栗栖赳夫の発言 (予算委員会)
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○栗栖國務大臣 所得税法の一部を改正する等の法律案ほか三法律案について、提案の理由等を御説明いたしたいと思います。
政府は最近における財政需要の増大に對應し、收支の均衡をはかり、財政の強化に資するとともに、經濟諸情勢等の推移に應じ、國民租税負擔の公正を期する等のため、所得税法等の一部を改正することにいたしたのであります。すなわち今次の税制改正にあたりましては、租税の中樞たる所得税につきまして、國民所得の現状及び國民生活の實情に鑑み、いわゆるインフレ利得者等一定額を超える所得者に對し重課することといたしますとともに、他面勤勞所得者及び扶養親族を有する者の負擔を輕減する等の措置を講ずることにいたしましたような次第でございます。また間接税中、從量課税の酒税、清涼飲料税及び物品税、竝びに入場税につきましては、最近における物價の状況等に即應して課税する等のため、相當の増徴を行うことにいたしました。なお定額税率による登録税、印紙税等につきましても、最近における物價の状況に對應する税率の引上げを行うことにいたしましたような次第であります。さらに政府は、今囘新税として、非戰災者特別税を創設することといたしました。戰災者と非戰災者との間の經濟的な縣隔は、最近における經濟事情によりますます助長されている現状に鑑みまして、これが犠性の均衡化をはかるという議論も相當活溌になつておるものがありますので、臨時緊急な財政需要が著しく増大しつつある現状に鑑みまして、この際戰災を免れた者に對し、一囘限りの特別課税を行うことといたした次第であります。次に各税に關する改正の大要について申し上げます。
まず所得税でありますが、先ほども申し上げましたごとく、いわゆるインフレ利得者等に對し重課するとともに、勤勞所得者等に對してはその負擔の輕減をはかることに重點をおきまして、所要の改正を行つたような次第であります。すなわちインフレ利得者等の重課のための措置としては、課税所得金額が七萬圓を超える所得者については、現行の税率百分の五十五を百分の五十七に引き上げ、順次税率の引き上げを行い百萬圓を超える所得者については、現行の税率百分の七十五を百分の八十五といたしたような次第であります。但し、所得金額は、これを課税所得金額百分の八十に止めることとしてございます。
次に勤勞所得者及び扶養親族を有する者の負擔の輕減をはかるための措置といたしまして、第一に給與所得の計算については、その收入金額から控除する金額の割合を、現行の十分の二から十分の二・五に引き上げるとともに、控除額最高六千圓き一萬二千五百圓に引き上げることといたしたのであります。第二に扶養親族の控除額を現行扶養親族一人について年二百四十圓、すなわち月二十圓から年四百八十圓、すなわち月四十圓に引き上げたのでありますし。こうして、給與所得に對する源泉徴收につきましては、七月分の給與から遡つて十分の二・五の勤勞控除及び月四十圓の扶養控除を行うことといたしております。これに對應して昭和二十二年分の課税にあたりましては、前に述べました給與所得の控除割合は十分の二・二五、その最高額は一萬千二百五十圓、扶養親族控除額は年三百六十圓といたしておるのであります。今囘の改正により、昭和二十二年度分の課税について申しますれば、扶養親族三人の場合においては、勤勞所得者については、給與年額十六萬四千圓程度以下の者、また事業所得者については、所得額九萬二千圓程度以外の者の負擔はすべて相當程度輕減されることとなるのであります。たとえば千八百圓基準による扶養親族三人程度を有する世帶の標準給與月額二千九百二十圓の者について申しますれば、毎月の源泉徴收額は、現在四百五十二圓であるのが、改正後は三百十三圓となり、差引月額百三十九圓程度の負擔が輕減されることになるのであります。
その他、所得税につきましては今囘課税所得の範圍を擴大擴張いたしまして、一時所得といえどもすべて課税することといたしましたほか、簡易税額表の適用を受ける者の範圍を、所得金額五萬圓以下の者から八萬圓以下の者に擴張し、大多数の所得者の税額計算の便宜をはかるとともに、豫定申告書及び確定申告書の提出を要しない者の範圍を若干擴張するための改正を行つたような次第であります。
次に法人税につきましては、所得税の税率の引き上げに對應せしめるため、同族會社の加算税の税率のうち十萬圓を超える金額に對する税率を、それぞれ百分の五程度引き上げることといたしたのであります。
