鈴木茂三郎の発言 (本会議)

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○鈴木茂三郎君 ただいま議題となりました昭和二十二年度一般会計予算補正(第七号)、同じく(第八号)及び昭和二十二年度特別会計予算補正(特第三号)に関する予算委員会の審議並びにその結果について御報告申し上げたいと存じます。
 この三つの補正予算のうち、一般会計の第七号、特別会計の特第三号、これは本年度追加予算の中心となるものでありますが、第八号は、一般会計における既定経費を約十五億円節約いたしまして、そのうちから十三億円余を追加支出しようとするものであります。
 本年度追加予算の編成方針並びにその概要については、先般本会議におきまして大藏大臣から詳細な御説明があり、これを中心として質疑應答が行われたのでございますから、私はあらためてここで御報告する必要はないと存じて、これを省略いたします。しかしながら、本年度予算は御承知のようにばらばらに提案されてまいりまして、從つて、各種予算を一應とりまとめる意味において、報告の第一といたしまして、補正予算のごく概要を申し上げたいと存じます。
 まず一般会計予算補正(第七号)は、歳入歳出とも八百五十六億円余、第一号から第八号までを通計いたしますと、九百二十一億余円になり、これを当初予算に加えますと、一般会計は総計二千六十六億円余に上る勘定でございます。
 この補正第七号の歳出における重要なものは、何と申しましても御承知の通り終戰処理費でありまして、補正予算としましては四割二分三厘、当初予算と通計いたしましても、なおかつ三割一分一厘を占めるという重い負担となるのでございます。連合軍側においては、その給與、食糧、衣料またはガソリン等を直接御負担になつておるのではございまするが、しかも、わが財政上の負担は軽からざるものがあるだけでなく、これらは一般の財政支出や復金の融資などと相まつて、物と金の両面からインフレーションを助長する要因ともなるおそれのあるものでございます。
 歳出においては、このほか官公廳職員の特遇改善費、すなわち当初予算において千二百円基準で計算されたものが、その後千六百円に引上げられ、今回さらに千八百円基準に改訂されたため支出増加となつたというようなぐあいに、物價の引上げに伴う歳出の自然増加による費目が多いのでございます。
 このほか新しい歳出の費目としては、農業生産調整費、失業手当及び失業保險費等のごとく法律の実施に伴うものとか、災害の復旧費及び貿易資金繰入、復興金融金庫出資金、特別会計の赤字負担等、いわゆる健全金融の建前から一應一般会計の負担に計上することになつているものなどが、注目すべき費目と考えられるのであります。ただ遺憾に思われますことは、まつたくやむを得ざる事情に基くとはいえ、片山内閣の特殊な性格を顯現せしめた積極的な政策が歳出の上に計上されたものの少いやに見受けられることであります。
 次に歳入につきましては、政府はいわゆる健全財政なるものを堅持する方針から、財源を普通歳入に求めることとなり、高額所得の税率を引上げ、さらに酒税、物品税、入場税等の間接税の引上げを行い、さらに不足する部分を非戰災者家屋税という特別税の創設、タバコ値上げによる専賣益金の増収等によつて補い、一般会計としては赤字公債を発行しないで、さらに進んでは当初予算に組んであつた四十八億円余の交付公債を中止することになつているのであります。かような次第で、いきおい國民の一般の税負担は、やみの利得を除いては、ほとんど極限に到達したやに見え、從つて、特に勤労階級の負担は耐えがたいまでの重さを加えてきたようにもうかがわれるのであります。
 次には、特別会計の補正特第三号についてでありますが、当初二十四を数えました特別会計の数は、新たに失業保險特別会計及び船員保險特別会計の二つを加えまして、合計二十六となつております。これらの特別会計におきましても、一般会計におけると同樣の事情から、補正予算特第一号、第二号を加えますと、歳入においては千八百九十七億円余、歳出においては千六百六十二億円余となり、これを当初予算の特別会計と通算いたしますと、歳入が四千四百八十六億円余、歳出が四千七億円余ということになるのであります。
 特別会計について一言申し上げたいことは、政府においては、事業会計については独立採算制の建前をとりまして、しかも新物價体系を堅持するため運賃または料金引上げを避ける方針をとりましたので、経営上の赤字が免れがたいことになり、そこで、建設費の方は生産的な支出であるとの考えからこれは公債によつて賄い、損益勘定の赤字はなるべく借入金によらないで、一般会計から合計八十五億円を繰入れることになつているのであります。
