福田繁芳の発言 (本会議)
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○福田繁芳君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする法律案に関して、自由党諸君がお出しになつたところの修正案には反対いたし、諸君の唯一の基盤としておりますこの内閣提案の原案に賛成いたしたいと思うものでございます。(拍手)
経済再建が最も急務であり、それに関連する重大法案であり、政局安定これまた一日も急を要する今日、わが改進党にしてかくのごとき態度をとらなくてはならないような、自由党諸君が無謀にして不正きわまるところの修正案を出されたことを、いたく私は遺憾に思うのでございます。(拍手)自由党の諸君も、今からでもおそくはございませんから、心からなるところの反省を促しながら、その理由を二、三申し上げてみたいと思う。
わが国経済は、終戦後八年、今日に至りましてもいまなお不安と動揺の状態を続けておることは諸君御承知の通り。その基本的な原因を今簡単に探求いたしますると、まずその一つは、十年にわたる戦争経済の遂行によつて、蓄積資本の七三%を喪失した点にあるのでございます。そのうち、設備資本は、空爆、火災などによる滅亡や、償却の不全による老朽化によつて、また貨幣資本は戦後打続いたインフレ政策による価値の滅失による等、これらが最大の原因となつていることは、諸君御承知の通りでございます。従つて、失われたる設備資本の充実に努めますとともに、インフレの終息による貨幣価値の安定に努めることが、わが国の経済自立の要諦でなければなりません。しかるに、長きにわたつて政権を独占した吉田内閣は、インフレの高進による水ぶくれ財政と自然増収とを一切施策の根幹としたために、産業資本家は実質的には資本の食いつぶしをしながらインフレの差益を追求し、また金融資本家は日銀の信用膨脹に期待して、かくしてインフレ激化の谷底へ転落しつつ、高物価、輸出難あるいは国際収支の悪化を訴えているのが、財政経済施策貧困なる吉田内閣治下の経済の偽らない実態でございます。われわれは、かような現状を打破するために、諸君も御承知のごとく、さきに健全財政の堅持を自由党に要求いたして、本年度予算の骨格たらしめ、さらに企業の自己資本の充実をはかつて、企業が金融に一切の救援を求め、かつ債務の累増と利払い過高に追いまわされている亡状を打破するために、資産の再評価と評価益の資本繰入れを法的措置によつて実施することを強く与党諸君に要求いたして来たのでございます。これにこたえて政府当局が提案して参つたのがすなわちこの法案でございます。
ところが、諸君、原案はすでに閣議を通過いたして国会へ提出されました。しかるところ、与党の自由党は、去る四月の二十人目になりまして、突如として本法の目的をまつたく粉砕するような修正案を突然大蔵委員会に出して参つだのでございます。
私は、簡単にその修正の要点を申し述べて、正しく諸君の御批判を仰ぎたいと思うのでございますが、まず第一点は、本法の十七条の第一項に規定されたところの、要再評価会社が所定の再評価を行わなかつた場合には年一割五分以上の配当を行つてはならない、こういうところの促進規定ないしは制裁規定があるのでございますが、これを年二割まで緩和するというところの矛盾きわまるものがこの修正案でございます。大よそ法律に設けられたる促進ないしは制裁規定というものは、その目的を達成することができなければ、法の目的自体を達成することが至難となるということは、皆様も御承知の通りでございます。この見地に立ちまして、再評価を行わない企業に対する配当制限を二割にまで緩和するという修正は、むしろこの法律自体の目的を達成するにすこぶる困難を来さしめ、ひいてはこの法律の実施それ自体を無意味にするものにほかならないと私は確信いたすものでございます。(拍手)何となれば、現在、諸君、東京証券取引所上場株中の六箇月決算会社銘柄四百二十六社の加重平均配当率は一割八分三厘でございます。それをば、これを上交わるところの二割までの配当制限を設けたとて、これは制限にもならず、また制裁にもなりません。むしろ再評価を行わざる会社に高配当を奨励するというところの、実に矛盾きわまる結果になるのでございます。かようなことで、どこに本法を施行するところの意味がございましようか。率直に申しますならば、自由党の諸君の修正というものは、この法律の本質を曲げてしまつて、いわゆる廃法たらんことを望んでいるということを申しても過言ではないと思う。(拍手)
