小倉庫次の発言 (治安及び地方制度委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○公述人(小倉庫次君) 乏しい知識からでございますが、主として自治體警察につきまして、本法案について特に疑問と思われるような點、數點を申上げたいと存じます。前の方々のお述べになりましたことと概ね重複いたしますけれども、私共はどんな考えを持つておるかということの御參考の意味でお聽き取りを願いたいと存じます。
第一は、警察の單位が餘りに小さ過ぎはしないかという點でございます。法案第四十條によりますれば人口五千以上の市街的町村は、その區域内において警察を維持することになつておるのであります。そういたしますと、自然人口千人當り一人の警察官といたしますれば、四人、五人というような小さな單位の警察が實現するわけであります。果してこんな小さな警察で一體有效適切に警察活動を行うことができるかどうか。本當に有效な警察活動をするためには、或る程度の大いさを持つたものでなければ、いわゆるポリス・フオースは構成できないのじやないかと、私共素人ながらそう感じております。而もこれが實現いたしますれば、あの町には警察吏員は何人しかいないというようなことが世間一般に明瞭になるわけでありますので、或る意味におきましては、犯罪者のために一種の安全地帶を作るようなことになる處れはないだろうかということを懸念いたします。自治體自身が警察を持つという精神は、誠に警察民主化のためによろしいのでありますけれども、現實の警察活動の面で支障が起りはしないかという懸念を持つております。
御參考に申上げますれば、私共の聞き及んでおりますところでは、イギリスでは小さな警察は段々合併して大きくしようという運動が起きておるそうであります。それからアメリカにおきましては、御承知のように人口一萬程度の都市でも、極端に少い所は警察吏員三人というような所もございます。五人、六人、七人というような小さな單位の警察もございます。併しその裝備は三人の警察でやつております所でも、ラジオの附いておる自動車を持つておるというような科學的の裝備を持つております。一面人口基準だけでアメリカの町と日本の町村とは比較になりません。アメリカは町と申しますれば相當纒つております。日本の人口五千以上乃至一萬近いというような町村でも、隨分ばらばらな、區域だけだだつ廣い町が、村が澤山ございます。ここにも「市街的町村」と、特に「市街的」という字を入れて斷つてはおりますけれども、必ずしもアメリカあたりの事情そのままを日本に持つて來て當嵌めるわけには參るまいと存じます。そういう意味におきまして警察單位が餘りに小さ過ぎはしないかという懸念をもつております。
それから第二に警察の相互援助の問題であります。我が國は不幸にして火災を初め風水害、地震その他極めて天災地變の多い國であります。かような災害が起きました場合には、その災害地の地元の警察というものは、自治體警察は警察署も罹災をし、その警察の職員も罹災者であるというのが先ず通常であります。而もその際に警察活動は最も緊急を要するという場面でございます。勿論自分の家を忘れ、妻子を忘れ、警察事務に邁進する警察官が多いこととは存じますけれども、何さまこういう警察署も吏員も皆災害を被つておるというような場合に、一體救援が適切に行われ得るだろうか、どうだろうか。國家非常事態につきましては、第七章に特別措置の規定がございます。こういう重大な事態ではなくして、而も地方的には、局部的な非常事態というようなものが非常にあり得るのでありまして、萬が一という場合ではありません。我が國では先ず毎年どこかにあるくらいの覺悟はしておらなければならないと思います。勿論法案第四章に國家地方警察、それから自治體警察、或いは自治體警察相互間の關係が規定されておるのでありまして、相互に協力の義務がある、或いは都道府縣國家地方警察の警察官は、市町村の公安委員會から援助の要求がありました場合には援助するというような規定が置かれてはありますけれども、警察の單位が小さなばらばらになりました場合に、機敏な應急の措置が講ぜられるかどうかという點について疑問を持つておりますので、でき得ますなれば國家非常事態に對すると同じ趣旨におきまして、天災地變等の場合におきます地方的非常事態に對し特別措置の規定があつて欲しいと思います。實際この規定は非常に活して使われるのではないかと思います。
