鈴木正文の発言 (本会議)
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○鈴木正文君(続) まず、この補正予算における歳出のなかで、終戰処理費、賠償施設処理費、價格調整費、公共事業費、その他補助的の性質の面に支出されるものを合わせますると、約八百億円に達するのでありまして、追加予算額九百二十一億円の大部分を占めておるのであります。これが直接に生産増強の面に働かないということは、性質上やむを得ないと思うのであります。さらに政府が中央労働委員会の裁定に從うといたしましたならば、ここにも同じ性質の百億円前後の資金の放出がある。
これに対して、歳入の方はどういう形で健全財政のつじつまを合わせておるか。大藏大臣は、過般衆議院におきまして、当初・補正両予算を通じて二千六百六十億円の歳入のうち、租税收入によるものが、補正分六百三十七億円、当初予算から通算いたしまして千三百三十二億円であつて、歳入のうち租税の占める分は、追加予算のみで六九%、当初予算を通算いたしまして六五%である、それから租税のうち直接税と間接税との比率は七対三になつておるのであるから、まさに健全財政に間違いはない、こういう説明をしておられるのであります。しかし、租税体系の内容を見るならば、わずかに非戰災者税、非戰災者家屋税などのほかは、いずれも平面的、機械的に税率の引上げを行つたというにすぎないのでありまして、同時に一方においては、自然増收を歳入と見合う程度に勝手に数字を羅列したという形をとつておるのであります。最近の國際経済機構の中における根本的の変化というふうなものに対應するところの税制の改革あるいは行政の整理というふうなことを断行しようとするところの氣魄は、どこにもその片鱗さえも現われておらない予算なのであります。(拍手)
私どものしばしばすでに指摘いたしましたように、上半期においてさえ租税は予定の三割前後の大滯納を來しておる。これに追加予算に示されたところの厖大な租税、これを一挙に本年の下半期において徴收するといたしましたならば、おそらくそれは千億円を越す巨額な額になろうと思うのであります。大藏大臣のしばしば言われた、極力努力するという程度のことで克服される筋ではないのでありまして、あるいはまた税務官吏の特遇改善——むろんわれわれも、かくのごときは即刻実現すべきであると思つているのでありまするが、しかし、この程度のことを実行したからといつて、この根本的に無理のある租税体系、そしてすでに飽和点を突き破つてしまつているところの國民の租税力、この二つの大きな穴を埋めるというようなことは、とうてい期待することはできないと思うのであります。(拍手)從つて、年度末までにこの方面から生ずるところの政府の支拂超過額というものは、相当厖大なるものがあり、数百億円に達するのではないかと私どもは思うのであります。加うるに、さきにも申しました通りに、明年早々あるいは本年中にも、政府は新たに追加予算を提出しなければならなくなるであろうと思うのであります。これらの面を総合しただけでも、健全財政はすでに單純な徴税の面においても、明らかに算術的にさえも破れ去つているのであります。(拍手)
さらに一層根本的な破綻は、大藏大臣が予算の編成の基礎としたと言われるところの物價体系の破綻の中にあるのでありまして、この予算そのものが、自分で物價体系を必然的に破綻せしめていくであろうという要素を多分に含んでいるという点に、重大なる破綻の根因があると思うのであります。
一体、千八百円ベースはこれを堅持するかどうかというふうな議論が行われ、政府は今日でも堅持する、堅持すると言つておりまするが、すでにまつたく崩壊し去つていることは、私が詳しく申し上げる必要もないと思うのであります。政府もおそらく、実は千八百円ベースの崩壊ということは認めておられると思うのであります。もつて端的に申しますならば、本年の七月にそれが決定されて以来、一瞬といえども、この千八百円ベースというものは現実に存在し得なかつたのでありまして、まつたく安本の作文的——足のない幽霊的数字にすぎなかつたのであります。(拍手)
この予算は初めから存在しないところの千八百円ベース、あるいは、またかりに百歩を讓つたといたしましても、すでにその予算の編成当時においてまつたく破れ去つているところの千八百円ベースを基礎として作成したと、これは大藏大臣も言つておられる通りでありますが、そういう矛盾の上に立つているところの予算であり、しかも予算自身が、その予算の遂行にあたつて、このベースを加速度的に破壊していくというところの矛盾した性質を予算自体の中に内藏しているのであります。
では、どこにそういつたところの性質が内藏されているか。第一に、無理な機械的徴税によりまして滯納を生じ、数百億円の政府支拂超過が生ずるという大藏大臣の弁明にかかわらず、日銀によつてこの赤字が跡始末されなければならないということになるのは必然であります。ここに財政インフレの大きな素因が横たわつておると申さなければならない。
