新藤義孝の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。
今国会、衆議院の憲法審査会では、様々な論点について、テーマを絞って充実した討議を行ってまいりました。与党筆頭として、幹事会のメンバーそして委員各位にまず感謝を申し上げたいと思います。
そして、本日は、これまでの議論を総括をして、憲法改正はどうして必要なのか、そしてどのように議論が深まり論点が絞り込まれたのかについて、私なりに整理をしてみたい、このように思っております。
なお、審査会としては初めてとなるテレビ中継が行われています。放送を通じて国民の皆様に私たちの議論をお届けし、憲法改正の御理解が更に深まればというふうに願っているわけであります。
まず、緊急事態条項の創設についてです。
国家の最大の使命は、いついかなるときでも国民の生命と財産を守り切ることにあります。そのため、世界各国の憲法には、緊急事態に陥った場合に備え、通常時とは異なる国家運営に関する規定が置かれています。
例えば、二〇二二年二月二十四日、ロシアがウクライナ侵略を開始したとき、ウクライナはその日のうちに、憲法の緊急事態条項に基づく戒厳を発令し、緊急時の国家運営に切り替えました。緊急時における国会機能の維持や大統領の職務執行を可能とするために、議員選挙と大統領選挙は延期され、その任期も延長されています。そして、四年を超える現在まで、ウクライナの国会である最高会議は、緊急事態下であっても、国会機能を維持しながら必死に国家を運営しています。
ところが、日本国憲法にはその緊急事態条項がありません。昭和二十一年の憲法制定時、日本国政府はGHQに対して緊急事態条項の規定を提案しましたが拒否をされ、そのままの状態が現在まで続いています。
衆議院憲法審査会では、緊急事態条項の創設に関して、既に四年にわたって濃密な議論を続けています。この五月には緊急事態条項のイメージを作成し、より深掘りした議論を行いました。
この条項イメージでは、緊急時にこそ議会制民主主義の根幹である国会機能を維持するために、まず、緊急事態の対象範囲について、大規模自然災害、感染症の蔓延、テロ・内乱、そして外部からの武力攻撃、この四つの事態と、これらに匹敵する事態と定義をした上で、この事態発生によって国政選挙の適正実施が困難となった場合に、これを選挙困難事態と認定をして選挙期日を延期すること、その選挙の延期に伴って国会議員が不在となる事態を避けるために、議員の任期を延長し、あるいは、既に解散等で身分を失っているときには議員身分を復活させて、国会機能の維持を図ることというふうにしておるわけであります。
現在は、この選挙困難事態の認定に当たり、日本全国どの程度の広範な地域において、どの程度の長期間にわたって選挙実施が困難かといった点について、深掘りした議論を進めているところであります。
さらに、どうしても国会が開けないという究極の緊急事態に備えまして、国家としての統治機能を維持するため、内閣が一時的に法律や予算に代わる緊急政令を制定し緊急財政処分を行える制度を万々が一の備えとして用意しておくことが必要ではと提案をしております。
今国会、これらの論点について議論が深められた結果、おおむね各会派の共通認識が得られたピン留めと呼ぶ論点と、更に議論を深掘りする論点、これが明らかになってきました。
いずれにしても、緊急事態条項がないという日本国憲法の未完部分を一刻も早く完成させ、国家の基本法の体系を整えなければならない、このように考えているわけであります。
次に、究極の緊急事態とも言える国家有事における国防、安全保障に関する憲法改正の議論について整理をします。
日本国憲法には、国防、安全保障に関する条文が一つしかありません。九条では、他国を侵略しないこと、そのため戦力を持たず交戦権も認めないことが規定されていますが、国の存立と国民の命、財産をどのようにして守るのかといった国防に関する規定が定められておりません。これも日本国憲法の未完成部分と言えます。
私たち自民党の憲法改正案は、平和主義の理念の下、九条一項、二項に加えて、新たに九条の二を追加して、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つという国防規定を創設して、そして、その担い手となる実力組織としての自衛隊を明記し、その活動は民主的な統制、シビリアンコントロールの下に置かれる、このことを定めたものであります。
