藤田進の発言 (通商産業委員会)

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○藤田進君 御母衣発電所ダム及び庄川下流発電増加に関する調査の結果を御報告いたします。
 本問題につきましては去る十一月十二日の当委員会におきまして電源開発会社の藤井副総裁から一応の説明を聴取いたしたのでありますが、御母衣につきましては技術上或いは補償などについて今なおいろいろと問題があるようでございまするので、石原委員長、酒井委員、天田委員及び私の四名が十一月十九日東京を発しまして、二十日には御母衣関係地区、二十一日には鳩、ケ谷関係地区及び下流発電所を視察いたして、又現地における関係者の意見なども詳細に調査して参つたのであります。以下主な事項について順次御報告いたします。
 御母衣発電所の設計、及び地質調査の経過。今回の現地調査の主目的でありまする御母衣のダムの計画及びこれに伴う地質調査の経過につきましては、先般の当委員会におきまして電源開発会社の藤井副総裁から説明がありましたが、私どもが現地におきまして諸艇の事情を調査した結果から見ましても、地質調査の経過が御母衣におきます諸問題の中軸をなすものであると認められまするので、先般の説明と一部重複はいたしまするが、先ずこの問題から報告いたします。
 御母衣地点は日発時代から木谷地点として堰堤水路式の水利権を有していたのであります。電気事業再編成後は関西電力に譲渡され、同社では福島下流地脈におきまして試掘横坑を以て調査の上十万二千キロワツトのコンクリートダム式発電所として水利使用変更を申請中に電源開発会社の創立があり、次いで、昭和二十七年九月二十七日の電源開発調整審議会におきまして糠平、猿ケ石、胆沢、西吉野と共に電源開発会社の開発地点に指定されたのであります。その際関西電力の計画は変更され、ダムの高さは十メートルを増しまして、百三十メートルとし、最大出力も十四万二千キロワツトに変更して指定されたのであります。この決定に基き関西電力は水利権を電源開発会社に譲渡し、同年十月から電源開発会社の富山建設所において業務を継続して来たのであります。審議会が指定に当りダムの高さを原設計より十メートル上げましたことは当時の情勢から大規模開発の効果を狙つたものと思われますが、開発会社が建設所として現場業務機関を開設したことと共に当時における関係者がその後に起つた地質問題を予想もしていなかつたことを示すものであります。開発会社に譲渡されましたあとも同社により福島地点につきボーリング横坑、竪坑、弾性波などにより地質調査が続けられたのでありますが、その主力であるボーリングによつてコーアが採取できないなどの悩みがありまして、地質上の不安があり、昨年三月に現地を調査したニッケル博士の勧告によりまして地質調査の範囲を拡げて五月より福島地点の上流約八百メートルの秋町地点にボーリングを行いますと共に八月より同博士の勧告により福島地点二カ所に河底横断トンネルの開墾に着手、それらの進行に伴いまして福島地点河床右岸沿いに傾斜四十五度乃至六十度の大断層があること、秋町地点には左岸に更に大なる断層破砕帯のあることなどが明確となつたのであります。これにより秋町の調査は中止して福島地点の調査に戻り、その後におけるロツクフイル・ダム用ロツク及び粘土の所在の調査の進展を裏付けといたしまして、本年六月のサベージ博士の報告により技術的にも経済的にもコンクリート・ダムよりはロツクフイル・ダムを採用すべきこと、この地質条件においても現在計画の高さのダムを安全に構築し得ること等が明らかにされ、社内的にはロツクフイル・ダムとしての設計及び施行法が検討されているのであります。
 以上申述べましたごとく本地点の調査及び設計に会社当局者は非常な苦心を重ねているようでありますが、その余波として、補償問題に大きく響いていることは後に申上げます。
