近藤博夫の発言 (治安及び地方制度委員会)

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○公述人(近藤博夫君) 私は大阪市長として、又五大都市の市長の一人として、本日の新警察制度の案件につきまして二、三大都市の市長としての立場から意見を申述べたいと存じます。尤も私が申上げることは、多分この席でしばしば重複される點があるかとも存じますが、重複されるところは即ち多數の人の聲であると御了承願いたいと思います。
 先ず第一には、新警察制度運用の根幹をなしておるところの公安委員の選任に關する件でございます。法案の第二十一條におきまして、その委員の資格についてこういうことが規定されております。「委員は、その地方議會の議員の被選擧權を有する者で、警察職員又は官公廳における職業的公務員の前歴のない者から市町村長が議會の同意を得てこれを任命する」ということになつておりまするが、かくのごとく資格を限定することは、實は市長としてその選考に多大の困難を感じまして、適當な人物を得るには大變な困難を感ずる次第であります。即ちその市町村の被選擧權者とすれば、その選擧の範圍が地域的に甚だ限定されることとなるのであります。特に大都市におきまする郊外生活者は非常に澤山に上ります。即ち大都市にその職業を持ち大都市の發展に關心を持つておる市民のその多くは郊外に生活をしておる者が大變澤山であります。即ち大都市に非常に關心を持ち、有力な意見を持つておる方々の多くが市外に居住しておるということから考えまして、その地域的制限が選考に大變限定されるという憂があるのであります。尤も地方自治法の改正案によりますれば、本人の申請によりまして、住居の要件に拘よらず、議會の議決を以ちまして被選擧權を附與されることになるそうでありますが、併しこれとても天災事變等の事柄によりまして住居を移した者、或いは海外歸還者に限られておりまするので、この委員の選任につきましては、これを嚴格に法的に制限するということは、先税申上げましたようにその選考を甚だしく窮屈にするのでありまして、この點は餘程緩和をさして頂きたいと思うのであります。
 更に又官公廳の職業的公務員の前歴のある者を全面的に除外しておることも大變行き過ぎの感があるのであります。公安委員を嚴正中立の立場にある人から選ぶとすれば、これらの人々の中に適當な人物を多く見出し得るのであります。尤も警察職員の前歴のある者を除外することは毛頭異存はございません。
 次に委員の服務に關しても、國家公務員法における兼職禁止のごとき條項の嚴格なる準用は同様の意味において緩和せられたいと思うのであります。事實上適當な公務員の選定を全く專任である公務員としてこれを求めるということは非常に困難を感ずるのであります。できるだけ廣い範圍から公務員を選定したい、これが私の望みでありまするが、公職適否資格審査の基準に觸れる者はこれはもう勿論いけませが、それ以外の制限はできるだけ最小限度に止めて頂きたいと思うのであります。
 第二に、市長と公安委員會並びに警察業務に對する關係についての問題でございます。法案の第四十三條には「市町村長の所籍の下に市町村公安委員會を置き、その市町村の區域内における警察を管理せしめる。」とありますが、この所轄の意味が誠に曖昧なため、市長がいかなる程度にこの公安委員會、從つて一般警察業務に對して權限を持ち責任を有するか、甚だ明確を缺いておるのであります。勿論公安委員會は新警察制度の趣旨から考えまして、市長に對して特殊の地位にあるものとは考えられまするが、これは主として法案第二條にいう、いわゆる運營管理の面においてでありまして、委員會の人事、組織、豫算等、いわゆる行政管理については市長は或る程度の權限を持つべきであろうと考えられます。例えば警察の豫算は市長が編成をいたしまして、議會に、いわゆる地方議會に提出いたし、その議決を經なければならないと考えまするが、然らばこの議決を經た豫算を執行するに當りまして、當然その執行の責任は市長にあると思うのであります。市町村にあると思うのであります。從いましてその得た執行についても市長の權限が及ばなければならないことになると思います。又法案の第四十五條に、警察署の位置、名稱及び管轄區域並びに市町村警察本部の設置及び組織はその公安委員會の權限に屬してはおりまするが、これらの事項は市の行政と密接な關係がございます。現に地方自治法におきまして、市の部局の設置とか、或いは區役所の設置等がそれぞれの條例を以て定める事項になつておりまするのと比べて、單に公安委員會のみが決定する權能を持つておるということに比べまして、非常に均衡を失しておると、こう考えられます。又運營管理につきましても、市長は市を代表する立場より委員會に對し或る程度の權限を持ち得るようにして頂きたい。こういう考えを持つておるのであります。
 第三は、自治體警察に關する經費の問題でございます。この地方自治制度上この畫期的な警察權の委讓に當りまして、これが財政的の裏付けが十分になされない限りは、いわゆる佛作つて魂が入らぬこととなるのではないかということを心配するのであります。即ち經費につきましては、法案の第四十二條におきまして、當該市町村の負擔とするということになつておりまするが、附則の第八條におきまして、地方自治財政が確立されるまでは、國庫竝びに都道府縣が負擔するということになつております。併しこの場合十分に考慮して頂きたいのは、大都市の警察費は實に厖大な額に達しております。これを現在の府縣における警察費の割合よりも、市にこれを委讓された場合の警察費の負擔はますます増大するものと私は考えます。なぜかといいますと、警察職員の人件費が必ず増崇すると思います。即ち大都市警察職員としての嚴正な態度と、警察職員としての品位を保持するためには、必ずや他の吏員との給與の相違があつては相成らん。