 さて、以上、一般会計と特別会計の追加予算概要について、一應大まかにとりまとめて申し上げたのでありますが、この二つを、当初予算をも加えて通計いたしますと、本年度予算の総計は歳入六千五百五十二億円余、歳出六千七十三億円余という莫大な数字に上るのであります。もつとも、未だ二重勘定を除いた純計予算はわかつておりません。しかし、この厖大な予算の実行に伴う政府の財政資金計画によりますれば、一般会計の普通歳入、特別会計における公債または借入金、地方債、復興金融金庫の債券等を合計いたしますと、三千四百億円余という数字に上ります。これだけの財政資金を必要とする。これは國民総所得の三分の一以上に該当するわけでありますが、これは政府が吸收する所要資金だけでありますから、政府が民間に放出する分を差引きますと、政府が必要とする資金はおよそ一千百億円を超えるものと推定されるのであります。いずれにいたしましても、本年度予算の実行がなみなみならぬ困難に直面していることを認めざるを得ないのであります。
 こういう重要な予算案を審議いたしますについて、予算委員会は審議のための一般質疑及び各党の代表質問を七日間にわたつて行いましたほか、分科会を開いて、さらにこまかい点にわたつて審議を行い、公聽会を開いて、國民の代表たる公述人並びに学識経驗者の意見を聽取するなど、愼重なる審議を行つたのであります。
 委員総会における質疑應答のうちのおもな問題を取上げて申しますと、総括的な問題としては、追加予算の健全性の問題、追加予算とインフレーションの関係、千八百円ベースと物價体系の問題等が論議され、歳入面におきましては、徴税速度と收支の不均衡及び滯納額増加とその対策、大衆課税の問題、申告納税制の問題、非戰災者特別税、專賣益金増徴の問題、脱税防止の方策及び税務機構の改革等が問題となり、歳出面におきましては、終戰処理費の内容及び負担の限度、政府出資金の可否、科学研究費、六・三制予算、災害復旧費、開拓費、行刑費等増額の問題、官公吏の待遇改善と財源の問題、経費の削減と行政整理の方針等が問題となり、その他特別会計と独立採算制、地方財政窮迫化の対策、さらに明年度予算編成方針いかん、こういう問題が取り上げられて質疑が行われたのであります。
 そこで、これらの質疑中の若干のものについて、かいつまんで質疑應答につき御報告いたしますと、第一に、この追加予算は資本家階級のための支出が多く、大衆関係の支出は総支出の一割に満たない。しかも、無理に均衡をとつたため、收入は最も捕捉しやすい間接税や勤労所得税に集中されている、こういう質問に対して、政府側からは、資本家本位の予算を編成する考えでなく、大衆生活安定のために、乏しい財源の中からいろいろと配慮したが、もちろん十分とは考えていない、國家再建のためにしばらく御辛抱願いたい、こういう答弁がございました。
 第二に、政府は現在の物價体系及び千八百円ベースの維持はできないではないか、官公吏の待遇を改善しないのか、財源さえあれば中労委の裁定を考慮するか、こういう種々の質問に対しまして、政府側から、現在の物價体系内部の調整をはかつて、この体系そのものを大きく変動させない考えである、これを破壊しない限り給與の引上げは可能であるが、その前月繰上げは現行法規上できない、あるいは財源という制約と物價体系を維持するという前提條件で、中労委の裁定についてはできるだけ考慮するとのお答えがございました。
 第三に、この予算の実行にあたつて、支出は物價騰貴によつて不足するおそれがあるとともに、歳入徴收の困難に伴い諸般の問題が激化するのではないかとの質問に対しまして、政府は、いろいろと長い御答弁がございました。第三・四半期の收支の程度に租税が徴收できるか、目下檢討中であるが、收支不均衡の万一の場合の準備として、大藏省証券の発行限度を四百億円に引上げ、あるいは貯蓄の増強に努めて、予想される巨額の公債発行に対処したい、こういう御答弁がございました。さらにこれに関連して、滯納額の増加、脱税防止、やみ所得の捕捉の困難及び税務機構の欠陷等の問題については、滯納額増加の理由は、財産税等の更正決定の事務繁忙のために所得税の滯納処理が遅れたことと、申告納税制度による所得税の更正決定には二、三箇月の時間的ずれが技術的に免れがたいということにある、こういう御答弁であり、また滯納処理を迅速にし、滯納利子の引上げを行い、脱税防止については、從來の罰則を強化し、今後は脱税事実については摘発、警告及び告発をするやみ所得の捕捉については、第三者通報制、探聞調査、帳簿檢査、こういうものを活用し、また消費生活の面から押えて、本人からの聽取をも併せ行つていきたい、税務機構の改善拡充については、とりあえずでこぼこ調整その他税務官吏への給與を増額する等の待遇の改善に着手しているが、今後の増額については政令によるか、法律によるかは檢討中である、その他講習会の開催、人材の抜擢、人員の増加等を実行する一方、國民納税運動を促進したい、こういう御答弁がありました。