 本地点が日発時代より調査され、福島地点で合計二百本近い多くのボーリング又は試掘が行われているのでありますが、電源開発会社の工事着手の決意が遅れた理由は、資金事情を別としますと、地質、特に右岸の岩盤が一般的に悪く、その上に断層の所在位置が通常行われる試掘又はボーリングでは発見しがたい位置にあつて、而も昨年漸く確認された断層破砕帯の厚さが十メートル乃至四十メートルという稀に見る大きなものであつたということにあるようであります。併しながら昨年四月のニツケル博士の河底トンネルによる調査の勧告は多年に亘る地質上の疑問を明らかにし、又本年六月のサべージ博士報告は、ロツクフイル式によるダム構築の可能性を明らかにしています。併しなから我が国のごとく地震国において世界にその例を見ない高ロツクフイル・ダムの構築についてはなお検討の必要があるものと思料されます。
 発電所及び水路につきましては、一般発電所案と二段発電所案とにつき現在研究されておりまして、前者につきましては地形及び経済上から地下発電所となりまするので、候補地点につきボーリングを実施中であります。
 御母衣の補償問題。御母衣の貯水池計画は湛水面積約九平方キロメートルに上り、荘川村及び白川村の合計戸数千二百六十戸に対し三百三十五戸が水没する予定でありまするから、その補償問題は相当大なるものがあります。この問題をめぐり水没該当者が賛成派と反対派に分れて抗争を続けて来たところ、前述の通り地質調査のために着工が遅れ、反対派の気勢を強めて賛成派が窮地に陥つているというのがその特徴であります。二十七年十月に御母衣を開発地点に指定する旨の官報告示が出ましたときから荘川村の反対強硬派はこの工事をやめさせて見せるとの目標の下に死守会を結成し、委任状の取集めを行うと共に、村の要所々々には電源開発反対死守の木標を建てているのでありまして、これに対して会社側の補償交渉も建設所設置の当初は活撥に行われまして、二十七年十二月には第一次の分として四十一戸、金額にして五億一千八百万円の補償契約が行われ、二十八年三月から四月にかけて会社側は協力派に対して移転準備費を支給し、同年五月十六日に進藤前副総裁が協力要請のために現地に出張しております。然るに第二次補償契約は第一次より一年五カ月遅れた本年四月十二日に行われ、七十二月分一億九千万円の契約が行われ、第三次分としては五十三戸二億九千万円分の資料が本年十月に現場から本社に提出されているのであります。この間の会社側の事情につきましては後ほど述べることといたしまして、私どもが現場において協力派の代表者である秋良義人、清都賛平ほか三君から聴取しました陳情は参考となりまするので、次にその要旨をお伝えいたします。「水没は国の要請ならば仕方なく賛成するもので、二百三十世帯を代表する。第一次契約の四十一戸は移転を完了し、第二次分七十一戸は目下移転中である。移転を希望する者は二百三十世帯であり、これらを済ませば土地において七五%、家屋において八五%が済むはずである。官報告示以来工事は着々と進むものとして協力したが、断層のために工事が遅れている。賛成派は人数において反対派より多く、反対派中にも内心は賛成の者もあるが、反対派には村の有力者が多く、賛成派は村八分に会つている。村を出たいが、会社に交渉してもダムサイトが決定しないと補償に応じられないと言つている。このような状態で放置されては困るから政府も会社も今後の方針をはつきりさせてもらいたい。牛丸地区には開拓可能の土地もあるから今後の計画を樹立してもらいたい。小坂総裁就任により御母衣開発延期の談話が新聞に出たら反対派は非常に強くなつた。」賛成派の意見と共に反対派の意見も聞きたかつたのでありまするが、その機会を得なかつたことは遺憾であります。併しながら現地における見聞によりますと、反対派は自分たちが反対だからダムはできないという前提で官報告示後も新建築を行なつている由であります。これらは工事実施の際に問題となることと思われます。