今日の一般的な警察職員の給與と、大都市における他の吏員の給與とを比較して見るときに、必ずやその感を深うするところがございます。又警察署の廳舎の新築、増築、或いは警察に要する調度品の購入等につきましても、現在府縣費の豫算の計上は事實上殆んどその各目に止まりまして、實はその大部分は地元の住民の、こう言つちや言い方が少し亂暴かも知れませんが、半ば強制的な寄附に俟つておる状態にあります。自治體にこの警察權委讓の後におきましては、かかる強要的な寄附によつて警察を賄つて行くということは、新らしい制度の趣旨からいいましても、亦從來いろいろな弊害を釀しておつたという點から考えましても、十分に我々は自戒し、愼重に考慮しなければならん點があるのでないかと存じます。殊に大都市におきましては警察職員の住宅、或いは病院、その他職員の厚生施設、教養施設、更に先達つて参りましたアメリカ視察團の勸告にもありましたごとく、大都市の治安の特異性に相應した制度の科學的な裝備、設備を設けたいと存じます、又設けなければならんと考えますが、そういうものに要するいわゆる物件費の經費面におきましても相當の多額を見なければならん、こう考えますると、この警察制度のよつて生れる經費の問題を十分にこの法案において編んで頂きたいと思うのであります。これは經常的なことを申しましたが臨時的な經費から考えまして、大都市におきまして問題になるのは、市の警察本部の廳舍であります。新たな都市警察は、組織的にも完全に國家地方警察から獨立せしめなければならない。又市民のための民主警察の確立という點からみましても、從前ありましたいわゆる府縣國家地方警察と同居するということは新發足の意義を全く無くすることになると思います。例えば大阪市におきましては管區本部あり、府縣本部あり、市本部があり、この三者が同じ廳舍において同居するということは事實上不可能であります。おのおのが分離獨立した廳舍を持ちたいという要求もあります。從いまして、新たに廳舎を建設する、或いは他の營造物を買うというようなこと、或いは又實際警察の足であり手であるところの自動車、或いは通信施設というものを新らしく考えまするときには、その經費は實に莫大に上ると思います。これらの經費につきまして、是非共國庫において高額の補助を願う、或いは又地方の起債の認可を願う、起債の認可を貰つても今日なかなか資金化しないのでありますが、その資金の調達についても、政府において特別の御考慮を煩わしたいのであります。
 これを要しまするのに、大都市の警察の重要性と特異性を考えまして、新警察制度の實現と共に、一日も早くこの地方財政の確立を圖つて頂きまして、新警察制度發足に要する經常的、臨時的經費については十分な財政的な處置を考えて頂きたいのであります。
 第四には、警察用の財産の引繼ぎに關する問題でありまするが、この法案の附則第九條には、「新たに市町村が警察の責に任ずることとなつた場合において、現に警察に用に供する國有財産又は國の所有に屬する物品で國家地方警察に不必要なものは、無償でこれを當該市町村に讓渡することができる。」こう規定されてあります。國の財産については規定されておりまするが、府縣有財産ということについては、何らここに規定がないものであります。然るに現在の警察に使つておる各種の財産は例えば市内の警察の廳舎或いは官舎、通信施設などを見ますると、大部分が府縣有の財産でありまして、國有に財産というものは殆ど問題にならん程少部分であります。このいわゆる府縣有財産を有償で讓るか、或いは無償で市町村に讓渡するか、これは大變な市町村の財政にとつて重大な問題ななるのであります。併しながらよく考えて見ますると、これらに府縣有の警察財産と共に實は府縣民でありまする市民が納めた府縣税と、更に先刻申しまするこれに數倍する地元市民の寄附金及び一部國庫補助金によつて賄われたものでありまするから、私はこの府縣有警察の財産は、當然この際いわゆる市町村に無償で讓渡されるように規定さるべきものであると考えます。どうかこの點に關しまして、明らかに法的に規定をされて頂きたいと思うのであります。
 更に最後に、都市警察において管掌すべき警察業務の問題でありまするが、この新警察制度によりまして、公安の維持に必要なあらゆる行政警察の權能は、國家地方警察と同じく、すべて自治體警察の保有するところとなりまするが、この場合、これに伴う關係法令も當然改正を見るべきものと考えられます。これは大變言い方が廻りくどいようでありまするが、例えば一例を擧げますと、先頃公布されました道路交通取締法におきまして、都道府縣知事の權限に屬しておりまする道路の通行禁止、或いは制限、自動車の車輛の運轉、免許、車體の檢査、速度の制限、大變問題は小さいようでありまするが、こういうようなものは、當然都道府縣の公安委員會或いは市町村公安委員會がこれを行うことに規定されておるのでありまするが、この場合、その列擧しましたもののうち、市町村の能力に鑑みまして、この部分はこういう小さい、五千内外の小さい自治、いわゆる地方委員會においてはその權能はないかも知れない、併し大きな都市においては、相當の設備も能力もあるというようなものは、そこに差別を以て讓渡をして頂きたい、小さい町村の公安委員會にはこういうことは事實できないでしようが、少くとも大都市に對しましては、こういうような行政實力を有しておりますから、この權能を全面的に委讓することが、この新法令の敏速且つ圓滿な執行を齎らす所以であろうと考えまするので、かかる關係法令の改正に當りましては、是非共この大都市の自治體警察ということを念頭に置いて、法令の改正を試みて頂きたいと思うのであります。要領のみ申上げまして、私の意見を以上述べさして頂きました。

発言情報

speech_id: 100114398X01819471126_015

発言者: 近藤博夫

speaker_id: 33906

日付: 1947-11-26

院: 参議院

会議名: 治安及び地方制度委員会