伊藤修の発言 (本会議)

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○伊藤修君 只今議題となりました三件につきまして、委員会の審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
 先ず、民法の改正に伴う関係法律の整理に関する法律案につきまして、簡單にご説明申し上げます。
 民法におきましては、日本國憲法の基本的原則に適合するように、戸主、家族其の他、家に関する規定及び家督相続に関する規定の削除、両性の本質的平等に反する規定の改正、親族会の廃止、成年者の婚姻には父母の同意を要しないこととし、未成年者が婚姻によつて成年に達したものとみなすこと等の改正が行われたのであります。然るに他の法律中には、從前の民法を前提としている幾多の規定がありますのでこれを改正された民法に適合させるように整理する必要が生じたのであります。又、民法の改正と並行して、他の法律中の家族制度に関する規定も亦これを憲法の基本的原則に適合するように整理する必要があるのであります。これらの整理をしなければならない法律の数は、すでに他の法律の改正等に関連して整理されたものを除いても、尚実に六十有余の多きに上る次第であります。これらの整理を要する法律について一々これを改正することは、非常に繁雑となるので、ここに一括して整理するために、この法律案が提出された次第であります。この法律案で整理の対象となつて、一部改正される法律を挙げて見ますと、お手許に配布せられておる法律案中に記載されておる通り、監獄法初め、その他六十三の法律であります。又廃止される法律は、國籍喪失者の権利に関する法律、民法第七十九條及び第百八十一條の規定による遺言の確認に関する法律の二つであります。
 尚改正の主なる内容を見ますと、或いは戸主、家族を削り、或いは家督相続を前提とする規定を削り、或いは妻の能力制限を前提とする規定を削り、或いは親族会が選任することになつていたのを家事審判所が選任することに改正し、或いは優生手術を受けることのできる年齢を三十歳から二十歳まで引下げる等の改正をなし、その他改正に伴う條文の整理をなし、又は所要の経過規定を設けた次第であります。委員会におきましては、愼重審議をいたしましたが、その質疑應答の詳細については速記録に譲ることにいたします。
 質疑を終つて討論に入りましたところ、本法律案中、その第十九條において、農業資産相続特例法の一部を改正する規定がありますが、この特例法は目下本委員会で審議中であつて、法律として成立していないのでありますから、これを本法律案の中から当然に削除すべきものであると思う。かような理由で松村委員から修正案が提出せられました。即ち第十九條を削り、第二十條を第十九條とし、以下第三十一條まで一條ずつ繰上げる。第三十二条を第三十一條とし、同條中「第二十條」を「第十九條」に改める。第三十三條を第三十二條とし、同條中「第二十二條」を「第二十一條」に改めるというのでありまして、この修正案に対し齋委員より賛成の御意見がありました。採決に入りましたところ全員一致を以つて修正案は可決されました。次いで修正部分を除く他の原案全部につきまして採決をいたしましたところ、全員一致を以つて原案通り可決すべきものと決定いたしました次第でございます。
 次に副檢事の任命資格の特例に関する法律案の審議の経過及び結果について簡單に御報告申上げます。
 副檢事は憲法改正後、檢察廳法の制定によつて初めてできた制度でありまして、簡易裁判所に対應する区檢察廳の檢察官の職のみに補することになつております。その取扱いますところの職務も、犯罪の捜査については、いかなる犯罪についてもこれをすることができますが、公訴の提起、公判の立会等については、簡易裁判所事件の外はできないことになつておりますので、さような関係から、その任用資格も從來の檢事よりは一段下げまして、いわゆる檢事は、高等試驗を通つて司法官試補、今の司法修習生を二年やつて初めてなれるのですが、副檢事の方は、これに対していわゆる特別任用式のもので、資格としては、高等試驗に合格した者、又は三年以上二級官として、檢察廳の書記又は裁判所の書記、今の言葉では事務官と申しております。監獄の典獄、警察官といつたような、主として司法関係の公務員の職に在つた者を副檢事選考委員会で選考して、これに合格した者の中から任命することになつております。これが今日行われておる檢察廳法第十八條の第二項の規定で、この副檢事は二級官で、これを三年やれば試驗を受けて檢事になれるというようになつております。
 そこで、檢事も判事も非常に不足している現状において、全國簡易裁判所に対置している区檢察廳が五百五十五ヶ所ありますので、とても檢事の配置はできないので、せめて副檢事の一人ずつぐらいでも配置したいというので、定員四百三十人の任命にとりかかつたわけですが、有資格の應募者が思つたように來ません。本年の五月三日に施行されて、十一月二十一日までに僅かに六十七人しか任命できないという実情にあります。尚任命予定者が三十七名程あるそうですが、それを合わせても百四人で、定員の四分の一にも達しません。尚不足が二百二十六人あるという状態であります。犯罪は日々累増の途を辿り、警察は改組される。正檢事はこれ亦容易に殖やすこともできない。何とかしてこの要請を充たさなければならない次第であります。
