柴田照治の発言 (予算委員会公聴会)

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○柴田公述人 私全遞信從業員組合の交渉部長であります柴田であります。昭和二十二年度の追加豫算に對しまする私どもの意見といたしまして、いささか時間を拜借できますことは、まことに光榮に存ずるのであります。
 私どもが勞働者といたしまして、この豫算を拜見いたしまするとともに、まず感じますことは、この追加豫算が、政府におきましては非常に健全財政であるというようなことを強調せられておるのでありまするが、私ども勞働者が健全財政であるというような勞働者の立場においての見解は、まずこの豫算がインフレの要素を全然含まないこと、それから第二番目に勞働者の生活を絶對に脅かすような内容であつてはならないこと、第三番目には擴大再生産を促進するものでなければならない。この三要素が含まれなければ、健全財政とはわれわれは申上げにくいのであります。こういう三つの原則から立ちまして、本豫算をながめますると、まず第一にわれわれが勞働者の立場において強く感ぜられますのは、この中に盛られておりまするところの給與改善費、これが五十四億七千九百萬圓というように計上されておるのでありますが、この一つをとりましても、はたして勞働者の生活が完全に憲法で保障されておる、あるいは勞働基準法で保障されておるような、その線にまで政府が認めていただけているかどうかという點が、非常にわれわれは重大な關心をもつのであります。御承知の通り全遞を初め、全官公廳の二百六十萬の職員は、政府に對しまして、生活補給金といたしまして、世帶主一人二千圓、家族一人千圓の要求を出しておるのであります。この總額を概算いたしましても、すでに百億に近い數字、九十七、八億に達しておるものと、私どもは考えておるのであります。さらにわれわれは、現在の標準賃金千八百圓ベースによるところの、千八百圓の平均賃金を支給されておるのでありますが、はたして現在の千八百圓で私どもが食えるか食えないかは、豫算委員の皆樣方においては、この點については、十分お考えになつておられることではないかと考えるのであります。こういう關係からいたしまして、どこから計算されて五十四億七千九百萬圓という數字が出たか、われわれには納得がいかないのであります。御承知の通り、私どもは勞働者でありまするとともに、敗戰日本の國民であるということを十分に自覺しておるのであります。從いまして、自分の生活を守ることだけに汲々としておるのではありませんので、國家の再建、國家の經濟復興という面においては、重大なる關心と絶大なる協力を惜しむものではないのであります。しかしながら、私どもは働くがために、あすの勞働力を保持するがために、どうしても現在ある程度、敗戰國民とは言いながら、あすの勞働力をも保持し得ないような賃金では、當然あすの勞働力を保持するわけにはまいらないのであります。こういう觀點からいたしまして、私どもはただいま國鐡の委員長が申されました通り、各單産におきましては、それぞれの經濟要求というものを出してありまするし、全遞におきましては、すでに九月の二十六日に中央勞働委員會へ提訴いたしておりまするあの内容の要求を政府に出してあるのであります。この内容と申しまするのは、あるいは御承知かと思いますが、まず物價安定を基礎とするところの最低賃金の確立という方向にわれわれは進んでおるのであります。とかく安本方面からあるいはその他の方面から勞働者の賃金を上げることがインフレを促進する重大な原因であるということを言われておりますが、私どもはさようなことは絶對ない。われわれははつきり要求の中にも掲げてあります通りに、物價安定を基礎とするところの最低賃金の確立ということを要求しておるのであります。この内容を申し上げますると、非常に長くなりますので、この點は省略いたしますが、ともかくもわれわれの要求は、名目賃金から實質賃金へとはつきりした意向をもつておりまして、われわれはたとえそれが千八百圓であろうと、さらに千五百圓に下りましようと、實質的においてわれわれがそれにおいて最低生活が保障されればそれで結構なのでありまして、決して二千圓、三千圓を要求して、ただ名目賃金のみ上つたところで、われわれが食えないということであるならば、これは重大問題に屬しまするので、とりあえずわれわれは刻下の經濟の安定に即應して、われわれの要求というものを出しておるのであります。
 次にさらにこれはただいま申し上げましたわれわれの改善費のみでありますが、今言いました勞働者の生活を脅かしてはならないという見地からいたしまして、まずこの豫算の中に盛られておりますところの住宅復興資材、これが一錢も計上されておらないのであります。これは私ども要求といたしまして、まず住宅を與えてほしいというような要求もともにいたしておるのでありますが、これに對する經費が一錢も計上されておらない。なぜ住宅をわれわれは必要とするのかということを申し上げますると、われわれは一生懸命働いて大いに能率を上げて、私どもが直接從事しておりまする通信事業の復興に邁進したいのであります。最近におきまして御承知の通り、電信電話におきましても、非常に能率が低下しております。しかしこの能率の低下というのは、一體どこからくるか考えますると、われわれは決してサボつているわけではない。御承知の通り、あらゆる面の施設は、ほとんど使うに足りない、價値がないというところにもきておりますが、從業員が現在の千八百圓ベースにおいては食えないと同樣に、家がないのでありまして、全遞におきましては、東京管内によつてみましても、職場からほとんど平均二時間を通勤所要時間としておるのであります。戰災のために家がほとんど燒かれてしまいまして、東京の勤務地からはるかに離れた所に住居を構えて、この殺人的な交通機關に搖られて職場に出てくるのであります。こういう關係でエネルギーの消費もまたこれ非常に大なるものでありまするとともに、われわれはそれだけの交通費を負擔しなければならないのであります。こういう關係からいたしまして、意識的にやるのでなく、ある程度まで必然的に能率の低下ということももたらされざるを得ないのであります。こういう關係におきまして、この豫算がはたしてほんとうに勞働者の生活を脅かさないようにできておるのかどうかという點について、われわれはある程度疑問をもつものであります。
