長野重右ヱ門の発言 (本会議)
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○長野重右ヱ門君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま上程せられておりまする昭和二十二年度一般会計補正第七号、第八号並びに特別会計第三号に対しまして、先ほど委員長の御報告がありました通り、政府原案に賛意を表しまするとともに、修正案並びに少数意見に反対の意思を表するものであります。(拍手)
われわれは、追加予算が必至のものであるということになつてまいりまするとともに、わが國現下の財政金融の状況と國民経済の実情がまことに樂観を許さざるものがある現状に鑑みまして、國民経済に及ぼしまするその影響も眞に重大なるものありと考えて、大なる関心をもつてこれが注視をいたしてまいつたのであります。一ころは、追加予算の総額が歳出において千億円、これを補填いたしまするためには、五百億円の赤字さえ生まなければならないのではないかと言われておりましたものが、御承知のように歳出九百二十五億二千二百万円、歳入九百七十四億二千六百万円に結末がついたのであります。
現下の日本の状態を考えまするとき、過般、大藏大臣は財政演説において、貿易再開を見るわが國にとりましては、國際的なる援助を期待するために、健全財政を確立して國際信用を回復することを考えなければならないとお述べになつたのであります。私どもも、まつたく同感でありまして、本追加予算案が一たび國会に提出いたされまするや、委員会におきましては、いろいろと論議をいたされたのであります。一部の人は、この追加予算を評して、收支の均衡をとることに重点をおいて、ために生産面が圧迫せられて、生産的意義が少い、すなわち、日本経済の再建には何らの役に立たないと批評されておるのであります。はたして、そうでありましようか。
もちろんわれわれは、予算のバランスが形式上とれたからといつて、いわゆる黒字の予算であるからといつて、健全財政であるということはできません。しかし、なおインフレの前途に警戒を要すべき幾多の点のあることは認めます。さりながら、一般会計追加予算において四十九億円の歳入超過を計上して本予算案におきまする赤字を消して、鉄道、通信に七十五億円、あるいは預金部資金に十億円をまわしたということは、追加予算の編成の方法としては、私どもいまだかつてそれを聞き及んでおらぬのであります。いわゆる前例のない努力が拂われておるのであります。このような措置によりまして、一般会計、特別会計を通じて、当初予算を含めて総合的健全財政を確保いたしましたことは、十幾年來のことであります。
殊にこの予算の編成にあたりましては、幾多の前提條件があります。この追加予算の編成を必要といたしましたることについては、大体三つの前提條件があると思う。一つには、インフレの進展による物價の騰貴、二つには、社会政策費の増大、三つには、賠償撤去の実現がこれによつて必要とせられたのであり、考えようによつては、深くこれを檢討いたしますると、すなわち吉田内閣がつくられました当初予算の評價替だということができるのであり、多分にその性格を含んでおる。(拍手)
自由党の諸君は、先ほど來修正意見をお出しになつて、いろいろと論議をせられました。それを承つておりますると、まつたくおのれらの内閣によつてつくつたその当初予算を棚上げにして、いろいろ論議せられておりますることについては、断固反対せざるを得ないのであります。(拍手)私は財政当局の努力を、政党政派を離れて高く評價しなければならないと考えるのであります。
なお、この機会に二、三の点を申し上げまして、政府当局の注意を喚起いたしておきたいと思うのであります。その第一は歳入の面でありまするが、國家財政を立てまする上に、國民所得というものをもつと深く考えていかなければならないのではなかろうか。すなわち、その第一といたしましては、この予定せられたる歳入をはたして確保することができるであろうか。また本年の國民所得に対する負担は飽和点に達している、限度に達していると考えるのでありまして、これに対して何とか打開の抜本的なる方策を立てなければならぬのではなかろうかと思うのであります。
当初予算を含めましたところの租税は千三百三十二億四千万円でありまして、総歳入の六三%に相なつております。本年度の國民所得は、八千五百億円あるいは九千億円と、いろいろ唱えられまするが、八千五百億円と仮定をいたしまするときに、この割合は一五・七%にあたります。これに官業の收入あるいは本予算、追加予算を加え、五百五十四億七千万円を加えますと、この割合は二二・一%となつて、このほかに地方税等を加味してまいりますと、國民所得に対しまするところの割合は、二四%ないし二五%ということになつてまいるのであります。
