藤井宗治の発言 (通商産業委員会)
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○参考人(藤井宗治君) 御多忙のところ特に電源開発のために委員会をお開き下さいまして、いろいろ説明をお聞きとり願いますことは、会社といたしまして誠に有難く存じます。先ほど委員長からのお話のございました点につきまして、先ず御母衣の問題につきしていささか冗長には亘るかとも存じまするが、大体のことを御説明申上げたいと存じます。
御母衣の地点につきましては、第一回の審議会におきまして、電源開発会社が開発するように指定を受けた地点でございまするが、実質上非常に大きな問題に逢着いたしておりまするので、問題が問題でありまするだけに慎重の上に慎重を期しておりますので、着工と申しましても本着工に未だ入らないでおるような状態でございます。申上げるまでもなく、この地点は岐阜県の北部に源を発しまして、北流いたしまして日本海に注いでおりまする庄川の上流にございまして、主として関西地区の電源といたしまして、昭和の初め以来重要な役割をなしていた下流の庄川水系の発電所に大きな影響を与える地点なのでございます。御母衣の発電計画は、上流のほうから順を追つて参りますると、現在工事中の鳩ケ谷、それからその下流にあります椿原、成出、小原、祖山、小牧、中野の七つの発電所合計約三十万キロワツトの大規模なダム式発電所がすでに開発せられているのでありますが、この御母衣の発、計画は鳩ケ谷ダムの上流約十五メーターの庄川の本流に高さ百三十メーターのロツクフイル・ダムを造りまして、満水位標高七百六十メーター、有効貯水量三億三千万立方メーターの大きな貯水池を設けまして、更に鳩ケ谷ダムとの間の落差を利用しまして、最大出力十七万キロワツトのものを新設する計画なのであります。で、御母衣発電所の有効落差百九十五メーター、鳩ケ谷以下の既設の七つの発電所の有効落差三百九十一メーター、合計五百八十六メーターの落差が利用できますので、御母衣貯水池から補給されました一立方メーターの水は実は一・三キロワツトアワーの電気を起すことができるのでございます。これは御母衣に貯えられるところの三億三千万立方メーターの水は実に四億二千万キロワツトアワーの補給用電力に相当しているのでありまして、この大貯水池からの補給によりまして、下流の既設の発電所の渇水期におけるキロワツトアワーが約二億八千万キロワツトアワー増加し、その結果といたしまして、渇水期における下流既設発電所のピークの出力も増大し、御母衣の十七万キロワツトの新設により渇水期のピークの出力を約二十四万キロワツトも増加させることができるのであります。で、御母衣の新設によりまして、御母衣発電所による五億九千万キロワツトアワー、下流の既設の七つの発電所の増加が二億八千万キロワツトアワー、それから平瀬という既設の発電所がありますが、そこの廃止による減少七千万キロワツトアワーを差引きましても合計八億キロワツトアワーの増加電力量を得られるのでありまして、総工事費概算二百七十億といたしましてこれを八億キロワツトアワーで割りますると、キロワツトアワー当りが三千円といたしまして、山元でキロワツトアワーの電力原価が三円四十一銭ばかりになりまして、これはまあ大阪までの送変電費と併せ考えまして一次変電所渡し約四円ばかり、三円九十九銭の発電原価となるのであります。この発電原価は自流式の水力発電所の発電原価に比べますると一見いたしまして割高になるように見受けられまするが、実は御母衣の完成によりまして庄川系の常時電力が十二億六千万キロワツトアワーも殖えまするほかに、四億二千万キロワツトアワーの補給用電力が得られることになるのでありまして、渇水期のピークの出力二十四万キロワツトを増加する点を考えまするならば非常に経済的に見まして有利なことがわかるのであります。従いまして終戦以来日本発送電、関西電力株式会社、当社によりまして次々と調査が進められましていろいろな問題点を克服してこの計画を完成するように努力が続けられておる次第でございます。
先ほど申しましたように日本発送電会社以来引続いて調査いたしておるのでありまするが、その調査の今日までの経過の概要を御説明申上げます。
