高瀬傳の発言 (本会議)

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○高瀬傳君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま本会議に上程せられておりまする防衛庁設置法案並びに自衛隊法案に関しまして賛成の意を申し述べるものであります。(拍手)御承知の通り、わが改進党に索きましては、独立後の日本の置かれたる立場を十分認識いたしまして、かねてから国力に相応した自衛軍備の創設を主張して今日に至つたのであります。みずからを守るということは人間の本能であり、国を守るということは、たとい敗戦国といえども、わが国民の当然の、しかも神聖なる義務と私は考えます。(拍手)敗戦後のわが国は憲法によつて侵略的な軍備を保持することは禁止されておりますが、わが国がいつまでも無防備の状態に放置せられることは、わが国を取巻く国際的諸情勢より申しましても、決して許されるものではありません。日本を守るという民族的な意識と、こうした国際環境より申しましても、わが国が自衛軍を必要とすることは当然の帰結と考えられるのであります。さらに、わが国における自衛力の必要は、サンフランシスコにおける平和条約に伴い締結せられたる日米安全保障条約によつても明確に規定されておるのであります。すなわち、同条約は、その前文において、「アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となわ又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外北用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」と、きわめて明らかにせられておるのであります。われわれは、かかる趣旨を十分に理解し、早くより国力に相応した長期防衛計画を立て、自衛軍の創設をもつて外敵に対抗し得る旗じるしを鮮明にいたしておりましたことは、諸君御承知の通りであります。(拍手)かかる意味におきまして、本法案に賛成の意を表することは決してやぶさかでないのであります。しかしながら、わが国の防衛問題に対する今日までの政府の態度には必ずしも満足するものではありません。この法案通過にあたりましても、むしろ深い疑惑と不安の念を抱かざるを得ないのはきわめて遺憾とするところであります。私は、この際、防衛問題について政府に対する不満の点を率直に披瀝して政府の猛省を促するとともに、この法律の運営に関し政府はその慎重を期ぜられんことを期待し、本法案の成立をはからんとするものであります。
 第一は、政府が真に国を守る自衛軍を創設する熱意ありやいなやという点であります。申し上げるまでもなく、国家の防衛は、国家存亡の基礎でありまするとともに、国家の運命を支配する重要なる問題であります。いやしくもわが国が独立を回復した以上、当然自国の安全は自力によつて保障せらるるものであることは論をまたないところであります。従つて、国防に関しましては、あくまでも自主的に政府がその見解を表明し、自己の判断に基いて目標と計画を立て、誠意と信念をもつて国民に訴え、しかる後に国民の理解と納得を受くべきものであると信ずるものであります。(拍手)しかるに、政府は、この問題については何ら具体的なる計画を示すことなく今日に至つておるのであります。本来、このような自衛軍を創設するにあたりましては、全然計画なしであるということは、普通の常識から申しましても考えられないのでありますが、政府は二十九年度以降の防衛計画についてはいまだはつきりしていないと言うのみであつて、全然今後の防衛計画を国民の前に示さないのは、はなはだ遺憾とする次第であります。(拍手)政府の態度は、あたかもMSAを受入れるがために急速自衛軍の創設を考え出したるがごとき感を国民に与えておるのでありまして、これがために必要以上にこの問題を混乱させる結果となり、ひいては一部の人たちに、アメリカに押しつけられてアメリカの傭兵をつくるのだという宣伝の口実を与えておるのであります。これでは隊員の志気にも重大な影響があるばかりでなく、国民に信頼されざる軍隊ができ上つてしまうのではないかと、ひそかに憂するものであります。もとより、将来微動だにしないような長期防衛計画を樹立することは容易なことでないと存じます。しかし、今や自衛隊を創設し、陸上、海上自衛隊のほか、新たに航空自衛隊まで設置せんとするにあたつて、将来の計画り概略を示すことは政府の当然の義務であると信ずるものであります。(拍手)ゆえに、われわれは、きわめて近い期間に政府が防衛計画について必ずこれを提示されんことを強く要求するものであります。
 第二は、自衛隊の性格が憲法との関係においてきわめてあいまいであるという点で、われわれの最も遺憾とするところであります。われわれは、警察予備隊をつくり、これを保安隊に改変した当時より、これは戦力であり、また実質上の軍隊であると主張して参りました。過日、内閣委員会の公聴会の席上において、公述人野村吉三郎氏も、警察予備隊が生れたときより、これはアーミーのスタートだと思つておる、これを憲法との関係において政府は非常に苦慮しておるようだと申されております。しかるに、政府は、自衛隊は軍隊なりやいなやの質問に対しては、緒方副総理は、軍隊ではなく特殊なものであるというふろに片づけ、さらに木村保安庁長官は、これよりも一歩前進いたしまして、外部よりの武力攻撃に対処し得る実力部隊を軍隊なりと解釈するならば、自衛隊はまさに軍隊であるとなし、わが党の須磨彌吉郎氏の質問に対しましては、木村個人としてはまさに軍隊であると答弁をせられておりますが、われわれの知らんと欲するところは、木村個人の見解ではなく政府の見解であり、国務大臣としての木村君そのものの見解であります。従つて、政府が自衛隊は軍隊と言うてもさしつかえないとの苦しい答弁をしておるその心底は、憲法との対決を恐れるためであることは、すでに万人のひとしく認めるところであります。
