栗栖赳夫の発言 (予算委員会)
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○栗栖國務大臣 それでは二十二年度の豫算の概算とその見透しについてお説明を申し上げたいと思います。
昭和二十二年度豫算はすでに第一四半期、すなわち四月、五月、六月分については實行濟でございまして、今や第二四半期の實行階段にはいつておるのでございます。しかしながら本豫算の編成は昨年の暮から本年の初めにかけて行われたのでございまして、當時と今日では豫算編成の基盤といたしまして、社會的、經濟的諸條件が相當變つておるのでございます。すなわち本年度豫算の物件費につきましては、大體昨年の十月ないし本年一月頃の物價事情を基礎として計算したものでありますが、その後におきまして相當の物價騰貴が現われてまいりました。また新物價體系の制定に伴いまして、公價の全面的改訂が行われ、人件費についてもまたいわゆる千二百圓の水準が千六百圓の水準となり、さらに今囘千八百圓の水準に改訂されるというような、基礎的事情に相當の變化を生じておるのであります。從つてこのまま推移いたしまするならば、歳出追加額は相當の巨額に上ることと思われます。また歳入につきましても相當の自然増收もあることではありますけれども、收支の均衡保持は決して容易でないのであります。政府といたしましては、歳入歳出の兩面にわたりまして豫算の再檢討を行い、あくまでも健全財政主義を堅持する建前のもとに、すでに實行中の歳出及び諸情勢に伴う必要な追加歳出に對して、思い切つた削減を加えまして、絶對に收支の均衡を維持してまいりたい、こういう方針のもとに追加豫算をただいま編成中でございます。
そこでまず、すでに成立いたしました實行中の國の歳入歳出豫算の概況を申し上げてみますと、一般會計の豫算は歳入歳出ともに千百四十五億圓でございまして、このほかに二十四の特別會計の歳入及び歳出が、それぞれ二千五百八十八億圓と二千三百四十四億圓とございますので、一般及び特別會計を單純に合計いたしますと、歳入の合計が三千七百三十三億圓、歳出の合計が三千四百八十九億圓と相なるのであります。この合計額から重複いたしております金額その他を控除しましたいわゆる豫算の純計額が、歳入では二千三百五十二億圓、歳出では二千三百三十億圓と相なるのであります。すなはち現在のところ國家財政の全體の幅は大體二千三百億圓程度というところであります。
次に右の一般會計豫算のうち歳出豫算について、すでに御承知の點も多いと存ずるのでありますが、重要な項目を拾つて、その實際支出状況から、今後とらんとする措置のあらましを申し述べてみたいと思うのであります。
まず終戰處理費の豫算額であります。これは二百七十億圓と相なつております。これは進駐軍關係の兵舎、住宅等の設置、勞務の提供、鐵道通信施設の供與、賠償施設の管理、連合國財産の返還事務等の經費でございまして、第一四半期の支出實績額は、四月、五月、六月の三箇月間ですでに大體百億圓内外と相つておるのであります。最近における物價、勞銀の騰貴、通信料金、鐵道運賃の値上によりまして、相當の不足が出てくることと思われるのであります。これは特に連合國軍側と折衝を要するものでありますので、今その不足額を申し上げ得る段階に至つておらないであります。なお今申し上げました金額の中には、賠償施設の撤去に關する經費は含まれておりません。
次に地方分與税分與金の豫算額でありますが、これは百十億圓となつておるのであります。これは地方分與税法に基きまして所得税、法人税及び入場税にリンクして、その一定率を地方税として地方に交付するものであります。これら國税の増收がありますにおきましては、この金額も當然増加する筋合のものでありまして、今年度にはさらに數十億圓の追加を要するものと思われるのであります。
次に金融再建補償金の豫算額であります。これは百億圓と相なつておるのであります。これは金融機關再建整備法に基きまして、第一封鎖預金の支拂を確保するために、銀行その他金融機關において生ずる損失を、國庫において補償するためのものであります。補償は交付公債で行われるのでありますが、ただいまのところ金融機關の再建整備は遲れております關係上、未だ支拂いに至つておりません。あるいは本年度としては多少の不用額も出るのではないかと思われるのであります。
