葛西嘉資の発言 (厚生委員会社会事業振興に関する小委員会)

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○政府委員(葛西嘉資君) 大変廣いお話でありまするので或いは不十分な点があるかもしれませんが、大体のことを申し上げさせて頂きたいと思います。戰前のことはもうすでに御承知のように、大体戰後の厚生行政と申しますか、社会事業或いは社会政策と申しますか、そんなような点について大体申し上げるのが適当と思います。終戰後非常に御承知のような混乱の状態がありまして、社会事業の方面から申しますと、当時の情勢では殆んどやつて行けない生活の困窮者というものが國民の一割にもなるのじやないかというふうなことが一昨年の暮あたりは予想されたのでございます。そのときに政府のやりました手としましては、御承知のように生活困窮者緊急生活援護要網、現在で申しますと、大体生活保護法がこれに代つておるわけですが、この政策を先ずやつたのでございます。一昨年の十二月の十四日だと思いますが、閣議決定を以ちまして今までのような、或いは軍事扶助でありますとか、或いは母子保護でありますとか、戰災兒保護でありますとか、救護法でありますというような法令を以てしては、とてもこの大量な困窮者にやることができないというふうなことで、大雜把に網を拡げまして、これを援護して行くというふうな方針を決めたのでございます。その当時予想しましたのが、國民の一割約八百万もそういう人があるのじやないかということを予想しておつたのでありますが、現在まで実は幸なことにそれほどのものはございませんのです。一番多いときで約三百万足らず、少くなりますと二百七十万というくらいな数であります。これぐらいのものが前後して出て來ておるというのが現在までの状態でございます。それでその対策でやつて参りましたが、これは当時、帝國議会でありますが、帝國議会の協賛を経た法律の形によつて一つの成案を打立てる必要があるというようなことから連合軍からの指令の次第もあり、御承知のような生活保護法というような法律を現在も実施しておるわけであります。これは非常に目新らしい点としましては、社会的援護というふうなものを國の責任にするという点が一つの大きな狙いでございます。國家社会が責任を負うて行くという点、それから第二には、今までのように、出征軍人の留守家族であるからとかいうようなことで、特に高く國家として扱う、戰災者はその次に扱う、一般の救護法、母子保護法のようなものは一番待遇が惡いというようなやり方になつておつたのを、現在の憲法にあります法の下に平等であるというあの精神を以ちまして、無差別平等に本当に困つておる者を助けてやるというような方針を取つておるのでございます。これで今の終戰後の極く混乱しておりまする状態、これは引揚者でありましようと、或いは一般の困窮者でありましようと、軍人の遺族でありましようと、傷痍者でありましようと、皆これに含めておるわけでございます。それから今度は失業保險或いは失業手当という制度がありますが、これのない現在までのところにおきましては、やはり失業の故を以て生活困窮者であります者も、無差別平等の見地からこの法律によつて援護して参るというようにやつて参つておるわけであります。実績は大体現在まで昨年の十月一日から実施をしておるのでございますけれども、この成績は先ず小さく申せばいろいろ改善を要する点があると思います。併し大体のところは、大筋としては施行上も大体はいいのじやないだろうかというふうに認められると思うのでございます。將來いろいろやつて參りまして、改善すべき点等はございますが、今までのところでは、とにかく御承知のような終戰後の混乱、二ケ年有余の間を経過しておりまして、或いはいろいろな社会不安等も起きるのではないかというふうに予想されておつたのでありますが、とにかくこの案、その後にできましたさつき申しました緊急援護という案、生活保護法という制度によりまして、現在までにやつて來ました点につきましては、私共法なり制度なりの目的は、部分的に申せば不満がございますけれども、先ず大掴みには狙うところがあつたのじやないか。これからは一つその内容を改善し、改むべきところは改めるというような方向に、もつと法の精神を徹底した運営に行かなければならんというふうに考えております。
 それから街に溢れておりまする浮浪兒、或いは闇の女というような問題、昨年生活保護法を審議いたしました際に、結局両院におきましても、この問題は非常にやかましかつたのでありますが、数千万円の國費を投じまして、浮浪兒の收容施設或いは浮浪兒に対して活動いたしまする態勢を整えまして、或いは闇の女にいたしましてもそういうふうな態勢を整えまして、現在若干の施設を全國主要の都市に持つておるわけでございます。これらによりまして相当の成績を挙げて、先す段々と御承知のように浮浪兒等の数なども街の中では一頃よりは減つたというふうに思います。