さらに、この修正案には、諸君、奇怪な事実が存在しております。すなわち、政府原案におきましては、再評価を行わなかつた企業に対しての配当制限は、昭和三十五年三月末日の決算にまでこれを適用すると規定されておるのでございます。すなわち、ことしから数えまして足かけ七年先までを規定してございます。そこで、自由党の修正案がもし本院を通過するということに仮定しまするならば、再評価をしなかつた会社は、七年先まで、驚くことには二割の配当をしてよいという保証が得られるわけでございます。ところが、一面経済界の大勢はどうかと申しますと、優良会社であればあるだけ、十分な資産再評価を行つて低配当へ導く傾向が著しいのでございます。不良会社でも、金融梗塞の将来を望み見ては、できるだけ資本充実をはかつて金融への依存を断ち切らざるを得ない。これがためには配当率を下げざるを得ないのでございます。おそらく来年中には、上場会社の平均利回りは一割、配当率は一割五分程度が水準となるということが一般有識者の声となつておるのでございます。それを、資産再評価をやらなければ七年先まで二割配当を保証するというがごとき乱暴な修正をやる自由党は、実に健全なるわが国経済自立の確立に目をおおうて、相かわらずインフレ万能、不良企業育成、オーバー・ローン奨励をし続けて行くところの、情ない亡国政党であると言わなくてはなりません。(拍手)
次に、修正の第二点は次のごときものでございます。すなわち、この法律第十八条第一項に、政府原案では、再評価積立金の中の四割以上を資本に組み入れなかつた企業、または九割までの資産償却を行わなかつた企業は、それぞれ年一割五分以上の配当をしてはならないというところの制裁ないし促進規定があるにもかかわりませず、三割以上を資本に組み入れなかつた企業、または九割までの資産償却を行わなかつた企業は、それぞれ二割以上の配当をしてはならないと修正いたしておるのでございます。この間、二割の配当制限という修正がいかに経済の現状に沿わないか、あるいは将来に沿わないか、まつたく制限規定としての本質を抹殺した修正であるということを申しても過言でなかろうと考えます。(拍手)
そこで申し上げたいのでありますが、この法律によりまして、今後千二、三百億の資本組入れが行われるということが予想されるのであります。ところが、自由党の修正による三割組入れとしますと、過去の実施額約五百億円のほかに、今後せいぜい、四、五百億円が資本組入れされれば上乗ということになるのでございます。今、全国の利益計上会社の四万三千二百六十
一社の自己資本の総額は一兆三千七百億円に達しております。この資本を大いに充実するところの目的のこの法律の公布によつて、わずか四、五百億の増資が行われたからと申しまして、どれだけの効力がありましようか。この点については、政府原案があまりにも甘過ぎたにもかかわりませず、さらに自由党の修正によつて一層甘い結果に陥るということを、この際はつきり申し上げておきたいと思います。(拍手)
さらに、償却の奨励を有名無実にする修正の結果もまた大同小異であります。政府原案によりましても、償却はなお不十分であります。現在、日本の企業は、一方に必要な償却を怠りながら、他方では積立金の大を誇つているという、きわめて不健全な経営を続けているのでございます。諸君の御承知の通りに、西ドイツにおきましては、極度の資産償却を行つて、各企業ともにほとんど他人資本にたよらず産業施設の近代化をなし遂げているということは、顕著な事実でございます。日本の企業もまた、償却を大いに盛んにすれば、ほとんど金融機関にたよらず、オーバ・ローンも招来せず、りつぱに設備資金の充足ができると私は考えます。それを、全国法人所得四千六百億円に対しまして、株主配当は一千億円、償却が一千億円、社用族交際費が何と二千億円、社内留保が一千五百億円、こういうところの放漫経営の現勢をいよいよ助長せんとしているのが自由党の修正案でございます。(拍手)
以上申し上げましたので、自由党の諸君でありましても、社会党の諸君でありましても、原案と自由党の修正案といずれを選ぶかということは、はつきりおわかりであろうと私は考えます。(拍手)今からでもおそくはございませんから、自由党の修正案は御撤回願いたいと私は思う。ことに、本日の記名投票に際しまして、吉田総理は不幸にして御欠席でございます。閣僚諸君が十二、三人来られておる。閣僚諸君の出された原案には私は賛成する。自由党のこの修正案には反対する。(拍手)この閣僚諸君がいかようなる投票をされるかということを、私は国民にかわつてながめたいと存じます。
これをもちまして私の討論は終ります。(拍手)