玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)
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○玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。
会期延長がなければ、今日が最後の憲法審査会です。憲法審査会を言いっ放し審査会にしてはならないと何度も申し上げてきましたが、今国会でもまた憲法改正に向けた具体的な進展が見られなかったことは残念です。テーマが拡散し、改憲項目すら絞り込めていませんし、条文起草委員会も設置されていません。高市総理が目指す来春の発議を実現するのであれば、憲法審査会規程八条により閉会中も審査会を開催し、夏休み返上で取り組まないと間に合わないことを冒頭申し上げたいと思います。
今日はNHKの中継も入っておりますので、改めて、国民民主党の憲法改正についての考えを申し上げます。
国民民主党は、二〇二〇年九月に結党した年の十二月に、憲法改正に向けた論点整理を取りまとめました。その中でも述べているとおり、国民民主党は、従来の護憲対改憲、与党対野党、あるいは保守対リベラルといった二元論的な対立から憲法議論を解放し、国民とともに、この国の形、まさにコンスティチューションを建設的に議論していく、これが国民民主党の基本方針です。
その上で、国民民主党が優先的に改正すべきと考える改憲項目は二項目です。それは、衆議院でこれまで最も議論され、二〇二四年六月に自民、公明、日本維新の会、国民民主党及び有志の会の五会派で合意した、大規模災害時等における議員任期の延長など国会機能を維持するための改正と、参議院において議論が進んでいる参議院の合区解消です。国民民主党は、この二項目はいずれも選挙という民主主義の基盤整備に関するものであり、優先的に取り組むテーマだと考えています。
以下、順番に説明します。
まず、私たちが大規模災害時等に国会議員の任期を延長する改憲を実現すべきと思った原点は東日本大震災です。二〇一一年は統一地方選挙の年でした。三月十一日の発災後の大混乱の中、有権者だけでなく選挙管理委員会の職員も被害を受け、四月に選挙を行うことができませんでした。そこで、法律を改正して、地方自治体議員の任期を特例的に延長いたしました。国会議員についても同じように法改正すればいいと思う人がいるかもしれませんが、自治体議員の任期とは違って、衆議院議員の四年、参議院議員の任期六年は憲法にしか書かれていません。よって、法改正では足らず、憲法改正が必要であり、改正を提案してきたところであります。
この私たちの改正案に対して、内閣の権限が拡大し国民の権利侵害につながると批判する方がいますが、むしろ逆で、議員任期を延長して立法府の機能を維持しないと、それこそ、有事を理由に時の内閣がやりたい放題をして国民の権利が侵害される可能性も出てきます。
是非国民の皆様にも御理解いただきたいのは、緊急事態条項が危ないのではなく、有事の際に権力を適切に統制するルールがないことの方が危ないということであります。緊急事態条項という言葉のイメージではなく、是非、憲法改正案の中身を見ていただきたいと思います。私たちの緊急事態条項は、内閣の権限を強化する改正ではなく、いついかなるときも立法府、国会の機能を維持し、三権分立の三角形が崩れないようにするための改正です。ちなみに、二〇二四年六月の五会派案には緊急政令は入っていません。
また、衆議院の解散中に緊急の必要がある場合に開催される参議院の緊急集会があるから議員任期の延長は不要との主張がありますが、緊急集会は、憲法の規定を見ても、あくまで一時的、限定的、暫定的な位置づけであることは明らかです。七十日を大幅に超える長期にわたり、しかも当初予算や条約まであらゆるテーマを扱えるとの主張には無理があります。何でもできるスーパー緊急集会の考えは、憲法が定める衆参同時活動の原則や予算における衆議院の優越性などにも反する拡大解釈だと言わざるを得ません。
もう一つの優先順位の高い項目が、参議院の合区解消です。当初、緊急避難措置として導入されて十年が経過した合区制度は、対象県における投票率の激減から見ても、国民の参政権に大きな支障を生じさせ、憲法三大原則の一つである国民主権にも反しています。早期に解消が必要です。しかも、国政選挙の制度改正の周知期間に一年間必要であることを考えると、来年の七月までに憲法改正ができていなければ、次回の参議院選挙は合区のままとなります。したがって、議員任期の延長と併せて急いで実現すべき二つ目の改正項目と考えます。
憲法改正といえば九条改正と思われる方も多いと思いますので、このことについて触れたいと思いますが、我が党は優先順位が低いと考えます。
というのも、自民党と日本維新の会の与党の間でも考えが一致しておらず、とても憲法改正の発議に必要な衆参の総議員の三分の二の合意が得られる状況にはありません。衆議院では議論が進んでおりますが、参議院では全く進んでおりませんし、現実的に、来春を考えたときに、あれもこれも手をつけて結局何もできないということを恐れるので、そのことは特に与党自民党、維新の皆さんに改めて申し上げたいと思います。
特に、自民党の主張する自衛隊明記論では自衛隊のできることが変わるわけではないということは、新藤幹事からも何度も御説明がありました。よく、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなったから九条改正が必要との主張がありますが、改憲後も自衛隊ができることに変わりがない以上、あたかも自衛隊ができることが新たに増えるような説明はある種の誇大広告ですし、他方、自衛隊明記論で戦争ができるようになるといった言説もまた誇大広告と考えます。
なお、前回、新藤幹事や自民党の複数の議員から、領空侵犯対処など平時の警察作用はポジティブリストで運用されているが、自衛隊法八十八条に基づく防衛出動時における武力行使においては自衛隊はネガティブリストで何でもできるというような趣旨の発言がありました。
しかし、これは、安倍内閣が閣議決定した二〇一四年六月の質問主意書に対する政府答弁、すなわち、自衛隊法は、自衛隊の行動及び権限を個別に規定しており、いわゆるポジティブリストであると認識しているとの従来の政府見解と異なると考えます。もし仮に防衛出動時においてはネガティブリストで何でもできるのであれば、それこそ憲法改正は不要となるので、改めて自民党内あるいは与党内で考えをまとめて、また別途説明をいただきたいと思います。
最後に、国民投票法について一言申し上げます。
公正な国民投票を実現するためには、国民投票公報の原稿作成や新聞、テレビ広告を行うことになっている国民投票広報協議会に、民間のファクトチェック機関と連携した何らかの偽情報、誤情報対策の機能を持たせてはどうかと思います。
というのも、テレビを御覧の皆さんの中には、自衛隊明記論が実現すれば自衛隊ができることが大幅に拡大すると誤解されている方もいらっしゃると思いますし、我が党国民民主党を始め五会派の緊急事態条項が実現すれば国民の権利が大幅に制限されナチスが台頭するなどと誤解している方もいらっしゃると思います。しかし、いずれも事実に反する情報です。
昨今、選挙や国民投票に外国勢力の介入が指摘されていることも増え、私はこの憲法審査会でも、SNSを使ってアメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱の民意の操作に深く関わったケンブリッジ・アナリティカ事件のことを何度も紹介してきました。
国民投票の公正性を担保するためには、憲法改正議論の実態やその改正の内容を正しく国民に伝えることが極めて重要です。そのためには、改正案のみならず、改正に至る議論のプロセスも含めて正確に国民に伝えることが必要です。その意味では、今日のようにNHK中継が増えることは有効だと思います。また、憲法改正の内容を正しく国民に伝えるための制度整備、すなわち、SNS時代に対応した国民投票広報協議会の機能強化が必要だと考えます。
こうしたテーマを閉会中も夏休み返上で議論することを求めて、発言を終わります。