 ところが一方、檢察事務官、警察官などの中には、多年檢察の実務に從事し、実質的には副檢事の職務に必要な学識及び経驗のある者が相当にある。ただ從來司法省関係は非常に昇進が遅いので、なかなか二級官にはしなかつた等の事情のために、二級官三年在職の資格がある者が少いという実情でありますので、この副檢事の任命資格に関し臨時的の特例を作り、ここ一年間だけ前述の十八條第二項の枠を外して、副檢事の職務に必要な学識があり、経驗がある者の中から、副檢事選考委員会が選考して任命するという便法を設けるというのが本案の趣旨であります。選考委員会は、昭和二十二年の政令第八十四号に官制がありまして、司法大臣外、次官、刑事局長、最高檢察廳の次長檢事、東京高等裁判所長官等八人の委員から成つており、適正に選考が行われることになつております。尚かくして任命された副檢事も、三年後には檢察官特別考試令を経て二級の檢事に昇進する途が開かれておるのであります。以上が本案提案の理由及び内容であります。
 質疑に入りましたところ、齋委員より詳細な質問があり、尚政府委員よりも答弁がありましたが、いずれも速記録に譲ることにいたします。かくいたしまして討論に入りましたところ、満場一致原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 次に裁判所の一部を改正する法律案についてご説明申しあげます。
 裁判所法は本年五月三日から施行されましたが、施行以來の実績に徴しまして、簡易裁判所の裁判権の範囲を拡張し、裁判官任命諮問委員会を廃止し、裁判官の任命資格を拡張し、及び簡易裁判所の裁判官の定年を引上げる必要があるものとして、本改正案が提出された次第であります。その改正の内容について見ますと、
 第一に簡易裁判所の裁判権の範囲は、現行法第三十三條によりますと、刑事事件においては、罰金以下の刑にあたる罪又は選択刑として罰金が定められている罪に係る訴訟でありまして、簡易裁判所は禁錮以上の刑を科することができないので、禁錮以上の刑を科するを相当と認めたときは、事件を地方裁判所に移さなければならないことになつておりますが、改正法案では右の裁判権を拡張して、窃盗罪及びその未遂罪で三年以下の懲役を科する場合にもその裁判権あるものとし、三年を超える刑を科すべき場合には地方裁判所に移送すべきものといたした次第であります。
 第二に、現行裁判所法第三十九條第四項及び第五項によると、内閣が最高裁判所の長官の指名又は最高裁判所判事の任命を行うには、裁判官任命諮問委員会に諮問しなければならないことになつておるのを、改正法案では、右第三十九條第四項及び第五項を削除して、内閣が右の指名又は任命をなすには、諮問委員会を設ける必要もなく、全く内閣が自由裁量でその責任において行うことにいたした次第であります。
 第三に、裁判所法案が提出された当時には、司法省研修所が設立されるかどうか未定であり、從つて司法省研修所の教官たる司法教官は存在していなかつたので、現行法には判檢事出身の司法教官について、その裁判官に任命される資格に関する規定が欠けておるので、第四十一條、第四十二條、及び第四十三條に改正を加えて、右司法教官の在職を、司法事務官と同様に裁判官の任命資格の中に加えたのであります。
 第四に、現行法第五十條によると、簡易裁判所の判事の定年は六十五年となつておりますが、老練な退職判檢事、弁護士を簡易裁判所の判事に迎えるために、定年を七十年に引き上げることに改正されたのであります。
 次に委員会における質疑應答に対しては速記録に譲ることお許し願います。討論に入りましたところ、來馬委員から修正案が提出されました。その内容は本案の附則に次の三項を加えるの修正であります。
 「裁判所構成法による判事又は檢事の職に在つた者が、満州國の審判官の職に在つたときは、その在職の年数は、第四十一條及び第四十四條の規定の適用については、これを判事の在職の年数とみなし、第四十二條の規定の適用については、これを判事補の在職の年数とみなす。」次の項は、「裁判所構成法による判事又は檢事の職に在つた者が、満州國の檢察官に職に在つたときは、その在職の年数は、第四十一條、第四十二條及び第四十四條の規定の適用については、これを檢察官の在職の年数とみなす。」第三項といたしまして、「裁判所構成法による判事又は檢事の職に在つた者が、満州國の司法部理事官又は司法部参事官の職に在つたときは、その在職の年数は、第四十一條、第四十二條及び第四十四條の規定の適用については、これを司法事務官の在職の年数とみなす。」というのが修正案の内容であります。要するに判事又は檢事の職に在つた者が満州國に在勤して審判官、檢察官及び司法部の理事官又は参事官の職に在つた年数を、最高裁判所の裁判官、高等裁判所の長官及び判事並びに簡易裁判所判事の任命資格の期間に通算しようというのがその修正案の提案理由であります。右の修正案に対しまして鈴木委員から賛成の意見がありまして、他に御意見がないので、討論を終り、採決の結果、修正案は全会一致で可決いたしました。修正案を除く原案につきましては、原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。以上簡單に御報告申上げます。(拍手)

発言情報

speech_id: 100115254X06419471207_004

発言者: 伊藤修

speaker_id: 17098

日付: 1947-12-07

院: 参議院

会議名: 本会議