次に酒税でありますが、財政需要の現状、物價の状況等に鑑みまして、清酒については、一升壜詰の小賣價格一級酒現在百三十二圓を二百五十圓程度に、二級酒現在百二圓を二百圓程度に、また麥酒については、壜詰一本の小賣價格現在二十三圓を四十圓程度にそれぞれ引き上げる程度の増徴を行いますとともに、その他の酒類についても、品質に應じ税負擔に差等を設けてこれに準ずる増徴を行うこととし、これにより税額において十三割程度の増收をはかることといたしたのであります。また特定の酒類につきまして加算税を徴收し、清酒第一級酒の一升壜詰一本當り五百五十圓程度、麥酒壜詰一本當り百圓程度の特別價格で販賣せしめることといたしました。
清凉飲料税につきましては、酒税の増徴に應じ第二種サイダーの税率を、一石について現行二千三百圓を六千九百圓に引き上げ、その他の清凉飲料につきましても同程度の税率の引き上げを行うことといたしました。
次に物品税につきまして申しますれば、最近における物價の状況等に即應して從量課税の税率を引き上げることとし、マツチについては十割程度、あめ類及びはち密については二十割程度、サツカリン及びヅルチンについては四十割程度の税率の引き上げを行うことといたしました。
次に入場税につきましても、現在におけるこの種消費の性質に鑑み、現行税率百分の百を百分の百五十に、また特別入場税につきましても、現行税率の百分の四十を百分の六十に、それぞれ税率を五割程度引き上げることとし、これに伴いまして課税最低限現行一圓を三圓程度に引き上げることといたした次第であります。
以上のはか、登録税のうち定額税のもの、印紙税、骨牌税及び狩獵免許税につきましても、それぞれ相當の税率の引上げを行うことといたしました。
以上申し上げましたほか、所得税、法人税、酒税等各税にわたりそれぞれ罰則の強化を行い、特に所得税、通行税等の源泉徴收義務者が徴收すべき税金を徴收しなかつた場合、または徴收した税金を納付しなかつた場合における罰則を新たに設けた次第であります。そのほか租税の賦課徴收につき適正な運營をはかるため、所得税法の團體諮問に關する規定及び物品税法等の徴收補助團體に關する規定について所要の改正を加えるとともに、この際納税施設法を廢止することといたしたのであります。
次に非戰災者特別税についてその大要を申し上げます。非戰災者特別税の創設の趣旨につきましては、さきに申し上げました通りでありますが、本税は、非戰災家屋を對象とする非戰災家屋税、非戰災者の動産を對象とする非戰災者税の二本建になつているのであります。まず非戰災家屋税でありますが、その納税業務者は、すなわち昭和二十年八月十六日終戰時にあつた家屋、すなわち非戰災家屋を所有していた個人及び法人であります。家屋には住宅、店舖、工場、倉庫等すべての家屋が含まれるのでありますが、國、都道府縣、市村町等が所有していた家屋、公用または公共の用に供していた家屋、國寶または史蹟名勝として指定されていた家屋、私立の幼稚園、中等學校、大學等において、直接に教育の用に供していた家屋、賃貸價格が三十圓未滿の家屋等には、課税しないことといたしております。非戰災家屋税の課税標準は、家屋の賃貸價格でありまして、百分の三百の税率で課税することにいたしているのであります。
次に非戰災者税でありますが、その納税義務者は、昭和二十二年七月一日、すなわち課税時期に法施行地で家屋を使用していた非戰災者たる世帶主及び非戰災者たる法人であります。ここで非戰災者と申しますのは、戰時災害により家屋または動産につき受けた損害額が三割程度を超えない世帶主または法人といたすことになつております。しかして非戰災者であるかどうかは、個人については世帶ごとに、法人については本支店、工場等を通じてこれを判定することといたしているのであります。非戰災者税につきましても、國、都道府縣、市町村等の公共團體、海外からの引揚者が世帶の生計を主ととして維持している場合における當該世帶の世帶主、賃貸價格が三十圓未滿の家屋を使用していた世帶主等には、課税しないことといたしましたほか、國寶または史蹟名勝として指定された家屋、私立の幼稚園、中學校、大學等において、直接に教育の用に供していた家屋等の賃貸價格は、本税の課税標準に算入しないことにいたしております。非戰災者税の課税標準は、課税技術を考慮いたしまして、課税時期における家屋の賃貸價格といたしているのであります。しかして税率は非戰災家屋税と同樣百分の三百といたしているのであります。