この自民党の改正案により、他国を占領したり、自国防衛と全く関係のない純粋国際協力の場面では武力を行使しないという憲法上の位置づけを変えることなく、新たな脅威や刻々と変化する安全保障環境に応じて自衛隊の活動と機能を相対的に常に向上させ、強化していくことができるようになります。憲法に国防規定や自衛隊を明確に定めることによって、平和安全法制などの一般法と併せた我が国の安全保障体系の整備、これが完成し、より強力な国防体制の最適化と抑止力の強化が図られることになります。
三つ目は、合区解消と地方自治に関する憲法改正です。
国民主権の基本は議会制民主主義です。その基盤は、議員を選出する選挙区にあります。選挙区の設定に欠かせない投票価値の平等は憲法十四条に根拠がある一方で、地域の民意の反映のエリア、選挙区の単位につきましては憲法に根拠の規定がありません。地方の過疎化と都市部の人口集中が進む中、参議院選挙では、地方の選挙区の範囲が際限なく広くなり、合区となることで地域の民意や実情を把握し切れない選挙区となってしまうとの心配の声が強く聞かれます。
私たちの改正案は、広域自治体としての都道府県と基礎自治体としての市町村を憲法の地方自治の章に規定し、これを選挙区の根拠としてはどうかというものです。これにより、参議院選挙では、広域自治体としての都道府県を選挙区の単位とすることで合区を解消することができると考えています。
昭和二十一年の日本国憲法の制定時、僅か四か条でありますが、明治憲法になかった地方自治に関する規定が新たに置かれたことは画期的だと思います。しかし、現在までその内容を深めることには至らずに、未完の憲法第八章となっています。地方自治の規律密度を高めてこれを完成させること、これは憲法制定時から今に続く要請だというふうに私は考えております。
四つ目は、教育充実に関する憲法改正です。
国の最大の宝は人であり、未来の国を運営する人材を育てる教育こそは国の根幹です。ところが、憲法二十六条が定めているのは教育を受ける権利と義務教育の無償化であり、生涯教育や学び直し、さらには経済的な理由により教育を受ける機会を失ってはならないといった教育の理念は規定されておりません。これもまた憲法の未完部分の一つであり、その完成を目指すことは八十年前からの要請と考えています。
また、憲法改正の実現には、その手続の整備も必要です。今国会では、公選法で整備された事項を反映した国民投票法改正案が衆議院を通過して、参議院憲法審査会において審議中です。国民投票運動に関するCM規制、資金規制、ネットの適正利用、こうしたことにつきましても、引き続き真摯な検討を行ってまいります。
以上、私たち自民党が提案している四項目にわたる憲法改正案は、いずれも国の根幹に関わる重要事項であり、一貫しているのは、日本国憲法の未完成部分の完成を目指すということであります。
今、日本の国家的課題は人口減少そして少子高齢化の克服ですけれども、働く人が少なくなっても経済を成長させ、全国どこでも安全、安心に生活できる日本をつくらなければなりません。そのためには大胆で徹底した構造改革による新しい国づくりが必要であり、国の形を整えて国の基礎を強固にする憲法改正は、今こそ実現しなければならない、何としても実現しなければならない、このように考えております。
憲法改正は、今を生きる私たちの、将来世代に向けた責任です。そして、憲法改正は国会だけで決めることはできません。国会ができるのは、条文案を作成し国民の皆様に発議すること、そのところまでです。憲法改正の国民投票は、お一人お一人の一票が直接国政を決定できる、まさに国民が主権を発揮する最大の機会です。ところが、その国民投票は一度も実施されていないわけです。
私たちは、一刻も早い憲法改正、国民投票の実現に向け、最大限のスピード感を持って憲法改正の条文案作りに取り組んでいきます。そのために最も重要なのはこの憲法審査会による具体的な議論の積み重ねであることは言うまでもありません。引き続き、憲法審査会において国民のための憲法改正論議を深められるよう全力で臨んでまいります。委員各位の御協力をよろしくお願い申し上げ、私の発言といたします。
ありがとうございました。