土屋清の発言 (予算委員会公聴会)

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○土屋公述人 今日の日本のインフレーシヨンの段階は、きわめて憂慮すべき事態に立至つております。通貨は千六百九十五億圓、これは昭和十二年の約六十倍に達しておりますのに、生産は昭和十二年の約三割程度にしか過ぎません。しかもこの一年間をとつてみますと、昨年の十月に比べまして通貨は二倍に殖えておりますので、生産は昨年の十月に比べてほとんど殖えていない、こういう状態を呈しておるのであります。このときにあたりまして、今囘の追加豫算案が、もしも適正なものでないならば、インフレーシヨンの進行に加速度的な拍車を加えることになりまして、その極非常に憂慮すべき事態が起ると考えられるのでありますが、政府は今囘の追加豫算を目して健全財政である、形式的にも實質的にも健全財政の實を備えておる、というような説明をいたしているようでありますが、つぶさに檢討いたしますときには、これが形式的には一應その名に値するといたしましても、必ずしも實質的には健全財政と言い得ない多くの點をもつているのじやないかと考えられるのであります。
 第一に、一般豫算でありますが、一般豫算のうち、歳入の主力をなすものは租税收入である。これは追加豫算と本豫算とを合わせまして、約千三百二十億圓に達しておりますけれども、はたしてこれだけの租税收入を實際にあげ得るかどうかというところに、大なる危惧が伴うと考えられます。すでに今日までの滯納が百億圓以上である。私はもつと多いと思うのでありますが、政府は百億圓以上であるというような説明をされている。おそらくこの千三百二十億圓の租税、そのうちの八百億圓くらいは、この一月から三月にかけて一どきにとるというような、無理な事態に追いこまれるのではないかと思われるのであります。從つて、とうていこの額面通りの租税收入をあげるということが困難ではないかと考えられるのであります。
 次に歳出の面におきましては、今度の豫算では公定價格主義を嚴重にとつておるということになつております。特に終戰處理費三百九十億圓は、進駐軍當局の方針に則りまして、つとに公定價格によることになつているようでありますが、はたしてその場合に、この豫算が執行できるのかどうかということについて、一體どれだけ政府が確信をもつておるかということが、非常に疑わしく感ぜられるのであります。もしも公定價格を嚴守したために豫算が執行できないということになつて、それで事業が繰延べになるということで濟むならば、結構でありますが、そうでなく、定められた事業は、ぜひともそれだけやらなければならないということになりますと、それだけ再び追加豫算が必要になるという事態が當然起るのでありまして、單に形式上の公定價格主義ということのみをもつて終る問題でないと思うのであります。また終戰處理費と竝ぶ全體の歳出の中の大きな項目である官公吏の人件費につきましても、あとから申し上げます。
 次に千八百圓ベースの維持ということが、官公吏については實際的に困難になつてきている。何らかの形において、これに對して補給をしなければならない情勢に置かれておる。そうすれば、さらにそれに數十億あるいは百億以上の追加支出が必要でありまして、これまた千八百圓ベースというのは、一種の公定價格でありますから、公定價格主義の破綻ということになる懸念が多いと思われるのであります。
 一般豫算はそれくらいにいたしまして、特別會計というものがまたこれは非常な難點をもつておる。御存じのように、鐵道、遞信とも損益勘定において非常なる赤字を出しておりまして、このたび一般會計からの繰入れによつて、辛うじて埋めているようでありますが、それでもなお鐵道六十億圓、遞信十八億圓くらいの赤字が免れない。これは結局一時的に日銀借入金でしのぐほかはないと思いますが、ここにも一つの健全財政と言えない要因があると思うのであります。
 第三は地方財政でありまして、中央財政に多くの注意が向けられる結果として、ともすれば地方財政の方が閑却されているような傾きがある。しかし今日地方の財政は、都道府縣と言わず、町村と言わず、一樣に破産状態でありまして、黒字の縣というのは、わずかに一つしかないという状態である。内務省の調査によりましても、全體の都道府縣の歳入が六百九十七億圓、歳出が七百九十八億、差引百一億圓の赤字ということに一應なつている。しかしこれまた人件費の増嵩その他を考えます場合には、この程度の赤字ではとうてい濟まない。これまた結局全體としての健全財政の基礎を危くする大きな要因だと思います。
