和田義明の発言 (憲法審査会)
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○和田(義)委員 自由民主党の和田義明です。
本日は、九条に関する集中的な討議ということですので、私からは、現行憲法の下での自衛隊あるいは自衛官の活動に関して、一般の法制度上の問題点について問題を提起したいと思います。
近年、自衛隊の海外での活動が増加をしております。南スーダン、シナイ半島などにおける平和維持活動、ジブチを拠点とするオマーン湾、アラビア海等での日本関係船舶の安全の確保、また同盟国、同志国などを中心とする訓練や能力支援等々を行っており、厳しい環境の下で自衛官は頑張っているところでございます。
こうした状況下、自衛官の国外犯処罰の不存在という論点がしばしば指摘をされています。例えば、海外に派遣された自衛官が公務中及び公務外で交通事故を起こして現地の方をけがさせた場合、刑罰法規の適用はどうなるのでしょうか。
国連PKOの場合、国連が一括して現地政府と地位協定を結び、国連部隊全体としての現地国からの訴追を免除する特権を得るのが通常でございます。したがって、国連PKO部隊の一員が過失犯を犯した場合、現地の法律ではなく出身国、すなわち日本の場合は日本の刑法にのっとって裁かれることになります。一般に、現地社会の感情に配慮をするために、現地法よりも厳しく処罰をする必要があるというふうに言われております。
その一方、日本の刑法では、業務上過失致死傷罪については国外犯規定がないため、刑事責任を問われることはありません。行政上の懲戒処分などがなされるだけであります。この点につきましては、PKOなどの自衛隊の海外活動の拡大に伴い、自衛隊の国外での活動に対する信頼の向上、現場の自衛官が安心して任務に就けるよう、責任を負う場合の限定、明確化が必要といった観点から、何かしらの法整備が必要ではないかという議論があるところであります。
次に、自衛官は、国家最大の実力組織の一員として、上官の指示の下、組織として活動するのが原則です。特に、治安出動、警護出動、海上警備行動等の際、武器使用に当たっては、組織力を発揮して適切に任務を遂行するという観点から、原則として部隊指揮官の命令によらなければならないこととされております。
このような自衛官の武器使用において、例えば、上官が過って襲撃者が銃撃をしてきたと認識した下に命令を下し、部下である隊員の発砲によって相手を傷つけた場合、その刑事責任はどのようになるのでしょうか。一般に、個人の責任を問う刑法の理論でいえば、実行犯はあくまで発砲者である隊員であり、上官はその教唆犯又は幇助犯になるだけでございます。
しかし、これでは組織としての活動をしている自衛隊の実態には合わないのではないでしょうか。組織として行動する上官と隊員の刑事責任の分担、この問題をどのように考えるべきか。大きな問題であり、自衛隊の憲法上の位置づけを契機として議論を進めるべきではないかと考えます。
なお、現行の自衛隊法においても、自衛隊という組織の特殊性を踏まえた独自の罰則規定も設けられております。例えば、不当武器使用、職務離脱、上官命令反抗、不服従などでございます。
これらの規定に加えて、さきに述べた自衛隊という組織の特性に着目した上官と隊員の刑事責任の分担などを規定した場合には、自衛隊員に特有の一連の刑法及びその手続法、いわゆる自衛隊刑事法を整備するべきではないかといった議論に進んでいくことが予想されます。その究極の形態が、自衛隊に関する特別刑事法を管轄し裁判を行う自衛隊審判所、自衛隊裁判所の問題でございます。このようなことも念頭に、自衛隊の在り方について議論を深めていくことが必要だと考えます。
本日は、自衛官の国外犯処罰規定の問題と、上官と隊員の責任の分担など、自衛隊に関わる刑事法の問題を整理をいたしました。これは、憲法九条の改正の問題ではなく一般法の問題ではありますが、防衛に関する法体系全体に関わる問題であります。このような一般法に関する検討も進むことを期待しております。
また、憲法九条本体に関する議論もかなり積み重ねられてまいりましたので、速やかに論点を行い、更に深掘りの議論をしていくべき時期に来ていると思います。会長及び幹事の皆様方にはこのことをお願いして、私の発言を終わります。