御母衣ダム地点の地質調査は昭和二十五年の七月に日本発送電会社が始めたのでございまするが、先ほども申しましたように関西電力会社を経まして昭和二十七年の十月以来当社において引続いて調査いたしておるのでありまするが、主としてボーリングと、それから横穴といいますか横坑によりまして地質調査を行なつて来たのでありまするが、満足にコアーが採取できませんために地質構成のしつかりした把握ができ得ません。そのために当社において引継ぎましてから後はボーリングと並行いたしまして試掘横坑、竪坑、弾性波による地下探査などのほかに河底トンネルを掘りまして大規模に調査を実施いたしておるのであります。先ず調査の対象を地形的に見まして有利な福島下流地点に選定いたしましてボーリング及び試掘横坑の掘鑿を始めたのでありまするが、右岸におきまして表面近く或る程度良好な岩が出ましたが、掘鑿するに連れまして良好な岩を突き抜けて軟らかい岩と砕けたいわゆる破砕岩といいますか、そういうものが互いに層を成しているところに突き当りまして、この部分が深いので調査の対象は約四百メーター上流の第二候補地点、福島上流地点に切替え、これも試掘横坑、堅坑を掘り、又弾性波地下探査を実施したのであります。この結果福島地点は一部厚い崖錐で覆われ、基盤はコンクリートダムの基礎岩盤として適当なものもありまするけれども、一般に節理が発進いたしておりまして断層が川と平行に存在することがわかつたのであります。
昭和二十八年三月、現地を視察いたしましたコンサルテイング・ゲオロギストでありますところのドクターニツケル、これは元ビユーロー・オブ・レクラメーシヨンのチーフ・ゲオロギストであるのでありますが、このニツケル博士の勧告に基きまして河底トンネルの掘鑿に着手いたしますると共に、この地点は上流に行くに従つて結晶質が多くなる傾向に着目いたしまして、福島上流地点から更に約八百メーター上流の秋町地点に第三のダムサイトを考えまして、昭和二十八年五月からボーリング及び試掘横坑によりまして調査を行なつたのであります。ここには更に大規模な断層破砕帯が存在いたしまして、却つて福島地点よりも不適当であることがわかりましたので、二カ月で調査を打切ることになつたのであります。福島地点で、上、下流二本の河底トンネルを掘鑿しました結果今までボーリングでコアーが取れませんで判定に苦しんでおつたのでありまするが、その地下の地質の状況もこのために明らかとなりました。即ち河床部には比較的良質の岩盤がございまして、一、二の個所を除いては無巻きの河床トンネルにおいても漏水がない状態でありました。然るにこの河底トンネルを右岸アバツトに延長いたしましたところ、ここで大規模な断層にぶつかりまして、以後地質調査はこの断層の走向、傾斜の追究に集中しましたが、本年六月一応この調査を打切つたのであります。で、これらの調査の結果といたしまして断層の状態及び基礎岩盤の状況を相当はつきり知ることができまして、ダムサイトの地質調査は今後の設計施行上に必要な岩盤の支持力、断層破砕帯部の透水性、それからグラウト効果等の諸試験及び補足調査等を除きまして殆んど完了いたしたのであります。
以上のような調査の結果から、ダム地点の地質の概要を申上げまするならば、先ずダムの予定地点を構成しておりまする岩石でございまするが、ダム地点を構成する主な岩石は玲岩、それから変質した玲岩、変質した石英斑岩、まあそういうようなものであるのでありまするが、これらは余り専門的に亘りますので組かいことは省略いたしまして、今度は地形及び地質の構成の概要を申上げます。
右岸の上流区域は竪坑調査の結果によりますれば、川の段丘は厚い所の段丘推積物及び何といいますか、崖錐堆積物によりまして覆われておるのでありまして、その厚さはは率直に約三十メーターでありまして、百五十メーターの幅を持つておるのであります。段丘堆積物は玉石、砂利及び砂、粘土であります。又崖錐の下部には比較的長質の岩盤が試掘横坑によつて認められておるのであります。左岸の下流は福島地点で最も良質の岩石が認められ、風化に対する抵抗も強く、旧庄川の浸蝕には他地区よりもまあよろしいのでありまして、上流地区には広大な段丘があるにもかかわらず、旧河床としては下位段丘に比べましても遜色のないよりなものでありまして、まあ大体ダムサイトといたしましては申分のないもののようであります。