 第四に、歳出の面については、終戰処理費に関しまして、昭和二十一年度中に余分に支拂われている部分はどうするか、その國民経済に占める負担の限度はどこにあるか、朝鮮向け資材費等の措置いかん、公定價格でこの予算を実行し得る確信があるかどうか、こういう質問に対しまして、政府は、余分に支拂つているものはこれを回收する、負担限度の問題は、これを計上するに際して、極力金銭及び資材を減額してあるが、その資材が生産を圧迫しないように、貿易回轉基金によつてその輸入を懇請中であり、朝鮮向資材の点は、講和会議において決定すると思うが、現在は立替拂である、公定價格による支拂の実行については、進駐軍側の計画が途中で変更されないこと、割当通り資材がまわつてくれば遂行されると思う、こういう御答弁を得たのであります。
 第五に、復興金融金庫への政府の出資金及び復金債券の消化の問題でございますが、政府側から、復興金融金庫の出資は復興金融債券の発行額を減額するためにやつたものだが、この債券の発行高がインフレの要因とならないように、保証融資制や市中銀行による共同引受制その他を通じて市場消化に努めたい、こういう御答弁がございました。
 最後に第六に、明年度予算に対する用意はどうか、こういう質問に対して、政府側からは、明年度予算の提出時期については、明年度予算は片山内閣としての最初の本予算であるから、十分國会と連絡をとつて編成したい、ただ異常の経済状態が続いているために、不本意ながら本年中に提出することは不可能と思う、こういう意味の答弁がございました。
 第三は、公聽会における各種の公述人または学識経驗者によつて述べられましたところの、本追加予算に対する國民を代表する意思と見らるべき意見の大要でございます。予算の審議に愼重を期するために、ただいま申し上げましたように、十一月十一日、十二日の二日にわたつて公聽会を開催いたしまして、学識経驗者、産業及び金融界の代表、労働組合関係の代表、一般の公述人から意見を聽取いたしたのでありますが、その大要は、大体次のようにお聽きすることができたのであります。
 ます追加予算全体の批判といたしましては、これは單に形式的な均衡がとれておるというだけのことで、國民経済全般としての総合的見地から編成されていない、これではますますインフレーションがひどくなるおそれが多い、殊に新規財源として増税及び新税が行われる上に、高率のタバコ値上げが行われることになつておる、また七月の新物價体系と給與水準を維持することは不可能であるという意見を非常にたくさんお聽きすることができたのであります。
 歳出につきましては、一方で赤字温存の経費を増大しながら、他方で現行給與水準を維持しようというのは無理である、また失業対策費等の社会的支出が不十分である、こういう意見も多数にございました。歳入面につきましては、國民の税負担が限度に近い、徴税の比較的容易な勤労所得税や間接税等大衆課税の重みがますますひどくなつて、大所得ややみ利益が負担を免れている、この傾向は、現在の政府徴税機構が不完全であるために一層こういう情勢が激化されておる、この分では、租税滯納や脱税のため年度末には巨額の歳入不足が生じるという意見が支配的でございました。
 それではこれに対していかなる対策があるかと申しますと、歳出の面においては、行政機構の合理化はどうしても行わなければならない、また歳入の面においては、新税を創設するよりも、税務官吏を優遇するとか人員を増強するなど徴税機構の拡充強化を行い、租税の滯納や脱税を取締らねばならないとの見解が一般的でございました。なお、このほかに一部の意見といたしまして、價格差益金は收納の方法を改めれば予定の三倍に増加できるという見解、石けん、甘味料、砂糖などを專賣品にせよとの意見、開拓事業は國営にすべしとの主張、國会に國費節約委員会のような制度を設けて國費節約を監督せよとの意見など、その他注目すべきいろいろな意見を公聽会においで聽くことができたのでございます。