 第四には、財政の面から金融の面に振替えられる、いわば責任を片替りさせられインフレの要因がある。具體的には復興金融金庫の資金でありますが、復金が今日事業の救濟機關になつてしまつて、本來の復興金融には役立つていない。この復金の資金が、本年度において四百億圓以上必要とみられておりますのに、政府の出資は追加を合わせまして、今年度は百億圓ということになつております。あとは結局債券の發行によつて調達することになるのでありましようが、現在の金融行政のもとにおいては、これが圓滑に市場で消化される見込みはない。結局これは日銀の背負いこみという形で、形をかえた財政インフレということにならざるを得ないことが明白であります。この面から相當のインフレーシヨンを促進する要因があると考えられるのであります。
 かように考えてまいりますると、一般財政、地方財政、特別會計、地方財政竝びに復興金融、いろいろの面におきまして、健全財政とは必ずしも言えない。率直に言うならば、健全財政とは形骸であつて、何ら實體を備えていないという感じが非常に濃厚になつてくるのであります。これは結局今度の豫算案を編成する場合におきまして、國民經濟の全體的な見地から豫算を考え、國民經濟の一環として總合的に把握するという用意が缺けている結果ではないかと思うのであります。政府は經濟白書の發表にあたりまして、國家財政と企業と家計とを一體として見なければいかぬということを強調しておりますが、その見地は遺憾ながら、この豫算の取扱いにおいて、十分強く現われていない。それが今申しましたような、一應一般會計だけはつじつまが合つたが、全體の國民經濟から見ると、結局バランスがとれてないという事態になつてくるものと思われるのであります。かかる状態のもとにおいて、この豫算を執行するときにおいては、おそらく通貨の増發は免れがたい。年末二千億というのは、決して偽りではないのでありまして、來年の三月末までには、二千三百億圓くらいになるということも、當然豫想されてくると思います。しかも一方生産はどうかと申しますと、生産はこの十月、十一月がまず絶頂であつて、昨年の例に徴しましても、十二月からは石炭の冬場の需要が増大することと、電力飢饉のために減退するものと見なければならない。おそらく來年の一月、三月は、本年の三月危機が唱えられたころ以上の生産面の危機が豫想される。そうしますと、通貨面からの膨脹は逆比例して、生産が減退してくるということになりますと、日本のインフレーシヨンの前途というものは、一層險惡化の度を加えてくるものと考えられるのであります。これに對して、一體どうしたらよいかということについて、少しく所見を申したいのでありますが、根本において今申しましたように、今度の豫算の缺陷が、形式的技術的に國家財政、しかも一般豫算だけを目に置いておつて、全體をとらえていないというところにあるのでありますから、豫算の眞の國民經濟との一體性を確立するためには、根本において長期經濟計畫というものを確立する必要がある。この長期經濟計畫に即應する長期豫算を設定いたしまして、その一環として追加豫算、それからその次の來年度の一般豫算も考えていかなけねばならない。この長期經濟計畫を立つて、それに即應する豫算計畫を設定することが、根本の問題だろうと思うのであります。今日長期經濟計畫の策定は、安定本部などにおいても一部分行われておるようでありますが、それをもつと廣い視野のもとに、そうして國民各層の參加のもとに、完全なるものに仕上げることが急務であると思います。もちろん日本が獨自で決定し得ない要因もありましようし、さらにインフレの進展過程におきまして、長期の見透しを立てることにいろいろなる困難が豫想されるのでありますが、しかしその困難が豫想されればされるほど、ますますそれだから長期の經濟計畫の見透しを立てることが必要なのでありまして、それが確立されなければ、年々の經濟の營みが、その場限りのことになつてしまい、從つてまた豫算も出たとこ勝負という結果にならざるを得ないと思われるのであります。その意味におきまして、速やかに安定本部が中心となりまして、長期の經濟計畫、五箇年間くらいの見透しを、あらゆる面から檢討する。そうしてそれには資本家側も、勞働者側も、國民各層の參加を得て、完全なるものにもつていくことが、急務であろうと思うのであります。