国防軍創設案は真のネガティブリストになるということであります。
まずは一つ目の点について御説明いたします。
自衛隊明記案は、九条一項及び二項は維持したまま、自衛隊を明記するだけですので、一項の侵略戦争放棄と二項の陸海空軍その他の戦力不保持は残ります。したがって、憲法九条に関する現在の政府解釈である個別的自衛権及び限定的集団的自衛権を前提といたします。要するに、現在の自衛隊明記では、その作用法上の限界は、二〇一四年の安倍政権が平和安全法制に則して表明した政府解釈である集団的自衛権行使の限定容認が限界点となります。基本的には、平和安全法制を憲法上追認することとほぼ同義であると考えております。すなわち、できることを大きく増やす改正ではありません。
一方、憲法九条二項削除による集団的自衛権行使の全面容認は、国連憲章五十一条が認める集団的自衛権を国際法上フルに行使できるようにする立場であり、国際標準そのものでございます。
二十一世紀における我が国の国防は、軍事的に拡張する中国、北朝鮮、ロシアに対して抑止力及び対処力をいかに高めることができるかが焦点です。我が国は中朝ロという三つの正面から核の脅威にさらされておりまして、これらの国々は急激な軍拡を進めています。このような三方向の軍事圧力に直面する事態は、歴史上我が国が経験したことのない事態です。
二十一世紀の国防は、これらの脅威がせり出してくる東シナ海、南シナ海、太平洋、インド洋の四つの海をいかに守るかの戦いです。そのためには、我が国の自律的な防衛力の増強に加え、日米同盟の深化及び新時代における軍事同盟の拡大を行う必要があります。それによって、二十一世紀の勢力均衡、バランス・オブ・パワーを構築し、この四つの海にわたる国際秩序の安定を図ることが可能になると考えております。我が国一か国だけでは守れず、日米同盟だけでも不十分であります。同じ海洋国家であり、準同盟国でもある豪州、フィリピン、英国等との関係を同盟レベルにまで引き上げ、これらの海をいかに守れるかが問われていると言えると思います。
また、日米同盟は、我が国の基地提供義務及び米国の日本防衛義務という物と人との協力でありまして、非対称的双務性を特徴としていますが、昨今、米国は日米同盟の非対称的双務性を疑問視する傾向を強めており、同盟の安定性という観点から憂慮すべき事態です。米国は我が国に対し、日米同盟における相互防衛義務、すなわち対称的双務性という人と人との協力を求め始めています。
このような戦略環境を踏まえれば、全面的集団的自衛権のみが選択肢であることは自明ではないでしょうか。
次に、二つ目の点である、ポジティブリストとネガティブリストの違いについて御説明いたします。
本年五月二十八日の本憲法審査会で、新藤筆頭幹事は、防衛出動においては、自衛隊法八十八条二項の規定により、事態に応じ合理的に必要と判断される限度に限り何でもできることとされています、この点では他国の軍隊と何ら変わらない活動を行うものであり、防衛出動においては、文字どおり、ネガティブリストに基づく活動を行うことになるわけでありますとおっしゃっておられました。本日の審査会でも同様の御意見だったと思います。
しかしながら、自衛隊法に適用除外規定が存在する限り、防衛出動が下令された後もネガティブリストにはならないという現実が存在していると言えると思います。
自衛隊法による適用除外規定とは、一般国民や通常の行政機関には適用される法律について、自衛隊の特殊な任務遂行上の必要性からその全部又は一部の適用を除外する規定のことをいいます。例えば、火薬取締法、航空法、労働組合法、船舶法、電波法等、様々な適用除外規定が自衛隊法には存在しています。一条一条明記されております。
しかし、この適用除外規定があるということは、裏を返せば、それ以外のものについては原則国内法の規制がそのまま適用されるということであります。それは防衛出動下であっても同様であり、適用除外規定のない法律には原則として拘束され得るという認識でございます。すなわち、ポジティブリストのままであるということです。
自衛隊明記案は、自衛隊法、防衛省設置法という防衛二法を基盤とした枠組みも基本的にはそのまま維持されます。したがって、ネガティブリストにはならないと理解しております。要するに、防衛出動によって国内法秩序の外に出るのではなく法秩序の中で武力行使が適法化されるという方向が変わらなければ、ポジティブリストのままであるということなのではないかというふうに認識をしております。
どの国であっても、基本的に、軍は国際の法規及び慣例に基づき活動するのであって、その行動は個別的自衛権及び集団的自衛権を規定している国連憲章五十一条に法源を持つものであります。防衛出動等の事態認定という制度の存在自体に加え、活動がポジティブリストで制約されていることなど、どちらを取っても国際的には異質な制度になっていると考えております。
このように、自衛隊明記案と、憲法九条二項削除と国防軍創設案では、作用法上の位置づけに明確な違いが生まれます。
以上で私の発言を終わりますが、組織法の観点は、後ほど隣の池畑浩太朗委員から御説明をいたします。
以上でございます。