松前重義の発言 (本会議)

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○松前重義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、防衛庁設置法案、自衛隊法案、この両法案に対しまして反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)
 この二つの法案は、さきに全国民の猛烈な反対を押し切りまして国会を通過いたしましたMSA協定と並んで、わが国の将来を決定いたしまする実に容易ならざる内容を持つておりまして、私は、ここに、憂憤禁じがたく、深く保守党諸君の深刻なる反省を促しまして、この二法案を葬り去らんと志して登壇いたしたのであります。(拍手)
 私が申し上げようと思つておりまするその第一点は、今日原子力の時代におきましては、自衛とか軍備とか称するものの内容が根本的に変化いたしておりますのにもかかわりませず、政府与党の諸君が、旧態依然たる軍備にかじりついて、国民の血税を浪費しておるということであります。(拍手)先般ビキニ環礁におきまして実験が行われまして、不幸にも日本人漁師の二十三名がモルモットがわりに使われて水爆の犠牲となりました。そうして、この水爆の威力は、もしわが国にこれが落されるといたしますれば、およそ三発をもつてして日本全土を廃墟に帰せしめることができるのであります。この水爆の威力をもつていたしますれば、名古屋に一発これが落ちれば、東京にその灰が降り、そのために水道の水は放射能に満たされ、野菜や米麦もすべて放射能を帯び、人体の内臓と脊椎を冒しまして、直接には灰粉のため陸上の生物のすべては死滅することは明らかであります。(拍手)かくのごとく、原子戦が起つたといたしますれば、敵を殺さんと欲すれば必ずみずからも死滅することを覚悟せねばならないのであります。(拍手)
 アインシュタインやその他の優秀なる科学者たちの言によりますれば、第三次世界大戦において原子力が使われたといたしますれば、二十世紀の末までに人類は絶滅するであろう、いな、地上の動物界は姿を消すであろうと言われているのであります。これは、歴史の新たなる一つの時期、すなわち原子力時代のまことの姿を正しく認識いたしました科学者の言葉として、政治家たる者まきに襟を正して傾聴すべきものであると信ずるのでございます。(拍手)政府は、今回この二つの法案におきまして、自衛隊の任務を直接侵略に対抗するためと明確に規定し、しきりに共産勢力の直接侵略の危険をわめき立てているのであります。しかしながら、中ソいずれかが日本に対して直接侵略の挙に出るということは、それはただちに全面原子戦争になるということであります。全面的な原子力戦争に突入いたしまする以前におきましても、強力なる電波誘導爆弾などによる徹底的な科学兵器による破壊が行われることは必至であります。その場合、自衛隊はまつたく何の役にも立たないのであります。直接侵略が実際に起つた場合何の役にも立たないことが明らかであるものを、何ゆえにわざわぎ直接侵略に対抗するという任務を負わせるというのでございましようか。(拍手)これがすでにそもそも矛盾しておるのであります。これ反対の理由の第一点であります。
 原子兵器の発明とその異常な発達とは全面戦争の勃発を不可能にいたしつつありまして、他方において、さきのビキニ水爆の実験を契機といたしまして、原爆、水爆の禁止、原子力の平和的な利用、またさらに進んで一般的軍備縮小の実現の声はほうはいとして全世界をおおつております。現に、国連におきましては、国連軍縮委員会におきまして軍縮のための討議が進められており、またアイゼンハウアー大統領の原子力の平和利用の提案をめぐりまして米ソの交渉は続けられておるのであります。超国家的な管理機関が設置ぜられまして、これに各国家の主権の一部が委譲されることは、すでに現実の事態とならんとしておるのであります。このような世界の大勢にわざわざ逆行いたしまして、何を好んでやせ腕にさび刀をかつぐがごとき自衛隊を国民の血税によつて増強維持せんとするのでありましようか。(拍手)この二法案は、まざに原子力時代を認識しないところの東条時代におきまするような、まことに貧弱なる生産力と科学力をもつてしてあえてアメリカに対抗いたしました、あの無謀なる笑うべき防衛概念に基いたものであります。政府は、むしろ現行憲法の精神を遵守して、世界に率先して軍縮断行の実を示すべきであります。これ反対の第二の理由であります。