かような地質又地形におきまして、それならば如何なる設計をとつたらいいかというので、この研究の経過を申上げますると、地質調査と並行いたしまして百二十メーターのコンクリートダムを設ける計画で、設計及び工事費の算出が関西電力当時から進められておつたのでありまするが、そのときのダムサイトといたしましては、福島下流地点が選定されまして、満水位の標高七百五十メーターでございましたが、昭和二十七年十月にはこの地点の開発を電源開発会社で引受けることになりましたので、その後電源開発会社によりましてダムサイトの地質調査が進められました。その結果ダムサイトの地質も、先ほど申しましたように逐次明瞭となりましたので、この下流地点にコンクリート・ダムを設けるよりも、コンクリート・ダムならば上流地点に設けるのがよかろうということになつたのであります。ところかこの地質の状況に対応いたしまして、又電源開発調整審議会の案に則りまして、ダムの高さを十メートル高くした案について設計を考えて参つたのでありますが、後に申しまするように、その工事費は当初の予定を遥かに廻るということになつたのであります。一方このような非常に不便な、いわゆる僻遠な地点に築造いたしまするダムの形式といたしましては、初めからロツクフイル・ダムにいたしたらどうであろうかというので、これに対して当社といたしましていろいろ研究をいたして来たのでありまするが、この地点はロツクフイル・ダムとしての各種の基本条件を満たす見通しもつきましたので、昭和二十八年の末に当社の技術者三名を米国に派遣いたしまして、ロツクフイル・ダムの設計施工に関しまして基本的な調査をさせ、それに基きまして、ロツクフイル・ダムの比較設計を行なつたのであります。これにつきましての詳しいことは、又後ほど申述べるつもりでございます。その結果といたしまして、現在当社といたしましては、この地点はロツクフイル・ダムで進むほうがよかろうということに大体方針を立てたのでありまするが、なお関係官庁との了解も正式に得ておりません、いろいろ細かい研究をする問題もまだ相当残つておりまするので、目下それらについて或いは交渉し、或いは検討中であるのであります。発電計画につきましては、昭和二十七年の九月に当社が発足いたしましたときに、下流の鳩ケ谷発電所の取水位を標高五百八十メーターと考えまして、最大出力を十四万二千キロワツトとして計画を想定せられたのでありますが、最近に至りまして鳩ケ谷地点の調査が進むに連れて鳩ケ谷地点に取水位標高五百五十メーターで開発するのか適当であることが明らかとなりましたので、関西電力会社はその計画で工事の準備を進めておりまして、すでに本年の十月に工事に着手したような次第であります。この取水位標高五百五十メーターの鳩ケ谷地点に対しまして御母衣十四万二千キロワツトの従来の案で開発しますならば、御母衣、鳩ケ谷間に三十メーターの未開発の落差か残され、その河川の有効なる開発をいたします上から一大障害となるのであります。従いまして昭和二十九年の六月に関西電力会社と打合せをいたしまして、又主務官庁にもいろいろ説明しまして、この残された三十メーターの落差を御母衣発電所に利用して、御母衣発電所の最大出力を十七万キロワツトに変更することにいたしたのでありまして、現在では大体この計画に基いて調査を進め、設計に着手いたしておるのであります。この十七万キロワツトを一発電所にて開発するためには、現地の地形なり、或いは地質の関係上地下式発電所を私用するのが望ましいのでありまして、現在この方針に従つて調査、設計並びに工事費の算出を行なつておるのであります。地下式の発電所の場合には、長い放水路トンネル或いは水圧トンネルを必要といたしますので、地質等を考え併せまして、工事施工上遺憾のないように目下いろいろ検討いたしおります。そういうためにも十七万キロワツトの発電所の開発と申しましても、一地点にするか、これを二つの地点に分けるかは、いま少し検討を重ねてからきめたいと思つております。