 それからいろいろな社会施設等の問題でございますが、これも戰爭の経緯を経まするというと、或いは経営難というようなことで止めておる、止めなければならんというふうなこと、或いは又戰災を蒙つた施設というものも実に莫大な数に上つておつたのでございます。ところがその後政府におきましては、昨年度から今年度にかけまして、約七億かと思いますが、七億余円というふうな金を投じまして、これらの施設の復旧、或いは拡張、改良というふうなことをやつたり、或いは必要でありますれば、都道府縣或いは市町村等をして、これらの金を使つて所要の社会施設を整備さしたというふうなことがございます。現在までにそういうふうな都道府縣等で施設をいたしたもの並びに復旧、改良、拡張というようなものをやつたもの、大掴みに申しまして約二千施設というふうに勘定いたしております。約二千の施設が戰後そういうふうに、或いは立ち上り、或いは新設をされ、或いは拡張、改良をされたということになつております。相当の收容者がこれらによつて、どこにも寄る辺のないような人がこれらに加わつておるというふうなことでございます。社会事業の部面についてもう一つ申し上げさせて頂きますと、生活保護法は、先程も申しましたように國の責任でいろいろやつておると、國の責任で社会援護をするとこう申した半面、とかく世間では隣保相扶と言いますか、或いは友愛の精神と申しますか、お互い助け合うという精神が、多少半面において薄らいで來たのじやないかというふうな印象を與えられておるように認められるのでございます。國が責任を持つということとお互いが助け合うということとは、これは矛盾するものではないと私は思います。隣人お互いに助け合うというようなことが、これがやがては隣組とか或いは又五人組とかいうようなことの助け合いになり、それが町村、郡、國というふうに発展したものでありまして、同じ種類のものであろうかと思います。從つて國が責任を持つて社会援護をするというようなことと助け合うというようなことが矛盾するものではないというようなことが忘れられておるのではないか。一般の社会情勢から、人のことは構つてやれんというような状態も了解できるのでありますが、とかくそういうふうな形勢もありまするので、來る十月一日には全國の社会事業大会を日比谷において両陛下の親臨を仰いでやることになつております。今年の暮にかけまして、國民助け合い運動というようなことで、世間一般の識者の御理解を得まして、この國の責任でやるという生活保護法と國民一般助け合いでやつて行くというような精神と噛み合せまして、憲法で申しましたような社会福祉、社会保障の増進というようなことの氣持で行かなければならんのではないかというふうに考えております。
それからもう一つの戰後の新らしい問題は、私設の社会事業に対しまする國の補助関係でございます。憲法の関係から申しますれば、社会事業法というような法律がございまするので、これらの法律の適用を受けまする限りは、國の公の負担費用に属するものというように解釈ができまするので、その憲法の條章からは、社会事業法の適用を受けておりまする社会事業施設に公金を出すというようなことは差支がないというふうに憲法制定当時から政府は申しておるのでございますが、聯合軍最高司令部の方針によりまして、私設の社会事業に補助を出すというようなこと、言葉を換えて申しますれば、社会事業法という法律がございますが、この社会事業法に基く補助金を支出するという点については、残念ながら今年の四月頃いけないという結論に到達をいたしまして、これに代るべき何らかの手を打たなければ、これらの施設に收容されておる人々は非常にまあ氣の毒なことになつてしまいます。数万のこれらの施設の厄介になつておりまする人が、なんとかしなければならんというような困つた状態に立ち至るというふうな情勢でございましたので、進駐軍司令部の御援助も得まして、御承知のように、社会事業共同募金の運動を今年末に國民助け合い運動と関聯をして展開をいたしまして、金を集めて私設の社会事業等の経営に資すると、これによつて、右申し上げましたような大体三千数百というような私設の社会事業施設があるわけでございます。これらの経営に対しまして、不足額を補つて行くというようなことで、目下懸命の努力をしておるような次第でございます。
 非常に大雜把な申し上げ方をいたしましたのでございますが、もう一つは兒童問題であります。これは兒童福祉法で十分御承知の通りでありますが、兒童保護の問題を大きく取上げまして、本年初め、三月でありますか、兒童局が設置されまして、兒童の問題を大きく取上げることになつた。非常に明るい部面をここに持ち出して來たという点は、もうすでに御承知の通りであります。