 この二法案がMSAに直結するものであることは明らかであります。憲法を踏みにじつて再軍備を強行する内容を含んでいることは言うまでもありません。MSAに直結する軍備とは何でありますか。それは米軍の旧式兵器と引きかえに日本人の肉弾を提供することを苦心味するものであります。現に、安保条約、行政協定、MSA協定という一連のとりきめは、一朝有事の際日本の自衛隊が米軍司令官の指揮のもとに入りまして行動する義務を負わしめていることは明らかであります。(拍手)具体的に条章をもつて示すといたしまするならば、行政協定第二十四条に申しております日米の共同措置は、自衛隊法案の第七十六条に言つておりますところの防衛出動につながるものでありまして、これによりまして、米軍の司令官は、その指一本を動かせば、自衛隊を海外に派遣することも、はたまた国内に軍事的クーデターをしくこともできるということに相なつておるのであります。(拍手)先に私は全面戦争開始の危険は原子兵器の発達の結果消失したと述べたのでありまするが、しからば、現にアメリカがやつておりますることは、単に中ソに対する威嚇にすぎません。しかりとするならば、あわれむべし、わが自衛隊は、このアメリカのむなしき威嚇の道具として利用されておるのに、すぎないのであります。(拍手)このような軍隊は、いたずらにわれわれの税金を食いつぶすのみで、まつたく百害あつて一利なし、すみやかに大縮減を行つて国内治安維持のための警察力程度にとどめ、さらに産業建設、国土開発にこれを転用すべきであります。これが反対の第三の理由であります。(拍手)MSA協定につながる将来の道は何でありまするか。それは、言うまでもなく、現在ワシントンにおいて着々ともくろまれつつありますところの太平洋軍事同盟であります。これが中ソに対抗いたしまするところの反共軍事同盟であり、必ずしもアジアの人民の意図にかなつたものでないことは、インド、ビルマ、インドネシア三国がこれに背を向けておることによつても明らかであります。(拍手)MSA協定から太平洋同盟へ、これはすなわち、日本の自衛隊が朝鮮か仏印かあるいはその他の米軍司令官が指名する地域に出動して、むだな血を流すことを意味するものであります。(拍手)海外出兵に対する政府与党のまことの腹、すなわち米軍から海外出兵の要求があればこれに従うという腹は、次の二つの事実によつても明らかであります。すなわち、その第一は、MSA協定の本文の中に海外出兵条項を書き入れないで、単に岡崎・アリソンのあいさつの中に触れたにすぎないということであります。第二は、与党たる自由党が、衆参両院において、野党側の提出いたしました海外出兵禁止決議案に反対し、これに難くせをつけて葬り去ろうとしておることであります。(拍手)この二つの法案におきましては、海外出兵禁止の条項はどこにも見当らないのみか、先に申し述べましたように、行政協定の日米の共同措置と自衛隊法案の防衛出動との規定によつて、いつでも海外出兵できるようになつているのであります。これ反対の第四の理由であります。(拍手)
 今かりに百歩を譲りまして、自衛隊が直接侵略に対抗できると仮定してみます。その仮定のもとに考えてみましても、その兵器の補給源をすべてアメリカに依存している軍隊は、一たびこの補給がとまりますれば、たちまちにして瓦壊することは、火を見るよりも明らかであります。第二次大戦は、戦争は生産力戦争であり、そうして補給の戦いであることを如実に示したのであります。アメリカの日本に対する勝利は、その生産力の基礎が厖大なる平和産業にあつたことを示しております。かかる重大な教訓を再び学ばないで、平和産業を圧迫して国民生活を破壊し、ひたすらアメリカの軍需産業に依存してでき上つたところのこの自衛隊なるものは、日本にとつてば、実は日本を守る自衛隊にあらずして、アメリカの空軍基地を守るところの他衛隊と言わなければならぬのであります。(拍手)これが反対の第五の点であります。
 防衛庁設置法案に規定いたしております国防会議の性格、さらにまた内局勤務者の資格制限の撤廃は、まさにかつての統帥権の独立への道、これを復活するものであり、再び新たなる軍閥の台頭と暗黒の軍部独裁とを必然的に招来するものであると言わなければなりません。かくいたしまして、日本の政治は、別に提案されました秘密保護法案と相まちまして、急転直下、かつての東条時代のごとき軍国日本の復活へと逆転いたそうとしているのであります。私は、この法案に賛成ぜんとする諸君が、将来自衛隊のカービン銃に取囲まれて軍事予算のうのみを強制されるときに後悔のほぞをかむなと、今この壇上から繰返し強く警告するものであります。(拍手)これが私の反対の第六の点であります。
 ただいまの自由党の代表のお話を承りますと、まさに、私は、かつての大東亜戦争当時、東条時代における朝な夕なに聞いたあの勇ましい演説、あれそつくりであると思います。(拍手)このような誤れる歴史の見方におきましては、祖国の前途はまさに累卵の危きにある。歴史家は将来において必ずその非違を指摘するであろうと私は確信いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)

発言情報

speech_id: 101905254X04519540507_010

発言者: 松前重義

speaker_id: 31716

日付: 1954-05-07

院: 衆議院

会議名: 本会議