次に價格調整費の豫算額であります。これは百億圓が豫定されておるのであります。しかしこのほかの食糧管理特別會計へ繰入として六億圓ばかりがございますし、これは豫算編成當時四月から六月までの同特別會計の損失として豫定されておつたものであります。これを加えますと百六億圓ほどに相なるのであります。そうしてこれは今囘の新價格體系の制定に伴いまして、新たに相當額の追加が必要となるものであります。もとより本經費につきましては、その内容を十分檢討して、追加計上額を最小限度に止めたい考えではあります。それにしても物價安定帶の考えから見、相當巨額の歳出追加は必至と考える次第であります。
次に公共事業費の豫算額であります。これは九十五億圓となつておるのであります。この豫算額の基礎となつております單價は、大體昨年暮ごろの物價水準によつておるのであります。この點から考えましても、このままでは事業の分量の二分の一程度しかできないだろうと思われるのであります。
さらに今春以來の災害の頻發、經濟緊急對策の實施による企業整理に伴う失業對策等の點から考えましても、相當額の追加を要することとなると思うのであります。しかし本費につきましても、事業施行の重點を、失業者の生産面への吸收におく建前を徹底いたしまして、その事業別及び地域別配分の再檢討を行い、追加計上額を最小限度に止めたいと思つておるのであります。
さらに國債費の計上額であります。これは八十一億圓と相なつております。これは國債借入金の利子、借替または償還金發行のための諸費用にあてるものであります。昭和二十二年四月末における一般會計の負擔の公債及び借入金は、臨時軍事費借入金及び外債を除きまして、國債は千八百七十億圓、借入金は三十一億圓となつております。特別會計の負擔に屬するものは、國債が百二十億圓、借入金が九十二億圓でありますが、その大部分は國有鐵道及び通信事業であります。なおこのほか昭和二十二年四月末現在での大藏省證券の現在高は百十五億圓、食糧證券の現在高は六十四億圓と相なつております。
次に政府出資金の豫算額についてでありますが、これは七十一億圓となつております。これは復興金融金庫に對する出資金が六十億圓、各種の公團に對する出資金が十一億圓見當であります。公團はまだ全部設立を見るに至つておらず、今後順次設立されることと思いますけれども、現在設立されておる公團とその出資金を述べてみますと、船舶公團が三億圓、配炭公團が三億圓、石油配給公團が六千萬圓、肥料公團が六千五百萬圓、價格調整公團が三千萬圓、貿易關係の公團が四公團で八千萬圓となつておるのであります。今後設立を豫定されておるものとして主食關係のものが八千萬圓、食料品關係のものが四千萬圓、油糧關係のものが一千萬圓、飼料關係のものが一千萬圓であります。
次に生活保護費についてであります、その豫算額は三十六億圓となつております。これは生活保護法に基く貧困者の保護救濟に關する經費でありまして、保護の主體をなす生活扶助費について、主要食糧等の價格について相當大幅の引上げがございますので、これも相當額の追加は避けがたいと存じておる次第であります。
次に給與改善費についてであります。本年度豫算に計上してある俸給給料等の人件費は、大體七十七億圓でありますが、これはいわゆる千二百圓基準案によつて凸凹調整の百圓を除き、大體千百圓の基礎で計上してあつたものであります、しかしその後官公職員の待遇改善審議會で千六百圓を基準として、また本年一月に遡及して實行することとなり、さらに今後の食糧關係の改訂に伴い、七月以降千八百圓基準に改めることとなりましたので、これがためには數十億圓の金額を追加計上しなければならなくなつた次第であります。
次に義務教育費についてであります。これは二十四億圓が計上してあるわけであります。これは義務教育に從事する職員の俸給費等に對し、地方に二分の一を補助する建前となつておるのであります。この中にはいわゆる六・三制の經費が四億圓ほど含まれておるのであります。六・三制の經費は、地方分與税分與金において地方財源を見た分を合わせ、八億圓をもつて出發したのでありますが、現在各種の問題を起しておることは私どもといたしましてもよく承知しておるところであります。
次に物資及び物價調整事務取扱費でありますが、これは二十二億圓となつておるのであります。これは物資配給關係の公團の職員の經費が十五億圓、物資の割當事務關係の經費が七億圓ということになつておるのであります。配給公團の職員の經費は國庫において負擔することになつておりますし、公團は配給の手數料によつて、國庫より交付を受ける額と同額の歳入を國庫に納付せねばならぬことになつておるのであります。
