苫米地義三の発言 (運輸及び交通委員会)
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○苫米地國務大臣 ただいまより海難審判法案の提案理由について御説明申し上げます。
わが國の海運は、戰爭の結果、保有船腹の大部分を喪失いたしましたのみならず、現に殘存する船舶の過半數は、戰時大量建造のいわゆる戰標船でありまして、これに乗組んでおります者は、大部分これまた戰時中急速養成の船員であります。さらに、これに加えまして、戰爭の結果、航路標識の滅失、艤装品その他運航または補修用資材の不足等の事情も加わりまして、戰後における海難件數は増加の一途をたどり、まことに憂慮にたえないところであります。このときにあたりまして、本年日本國憲法が施行せられまして、これに伴い、現行海員懲戒法中の一部の規定は、當然これを改正する必要に迫られたのであります。
現行海員懲戒法は明治二十九年に制定せられまして、爾後一囘の改正をも受けることなく今日に及んでいるのであります。しかしてその内容は、海技免状受有者たる船舶職員が、その職務を行うに當つて、過失、懈怠、もしくは怠慢によりまして、一定の海難を惹起した場合、またはその他の非行がありました場合に、刑事訴訟類似の審判手續によりまして、これに懲戒を加えることを規定したものであります。しかし政府はこの際、現下わが國海運の實情に鑑みまして、これに徹底的な檢討を加えることを期し、昨年九月、運輸省内に海員懲戒法改正委員會を設置いたしまして、改正案の作成を委嘱いたしたのでございます。しかるところ同委員會は、前後二十一囘にわたり委員會を開催したほか、東京、神戸等において公聽會を開き、各方面の意見を聽取した上で、本年六月、海員懲戒法を廢止し、新たに海難審判法を制定すべき旨答申してまいつたのであります。政府におきましては、右答申に基き海難審判法を立案いたした次第であります。
しかして同案の骨子といたしますところは、審判は、現行海員懲戒法のごとく、海員の懲戒を目的として海技免状受有者の行為をのみ對象とすることをやめまして、むしろ直接に海難の事實そのものを對象として、その原因を探究し、審理の結果、海技免状受有者に故意または過失がありました場合には、必要に應じ、これを懲戒し、また海難が海技免状受有者以外のもの、すなわち船主、造船所その他のものの所為に基くことの明らかな場合には、これらのものに對してしかるべき勸告をなし得ることとし、もつて海難の防止に寄與せんとするものであります。またその審判手續につきましては、新たに三審の制度を採用いたしましたほか、日本國憲法に規定せられております國民の自由權の保障との關係を勘案いたしまして、必要なる修正を加えると同時に、憲法の要請にこたえまして、高等海難審判所の裁決に對しては、司法裁判所に不服の訴えを提起する途を開いたこと等を、主要な内容とするものであります。
以上申し上げましたように、本法案は努めて民主的に各方面の意見をも參酌したものでありまして、現下わが國の實情に即し、まことに時宜を得たものと考えるのでありまするが、何とぞ十分に御審議をくださいまして、御可決あらんことをお願いする次第であります。