 次に歳入の面におきまして、專賣益金というものが相當高額にとられておるのでありますが、これらを見ましても今度はタバコにおきまして厖大な間接税が徴收されることになつておりますが、私どもが千八百圓におきまして、今度タバコが一箇五十圓というようなあの價格が、われわれにおいて、はたして消化できるかどうかという問題も考えられるのであります。現在われわれは千八百圓でほとんど赤字の續出というような飢餓のどん底に追いこまれております上に、さらにわれわれがあのほんの一分か二分のひまを見て疲勞を囘復するところの嗜好品さえ、ほとんど手に入らないという状況になつてくるのであります。こういう關係からいたしまして、間接税の増額ということは、われわれにはほとんど納得がまいらないのであります。そのほかに、こういう財源というものは、こういうものにかけなくても、さらにやみその他のいわゆる新圓階級から、ある程度の技術をもつて徴收できるのではないかというふうに考えられるのであります。
 次に第三番目に、擴大再生産を促進するものであるかどうかという點について、われわれは一應考えてみなければならないと思うのであります。後ほど日本教員組合の方から、この問題についてある程度お話があるかと思いますが、六・三制の問題におきましても、この公共事業費が五十二億四千六百萬圓の中に、わずか七億という數字が計上されておるのでありますが、この問題におきまして、日本の將來を荷うところの第二國民の教育機關であるところの經費というものが、わずか七億で、はたして完全なものであるかどうかという點を、われわれは考えざるを得ないのであります。これは擴大再生産という方面から、あるいはちよつと離れるかもしれませんが、しかしながら、人的要素において當然この問題が考えられなければならないと思うのであります。この重大な教育費がわずか七億である。こういう點におきまして、はたして七億でやれるかどうかは別問題といたしまして、現在地方の教育機關というものは、ほとんどその校舍さえ完全なものはないというような状況、さらに加えて、人件費の關係で低賃金なるがゆえに、先生というものは、ほとんどないという始末、一體これはどこから來るかということが問題になつてくるのでありますが、これは政府の千八百ベースによるところの經濟政策というものは、ほとんどそれの重大な要素をなつておるということを、私たちは考えられるのであります。と申しますのは、先生を雇うにいたしましても、千八百圓の低賃金では、だれが來て、はたして完全に教育について徹底的な精力を傾けてやられる氣が起きるか、それからさらに千八百圓で安んじて生活が保障できるかどうかということを考えたときに、先生になる人はおそらくないのではないか、さらに校舍の面におきましても、現在のような低廉な納得のいかないような公定價格におきましてこれを建てようとする政府の考えからして、だれがこれを請負つて建てる人が世の中にあるかというような問題から考えますと、校舍も必然的にそれが生れてこないという結果になるのであります。
 要するに、擴大再生産をもたらすには、どうしても勞働者の賃金というものを、勞働者の生活というものを保障しない限りにおいては、これは人的要素はほとんどだめであるということを、われわれ勞働者としては考えるのであります。さらに生産價格におきましても、現在の物價におきましては、それはほとんど皆さんが御承知と思いますが、採算のとれる價格というものは、はたしてほんとうにあるのかないのかということを考えますと、われわれはないと斷じたいのであります。かりに米一升にいたしましても、私どもは——私は千葉縣に住んでおるのでありますが、大體私どもが調査をいたしますると、生産費というものは一升について五十三圓程度かかるのであります。千葉縣の農地課において發表いたしました數字は、四十三圓という數字を示しておりますが、これとても今度の供出價格というものは大體五圓五十錢から三倍程度の十七圓、あるいは奬勵金を入れまして十八圓程度になつておりますが、その五十三圓と十八圓のこれだけの開きがありまして、はたして農家が供出意欲ができるかどうかという問題を考え合わせますと、工業生産品においても、當然かような面が十分にわれわれはうかがえるのであります。こういう關係からいたしまして、あらゆるものが納得した價格において取引されない限りにおいては、當然擴大再生産というものは、もたらされないのではないかというようにも考えられてくるのであります。從いまして、全遞におきましては、やはりこの面も取入れまして、適正價格によるところの完全配給、それを基礎にした最低賃金ということもうたつておるのでありますが、このようにいたしまして、適正價格を設定することによつて、擴大再生産はさらに促進されていく。生産が上つてまいりますれば、それがある程度まで配給ルートに漸進的に乘つかつて國民經濟、國民生活というものが漸進的に保障されていくといつたようなことも考えられてまいるのではないかと思うのであります。こういう關係からいたしまして、まずもつて適正價格を設定することによつて擴大再生産がさらに促進されていくようなことは考えられてくるのであります。こういう關係からいたしまして、まず私どもの考えるこの三原則の方から考えても、この追加豫算がはたして健全財政を意味しておるのかどうかという點が、われわれには非常に疑わざるを得ないように考えられるのであります。
 以上非常に箇單ではありますが、勞働者の意識から考えて、そうして勞働者の立場における健全財政という面から考えまして、今次の追加豫算にわれわれは全面的に承服できないということを述べまして、私の意見にかえるものであります。

発言情報

speech_id: 100105262X00219471112_012

発言者: 柴田照治

speaker_id: 10058

日付: 1947-11-12

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会