芦田均の発言 (予算委員会)
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○芦田國務大臣 ただいま原君よりいろいろと御意見の御發表があり、私も非常に興味深く拜聽しました。原君の御意見によれば、現内閣は著しく國民の信頼を失つているから、この形をもつて來るべき講和會議に臨むことは不適當であろうという御意向でありましたが、もとより講和會議の始まる時期が未定でありますから、講和會議と現内閣の壽命というものは、必ずしも相關連して考えるべき必要は少しもないのであります。しかしながら、それはしばらく別問題として、片山總理は去る六日に國會の絶對多數をもつて選定された總理大臣であります。その總理のもとに、衆議院においては絶對多數の支持者たる議員をもつていることも、御承知の通りであります。しからば本年四日の總選擧、もしくは六月に片山總理が國會の多數の信任を受けて就任して以後の國内の輿論が、著しく變つたという事實が、表面に現われているか。輿論の推移を知ることは、なかなか困難な問題でありまして、科學的に行はれた輿論調査ということも、一つの證據になるでありましよう。またときどき行われる議會の補缺選擧の結果も、一つの證據としてあげることはできると思いますが、わが國においては、不幸にして輿論の推移を科學的に的確につかむような方法があまり現在まで行われておりません。やや信頼するに足る事實は、おそらく國會の補缺選擧だろうと思いますが、これも衆議院議院員選擧は、ほとんど補缺選擧を行う期間がなかつたのであるから、唯一の補缺選擧は參議院の補缺選擧であります。鹿兒島縣を初めとして、群馬、栃木あるいは徳島、それらの補缺選擧の結果に照して見れば、現内閣が著しく國民の輿望を失つたという事實は、まだ現われていないのであります。そういう觀點から見まして、現内閣は著しく國民の信頼を失しておるから、餘命いくばくもあるまいという原君の御結論に對しては、必ずしも贊意を表することができません。
さらに講和會議に臨むには、擧國的の内閣であるべきだという御議論でありまして、私もその念願においては同意であります。できるならば、かような形において今日政權が樹立されることが望ましいと思つております。それは必ずしも講和會議とのみ言わず、占領軍の治下における日本の政治のあり方としては、擧國的な政府樹立が、今日望ましいと考えておるのであります。その目的のために、本年の六月、われわれは最後まで努力したという事實は、おそらく原君も御承知であろうと思う。不幸にして自由黨はこの擧國政權に反對であり、今日は純野黨として政府反對の立場に立つておることも御承知の通りであります。これをどうして擧國的の内閣に改造するか、野黨と政府黨とが明白にその立場を異にして政策上の爭を續けている限り、これをいずれかに統合するということが、なかなか容易ならぬことであることも御承知のことと思う。從つて立憲政治の原則としては、國民の多數の意向を代表する者が政治の局に當るというのが常識でありまして、必ずしも擧國的な内閣でなければ、立憲政治の運用ができないというわけではありません。また原君のように、總選擧を行つて二大政黨の對立的な形にするがよかろうという御議論でありますが、これも選擧法の改正や政治家の差金だけでできることではありません。政黨の存在は自然發生的のものでありまして、二大政黨樹立に便宜な選擧法を考えるという方法はあります。しかしながら、選擧法の改正によつて、必ず二大政黨對立になるかといえば、もともと小黨分立という現象が現われるのは、國内における社會情勢から發生しておるのでありまして、これを單に一片の選擧法改正ぐらいのことで、その原因を解消することは、所詮不可能であります。かように私は考えるのでありまして、今度議會を解散すれば、次には二大政黨對立の政黨ができるというごとき確たる信念をもち得ないのであります。これは原君と私との意見の相違でありまして、これ以上論議を盡すことは必要のない問題だと思います。