 鳩山前自由党総裁も、かつて現政府の態度を非難して、政府が保安隊を軍隊にあらずとなすは、あたかも白馬は馬にあらずと弁ずるものであつて、詭弁もはなはだしいと言わなければならないと喝破せられたことは、世人になお耳新しいところであります。自衛隊法案は、その第三条に、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」と明らかにされているように、従来の保安隊の有した警察的任務はまつたく払拭せられ、わずかに「必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」というにすぎないのであります。従つて、従来の保安隊は、実質上はともかく、法制上は警察力であると強弁する余地はありましたが、今回の自衛隊は外敵の侵略に対する防衛を主任務としておる以上、これは明らかに軍隊であることは、世人の常識も学者の見解もひとしく一致するところでありまして、この点、毫末も疑いをいれる余地はないのであります。もしこれを軍隊にあらずと言うなれば、白馬は馬にあらずの域を越えて、しかをさして馬となすの類であると言わなければなりません。
 政府は、完全なる軍隊でない論拠として、憲法によつて交戦権を認められていないと述べておりますが、いわゆる自衛のための交戦権と、これに伴う国際法上の諸種の待遇はこれを認め、終始その答弁に一貫性を欠いておりますことは、はなはだ意外とするところであります。すなわち、自衛隊は軍隊であり軍備であると堂々と政府の所信を明らかにしてこそ、初めて隊員の志気も上り、決意もかたくなり、また国民のこれに対する理解も深くなるものであると私は信ずるものであります。(拍手)わが改進党は、国家が自衛権を持ち、自衛のための軍備、自衛のための戦力を持つことは条理上当然であり、現行憲法もこれを禁ずるものにあらずとの見解の上に立つものであります。しかるに、政府は、今日もなお自衛隊をもつて戦力にあらずと主張しておるのであります。これは、政府みずからも明らかに欺備であることを知りながら、われわれのこの見解に同調することを潔しとせず、しかも自衛隊は憲法違反であると断ぜられることを避ける苦肉の策であると申しましても、だれ一人疑いをいれる者はないのであります。もしあくまでもわれわれの見解に同調することができないのでありますならば、すみやかに憲法を改正して、現憲法下の疑点を除くことを天下に表明すべきであると信ずるものであります。(拍手)今や、自衛体制の確立とともに、憲法の改正は世論の動向となつて来たのでありますがゆえに、政府はすみやかにこれに対する明快なる所信を表明すべきであると存ずるものであります。
 以上のごとく、現内閣、特に吉田首相の国家防衛に対する態度はきわめてあいまい、かつ不徹底なものであり、その対内的、対外的に犯した責任は決して軽しとしないのでありまして、特にわれわれの遺憾に存ずるところは、先ほど申し上げました通り、あくまでも自主的に創設し、自主的に計画すべきはずの自衛のための軍備を、あたかもMSA援助を受けるための条件のごとき疑惑と誤解を生ぜしめたことであります。しかも、本法案を実施するにあたりましては、このような疑惑と誤解を完全に一掃し、真にわが国の平和と独立を守るために、国民より十分なる理解と協力を得なければならないのは当然でありますが、政府にその努力と熱意の足らざることは、われわれの理解に苦しむところであります。
 以上述べましたるがごとく、わが改進党は、防衛問題に関する政府の従来の態度につきまして重大なる責任を問い、かつその不徹底なる見解につきましても多大の不満を禁じ得ざるものを感じつつも、あえて本法案の制定に対し協力をいたし、本日に至りましたゆえんのものは、国家防衛の問題は一党一派がこれを政略的に取扱うべき問題にあらずと確信するがゆえであります。(拍手)しかも、内外の諸情勢を思い、また敗戦の苦杯と史上まれに見る惨害とを考うるとき、われわれは衷心より平和を愛好するは当然のことでありまするが、この平和は、無防備とか非武装とかいうような観念的な態度では、とうてい真の平和を確保し得ないと信ずるがゆえであります。(拍手)さらにまた、現在わが国の安全は、日米安全保障条約に基き米国軍隊の手によつて保持せられておりますが、現在のように独立した国が国家の安全を外国の軍隊にゆだねておきますることはきわめて不自然なことでありまして、とれでは半植民地、半従属国の状態にあると言われましても、一言も反駁の余地はないのであります。われわれは、この際、一日も早く必要にして最小限度の軍備を保持し、すみやかに米国軍隊の撤退をはかるべきであるとの基本的態度のもとに、政府の国防に対する態度には多大の不満を抱きつつも、本二法案に対し賛成の意を表するものであります。(拍手)

発言情報

speech_id: 101905254X04519540507_012

発言者: 高瀬傳

speaker_id: 21743

日付: 1954-05-07

院: 衆議院

会議名: 本会議