原彪の発言 (運輸及び交通委員会)

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○原(彪)委員 日程第一四の舊鶴見臨港鐵道ほか三鐵道拂下げに關する請願につきまして、先ほど井谷委員よりその趣旨を御紹介に相なつたのでありますが、これと同樣な、つまり戰爭中強制買收され、しかも戰爭目的遂行のためという名目のもとに、私有財産とも言うべき株式會社の鐵道會社を強制的に買收された。その鐵道のうち請願の出ておりますものが、約十二件ございますので、この中で第一四に關連いたしまして、根幹は全部同じでございますから、一言申し上げまして、強制買收されたまことに同情すべき鐵道に對して、委員の方々の御同情と御贊成を賜わり、また政府の同情ある御答辯を賜わりたく、ここに發言する次第であります。
 いまさら申すまでもなく、わが國の鐵道は、初めは民營でありまして、それが日露戰爭の後、すなわち明治三十九年に主要幹線はことごとく國有鐵道に相なつたのであります。しかもその當時買收されました民間の會社が――日本鐵道、あるいは山陽鐵道初め、十七會社が強制買收されておりますが、これが日本の鐵道の基礎をなしたことは御承知の通りでございます。國有鐵道法の第一條には「一般運送の用ニ供スル鐵道ハ總テ國ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鐵道ハ此ノ限リニ在ラス」とあります。すなわち、幹線の鐵道はすべて國有とするのでありますが、支線に關しましては、その限りにあらずという條文でございます。しかも所々の支線までも政府は買收いたしまして、ほとんど餘すところ鐵道の國有化をはかつたのであります。これが特に顯著と相なりましたのは昭和十七、八年でございまして、これは先ほども申し上げました戰爭目的のためという名目のもとに――しかも地方鐵道法第三十條の規定には、政府が買收せんとする場合は、地方鐵道はこれを拒むことを得ないという強制的な條文があるのでありますが、それを盾にとりまして、戰爭中においては地方鐵道をわずか電話一本で呼び出して、これを強制的に買收したことがあるのであります。そのうち現在請願になつておりますものは約十二社あるのでありますが、しかも戰爭中に買收されました買收方法なるものは、非常に理ふじんと申すと語弊があるかしれませんが、理ふじんな買收方法によつて買收されております。地方鐵道法による買收價格は、五分利還元の方針によつて計算されております。ところが、その會社に對しましては、公債を與えたのでありますが、五分利の公債ではなくて、表面とは違つた三分利の公債を與えて、しかもその公債というのは、全部登録公債であつて、賣買を禁止し、今日まで買收されたその會社というのは、會社だけ存續さしておるというような、まことにおかしな形で、今なおその會社は存續し、その公債を今なお持つておるような状態であります。會社と申しましても、皆地方的なことでありますので、地方の株主というものは非常にたくさんの人が零細な株をもつております。でありますから、地方民が地方の開發のために大事な自分の金を株にかえておるのでありまして、つまり地方民の私有財産とも申すことができると思うのでありますが、それが形が公債にかえられて、登録になつて賣買もできず、どうにもならぬというようなくぎずけの、また換言すれば人の財産をくぎずけにしたというような形も見えるのでございます。地方鐵道というものは從來といえども、單に營利目的ばかりでできたものではなく、地方民の福利のために、地方民の輿論の起きるところによつてその鐵道ができたのが非常に多いのでありまして、またこの地方の鐵道は會社が起きましても利益配當というものは五年や六年ではできない、ひどい會社になると十年、二十年も粒々辛苦して、會社がようやく一本立ちになつて配當ができて、よくなつたというときになつて、政府に強制買收されたというような、はなはだ同情すべき立場にあるのでございます。私も委員としまして、この陳情を受けまして、なるほどお氣の毒であるということを痛切に感じて、先ほど井谷さんが紹介されたことに對して、ここに附け加えた次第であります。さらに從來とも地方鐵道は實際營利目的ばかりでやつておるのではなく、いろいろその地方の開發のためにも盡力しておる點が非常に多いのであります。たとえば箱根鐵道、その他各鐵道のやつている地方開發のための觀光施設も、その地方鐵道の力によつてなされ、その地方がそのために發展しておる、こういう利點もあるのであります。今まで地方の鐵道は、政府に對するこのような請願につきましては一昨年以來數囘やつております。特に第九十議會、第九十一議會におきましてもこの請願は採擇されておるのでありますが、採擇のみで實際にはこれが還元というものは未だ一つも許されていないようでございます。萬一これが還元されるような場合においては、問題は鐵道の評價でありますが、理窟から言いますならば、戰爭中にくぎづけにした登録公債、さらにまたその後政府が施設した特殊施設を時價評價によつて返すのが當然であると思うのでありますが、現在のインフレ下におきまして、私設鐵道の評價額というものはおそらく非常な額に上るというのでありまして、その評價額によつてこれを萬一還元するといたしましても、還元されてはまことに理窟にも合わぬということになるだろうと思うのであります。それから戰爭中買收しましたその基準というものは、大體これが財産の評價ではなくて、過去三箇年間の經營の收益率によつて、それを二十倍するというような形で拂下げ價格をきめたのでありますが、それは資産の評價ではないのであります。そこに私は非常におかしな點があるだろうと思うのであります。資産の評價をもととして拂下げを決定するならば、これは現在の時價で返すということも理窟はまた立つのでありますが、これを拂下げする場合におきましては、當然に妥當なる値段で、つまり戰爭中に強制買收された基準値段を考慮に入れた妥當な値段で拂い下げるのが適當だろうと思うのでありまか。ちようど現在國鐵も赤字でありますし、また獨立採算制ということが言われておりますし、鐵道の立ち上りのためにもさようなローカル・カラーの非常に強い地方鐵道は、主要幹線でない、主要物資をよけい運ぶという線でもないならば、できるだけ地方民のために、これを拂い下げてやつてほしいということは、私は請願を受付けて同感する次第であります。大體の趣旨を先ほど井谷委員の説明に附け加えて申したのでありますが、委員の方々もどうか本趣旨に御贊同支さいまして、御採擇あらんことをお願い申し上げます。戰爭中に買收したのは買收する法規によつてしたのでございますから、これを拂下げする場合には、また法律によつてしなければならぬと思うのでありますが、政府としてははたしてこの拂下げの法律をお出しになる御意思があるかどうか。また場合によりましては、委員會においてもそういうような法律を出すことをしてもいいじやないかと私は思うのでありますが、實際戰爭中みじめなまるでむしりとられたような行き方をとつた私設鐵道に同情する餘り、ここに申し上げる次第であります。委員各位におかれましても、各私鐵の拂下げの請願が出ておりますが、何とぞ御同情賜わらんことをお願い申し上げて趣旨辯明を終ります。

発言情報

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発言者: 原彪

speaker_id: 24393

日付: 1947-12-06

院: 衆議院

会議名: 運輸及び交通委員会