さてこの御母衣発電所の計画につきましては、先ほど来申しましたように、地質上非常にむずかしいのと、そうして大きな貯水池を造るにつきましては、仮に先ほど申しましたように、ロツクフイル・ダムの方式をとることに相成りますると、これは世界でも稀な大きいものになるのでありまして、勿論我が国にはその先例がないのであるから、これに対しましては慎重の上に慎重を期する必要があるのであります。そういうために当社といたしましては、先にドクター・ニツケル博士に依頼いたしまして、現地の調査をいたして参つたのであります。アメリカのビユーロー・オブ・レクラメーシヨンのチーフ・ゲオロギスト、この博士、は幾多の大きなダムの地質を手がけられましていろいろ貴重な経験を持つたかたでありまして、同博士は当社の要望を容れまして、昨年の四月及び本年の五月に現地を詳細に見て頂いたいのであります。で、本年の五月に現地を視察されました際に、現地の地質調査はほぼ完了いたしており、上流案、下流案の二カ所のダムサイトの選定を考えておつたときでありまするので、私どものほうの会社が持つておりまする地質調査の資料をニツケル博士に提供することができたのであります。同博士はこれらの資料に基きまして大体次のような報告を作成したのであります。
即ち、第一に基礎に十分な処理を行えば上流案及び下流案の両地点ともコンクリート・ダムにせよ、ロツクフイル・ダムにせよ、この築造に差支えはない。第二に、コンクリート・ダムを設けるとするならば主断層の幅、それから岩質からいたしましてむしろ上流案のほうがよろしい。第二に、ロツクフイル・ダムを設けるには地質的に見まして両地点とも大差はない、従つてこの堰堤の体積が少くて済む下流案のほうが好ましい。第四に、断層帯の処理及び一般の基礎に対する要求はロツクフイル・ダムのほうがコンクリート・ダムほど厳しくない、それでロツクフイル・ダムのほうが基礎の処理が容易である。第五点は、基礎の状態を更によく知るために補足のボーリング及び支持力の試験、透水試験を行うことを勧告する。こういうような五つの大体要点の勧告を、いたしたのであります。
更に当社といたしましてはアメリカのビユーロー・オブ・レクラメーシヨンのチーフ・エンジニアとして世界の有名な大きなダムであるボールダー、シヤスタ、グランド・クーリイなどの幾多の大ダムの工事の指導をされましたドクター・サベジ氏が当社の顧問でありまするので、ドクター・サベジ氏にお願いいたしまして四回現地において調べてもらい、本年の六月に最後の視察をせられました際に当社のいろいろの質問に答えまして大体次のような報告をされたのであります。
第一に、このダムサイトは地質的には必ずしも望ましくない条件を打つているが、この地質的条件を克服して現在計画しておる高さのダムを安全にこしらえることは可能である。第二に、工事費の比較及びダムの基礎の状況を考慮いたした結果、このダムサイトにはコンクリート・ダムよりもロツクフイル・ダムを採用すべきである。もう一つ、断層はビユーロー・オブ・レクラメーシヨンの工法に従いまして慎重に措置すれば一つも不安はない。こういう三つの要約した報告を得たのであります。
で、こういうふうに外国の権威者が調査をし、その意見を徴しましたほかに、最近におきましては国内の権威者を網羅したかたがたに御検討を願うことにいたしまして、先々月全国の九電力会社の土木技術のまあ最高峰とも言うべきかたがた、これは主に各電力会社のこの担当の重役さん或いは部長のかたがたでありまするが、このかたがたにお揃い願つて、九月に現地を視察して頂いたのであります。その九電力会社の土木部長さん等の御報告は、要点を申上げますと、第一にダム地点の地質を見た結果ロツクフイル・ダムが適当であろう。第二にロツクフイル・ダムのロツクを採取する場所の調査は十分行うべきである。第三に、断層の処理の削り取ります壁を現設計のように百メートルも人れないでよかろう。第四に十七万キロワツトを二地点に分けて開発するのは工事費は殖えるが、施工上は問題が少いかも知れない。こういう四つの意見が出て来ておるのであります。こういうふうなものを私どもはベースにおきまして今設計に進んでおるのでありますが、これはまだ決定案という意味で皆様に御報告申上げるのはいささか早計に失するのでありますが、現在の段階におけるところの大体のことを御報告申上げたいと存じます。ダムのタイプといたしましては、昭和二十九年六月に御母衣地点のダムサイトの地質の状況、工事用諸材料の分布状況などが明らかになつて参りましたので、コンクリート・ダム及びロツクフイル・ダムの両方につきまして設計を取りまとめて工事費の比較を行なつたのでありますが、その結果この地点ではロツクフイル・ダムのほうが工事費が約五十億円安く、そしてロツクフイル・ダムを採用するはうが安全性も強くなるという結果になつたのであります。