三木武夫の発言 (本会議)

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○三木武夫君 改進党を代表いたしまして、吉田内閣不信任案に対する改進党の立場を明らかにいたしたいと思うのであります。
 今回の不信任案につきましては、改進党は独自の不信任決議案を提出いたしておきましたが、議院運営委員会において、自由党と社会両党の同調によつて、改進党の不信任案でなくして、社会党の不信任案が先議になりましたけれども、改進党は社会党とは吉田内閣に対する不信任の理由を異にいたしておりますので、この点について、念のために改進党の決議案に対する理由を朗読いたしたいと思うのでございます。(拍手)
  吉田内閣積年の秕政極まるところ、綱紀は紊乱し、道義は頽廃し、国政は渋滞して社会不安は深刻となり、我が国は未曽有の危局に直面するに至つた。而も、自ら、汚職疑獄の渦中に巻き込まれ、その閣僚及び党最高幹部の身辺にまで司直の手が加えられんとするに際し、法務大臣の権限を悪用して司法検察権の公正なる執行を抑える等あらゆる醜策を弄して飽くまで、政権居座りを強行せんとしている。
  かくて時局を茲に至らしめた重大なる責任を何等感ぜず、神聖なる国家権力を私慾党略の為に濫用しつつある吉田内閣の態度は今や、全国民の周く憤怒するところとなるに至つた。
  よつて、本院は、国民輿論に従い、積弊を一掃して人心を新にし、政界を刷新して、責任政治を確立し、民生を安定して民主主義を守るため、吉田内閣の即時退陣を要求する。
    〔拍手〕
 これは、社会党と不信任案の内容について違いまするところは、改進党は自衛軍の創設の必要を認めておる政党であり、社会党のごとく外国軍隊に日本の防衛をまかして無防備でよろしいという立場を改進党はとつていないのであります。従つて、そういう点から、吉田内閣を信任せずという主文は社会党と同じでございますが、その理由とするところは社会党と異なることを明らかにいたす次第でございます。(拍手)
 改進党が吉田内閣の退陣を要求しまする理由は幾つもあるのであります。本多市郎君は自由党の経済政策の効能をるるお述べになりましたけれども、公平に見まして、現在経済危機の中に日本の国民生活というものが追い込まれておる事実は、何人も無視することができないのであります。(拍手)中小商工業者あるいは一般の市民にしても、この先日本の経済がどういう状態になるかということに対する深刻な国民の不安を否定することはできないのであります。(拍手)日本のこの経済上の不安というものは、せんじ詰めてみれば、国際収支の不均衡から来ておるのであります。そのために、日本の経済自立の基礎というものはまさに崩壊せんとしておる。本多君は国民の生活水準がこう上つたと言われますけれども、敗戦国においては必ずしも国民の生活水準が非常に急激に上つて行くということだけが望ましいのではなくして、日本の産業が海外の競争力をつけて、日本が経済自立の基礎を確立してここれ内閣は国民に対する責任を果していると言えるのである。(拍手)そういう点から、朝鮮の特需、アメリカの援助、この多額な日本の海外収入を漫然と食いつぶして日本の経済危機を招いた吉田内閣の責任はきわめて重大なものがあることを知らなければなりません。(拍手)
 また、疑獄、汚職の問題についてでございますが、吉田内閣が成立をしたときには、綱組の粛正ということが一枚看板であつたのであります。吉田首相に対するそういう道義的な信頼を背景にして綱紀の粛正をやる、これが吉田内閣の出発点であつたのでございます。今本多君の言われましたことく、いろいろ同僚が疑惑を受けましても、それは、裁判所の判決が下されるまでは、その同僚に対して断定的な批評を下すことはできないということはその通りでございます。これは各党とも疑惑を受けておつて、一面から議会全体がこの事態に対して厳粛な反省をしなければならぬとは思いますけれども、自由党に対する世の疑惑が非常に広汎であり深刻であることは事実でございます。ことに、最近、吉田内閣が、検察庁法の十四条を発動して、検察庁の逮捕許諾の要求に対してこれを拒否いたしましたことについては、国民の疑惑は非常に深刻なものがございます。(拍手)重要法案通過のためにそういうことが必要だとは申しますけれども、しかしながら、民主政治というものは国民の高い道義につながつておるのでございまして、重要法案が大事だからという、目的のために手段は選ばなくてもよろしいということは、これは民主政治の原則に反するものである。(拍手)民主政治というものは、やはり手段を選ばなければなりません。国民からすれば、非常な深刻な疑惑が吉田内閣にかけられていることは事実でございます。こうなつて参りますると、議会政治というものが国民の信頼につながらず、吉田内閣がこのような国民の深い疑惑に包まれて、しかも日本は経済的にもこの難局である。この非常な難局を内閣が突破して行こうといたしましても、それは政治にはならないということを明らかにいたしておきたいのでございます。(拍手)
 ことに、民主政治は責任政治であります。責任を感じないとするならば、民主政治の基礎は確立するものではないのである。民主政治の根底には責任を感ずるということがなければ、議会政治は育つて行くわけはないのであります。吉田内閣が最近検察庁法の発動をいたしましたときにも、犬養法務大臣は責任を感じて辞職したじやありませんか。吉田内閣自身として堂々たることをやつたとすれば、何も辞職さす必要はない。責任を感ずる必要はない。(拍手)吉田首相が老躯をひつさげて国政のためにおやりになつておることはわかりますけれども、しかし、どうしても、この段階に参りましたならば、日本の新しい視野から、日本を再建するためには、吉田内閣の退陣が絶対に必要だと思うのでございます。(拍手)
 あるいは本日の不信任案は多数の力によつて葬られるかもしれませんが、政治は数ばかりではない。この国会の外における世論、国民の輿論というものに耳を傾けなければならぬと私は思うのでございます。(拍手)日本自由党の諸君も、改進党とほとんど同じ理由のもとに、社会党と異なる提案理由のもとに、吉田内閣を信任せずという決議にわれわれと一致の意見であることを附加いたしまして、どうか、吉田首相が、個人の趣味にとらわれることなく、活眼を開いて、新しい日本の建設のために、大局を誤ることなく——この際退陣を要望いたしまして、改進党の賛成意見を申し述べた次第でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 三木武夫

speaker_id: 13903

日付: 1954-04-24

院: 衆議院

会議名: 本会議