 それからもう一つは、大きな社会問題乃至政治問題と申してもよいと思うのでありますが、引揚者の問題でございます、引揚者は、終戰後の状態から申しますれば、数十万の引揚げの者達がおりましたのに対應いたしまして、御承知のように、全國に十数ケ所の引揚援護局を作りまして、ソ聯地区その外の若干のものを残しまして、すでに完了しておるわけでございますが、大変なお仕事をやつて参つたわけでございます。いろいろなことはございますけれども、とにかくあれだけの大量の引揚を今日までやつて参りましたのでございます。引揚者の問題は、外地から引揚げるというふうな問題の外に、内地におる引揚者をどう定着させるかというふうな問題があるわけでございます。直接私の所管ではございませんけれども、これにつきましては御專門の方もおいででございますが、或いは越冬の住宅を建てますとか、或いは十数億の金を投じまして庶民金庫等を通じてやります生業資金を貸付けて、立上る者については立上つて貰う、自分の得た技能経驗等を活かして立上つてもらうというふうな方策を講じておるわけでございます。引揚者の問題につきましては、御承知のようにまだいろいろな関係から未解決な問題が残されておるのでございますが、これは成るべく早く一般に融け込んで頂きまして、一人々々が皆それぞれの部門で御活躍を願うようにせなければならんと思つております。引揚者の今後の大きな問題としましては、定着後におきまして一般生活に融け込んで、そうしてそれぞれの社会におきましての分々に應ずる仕事を受持つてもらうというふうな問題であろうかというふうに考えております。
 それから私共がもつとこれからやらなければならんと考えております問題の中に、遺族乃至は傷痍者の援護の問題がございます。遺族乃至傷痍者は、これは申し上げ方によると或いはどうかと思うのでありますけれども、率直に申し上げさして頂きますと、御承知のように聯合軍の指令によりまして、軍事保護院というような、軍だけを特別に取扱うというふうな制度に対する非常なきつい指令がございまして、これを無差別平等に取扱わなければならんというようなことになりましてから、なにも必要はないのでありますけれども、特に遠慮したとでも申しましようか、一般の人がそういうふうな印象になつて、とかくこれらの人に目が行届かなかつたのではないだろうかというふうな節さえあるように思われるのでございます。これは非常な間違いでございまして、一般と平等に援護をして参るということでありますれば、一向差支ないのでございます。これらの点も或いは政府がやるべきことは政府でやる、或いは府縣廳の取扱等で特に戒心をして頂かなければならん点は戒心をして頂くというふうなことで、地方部長会議或いは課長会議等には、屡次指示をいたしまして、万遺憾ないようにしてくれというふうに頼んでおる次第でございます。傷痍者の特別の援護の問題につきましては、実は非常にデリケートでございまして、御承知のように聯合軍司令部等で、傷痍軍人の対策というような文字が出て参りますたびに、向うから事情をきいて参るのでございます。そんなこともありまするので、私共が傷痍者に対しまする特別の援護と申しますか、特別というと語弊が、これは言葉が非常にむずかしいのでありますが、一般の人並に援護をするというには、やはり傷痍者と一般人とのハンディキャップを或程度埋めて行くということが必要であります。そういう意味の特別という文字でありますが、そういうふうな施策を講じたいというふうなことで、数項目の具体的な案を以ちまして、今聯合軍司令部と打合せをいたしております。やがて了解がつきますれば、これら傷痍者に対しまして、勿論傷痍軍人にだけでありませんで、一般の産業傷痍者或いは戰災等の傷痍者を含めました傷痍者対策というふうなものを実行して、終戰後とかく等閑にされておつたのではないかというような方面に、特に力を入れてやつて参りたいと考えております。厚生行政全般につきましては、その外に衞生の方面、公衆衞生の向上というふうな面があるのでございますが、これは私の方の所管でありませんので、お許しを頂きたいと思います。要するに私共はこの厚生行政特に社会援護というような部面につきましては、新らしい國の憲法でありまする憲法第二十五條の線に沿いましてこれからどんどんやつて行く仕事がございますので、うんと力を入れてやつて参りたいというふうなつもりでおります。大変雜なことを申し上げまして恐れ入りましたが、御質問によつてお答え申し上げるようにしたいと思います。

発言情報

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発言者: 葛西嘉資

speaker_id: 25628

日付: 1947-09-27

院: 参議院

会議名: 厚生委員会社会事業振興に関する小委員会