もちろん、計算の方法にもよりまするが、私の計算によりますと、昭和九年、十年、十一年、この三箇年の國民一人あたりの平均負担は十一円二十八銭七厘と記憶いたしております。ところがこれに対して、本年はまさに二千百九十九円三十九銭でありまして、これを他との比率を求めますと、賃金は御承知の通り二十七倍、物價は六十五倍、國民の負担は百九十五倍のアンバランスであります。
國民個々に対するところの課税について十分考えなければならぬことは、もちろんであります、やみ所得をどうして押えていくか、脱税を徹底的にどうして取締まるかということは、税務当局の責任であります。所得の階級が混乱いたしているからといつて、負担の重圧が農民や勤労階級、中小企業にかかる、すなわち、正常なる所得者に負担の重圧がかかるということについては、政府は十分の考究をいたさなければならないのであります。しかも間接税負担が、いわゆる徴税技術の面からこれに依存する傾向があり、大衆課税のこれらの問題につきましては、どこどこまでもやみ所得を捕捉し、そうして渾身の勇を揮つて政府はこの國家財政のために、國民生活の安定のために努力を拂わなければなりません。
また、これだけの税金がとれるかどうかということについては、委員長報告その他の同僚諸君のお話にもありましたように、現在百億円が溜つている。これから僅かの間に千七十億円をとらねばならぬという状態で、はたしてこれがとれるかどうか。もし、とれないということになつてまいりますならば、すなわち、國家財政の歳入出のずれというものは、またぞろ日銀に依存しなければならないのであり、大藏証券の増発となつて、インフレーションを高揚いたしてまいりますことは言うまでもありません。四月から十月に至りますところの日銀券の増加額、その八二%が政府取引であり、その重点が歳入出の時間的ずれであるということを考えましたときには、政府はこれらに対して多大の努力を拂わなければならぬと私ども考えるのであります。
しかも、これを解決いたしていきまする上には、納税思想の徹底であるとか、あるいは現在の徴税組織を根本的に整備しなければなりません。過般來、財務官吏の特遇改善の問題がありました。われわれはいち早く、これを委員会において政府当局に速やかに改善することを要望し、政府また速やかに改善することを言明いたしておるのであります。これには何ら異議はありません。他の官僚と比較して、財務の官僚が非常に低いということも、私どもは認めたのであります。しかし、十一月十九日の讀賣新聞におきまする、佐原税務署の、謝礼を寄こせば手加減を加えるという記事は、大藏大臣はおそらくお読みになつたと思う。総理大臣もお読みになつたと思いまするが、このことについては、すでに檢察廳が発動いたしたそうであります。どれだけ國民に暗い影を投げたかということ、すなわち官紀の粛正を速やかにやらなければならないということは、総理大臣もお氣づきになつたであろうと思います。
税を円滑に徴收いたしまする上には、どこまでも國民的感情をよく考えなければならないのであります。國民が得心して國家の危機に赴くように、これを進めていかなければなりません。戰時中國民が毛虫のようにきらつたものに、勤労動員署と警察署があります。今日におきましては、御承知のように警察署は、内務省の解体によつて画期的なる警察機構が生れんといたしておりまするが、ひとり税務署のみ放擲せられておるのでありまして、この財務官吏の民主化ということを取上げるには、今日よりよい時はないのであります。
要するに今度の予算が、先ほどいろいろお述べになつたように、形式的均衡はとれていても実際的には赤字だと言われるゆえんはどこにあるかと申しますると、國力に比較してこれが過重なりや否や、國家財政の赤字が形式的なると否とにかかわらず、企業や家政に轉嫁されることのないようにということに主眼がおかれてあると思うのであつて、深くわれわれとしては、今後の國家財政の上に考えていかなければならない問題だと思います。
第二には歳出の問題でありまするが、この歳出を実行に移す場合の政府の決意であります。私はただ簡單に、先ほど二、三の人がお述べになつたように、物價体系が崩れておる今日、このマル公價格でやれるか、こんなものはやれないじやないかと、頭ごなしにそれを非難しようとするものではありせん。もちろん、そうした注意を喚起することも必要ではあります。しかしながら、政府が深い決意をもつておりまするならば、私はやれることだと思う。やれるだけでなくして、また政府の決意いかんによつては、いわゆる新物價体系を維持し、流通秩序の確立がはかり得られるものであると確信いたしておるのであります。何となれば、政府支拂は一切マル公であります。