もしも長期の經濟計畫が確立されたならば、いかなる利益があるか、もしくはそれが豫算面にどういうプラスをもつてくるかと申しますと、まず第一に、長期の經濟計畫は、當然生産計畫を中心といたすものでありますから、それによつて國民の使用に供し得る生産總量、資材の面が明らかになつてくる。そうすれば今日の歳出の大きな問題である終戰處理費の裏づけ物資の問題についても、もう少し合理的な折衝が行われ得る基礎が生れてくると思います。單にあるもののうちからもつていくということだけではなく、全體をいかに國民經濟の中において最も有效的に、かつ摩擦なく使うかということが、終戰處理費の裏づけの物資と關連して、一番問題になる點でありますが、それにはそういう生産計畫の確立が前提だと思うのであります。
 第二には、長期經濟計畫の確立の結果として、國民の消費し得る物資の總量の見當がついてくる。そこで初めて生活水準が具體的に明らかになつてくるわけでありまして、政府が國民に向つて耐乏を要求する場合に、單なる口頭禪に終らないという利益が生れてくるのであります。先ごろ新生活運動の提唱などが行われたようでありますが、それきりのものになつてしまつて、今日どこへいつたのかわからない状態になつておるというのは、結局國民の生活水準に對する確固たる見透しをもつていなかつたからだと思うのでありまして、それがこの長期經濟計畫の確立によつて、具體的な形において影響されるようになると思うのであります。
 次に長期經濟計畫の確立は、當然雇傭計畫を伴うわけであります。今日の日本の官廳機構竝びに企業界の樣相から見まして、企業整備竝びに行政整理ということは免れがたい。それをいかなる形で、いかなる時期にやるかということについては、いろいろ考うべき問題がありますが、できるだけ效果的に、しかも早く企業整備竝びに行政整理を行うことは、當然のことだと思います。しかしそれには單に人が餘つておるから整理するということではなくて、全體の經濟計畫とにらみ合わせる雇傭計畫を立てまして、その上に立つて整理すべき人員を確定してかかる必要がある。それが同時に整理された場合においても、長期經濟計畫の示すところによつて、經濟の再建が軌道に乘れば、やがては産業面に吸收されるということを意味するのでありますから、かかる企業整備、または行政整理に伴う摩擦を少くする效果があると思われるのであります。
 次に長期經濟計畫の確立が行われますれば、國民所得の推算が可能になつてまいります。今日國民所得の推算が非常にでたらめと言つては誤弊がありますが、非常にばらばらでありまして、政府の各機關でやつているものも統一がない。非常に大きな千億圓くらいの數字の違いがありまして、あまり信用がおけない状態であります。しかし國民所得の計算が確立されない國家財政、地方財政、竝びに市場金融への資金の配分ということは、とうてい困難なのでありますから、萬難を排しても國民所得の推計を確實にする必要がある。そのためにはやはり長期の經濟計畫が確立され、それに伴う生産計畫竝びに雇傭計畫が立てられることが前提だと思うのであります。
 最後に長期經濟計畫の確立によつて、外資の導入という問題にも、實際的な基礎づけが與えられる。外資の導入が日本の經濟建直しのために重要なる題目であり、また豫算の執行ともいろいろ關係をもつておると思うのでありますが、それを單にいくらでもくれるだけもらうというのでなくして、日本の經濟の合理的な再建の一番手取り早い途として、科學的に考えていくためには、そういう長期經濟計畫の裏づけがなければならないものだと思うのであります。
 以上が第一に根本的に豫算を考える場合に要求される事柄だと思います。
 次に歳入面につきまして考えますときに、結局今日の状態では、新しい税を創設するとか、もしくは特殊の方法に訴えて收入を多くとることよりは、きめられたものをしつかりとるという平凡なこと以外に、歳入を増す途はないと思うのであります。先ほど申し上げましたように、きめられた租税すら滿足にはいつてこない状態でありまして、これが確實にとれれば、インフレに對しても相當抑える效果があるばかりでなく、また徴税技術が發達いたしますれば、いわゆるやみ所得も普通の方法によつて抑えることがだんだん可能になつてくる。それには結局よく言われますように、税務官吏の待遇を改善して、その機能を遺憾なく發揮せしめるようにするほかはないと思います。