この五十億円というのはダムの工事費に比べますると大体三制を節約することになるのであります。又この地点の技術上の大問題でありますところの基礎岩盤の良好でないことに対する対策といたしましては特に断層処理の面につきましてはさつきも申しましたようにロツクフイル・ダムのほうがコンクリート・ダムよりも遥かに容易であることがわかつたのであります。従いましてサベジ博士の意見に従いまして御母衣にはロツクフイル・ダムを採用するほうがよかろうということに大体方向がきまりかけております。ロツクフイル・ダムは、私も技術者でないのでよく知りませんが、大体私どもの報告を皆様にお伝えいたしますと、岩石を積上げましてロツクフイルを作る。その上流側に鉄筋コンクリートか、又は粘土その他でできた水を遮ぎる遮水壁を設け、その遮水壁で漏水を防ぐ、その背面のロツクフイルが水圧を受持つダムでありまして、粘土の遮水壁を用いる際に粘土の流出を防ぐためにその上流側に更にロツクフイルを設ける。我が国といたしましてはその例は少いので、貯水用のものとしては鉄筋コンクリートの遮水壁を設けた石渕ダム、これは北上川の支流にありまして高さ五十三メートル、それがある程度でありまするが、諸外国にはその例は極めて多いのでありまして、近年ますます盛んに築造せられております。現在のところ一番高いのは、フイリピンで目下建設中のアンバクラオ・ダム、これは高さ百二十八メーターでありまするが、そういうものがあります。
ロツクフイル・ダムとコンクリート・ダムとを比較いたしますと、利害得失はこういうことになります。
第一は、堰堤の体積は、コンクリート・ダムの約四倍半で、遥かに大きいのであります。
第二は、その代りコンクリートの量が極めて少く、岩石、粘土等の現地の材料を主として使用することができますので、交通の不便な地点では非常に適当いたしておるのであります。
第三は、ダムの底幅がコンクリート・ダムの四倍半もありまするので、重さ、荷重を広い範囲に分布させまして、基礎に大きな支持力を要求いたしません。従いまして、軟弱な地盤に対しまして築造が可能であります。
第四に、洪水が堰堤の、堤体といいますか、堰堤の上を溢れて流れない限りは極めて安全なダムでありまするが、絶対に洪水を堰堤を越して溢流させてはならないのであります。洪水の処理には溢流式のコンクリート重力ダムよりも費用が余計かかるわけであります。併し、今日のように土工用機械、大型シヤベル、或いは大型のトラツクなどが発達いたしますると共に、一方において地質のよいダムサイトが次々にもう開発され尽されまして、多くの場合は、地質上難点のある場所にダムを築造しなければならないようなもう今日に相成りましては、適当な材料、即ち岩石や粘土等がダムサイトの近くで十分に入手できるならば、むしろ、このロツクフイル・ダムの方式を採用したけうがよかろうと思うのであります。
今まで申しましたように、この御母衣地点におきまするところのダムサイトの地点は良好でないのであります。併しながら、ダムサイトから二キロメーター上流の福島谷には非常によい花崗岩質の岩がたくさんにございまするし、又水を通さない性質のコアーの粘土も比較的近くに得られることがわかりましたので、この御母衣地点はロックフィル・ダムを採用することのほうが有利ではないかということに大体見当がついて参つたのであります。
大体、今日までの経過なり、今日進んでおりまする設計の概要は、以上申しましたようなことでございまするが、先ほど来しばしば申しまするように、この地点に非常に大規模な断層がある、そうして、下流に及ぼす影響が非常に大きいので、若し設計なり施工方法に異常がございまして、不則の損害等を及ぼすようなことがあつてはいけませんので、これは最初からの着工予定地ではありまするが、それに捉われない、慎重の上に慎重を期するということは、これは止むを得ないのではないかと存じております。この点は、当事者といたしましては、一たび決定した地点を予定通り、これはやり上げるということはやり上げたいのでございまするし、又そうしなければならないのでございまするが、何しろ自然の状況を相手にして計画を進めて行きまするために、先ほど申しましたように思わない大規模な断層にぶつかるといたしますれば、これに対してあらゆる角度から検討いたしまして将来に禍根を残さないようにしたいと考えて、甚だ申訳ございませんが、予定を一時遅延しているような次第でございます。この点はどうか皆様も御同情、御了解願いたいと思うのであります。