それから復興金融金庫でありますが、復興金融金庫に対する政府の出資は、百億円ということになつておる。それではたして日本の産業の重要なる部面がもちこたえ得るでありましようか。とうてい、そんなことはあり得ないのであります。おそらく、これに加えて四百億円前後は、このルートから放出されなければならなくなるということは、必至だと思うのであります。これを復興債券で賄うといたしましても、今日この情勢の中で、市中で四百億円前後の復興債券が消化されるということは、常識的にも考え得られないのであります。千億円以上の税を、この下半期において、大藏大臣の言うがごとく、つつがなく徴收しながら、しかも一方において、四百億円前後の債券をも無事に市中で消化するというふうなことが、望み得るはずはないのであります。
しかも復金というものは、当初の使命であるところの産業復興の金融というよりも、むしろ今日におきましては、救済機関としての金融に忙殺されておる現状であつて、これらの資金が生産の増加というような積極的な面に向けられないことは、わかりきつておるのであります。復金というトンネルを通して、インフレ助長の危險というものは多分に遺されておるのであります。財政資金の膨脹からくるところの産業資金への圧迫は、おそらく大藏大臣がいかに説明されましようとも、この復金のトンネルを利用することによつて何らかの赤字のつじつまを合わせざるを得なくなることは、必然のことだろうと思うのであります。
次に、今後必ず提出されるであろうと思われるところの追加予算から、相当量の支出が予想される。その額を算定することはできないけれども、おそらく、今提出されておるところのこの追加予算に近いところのものが現われてくるおそれがあるのであります。
以上を併せて考えまするならば、大藏大臣の言うように、赤字による日銀券の増発はやらないなどということは、考えてみることも、また言われることも勝手でありますけれども、現実の情勢と照らし合わせまして、とうていでき得るはずがないのであります。そうして、政府の支拂い超過と民間金融に対する日銀の支拂い超過とを一緒にして考えましたならば、おそらく巨額な、場合によつては千億に近いというような数字が現われてくるということは、だれでも考え得るだろうと思います。千億になるかならないかは別として、おそらくそういう巨額な数字が現われてくるということは確かであります。以上が、大藏大臣の呼号されるところの健全財政、健全金融の、やがておそらく近い將來において露呈されるであろうと予想される実態なのであります。こういう状態のもとにおいて、インフレの高進、物價の急騰というのは必至であるだろうと思うのであります。
一方生産の面は、例年下半期において下降する。特に石炭、電力の現状をもつてしたならば、例年よりも急カーヴを描いて下降するであろうと思う。物資との見合いにおいても、インフレ高進は当然拍車をかけられざるを得ない情勢にあるのであります。こうした情勢においては、経済白書に盛られたところの國家財政と企業と家計、この三つの総合性というものが、はたして保たれるでありましようか。
大藏大臣は、間接税増徴を極力避けて、そうして大衆負担を軽減したいといつておられる。補正予算についてみても、所得税、非戰災者税、家屋税その他直接税系統のものは、合わせて三百八十億円にすぎないのでありまして、これに対しまして、間接税は大ざつぱに計算いたしましても約二百億円、これにタバコ專賣の收入二百五十九億円、こうしたことを見合いましたならば、大衆の負担がこの予算によつて軽減されるという大藏大臣の説明をそのまま受取ることは、とうていでき得ないはずであります。
それから鉄道、通信等の上にも、赤字が、しばしば政府の説明されたように残つておる。七十五億円を一般会計から補給しておるけれども、しかしながら、なお莫大な赤字が残されておる。通信料の値上げ、鉄道運賃の値上げは必至であろうと思うのであります。それが大衆課税の性質をもつものであることも、言うまでもないところでありましよう。これらの点から総合いたしまして、千八百円ベースはすでに完全に破れ去つておるのであります。裸の王樣の話のように、政府部内でも、だれもが、それは破れておるということは承知しきつておるにもかかわらず、破れていない、破れていないと騒ぎ立てておるだけのことでありまして、千八百円ベースの上に立つた予算というふうなものは、今日の情勢においては、まつたく意味がないと言わざるを得ないのであります。予算編成の基礎になつたところの千八百円ベースが完全に崩れ去つておる。さらに予算等を実行するにあたりまして、加速度的にこれが破れていく。大内教授の言うがごとく、石橋財政と比べても、はるかにインフレ的の惡予算であると同時に、わが國に今日までに現れたところの最も性格破綻のインフレ高進予算であるという結論に達せざるを得ないのであります。
しかしながら、われわれもまた、今日日本の直面しているところの内外の微妙な関係、そういつたものに対する配慮におきましては、これは他党と同樣、決してその点において欠けるところはないつもりであります。大藏大臣の苦衷をも、一應は諒といたします。特にこの中には、終戰処理費も含まれております。それから今日の日本の政治及び経済の空白的実情を考えるとき、この予算に対しまして根本的の態度をとり、返上とかあるいは大修正とかいうふうな方向をとることは、相当考えるべきであると思う。最初にわれわれ自由党から提出いたしましたように、最少限のもとに修正案を附し、その他の部分につきましては、諸般の事情を考慮いたしまして、やむを得ずこれを認める。これが補正予算に対しまする日本自由党の意見であります。以上、表明いたします。(拍手)
[「休憩」と呼ぶ者あり]