これは、九月十二日の連合軍からの指令に基くこともちろんでありまするが、政府の支拂は材料用品及び労銀すべて公定價格で支拂うという、この法律案が今國会に出されております。やがて、これは議決せられるでありましよう。こうして政府が公定價格一本で行くのだということになつてまいりますると、あるいは業者は、それならば賣らないということにないてまいつて、一般行政がやれないという事態も起つてくるかもしれぬ。建設に、修理に、その他政府事業は一時中止しなければならないということが起るかもしれません。現に進駐軍の土木事業などで契約のできない部面があちらこちらに起つておるということも御承知であります。
この物價体系をいろいろと議論をする人がありますが、今申しましたような、こんな状況が起りましても、政府自身が非常なる決意をもつて——すなわち政府は、日本最大の物資と労務の支拂所であります。一般会計だけでも二千余億円であり、特別会計、地方公共團体あるいは公團の購入資金というものを入れてまいりますと、日本の総需要の半額は、おそらく政府でもつて支拂うのではなかろうかと思います。そういたしますと、政府がこの大なる決心のもとに、大事業者としてその法律に恥じざる確固たる態度でマル公嚴守をされますることは、特殊なる企業は別として、惡徳の民間事業はあるいは立ち行かなくなるようにもなり、今申しましたように、政府は一時この事業を執行することが困難になるかも存じません。
しかし政府は、新聞によりますと、これらの問題については、すでに連合軍の好意と援助を懇願せられたということであります。また総理の談話として、連合軍関係の需要は、政府は万難を排してでも調達しなければならぬという決意を披瀝いたされておるのであります。すなわち、政府の腰が碎けなかつたならば、公定價格を維持し、政府みずからやみ買根絶の決意を示すこと、今日よりよき時期はなかろう。諸般の情勢上、ブラック・マーケットの仕事もだんだん狹められております。政府の強行こそ、インフレ克服の一つの條件であります。
また、いろいろな歳入における面も考慮を拂わなければならぬと信じております。地方分與税を減額いたされましたが、この問題につきましては、私どもまことに遺憾であります。地方財政を一層困難ならしめ、財政金融の矛盾を激化いたしますとともに、地方財政の健全化を政府みずから破壊しておることになります。
また歳入の増加をはかります上においては、先ほど委員長報告にもありましたように、この價格差益金の問題であります。今回の計上は六十億円であります。これは御承知の通り所管が物價廳にあり、大藏省との連絡でやつておるのでありますが、その事務的経過を考えてみますと、なお檢討を要するものがあつて、相当の増收をはかり得るものである、こう考えておるのであります。
第三には、健全財政堅持のために、すなわち生産増強、民生安定のために、企業の合理化と行政整理というものを取上げていかなければならないと思います。これについては、追加予算にその片鱗が現わされております。政府当局もしばしば、非常なる決意でもつて進むということを表明いたされております。齋藤國務相は、この間参議院の労働省設置に関する委員会において、官吏は二分の一か三分の一かに減らすことができる、それで仕事に何らの不自由は來さないのである、ただ、それをやつていくには強い力が必要であるということを言われておるのであります。日本経済の再建、企業の合理化、赤字に悩むこの企業整備を余儀なくされておりますときに、國家がひとり行政整理を避けることはできないのでありまして、民間の企業整備を促進する意味からいつても、政府またみずからこの範を示して行政整理をやらなければなりません。
國会は先ごろ、國家公務員法を議決いたしたのであります。これによる新しい官廳機構の改革と、國家公務員に関する新官僚制度とが併行して、民主國家にふさわしい行政組織を築き上げていかなければなりません。またさしあたつて問題といたしまして、國家の赤字財政ということも取上げていかなければなりませんが、われわれは、この問題を進捗いたしまする上において、ただ單純なる首切りをやれと言うのではない。すなわち、その受入態勢を十二分に考慮して、時間的にも速やかに、この問題を政府みずからが勇敢に進めていく必要を認めるのであります。
第四には、産業資金の問題であります。これはいろいろ綜合資金計画との面もありますが、復金に対してたつた四十億円を計上されておるのであります。もちろん、諸般の情勢上やむを得なかつたという点もありましよう。しかしながらこの復金の債券が現在市中に消化されておらないで、大部分が日銀のしよいこみになつておることも御承知でありましよう。何とか発行の條件に適正なる改正を施しまして、これが消化が出來るように考える余地はないか。また復金支拂保証の拡大であります。この七月からこの制度は行われたのでありますが、この復金保証制度を拡大いたしまして、一般銀行が貸出ををやる場合、復金に依存しないように進めていくことも考えていかなければならないことだと思います。それとともに、政府が現にやらなければならないのは……