 補償に関する客観情勢は大要以上の通りでありますが、昨年五月の進藤前副総裁の協力要請以降において会社の補償に対する態度が消極化していますので、その原因につき調査を進めましたところ、昨年七月二十八日附で総裁より富山建設所長宛に、「御母衣調査所業務運営に関する件。今般首題の件に関し、緊急にダムサイトを決定する必要ある現況に鑑み、別に指示するまで土木調査に専念し、調査に直接関係のない業務は原則としてこれを見合せることとしたから、右趣旨に副つて所要の措置を講ずることとせられたい。」という指示がなされているのであります。更にこの指示の前日附にて会計検査院より、「一、ダムサイト調査中の補償の進行は行過ぎではないか。二、合宿所の建設は早過ぎないか。」の二項目の質問を受けているのであります。これは同年六月下旬に行われた会計検査の結果でありまして、地質調査の経過と照合しますとニツケル博士の勧告により秋町のボーリングを行なつた時期であります。当時の状況としてはダムサイトが大きく動揺していた際でありまするから会計検査院の質問も無理のないことであり、この質問を受けました翌日に前述の総裁の指示が出されています。この状態において行われました本年四月の第二次補償契約は賛成派中で迫害を受けることの特に著しいものを選定して行われたとの説明がありました。第三次についても総裁通達が生きている限り現場としては本社に対して要求する権限はなくて、資料として本社に提出した形をとつています。
 補償の実施については資金関係の重要なことは申すまでもないことであります。電気料金原価の主要部分を占める建設費の切下げは国民が等しく望むところでありまして、最近における補償費の増加傾向を防ぐために法的措置を構ぜよとの声も強いのであります。特に電源開発会社は国家資金によつて運営される関係から補償費の支出に慎重であることは当然であります。資金繰りの面から見ましても創立初年度において年度繰越を懸念されたのは昔の夢であつて、各所工事の最盛期を迎えた現在では資金繰りの面からも開発方針の確立せぬ御母衣に資金の投入を差控える立場はわかるのであります。併しながら御母衣開発の告示は公表されたままであり、これを契機として派生した御母衣問題については、政府及び電源開発会社において善処が望まれるのであります。而してその前提条件としては地質調査の主要な作業は、おおむね終つているようでありますから、今後当計画施工の可否に関する方針を速かに確立されるよう希望するものであります。又会社の態度決定を保留する理由が主として資金の見通しにあるということでありますならば、これだけの大調査をしたのでありますから、技術的結論だけ切離して公表し、その結果に従つて官報告示によつて派生した現地協力派の措置、竣工期限の是正等の事後措置を明確にすることは、電源開発促進法第十三条の趣旨に照らして当然のことと思うのであります。又政府側におかれましては電源開発調整審議会に提案して、本地点を開発地点として決定された責任上、その後の調査経過を十分に調査し、本地点に対する措置をする必要ありと思うのであります。
 次は鳩ケ谷発電所工事に関して報告いたします。鳩ケ谷発電所は本年四月の電源開発調整審議会によつて決定され、関西電力によりまして、本年十月二日より実質的に工事を進めております。白川村大牧に高さ六十二メートルの堰堤を設け、水は左岸の内径五メートル、延長約四キロメートルの圧力トンネルによつて同村飯島に建設される発電所に導き、最大使用水量五七・五立方メートル、有効落差八十一メートルで四万三百キロワツトを発電する計画であります。本発電所は下流の椿原、成出と共に御母衣計画を予想して設計されたものでありまして、現在工事中のものは御母衣貯水池のない場合に相当し、導水路一本、発電機一台にて前述の発電を行うものでありまして、工事予算は約六十二億円であります。御母衣の貯水池ができた場合には、導水路一本、発電機一台を増設して出力を倍加する計画でありまして、これに要する工事費は約十六億円と見込まれております。
 鳩ケ谷における補償問題。鳩ケ谷における補償は御母衣の場合と相当趣を異にしておりますが、工事を現実に進めております関係から、補償は全般的に順調に進んでおりますが、一部にいわゆる補償目当と思われる施設の存在することが特徴であります。以下順を追うてその概要を御報告いたします。