第三は公安委員會の活動の點であります。これは自治體警察に限つたことではありません。今度の警察法案の先ず主眼點は公安委員會にありまして、この委員會の構成なり、活動なりがよく行くかどうかということは、この法案實施後の日本の警察がいい警察になるかどうかという岐れ目だと存じますので、公安委員會につきましては特に注目する必要があると存じます。御承知のように、前に土屋さんからもお話がありましたが、委員會制度は智能を集めて愼重審議を盡すということには適當した行政の型でございます。けれども、判斷の急速を要するという種類の行政の處理には不適當な行政の型である。こう申されているのは常識であります。然るに申上げるまでもなく、警察事務、殊に運營管理につきましては、時期を失するといふことが極めて重大なことになりますので、機敏なる判斷を下しまして、急速な處置をするということが必要な場面が非常に多いのは申上げるまでもないのでありますが、一體そういう急速の處置につきまして、合議體であります公安委員會の制度がよく活動の實を果し得るかどうか、その責任を果し得るかどうかということについて一抹の不安を持つている者であります。從いまして、公安委員會は警察の行政管理の面につきましては、これは先程お話もありましたが、よいと思います。ただ警察の運營管理につきをしては、篤と御愼重に御審議を願わしいと存ずるのであります。これは警察の民主化と警察の能率化というのが食い違う一つの點でありまして、外にもいろいろあると存じますが、特に民主化と能率化との食い違う點で愼重に考究を要するのではないかと存ずるのであります。民主化を犧牲にするわけには無論參りませんけれども、能率化の方も全然無視するというわけには參らないと存ずるのであります。この睨み合せが大事なところだと存ずる次第であります。
次にたびたびお話の出ました公安委員の資格の問題であります。職業的公務員の前歴のある者はすべて除外されております。が、この除外は餘りに廣過ぎはしないか。私共はまあ第三者といいますか、第三者の立場からも考えられるのであります。公安委員に適當なる人を得るか得ないかということは、今後の警察の在り方の上に誠に大事なことでありますので、選定、選拔の範圍はできる限り廣くして、適當な人を擧げて欲しいと存ずるのであります。從いまして、地方の都市等になりますと、何らかの形で適當だと思われる方は公務員の前歴を持つているような者が多いのであります。それらの者が一切除外されましては、本當に適當だと思う人もその職に就いて貰えないというような結果になりはしないか。そのために不滿な人選が行われ、延いてはボス的な者の活動の部面を作つてやるということになる虞れがありはしないかということが感ぜられるのであります。そういう意味におきまして、でき得ますならば、この法案の修正をいたされまして、例えば公務員の職種を限定いたしますとか、或いは退官、退職後一定の期間、例えば二ケ年を過ぎた者は差支ないというような程度に緩和して頂くことが適當ではないか。こういうふうに考えております。
次は警察吏員の教育の問題であります。法案の第三十六條第一項の但し書によりますと「基礎的な警察訓練の過程を經ない者は、これを國家地方警察の勤務につけることができない。」ということになつておりますが、これは自治體の警察吏員についても是非そうあつて欲しいのであります。警察大學校及び都道府縣の警察學校は、要求のあつたときは自治體警察の職員を訓練することにはなつておりますけれども、比較的小さな自治體でありますと、警察職員の人員の關係上、そういう訓練には出せないような場合が起りはしないかと思うのであります。つまり人員に餘裕がないために、長期間訓練に中央その他に人を差し向けることができないというようなことが起こり易いのであります。警察職員の質は警察の民主化、今後のよい警察を作つて行くために極めて大事な點でありますので、警察職員は必ず一定の訓練を經た者を任命するというふうに、訓練を義務付けるようにこの法律の中でして頂きたいと存ずるのであります。
あと二點は極めて小さな問題でありますが、この機會でありますので、申上げさせて頂きます。一つは制服の問題であります。第五十條の二項の但し書によりますと、市町村警察職員の制服は國家地方警察の制服と明確に區別するということになつております。これは警察活動の上から技術的に或いは區別することが必要だという面もあると存じますけれども、今日物資のない折柄特殊の制服を作るというようなことは誠に困難でありますし、又それが優劣を現すようなことにもなつては面白くありませんし、況してや國家警察と自治體警察とが對立するような感情を釀すようなことがあつては尚更面白くもありません。又自然兩警察の間で人間の交流といふことも起り得ると思いますので、そんないろいろな場合を考慮いたしまして、この規定は成るべく嚴格でなく、一つ印しを附ければそれでよいという位な程度に運用の面でやつて頂くことがよろしいのではないかというふうに感じております。
最後の點は水上警察の問題であります。これは私共の意見と申しますよりも、ちよつとお尋ねするような形になるのでありますが、この本法案には水上警察に關する規定は何にも見えておりません。一體この法案のままで水上警察も處理される方針なのでありましようかどうか、これは實は法案の原案者に伺いたいのでありますが、若しそうといたしますれば、何か多少私共はこのままで行けるかどうかという點について疑問を持つております。何か水上警察或いは港灣警察若しくは沿岸警察というものについて、特殊な規定を置く必要があるのではないかどうか。或いはそういう警察は又別個に決めるのかどうかというような點について多少疑問を持つておりますけれども、これはお尋ねするような恰好になつて申譯ございませんが、ただ私の疑問を持つておるという點だけを申上げて置くことに止めたいと存じます。
以上未熟な意見を御清聽を煩しました。