非戰災家屋税及び非戰災者税は、いずれも申告納税の方法を採用することといたしたのでありまして、申告及び納税の期限は來年一月三十一日といたしております。ただし一時に納付することが困難である場合におきましては、原則として六箇月以内を限り延納を認めることといたしました。なお調査時期後災害により家屋が滅失または損懷した場合等には、非戰災家屋税を輕減または免除し、また調査時期後災害により家屋または動産が滅失または損懷した場合等には、非戰災者税を輕減または免除することといたしているのであります。
次に昭和十四年法律第三十九號災害被害者に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する法律を改正する法律案について申し上げます。災害により被害を受けた者に對する租税の減免、徴收猶豫等につきましては、現在のところ災害が發生した都度減免等の内容に關する政令を公布していたのでありますが、今囘この法律を全面的に改正いたしまして、災害被害者に對する租税の輕減、免除または徴收猶豫、課税標準の計算または申告及び申請の特例に關する具體的な規定を整備することといたしたのであります。
次に、印紙等模造取締法案について申し上げます。從前の印紙等模造取締規則は、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律により、本年十二月末日限り效力を失うこととなりますので、これを法律とし整備した次第であります。
以上各法律案につきその大要を申し上げたのでありますが、これによる租税及び印紙收入の増税額は、平年度において約三百四十一億四千六百萬圓、初年度たる昭和二十二年度において約二百二十七億七千七百萬圓に達する見込であります。その各税につきまして、本年度の増税額を申し上げますれば、所得税において約三十八億八千五百萬圓、酒税において約百三億七千八百萬圓、物品税において約六億千八百萬圓であります。また非常戰災者特別税の本年度の收入額は約六十五億四千百萬圓であります。
本年度の租税及び印紙收入の歳入の總額は、物價の改訂及び給與水準の引上げ等により、相當額の増收が見込まれますので、右に申し述べました増税額と併せて計算いたしますと、實に約千三百三十二億四十萬圓に達するのであります。これを直接税と間接税との比率について見れば、直接税は全體の六割七分二厘に當り、間接税は三割一分六厘、その他一分二厘となるのであります。また當初豫算總額六百九十五億千四百萬圓に比し、合計額において約六百三十七億二千六百萬圓の増加となるのてありますが、直接税と間接税との比率においては、當初豫算の場合の比率とほとんど差異は認められないのであります。また各税別にこれをみるに、所得税の收入額は約六百六十九億六千五百萬圓で全體の五割二厘、酒税の收入額は約二百三十八億七十萬圓で全體の一割七分九厘に達するのであります。
なおこの際、租税及び印紙收入の本年度における收入状況につき申し述べまするに、所得税の申告納税額は約七十七億四千萬圓程度でありまして、當初豫算額に對し二割六分程度、追加豫算の分との合計額に對しては一割五分七厘程度にすぎない状況であり、また租税及び印紙收入濟額は、四月以降九月末日までに約二百六十二億圓程度にとどまり、しかも他面百億圓に達する滯納額がある現状であります。從つて本年度内において約千七十億圓程度の租税收入を確保しなければ、健全財政を維持し、インフレーシヨンの破局化を防止することもまた不可能となるのでありまして、財政はまさに空前の危機に直面しているのであります。
政府といたしましては、この際國民租税負擔の公正をはかりつつ租税收入を確保する途は、徴税機構を擴充強化するとともに、税務運營の刷新をはかり、これにより課税の充實徹底に努め、いやしくもインフレ利得者等が調査不徹底等のため、不當に租税負擔を免がれるがごときことのないようにすることにあると固く信ずるものであります。從つて今後は脱税者調査摘發、罰則の強化、第三者通報制の活用、滯納處分の促進等により、課税の徹底を期することが最も肝要であると考えられますので、この點について今後一段の努力をいたす所存であります。
申すまでもなく、國民の租税負擔か現在すでに重く、しかも國民生活が最近における社會經濟情勢により窮迫を告げている現状におきまして、かくのごとき厖大な租税負擔に任ずることは、まことに容易なことではないのでありますが、現下の經濟危機を突破し、財政經濟の再建をはかるためには、ぜひとも右の租税收入を確保しなければならないのであります。すなわち財政及び租税に關する全國民の深き理解と協力を得ることがその根本でありますから、政府は近く全國的に活溌な納税強調運動を推進し、國民の納税に關する認識の普及徹底に努める所存であります。國民各位におかれましても、この際納税につき一段の御努力を願い、現下の難局に處し、財政の基礎確立に寄與せられるよう切望する次第であります。