 第一には天生峠道路工事費七千五百万円の支出であります。白川村は現在の交通状況より見れば、細尾峠を越えて城端町に出るのが順路でありますが、冬季五カ月は雪のために交通杜絶するのが例でありまして、冬でもとまらぬ交通路を得たいというのが村民の念願でありましたが、鳩ケ谷発電所工事を機会に、前述の目的を達するために天生峠道路改修工事の要求が出たのであります。これは高山線の角川駅につながる道路でありますが、峠の部分は現在林道でありますものを、当初は四キロメートルのトンネルで貫けとの要求でありました。併しながら、この要求は地質及び完成後の保守管理の面から、県当局の賛成が得られず、結局県道規格による道路に改修するということで話がまとまつております。これに要する工事費は約一億五千万円でありまして、その半額を関西電力が負担し、別に白川村負担分の三千万円は発電工事に必要な村有地及び立木の提供を条件としてやはり関西電力が負担することとし、本年三月に会社と村当局との間に契約を結んでおります。発電工事と関係のない天生峠道路工事費の支出は第三者より見て奇異の感に打たれるのでありますが、会社当局はこれにより地元を協力態勢にし、又資材輸送費の節約にもなると説明されております。
 以上のごとく村に対する協力態勢を確立して補償を進めました効果で、本年三月から始めた私有土地家屋の補償はおおむね順調に進んでおります。土地につきましては約七十四万坪の必要数のうち三十七万坪即ち五割を終り、特に大枚の調整池地点については七割五分を終つております。家屋につきましても大牧では二十五戸中の十二戸を終り、九戸は目下話合中であります。家屋の中で問題となるのは湛水地域となる稗畑の三十八戸の新設家屋であります。これらの家屋には電燈もなく、その四分の三は人も住んでいないとのことであります。中には借地契約未了のものもあり、補償目的であると自認する者も多い由であります、かような事例に対しては補償に関する立法に当り厳重なる対策が必要と思われるのであります。
 いま一つの問題は東海鉱業の鉱業権であります。これはダム工事上不可欠の位置に坑口を開き試掘を行なつているのであります。この試掘権の認可は二十八年八月十四日であり、大牧にダム設置のための水利使用変更認可は二十九年十月十五日、同申請は二十八年十一月十日でありますから、表面的には鉱業権の優先が成立するのでありまするが、水利使用に対する届出には相当の期間と精密な調査を要し、而もこれが地元の了解の下に公然と行われるものでありますから、悪意を以て先廻りしようとすれば容易にできるのであります。今回の事例については名古屋通産局が斡旋に当つている由でありまするが、今後各種の立法に当り考慮を要する事例と思われるのであります。
 次に下流発電増加に対する負担の問題を報告いたします。鳩ケ谷発電所の工事現場視察を終りましてから、椿原、成出及び小原を経てから道路の関係から祖山を省略し、小牧及び中野発電所を視察して今回の調査を終つたのであります。これらの発電所は鳩ケ谷発電所工事の項で申上げましたごとく、御母衣発電所の完成によりまして発電力が増加するのであります。併しながら御母衣発電所の水利権を電源開発会社に譲渡する際に、完成の暁には関西電力に譲渡するとの契約があると関西電力側は主張いたしております。この契約通り履行されますならば、庄川に関しては関西電力一本となりまして、下流の発電増加に対する負担の問題は消滅するかも知れないのでありまするが、契約が履行されるかどうかは出先で論ずべき問題でなく、又当面御母衣を如何にするかの問題のほうが遥かに重要でありましたので、今回は本件の調査は省略いたしました。
 簡単ではありますが、以上を以て私の報告を終りたいと存じます。
 終りに臨みまして今回の調査に当りまして多大の便宜と御協力を賜わりました関係各位に対しまして厚くお礼を申上げる次第であります。

発言情報

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発言者: 藤田進

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日付: 1954-12-02

院: 参議院

会議名: 通商産業委員会