中村梅吉の発言 (本会議)
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○中村梅吉君 私は、ただいま議題となつておる防衛二法案について、日本自由党を代表いたしまして、努めて簡潔に賛成の意を表したいと存じます。
この防衛二法案の審議を通じまして、防衛二法案と憲法との関係についてはいまだ割切れないものを残しておりますことは、私どものまことに遺憾に存ずるところでございます。しかしながら、今日国際社会の状態が手放しで無防備でよろしいという理想の段階に達しておりません現状から見ますならば、いやしくも独立国家である以上は、自衛のための防衛力を持たなければならないということは、私ども独立国民として当然考えなければならないところであると思うのであります。すでに成立しております日米安全保障条約も、大体この根底の上に立つて締結され、国会の承認を得ておるものであることは申すまでもないと思うのでございます。この日米安全保障条約によつて、日本の国の現状はアメリカ駐留軍によつて保護を受けておる状態でございます。この外国軍隊によつて保護を受けておる状態からできるだけすみやかに脱却しなければならないということも、独立を完成する上において当然考えなければならないところであると思うのであります。また、将来国際間の紛争について集団安全保障、集団防衛という問題が考えられるのでございますが、将来日本の国が国際上この集団防衛の中に参加をして行こう、行かなければならないという大体の方向に置かれております以上は、将来集団安全保障、集団防衛に参加する場合の準備としても、何らかの設備を漸進させなければならないこともまた明らかな事実であると思うのでございます。かような見地に立ちまして、私どもは、独立国として必要な自衛のための防衛力を進めて行くということについてはもちろん賛成なのでございます。
そこで問題になりますのは、一体この法案に盛られておる程度の防衛力を持つてみても、原子力時代の今日には何の役にも立たないのではないかという御議論がございます。なるほど、原子力時代における大規模な国際戦争には当然役にたたないことはもちろんでございますが、日本の国のような存在において、原子力を用いた大規模な国際戦争に立ち向おうということを今後考えても、これはおそらく不可能なことに属すると思うのでございます。のみならず、われわれ日本民族といたしましては、あの残虐きわまる原子力を用いた大規模の国際戦争というようなものについては、徹頭徹尾、死力を尽してその回避に努め、反対をいたさなければならないと思うのでございます。(拍手)これは、世界中において原子爆弾被害第一号を受けた、このさんたんたる苦い体験を持つておる日本民族こそ、この原子力を用いた大規模の戦争というものに反対し得る最も有力なる権利を保持しておるものであると私は思うのであります。さような見地に立つて、大規模な近代戦争というものの回避についてわれわれは全力を尽さなければなりませんが、しかし、人間が競争心理を持つており、国際間に利害の交錯がありまする以上は、小ぜり合いというものが絶無であるという保証は何人にもできないと思うのであります。この避けがたい事態であろうところの小ぜり合いに備えるための一応独立国としての防衛カを持つということは、当然、われわれ日本民族として、また独立国日本を完成する上において考えざるを得ないところであると思うのでございます。
また、本法案については、ただいま辻議員から烈々として御指摘がございましたように、なるほど、掘り下げて検討いたしますと、この法案自体には幾多の欠陥がまだ残つておると思うのでございます。これらの点につきましては、かねて保守三党間に行われた防衛折衝において、それぞれ問題にざれたのでございます。しかし、まだ、この二法案によつて設けるところの設備なり、進めるところの自衛隊というものは、もちろん完全な国防力、完全な軍備とは言えないものであつて、一種の準備段階に属するのでございますから、それらの欠陥を完全になくするということは、今の段階では困難であるというような見地から、まあこの程度で当分やむを得ない、いずれ将来の発展に従つて改善を要するものということで、われわれはその結論を得たような次第でございます。
なお、防衛二法案と憲法との関係につきましては、三党折衝の段階におきましてもいろいろ熱烈なる議論を闘わしたのでございますが、結局結論を得ることができなかつたのであります。これは、改進党、自由党、あるいはわれわれ日本自由党、それぞれ憲法の解釈について若干の相違を持つておるわけでございます。従つて、憲法と防衛二法案との関係については完全な意見の一致を見なかつたのでございますが、しかしながら、こういう防衛設備を進めて行き、しかもこれにだんだんと筋金を入れて行こうとするならば、憲法の改正ということは必然的なことに属すると思うのでございます。この点につきましては、政府の責任において善処せらるることをわれわれは期待して、一応あの折衝においてこの結論を是認いたしたのでございます。しかしながら、政府のその後の態度を見ておりますと、昨日の内閣委員会におきましても、総理大臣は、以前と同様に、あくまで私は憲法を改正いたしません、こう断言をされるのでございます。しかし、現実を見ますると、与党の自由党内にも憲法改正調査会が設けられております。この調査会が設けられたということは、憲法を改圧しないための調査会ではなかろうかとも私は思います。よもやそうではないだろうと思います。してみれば、この憲法改正調査会を与党内に設けられたということの現実そのものは、すでに憲法改正に向つておるものであるということは明らかな現実であると思うのでありますが、吉田総理は、私は憲法を改正いたしませんと断言をされるのであります。これは、なるほど吉田総理の立場も了解ができないことはございません。現行の新憲法を制定するにあたりましては、現在の吉田総理大臣がやはり政局の地位にあつて、総理大臣の立場でこの憲法の制定をせられた。その際には、この日本の新憲法は世界無比の平和憲法であると彼は推奨をされたのでございます。その推奨をせられた立場として、自分の口から憲法を改正するとも言い切れない複雑な心理状態にあるのではないかと思われるのでございますが、しかしながら、われわれ冷静に考えまするときに、独立国としての自衛のための防衛力を完成して行こうとするのには、憲法改正は先ほど申し上げた通り必然的であります。この点について、政府がもつと虚心になつて、率直にわが国の置かれておる現実を直視して意見を表明せらるることを私どもは期待をいたしておつたのでございますが、残念ながらわれわれの期待するような政府の所見を承ることができなかつたのでございます。しかしながら、われわれといたしましては、先ほど来申し上げましたように、日本の独立を完成する外国軍隊によつて保護を受けておるこの現状を打開して独立を完成するためには、どうしても自衛のための防衛力を進めなければならない、かような見地から、憲法との関連については割切れないものをいまだ持つておりまするが、ここにこの二法案に対しては賛成の意を表する次第でございます。(拍手)