 第四は、かくのごとき愼重なる審議の結果に基く結論たる討論の情勢と、採決の結果に関する御報告でございます。まず討論の概要を申し上げます。社会党の中原健次君は、この追加予算によつて大衆負担が過重となることなど数点を指摘されて、昭和二十三年度すなわち來年度の予算編成に対する政府への注意を喚起して、本案への賛意を表されました。次に鈴木正文君は、自由党を代表して、本予算はすでに一部破綻した千八百円の基準の基礎の上につくられ、また本予算の施行によつてインフレへの加速度加えるとの前提に立つて、行政整理と企業整備の断行、税制の改革等七項目にわたる意見を述べ、さらに補正予算第七号中、物品税の減税、酒類配給公團、農業生産調整費等の歳入歳出削減による六億円余の減額に関する修正案を提出されたのであります。次に押川定秋君は、民主党を代表して、行政整理の必要を述べ、予算実行において極力收支バランスに努力すべき事を要望して本案に賛成され、次に川野芳滿君は、國民協同党を代表して、新しい物價体系の改訂、公約した政策の実行等八つの希望條件を附して本案に賛成され、次に第一議院倶樂部を代表して東井三代次君は、金融健全化、予算に科学性を與えること等の五つの條件を附して、これまた本案に賛成され、野坂參三君は、共産党を代表して、この予算はインフレーションを激成し、また大衆の犠牲を要求するものであるからその他の理由で、予算の返上を主張されたのであります。
 かくて討論を終り、採決の結果、自由党の西村久之君提出の修正案は少数にて否決、原案、すなわち昭和二十二年度一般会計予算補正(第七号)、昭和二十二年度一般会計予算補正(第八号)、昭和二十二年度特別会計予算補正(特第三号)、これについて採決した結果、多数をもつて可決いたしました。自由党の庄司一郎君、共産党の野坂参三君は、それぞれ少数意見を保留されました。
 なお御報告の最後に、此の際一言申し上げたいことが二つございます。第一は、委員長より予算委員会に報告をいたしまして了承を求めた附帶決議の件でありますが、これは理事会における一應の意向として、本案を可決するにあたり、三項目の附帶條件、すなわち「今次追加予算に関し、時間的制約のため、審議條支障の少くなかつたことに鑑み、政府は占領下の事態等をも勘案し、予算編成に関しても國会の意向を反映せしめ、また審議にあたつては修正等をもなし得る時間的余裕をもたしめるよう努力すること」を含む三項目の條件を決定したいとの議がございました。しかし、かような政府への希望的條件を附するような慣例は、國会の権威の低かつた旧憲法下における議会の悪慣習であるとの有力なる見解もあつて、これをとりやめることにいたしました。しかし、この問題につきましては、やむを得ざる特殊の事情のため予算の編成が遅れて、分科会を中心とする十分なる審議の結果の必要に基く修正その他國会の意思を予算に反映することのできない今日の情勢に鑑みまして、政府に警告を與えて、今後適当なる方法により、予算の編成の過程において可能な限り國会の意思を予算の編成に際して反映せしめたい、こういう委員長の報告を予算委員会の委員諸君の御了承を得たというのが第一点でございます。
 第二点は、この予算委員会の開会前後に、委員長または委員諸君は、國民の各方面から、この予算に関連いたしまして、書面または口頭をもつてたくさんの人々から陳情を受けているのでありますが、これらの陳情のうち、もつともと思われる問題については、委員長及び委員会においても努力をいたしましたので、一應その結果についてこの機会に御報告をしておきたいと存じます。すなわち、
一、寒冷地における官公吏の燃料に関する手当は、一両日中に予算案を補正第九号として提案する。
一、六・三制の残額七億円、干害対策費、災害復旧費の若干額は、これまた補正第十号として財源の確保を得て提案する。
一、官公吏の生活の問題については、中労委の裁定に基き、これまた政府においてできる限りの措置を講ずる。
一、映画などの入場税は、來年度の歳入予算の上に大衆的課税にならないように努力する。
一、非戰災者家屋税について、廣島、長崎のごとき特殊の地域については特別の考慮を拂う。
 こういうように、それぞれ政府の御了承を得た次第であります。
 たいへん長くなりましてございますが、予算委員会における審議の経過並びにその結果に対しまする委員長の御報告は、以上をもつて終了いたします。(拍手)

発言情報

speech_id: 100105254X06419471123_004

発言者: 鈴木茂三郎

speaker_id: 18314

日付: 1947-11-23

院: 衆議院

会議名: 本会議