今日税務官吏の待遇が非常に惡い。從つて最近でも五萬人からの税務官吏の定員に對して、半分と少しくらいしか埋まつていないで、あとは空席になつておる。つまり今日程度の待遇では、なかなか税務官吏になり手がないという状態である。税務官吏だけを優遇することは、他の官吏との振合いの面において、いろいろ問題があると思いますが、しかしその職務の執行について特殊の誘惑を伴う地位にあるわけでありますから、それを防衞するという意味においても、税務官吏の待遇を改善して、優秀なる人物を大量にこれに充てるという考慮が、ぜひ必要だと思うのであります。それとともに脱税に對する措置が非常にわが國では手ぬるい。脱税が行われても、實際上それによつて體刑を科せられたいという場合がないのでありまして、もう少しそういう點については、はつきりした態度をもつて臨む必要があると思います。
 次に今度の追加豫算で、非常に專賣收入が大きくなつておる點が一つの問題でありますが、今のように租税收入によつてなかなか税源が捕捉されない、捕捉することが困難であるという場合においては、どうしても專賣收入に依存するということは、やむを得ないと思うのであります。その意味におきまして、專賣收入の範圍というものを、新しい物價にまで擴充して考えていくということが、むしろ必要でありまして、タバコならタバコというものばかりに一方的に集中するのではなく、新しい税源となるものを考えていく必要がある。たとえば甘味料、サツカリン、ズルチンの專賣が考えられておりましたが、それがいつのまにかとりやめになつてしまつた。その理由がどうもわれわれにははつきりいたしません。當然これなども專賣の對象になるべきものである。さらに最近では石鹸などのごときものも專賣の對象にする可能性が十分あると思います。今日の石鹸のやみ價格と、公定價格の中間をとつて、專賣にするといたしましても、石けんの消費量はかなり莫大なものであり、しかも石けんに必要な油脂というものを、國家が比較的容易に抑え得るものでありますから、これによつて相當の税收をあげ得る可能性があると思います。また砂糖のようなものも、外國からの輸入が得られるならばむろん專賣の對象になりますし、さらに國内産の砂糖、甜菜であるとか、あるいは黒砂糖のごときものも。かなり最近は増産されておるようでありますから、こういうものを專賣收入に加えてかかる必要があるように思うのであります。專賣收入の増大は、ある意味では大衆課税ということになりますけれども、今申し上げましたように、租税收入の増大が非常に困難である、これから税務官吏を充足して、教育して、十分やみ所得を抑えるというまでに、相當の期間がかかりますので、過渡的にはやむを得ない措置であると、私は思います。
 次に歳入に關連いたしまして、今度の豫算ではあまり生産復興、産業方面への支出が、全體としては必ずしも多くない。これは結局歳入の問題、財源の問題に歸著するものと思うのでありますが、私はこの際産業復興を促進するために、復興公債の發行を國家が眞劍に考うべき時期に達しておると思うのであります。産業復興に充てるための費用を調達するために、國家が復興公債を發行して、その消化を國民大衆に期待するいうことであります。今日公債の消化は、ほとんど個人によつては行われないで、大部分が銀行の消化という形をとつておりますが、通貨がインフレ下において國民の各層に非常に偏在している。一部の層にのみあつて、またもたない層も非常に多い。そういう偏在状態のもとにおいて、これを引出すには、公債の直接消化ということを考えてかかる必要がある。しかしその場合において必要なことは、安定價値計算によりまして、二十年あるいは三十年後において、公債が償還される場合、物價指數とか、あるいは金價値とか、そういつたものを基準にする安定價値による償還ということを約束する必要があると思います。今日預金が必すしも期待通りにはいかない、そして換物作用が非常に進展しているというのは、前途に對する通貨の不安ということに基因するものが多いのでありまして、それを防止するには、公債を購入した場合において、それを償還するときには安定價値によつて拂うという建前を明らかにすることが必要だろうと思います。安定價値計算の實行については、いろいろ困難な問題もあるのでありますが、しかし私は必ずしも實行不可能とは思いません。またその安定價値計算の裏づけとなる物資が必要か、たとえばドルとか金とか、その他のものが必要かというと、これは必ずしもそれがなければできないというものではない。國民が要するにそのことを信任するかどうかという問題にかかつていると思うのであります。産業復興が急務であるときに、税源がないためにほとんどそういつた方面に國家の主力が向けられまいというのは、非常に殘念なことでありまして、その弊を打破するためには、復興公債の發行ということを考えていく必要があろうと思います。