なお先ほど、費用を相当使つておるではないかということも、委員長さんから御指摘がございましたが、これは発送電、関西電力等で調査したものも含めまして、これは当初引継ぎますときには、それらにがかつた費用を全部引継いでおりますので、現在で十三億ばかりのものが使われておりまするが、そのうちで約七億五千万円はダムサイト附近、これは設計がどう変りましようとも、あの附近は捨てるわけには参りません。一つの発電所になるか、二つの発電所になるかは別といたしまして、その附近の土地、それから若干立退きをしてもらわなければならんので、立退き家屋等の補償のために費されておるのであります。残りの約五億五千万円程度のものが、或いは今日まで先ほども申しましたように非常な大げさな調査をいたしておりまするので、そういう調査費用、それから現地に人も住まわせておりますのでいろいろ構築物も造らなければなりません、そういうことに使つておるわけであります。これはこの地点を放棄するわけではございません。これは設計にこそ変更は加えまするかも知れませんが、必ずやらなければならない所でございまするので、決して無駄にはならない、こう信じておるような次第でございます。
以上を以ちまして不満足かも知れませんが、御母衣の御説明は一段落さして頂きまして、前回この委員会におきまして御説明申上げました以後の電源開発会社の実情を御報告申上げます。
その後におきまして、特に変つたこともございませんが、工事は、北から申しますると北海道の糠平、足寄地点、これは大体予定のように進んでおります。この足寄地点におきまして、これも予想外の地質の悪いものにぶつかりまして、設計、掘鑿中の水路も変更したりいたさなければなりませんために若干の手違いを来たしておりまするが、併し竣工には大体支障のないように運んでおります。それから西のほうに参りまして岩手県の胆沢、猿ケ石の再発電所でありまするが、これは胆沢のほうはすでに本年の一月に竣工いたしたのでありまするが、この工事に手違いがありまして、この前御報告申上げたと思いまするが、漏水等がありますのでその補強工作を進めております。これも大体近く修繕補強が完成いたしまして、間もなくフルに運転されると思います。これは東北電力会社で電力を全部、丸利用いたしておるのでありまして、多少東北電力会社の供給には御迷惑をかけたかと思いまするが、本年は東北地方は非常な渇水でございますので、この点お気の毒いたしたと思いまするが、止むを得ませんが、目下非常に補強工事を急いで進めておりますので、間もなくこれは再建転ができると思います。
それから猿ケ石の発電所のほうは、これはむしろ当社の受持でない部分の工事が予定より遅れまして、湛水が遅れたのでありまするが、漸く湛水もできる段階になりましたので、これは来月一日頃から運転に入ると思います。大体予定から若干遅れておりますが、そのほうは支障なく進んで行くと思います。
それから西の、問題の佐久間地点でございまするが、佐久間地点は水没地域の鉄道線路の付脅えが、あの地点の地れが非常にもめておるのでありまして、線路の付存えに、隧道等に多少困難があるようでございまするが、そのために若干の手違いが生ずるのではないかと懸念いたしておりますが、当社がやつておりまする発電所のダムの工事は大体予定通り進んでおります。これは幸いに本年度あの地区は洪水に見舞われることが少なかつたという天恵もございましたが、機械を最初に大規模に使いました地点でありまするが、機械の使用と相待つて予定通りこれは進んでおります。
それから更に西に進みまして、これも総合開発の一環としてやつております奈良県の西吉野の地点でございますが、これは当社の受持の分については予定通り進んでおりますが、ただ総合開発でございまして、当社が施工する以外の面におきましては、或いは多少の手違いが出て来るのじやないかと思いまして、鋭意そういうことのないように今関係当局のほうにお願いいたしておるような次第であります。工事中のものはそういう次第ではございまするが、更に本年度、明年度の予算を勘案いたしまして、先般北海道の糠平発電所の水を有効に使いまするために、それと足寄の発電所とを繋ぎますための芽登第一発電所と申しておりますが、芽登第一地点の水路の部分につきまして工事を進めることにいたしております。