以上述べましたところの經費を總計すると、九百九十億圓程度でありましてすでに豫算の九〇%に近いことになるのであります。殘り百六十億圓ほどのものについて多少の項目を拾つてみれば、豫備費が三十億圓、引揚民關係の經費が二十億圓、船舶運營會補助が十二億圓、警察及び消防費が十四億圓であります。なお一般會計豫備費の現在までの使用決定額は七億圓ほどであります。
以上述べましたところは歳出の面でありますが、次に歳入について申し上げますと、現在實行中の豫算はこれまた御承知の通り租税及び印紙收入が六百九十五億圓、官業及び官有財産收入が二百五十八億圓、雜收入が百四十二億圓、合計して普通歳入が千九百十六億圓を計上してあるのであります。公債金收入はわずかに四十八億圓を計上してあるに止まつておるのであります。なお官業及び官有財産の收入の中には、專賣局益金が二百二十六億圓を含んでおるのであります。これを租税及び印紙收入の額に加えますと九百二十一億圓と相なり、實質上の租税收入は歳入の八一%を占めることになるのであります。しかしながら本年度豫算は、以上簡單に述べましたところでもおわかりのことと存じますが、幾多の問題を包藏しておるのでありまして、このままにしておきましては、公價の改訂、給與水準の引上げ、經濟緊急對策の實施等によりまして、巨額の歳出追加を必要といたしておるのであります。他方歳入は相當の自然増收を見こみましても、このままではなお相當額の赤字公債を財源に仰がなければならぬという理になるわけであります。いわゆる健全財政主義が破れる危險がここにあるのであります。そこでこの際として財政收支の均衡保持は、インフレーシヨンの進行を抑制するため絶對の要請でございますので、私どもは何とかして健全財政を護持せねばならぬと考えておる次第であります。しかしてこれには歳出をできるだけ切り詰めるとともに歳入をできるだけ上げるよりほかにはないと存ずるのであります。すでに成立しました豫算についても、編成後の事情の變化を考え、節約の餘地を檢討いたしますとともに、新たに追加を要する經費につきましても、徹底的な削減、壓縮を加えまして、歳出の限度を歳入の調達可能額の範圍内に止めなければならぬと存ずる次第であります。もちろん歳入と申しましても、その大宗は租税と專賣益金でございます。最近の經濟情勢によりますと、租税については現行税制のままでも相當の自然増收があると思われるのであります。しかしこれを確保するためには、税務機構の十分な運營についてあらゆる努力を傾倒せねばならないのであります。歳出の削減壓縮と申しましても、各省はもとより、國民がおのおのの立場でそれぞれの主張もあることと存じますけれども、經濟危機に直面し、これを乘り切るためには、思い切つて斷固たる措置がとられなければならぬと確信する次第であります。以上は主として一般會計について申し述べた次第であります。これは特別會計についてもまつたく同樣であります。
特別會計豫算につきましては詳細に申し上げることを避けますが、問題は鐵道、通信等の企業特別會計についてであります。企業特別會計につきましては獨立採算制を維持する建前をもちまして、今年度より會計制度を改め目下實行中であります。これらの會計においても物價、勞銀の騰貴により、收支の均衡は危殆に頻しておるのであります。これについては經營を徹底的に合理化いたしますとともに、各種料金等の引上げも考慮せねばならぬと考えるのであります。漫然とその赤字を借入金に仰ぎ、また一般會計より補填するがごときことは避けねばならぬと存ずる次第であります。
なお地方財政につきましても、健全財政を堅持する必要があることは申すまでもないと存ずるのであります。物價の騰貴、給與水準の上昇等の影響は、地方財政につきましても深刻に現われてまいつておるのであります。地方分與税分與金の追加交付により、地方財政は相當緩和されると思いますけれども、なお制限外課税その他極力歳入の増徴を行い、收支の均衡を保持する必要があると存ずる次第であります。しかしこれがための具體的措置は至急に講じなければならぬと思うのであります。
なお最後に健全財政と健全金融との關係でありますが、健全財政の尻が金融にまわるということではまつたく意味がない、インフレーシヨンの阻止はとうていできないのであります。そこで財政の健全性を維持するとともに、極力赤字金融を抑制することにより、融資の規正等に格段の努力をいたしたいと考える次第であります。