 次に歳出の面におきましては、私は失業對策費、それから生活保護費、生活費援護費というものが、非常に少いということを強く感ずるのであります。インフレーシヨンの進展に伴つて、必ず脱落する層というものが起り、その不平均が、結局インフレの社會的なる害惡をなすものでありまして、インフレ時においては、失業對策竝びに生活援護ということに十分の考慮を拂う必要がある。今日生活保護法による費用竝びに失業對策費というものに、かなりの金額が計上されているとは思いますけれども、とうていこれだけでは社會不安というものを除去するに足りない。これをもつと眞劍に取上げて増額していく必要がある。その方法として、一つの意見としては、私は失業者竝びに生活の要保護者に對しまして、國家が主食を配給した場合、その代金を徴收しないという制度、いわゆる主食の國家による物給制というものを考えることが必要だろうと思います。つまり失業者あるいは未亡人、遺家族のような者に對する主食の配給は、國家が無料でこれを行う。そういう制度を立てたならば、社會不安の除去の上に、かなりの效果がある。それに要する費用というものも、その效果に比すれば、私はそれほど大きなものではないと思うのであります。
 歳出の面におけるもう一つの問題は、官公吏の千八百圓ベースの問題でありますが、今日千八百圓ベースでは、官公吏が生活できないということは否定できない事實だろうと思います。從つてこれを民間産業平均と言われる二千二百圓ベースまで上げる、あるいは突破資金、あるいは越冬資金の形でもつて與えるかということは別といたしまして、何らかの形において、その收入不足を補うということが急務であり、それがいろいろ官公吏の不正、あるいは怠業ということを防止するための、一番有效なる措置だろうと思います。その場合、この千八百圓ベースを、官公吏の俸給賃金について是正した場合において、千八百圓ベースはどうなるかということでありますが、必ずしも私はそれが千八百圓ベースの基礎に影響するとは思いません。官公吏の待遇改善のために來年の三月までに費す資金というものは、おそらく五十億圓ないし六十億圓くらいの程度とみられるのでありますが、それだけの追加購買力が放出されましても、全體の物價體系に影響を及ぼすというものではない。一般民間の産業は、すでに事實上千八百圓ベースを上まわつておるのでありますから、これが新しい賃金引上をもたらさない限りにおいては、千八百圓ベースの基礎そのものには影響しないと思うのであります。しからば新しい民間産業のうちで、賃金引上が起るかどうか。現にそういう爭議が各所に起つておるのであります。これについては、この千八百圓ベースによる公定價格の算定というものが、どれだけの幅をみておつたかということを、もつと深く追究してみる必要がある。私はかなりの産業においては、相當公定價格の改訂が甘かつたのではないかという感じをもつております。今日の企業の亂脈、放漫なる經営というものを改めることによつて、實質上千八百圓ベースをある程度上げても、物價水準に影響を及ぼさないでやり得る餘地等が相當存在すると思います。それがどの限度まで可能であるかということを、もつとつつこんで檢討してみる必要がある。從つて官公吏の千八百圓ベースを引上げることと、全體の千八百圓ベースの物價體系を維持するという問題は、一應別個に切離して考えてみる必要があるのではないかと思うのであります。
 私の申し上げたい點は、大體以上の諸點でありまして、要するに追加豫算を形式的に、局部的に考えないで、國民經濟の全體の動きの中で、總合的に把握する。それには長期經濟計畫を確立して、その一環として妥當なる位置を與えていくことが必要であるということであります。

発言情報

speech_id: 100105262X00119471111_002

発言者: 土屋清

speaker_id: 29324

日付: 1947-11-11

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会