三田村四郎の発言 (治安及び地方制度委員会)
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○公述人(三田村四郎君) 警察制度が民主化されるということは、我々今までの中央集權的な又軍國主義的な警察のために非常に苦んできた者に取りましては大變喜ぶべきことであり、それを念願しておつたことなんであります。併しこの民主化は警察權力の、警察の機能の弱體化になつてはならんと思うのであります。現在行われておりまする民主的な基礎の上に日本を再建するという仕事は、大體法制上では非常にラヂカルに實行されておるのでありまするけれども、その實體は少しも變つておらんのであります。あらゆる點において法制の方だけが民主化が整いまして、そうしてその内容がさつぱり民主化されず舊態依然たる状態にあるのであります。そういうときに、この形の上で民主化されましたところの警察法が實行されました場合に、凡そ民主化と反對の事實が現われることなきやを憂うるのであります。で、そういうことになつてはならんと思うのです。それ故に私も警察制度の民主化を徹底させるということには贊成でありまするが、且つこの法案の全體の構想というものには贊成できるのでありますが、これを實施するについては戸倉さんが先程申されたように、その條件を具備することを非常に考慮しなければならんということを考える者であります。弱體化したところの警察權力の上に、更にそれが非常に不良化するということになつては何の得るところもないのであります。
で、凡そ憂えられる點は自治體警察の點にあると思うのであります。先程どなたかもおつしやいました通りに、この自治體の警察というものが地方のボスの支配下に置かれるということになりましたならば、これは恐るべきことだと考えるのであります。どうしてそういうことが起るかということを考えまするのに、今日は御承知の通り經濟が混亂しております。流通秩序も紊えております。そうしてその上に警察官諸君の經濟上の問題であります。自治體に移されました場合に、その警察を運營して行き、又賄つて行くところの經濟力が果して十分であるかどうか。これが貧弱でありますというと、今日もすでに起つておりまする通り警察官の給料が安い。そうして人材を集めることができませんから一般に品性が低い。そこで當然そこに誘惑に負けまして不正が起るということになるのであります。現に今日です、到る所におきまして警察官の經濟的な救護のために、警察署長がその土地のいろいろな會社や工場、商店等を勸誘して廻つて、寄附金を集めるということが公然と行われておる、併し今日數萬の寄附をするというのに、普通の眞面目な事業會社においては行われないのであります。これはもう闇をやつておるか不正をやつているようなところでなければ、數萬の現金を寄附するようなことはできない。そうしてこういうものの支配下に警察が置かれるということになりますならば、その結果としての警察官の落墮というものとその權力の弱體化というものは凡そ想像ができるのであります。こういうことになつてはならない。
而も先程戸倉さんがおつしやいましたように、制度が變りましても、現在の警察官がそのままそこへ移されて働かされるということになりますると、我々は一層危惧の念を抱くのであります。普通の民主革命でありますならば、現在も本當に民主革命が進行しているのでありますが、民主革命でありまするならば、この國家權力、官僚の組織というものを徹底的に一遍やり變えなければならんのであります。然るに民主革命において最も大切な官僚機構に對する改革というもの、この最も大切な點が一番あとに殘されておる、こういう状態にあるのです。而もこの官僚機構の中に、特にこの警察官なんというものは全部一遍洗い替えるということが必要なのであります。併い今日の平和革命の途上におきましては、それ程徹底したことができないとしましても、少くともこの制度が變る機會に、不良な警官、それから長い間の官僚主義との下に養われて來たところの人間性を持つておらんような警察官、殘忍血を好むような警察官が非常に多いのでありまするが、こういうものを全部一掃するということがここに斷行されるのでなかつたならば、その弱體化し不良化したところの警察の行動を虞れるのであります。
それから先程一般に品性の低いことを申しましたが、これは俸給等の關係からして高い人材を求めることができない事情にあります。そのために知識の低い人がおります。それから殊によそでは働けないところの人が警察には雇われるという傾向が非常に強いのであります。私自身も今からすでに三十年前になりますが、大阪府の巡査を勤めたことがあるのでありますから、警察の内容を知つております。よそへ行つて詰らんところの人間が警察に勤めるのであります。殊に私が虞れますのは、敗戰後の警察には、軍隊から解放された軍人上りが非常に多數入つておらないかということを考えるのであります。これはもう恐るべきことだ、こういう人たちによつて作られるところの警察というものが、いかに制度の上で民主化されましても、決して民主化の實は上らない、この點を十分考慮して、こういう點を徹底的に改めなければいかんということを考えるのであります。
それからこの法律の中に警察大學のことがありますが、私は地方及び自治體において警察官を再訓練するというふうな機關は大變結構でありますが、警察大學というものには私は反對であります。ここを出まするところの者、警察の特殊な講習機關、最高講習機關を出ました者の實績というものを我々は體験して知つておるのであります。これは非常に偏頗な人しかできないのであります。大學を出て來たところの幹部諸君は非常に常識が發達しておる。ところが特別な警察の警官學校、今度はこれが大學というふうに改まるであらうと思いまするが、こういう所を出て來た者が非常に見解が狹隘で、それから官僚的で、非民主的で、そうして人間味に非常に乏しいところの片輪のような幹部ができ上るのであります。これは決して民主化された警察の將來のために得策でない。むしろそういう人材は一般の大學の法學部に入れてそうして教養を再教育するという必要があるならば、やるべきであるという私は意見を持つております。
それから以上申しましたように、形だけが民主化されましても、實體が民主化されていないのでありまするから、若しこの制度が運用されまするならば、そこにいろいろ弊害を豫想される。これを是正するところのことを我我は考えて置かなければならんと思うのであります。現在の司法省關係のいろいろな監察委員でありまするとか、制度の改革に對する委員制度が設けられておりまするが、この委員には成るほど各界の有識者の方が參加しておられます。けれども、今までの非民主的な國家權力、或いは警察制度の下に苦しんで來た人たち、それで非常な被害を受けたところの體験者というものが入つておりません。そのためにとかく形の上だけの改革に終つて、實體がいつまでも改まらないというところの憾みがあるのであります。それでこの法律が若し實行されまするならば、この運營が本當にその目的に副いまするように、監査の制度というものを強化する必要があるということを考えます。そうしてその監査の制度、その中の人に警察制度によつて今まで人權を蹂躙され、且つその人權擁護のために戰つて來たところの人を是非加える必要があるということであります。
それから同時にこの警察制度の制度だけは良くなりましても、依然として日本の今までの警察のように、人の力だけに頼つて行く、人間の勞力だけに頼つて、そうして警察の目的を擧げようとするこの傾向を改めまして、そうして機械と科學を十分警察の活動の中に採り入れるということを考えませんならば、依然として低級な安い人間をこき使つて、そうして警察目的を達しようとする在來の風が改まらないということを考えるのであります。この點も一つ考えて行かなければならん。
全體として私は、今日國民の生活が不安定であります。生活が經濟的に安定しませんならば、そこに民主主義の制度というものは、どのようなものでも發達しないと思います。ですから經濟上の安定ということと考え合せて、いろいろな制度の改革を考えて行かなければならない。若し今日直ちにこの警察法が實行されるということになりますると、以上述べましたようないろいろ思わない缺陥のために、我々は新たな苦しみをしなければならんということを豫想されるのであります。故にこのめには先程戸倉さんがおつしやいましたような條件や、私只今申しましたような監査の制度、それから人員の不良分子の淘汰というような、いろいろな條件を具備して、そうして實行されんことを望む者であります。