それから福島県と新潟県との問題になつておりまする黒又第一地点、これもできるならば来年度あたりから工事に着工したいと思いまして、これは予算等の関係もありますので、目下財政当局といろいろ折衝しておる次第であります。奥只見の地点はこれは非常な奥地で、途中道路から造つて行かなければならないので、道路の問題等につきまして一つ緊急に措置したいと思いまして、これも着工の準備を進めております。
それから田子倉の地点でございまするが、これは大部分の補償問題、用地問題は解決したのでありまするが、田子倉部落の五名のかたがたの同意が得られませんので、誠に遺憾ではございましたが土地収用法の適用をして頂く以外に措置のとりようがございませんので、さようにお願いいたしまして、目下土地収用委員会にかかつておりまするので、遠からずこの問題は解決すると思います。そういたしますれば仮排水路の工事とか本工事にかかることができる状態になりまするので、この問題が解決し次第その方面、この仮排水路の工事の完成、或いはダムサイトの工事の着手にかかりたいと存じております。
なお同地の補償問題の一般でございまするが、この問題につきましては、大体福島県の当局ともいろいろ御相談申上げまして、世上伝えられまするような非常識なものでなく話が妥結するものと考えております。これは補償基準等につきましても、近く先例もあることでございまするし、又あの近くの極く最近完成した下流の発電所の実例もございまするので、そう伝えられるような結果にはならないと存じております。
それから佐久間地点の問題でございまするが、佐久間の発電所がフルに運転いたしまするがためには、どうしてもあの下流の秋葉地点の逆調整池が完成する必要がございます。この秋葉地点は地形の関係上非常に狭く、而も砂利店の非常に深い地点でございまして、工事を行いまするのに幾多の困難はございまするが、大体の見通しもつきましたので、今回これは工事に着工することといたしまして、すでにもうその手配をいたしております。
大体発電所自体の工事の進捗状況はさような次第でございまするが、更にこれに関連いたしましての送電線の計画でございまするが、北海道の糠平地点の電気を北海道の中心部、札幌方面に送らなければなりませんので、その送電線は十九万八千ボルトの、これは従来としては非常に高圧の送電線でありまするが、その建設に着手することになりまして、すでに万般の準備を進めております。工期に間に合うようにこれは完成するつもりでおります。
又佐久間の発電所ができるにつきまして、この航海を、御承知のようにこれは東京と名古屋と両方に送るのでありまするが、これにつきましてはいろいろ検討いたしました結果、二十七万五千ボルトの超高圧送電線を佐久間から名古屋方面と東京方面へ伸ばすことにいたしました。この問題につきましてもいろいろ伝えられておるようでありまするが、東京電力、中部電力の首脳者とも完全に意見が一致いたしまして二十七万五千ボルトという超高圧送電線によることになつたのであります。これは私どもといたしましては御承知のように狭小な日本でこういうふうな超高圧の送電線を建設する場所はそうたくさんないのでありまして、高圧送電線の建設につきましては将来に悔いを残さないように、そのためにはどうしても小規模のものでなく、現在の技術において許された最高のものを作りまして、電力が円満に相互に送り得るような方途を講じたいと、こう考えて関係者協議いたしたのでありまするが、関係者どもこれはその点に共鳴して頂きまして、これは円満にそういうふうになつたのであります。
なおこれは蛇足でございまするが、中部電力と当社とにおきましては時節柄できるだけ経費を節約するという大乗的見地に立ちまして、中部電力で現在建設中でありまする大井川水系の電力も佐久間附近から名古屋方面まで当社の二十七万五千ボルトのこの超高圧送電線に一緒にして送つて頂くと、まあ送らしてくれろ、送つて頂きたいと、こういうふうにいたしまして、中部電力がこの際別の送電線を作られることをおやめになるようなことになつたのでありまして、こういうことは私ども非常に現下の日本の経済状況といたしまして皆様から多少おほめ頂いてもよかろうと、これは自両自讃あえていたす次第でございます。
大体の説明はこの程度にいたしまして、その他は何か御質問にお答えいたすようにさせて頂きたいと思います。