梅本敬一の発言 (地方行政委員会)

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○梅本参考人 私は、ここに都道府県議会議長会を代表いたしまして、その立場より、目下当委員会において御審議中の地方自治法一部改正法案及び地方財政再建促進特別措置法案につきまして、所見を申し上げる機会をお与えいただきましたことを、非常に光栄に存ずるものであります。以下率直簡明に所見を申し上げ、両法案御審議の御参考の一端に供したいと存じます。
 まず、地方自治法一部改正法案について所信を申し述べます。本法案については、全国議長会としては、本年六月七日臨時大会を開いて全面的反対の決議をし、今期国会における不成立廃案を強く要望しておるのであります。
 第一は、府県の自治体としての性格変更の点であります。これはきわめて重要なる問題であると信じます。昭和二十八年十月十六日、とりあえず当面とるべき措置として、府県の性格について地方制度調査会は、府県は本来その自治事務を処理すると同時に、市町村とは異なり、市町村を包括し、市町村と国との中間に位する広域自治体として、国家的性格を有する事務を処理することもその任務とすることと答申をしておるのであります。すなわち府県ば、従来通り、普通地方公共団体としてその本来の自治事務、すなわち地方自治法第二条第三項に例示してある事務を処理することを本体の任務とし、あわせていわゆる広域的な地方公共団体として広域的事務をも処理することを明らかにしておるのであります。
 しかるに今回の政府提案では、この関係を全く逆にして、府県は市町村を包括する広域的な地方公共団体として、おおむね一、広域にわたるもの、二、統一的な処理を必要とするもの、三、市町村に関する連絡調整に関するもの、及び四、市町村が処理することができないか、または不適当であると認められる程度の規模のものを処理するものとすると規定しているのでありまして、関係が答申の趣旨とは全く逆になっておるのであります。それでは府県は広域的な自治団体として、いわゆる広域的事務――これは国家的性格を有するものが多いのでありますが、この国家的性格を有する広域的事務を取り扱うことを本体とし、あわせてその他の本来の自治事務については、市町村が処理することができないか、または市町村が処理することを不適当と認めるものだけを処理することにして、府県の自治的性格を限定しているのであります。従いましてこれは、第一次地方制度調査会の答申を大きくゆがめているものであります。従って改正法案のごとくなりますれば、府県の性格は国の出先機関としての性格がきわめて濃厚となり、その反面普通地方公共団体としての性格は大幅に後退することになるのでありまして、私はさきに行われました地方自治法の一部改正によって、東京都の特別区の性格変更による区長公選のたどった運命と経路を思い出さざるを得ないのであります。
 すなわちかって東京都の特別区がその権限を制限して法定されましたことによって、憲法上のいわゆる地方公共団体たる性格を失い、それがため従来の区長公選制度が廃止せられた先例は皆様もつとに御承知になっておることと存ずるのであります。
 従ってこのたびの改正法案が通過成立いたしますならば、府県は、憲法上の地方公共団体である地位と性格が剥奪変更されるものと主張されるところの根拠ができ、やがて府県知事は公選ではなくてもよろしいという論拠を導き出すおそれがあり、吉田内閣当時に唱えられました知事官選も違憲でない、すなわち憲法上違反にならないとしてこれを強行する根拠を作ることをねらっておるのではないかと考えられるのであります。ひいては、さらに旧内務省復元の素地をも築き上げんとするものではないかと考えられるものでありまして、かかる点より本改正案に断じて、反対するものであります。
 第二は、府県と市町村との間に争いの種をまき、中央集権を強化せんとする点であります。
 新たに設けんとしておりますところの第二百五十条の二の法案によりますと、高等学校等すでに府県及び市町村が処理している事務の相互移譲に関する協議が整わないときには内閣総理大臣の裁定や、あるいは自治紛争調停委員の調停にゆだねることになっている点でありますが、これはいたずらに府県と市町村との間に無用の紛議を激化せしめるものであり、しかもその紛議と摩擦の間隙に乗じて国家権力の介入によって地方公共団体の自主性を奪い、中央集権の強化措置をくわだてるものであると考えられますので、これまた強く反対するものであります。
 次に議会に関する改正事項についての意見を申し述べます。
 先ず個々の事項についての反対理由を申し述べます前に、今回の改正案について政府の地方議会に対する考え方と、私どもの考え方に重大な相違があるのではないかということについて触れてみる必要があると思います。
 五月の初め、地方自治法改正案の政府要綱として発表されたもののうち、議会に関する事項を通覧いたしますと、改正の各項は、一貫して明らかに地方議会の権限々大幅に縮小し、その機能を弱体化することにより、議会をして長の諮問機関的存在たらしめんとする改正を企図したものであったと断ざぜるを得ないのであります。
 そもそも自治庁は、その設置法におきまして、「地方自治の本旨の実現と民主政治の確立に資することを任務とする。とあることに対しまして、地方議会制度については私ども根本的にその認識を異にするのではないかとさえ疑うものであります。憲法は、長と議会の議員を公選すをいわゆる首長制をとり、あたかも車の両輪のごとく、両者の相互牽制による地方公共団体の運営方式を打ち立てておるのであります。しかるにこの原案のように地方議会の一方の力を弱めていきますならば、たちまちにしてその均衡調和を失うに至ることはまことに理の当然でありましょう。もし政府機関たる自治庁が、このようなわかり切ったことについてなおかつ目をおおい、しいて議会軽視の考え方から法の改正を企図するものとすれば、わが国民主主義政治上ゆゆしき問題と言わなければならないと存ずるものであります。
 その後、この政府原案は、民主党の意見によって若干修正され、法案化されたのでありますが、しかしながら政府が当初企図した基本的方向は変更されておらないと思うのであります。
 私どもは、あくまで民意の代表機関たる議会制度の確立を期し、よってもって民主主義政治における地方自治の発展伸長を期するがゆえに、これら改正事項について残念ながら断固反対せざるを得ないのであります。
 その第一は、定例会を廃止して通常会とする点でございます。
 改正案ば、現行年四回の定例会を廃止して年一回の通常会にすることが最も合理的であるとしており、またその改正理由の一つに国会と同様とすると言っておるのであります。かかる改正はまさに地方議会の実情を無視するところの観念的机上論と言うべきであります。しかもその常会会期に百五十日を持つ国会と、全国平均の定例会会期がわずかに十三日にすぎない地方議会とを混同して、これと同様な方式にすることが合理的と言うに至っては、まことに形式的議論のはなはだしいものと言わざるを得ないのであります。
 地方議会の使命は、住民の身近かな行政に対し、常に住民と直結してその意思を行政の上に反映することにあります。議会を定例的に開催し、住民と執行部をしてあらかじめその時期を予知せしめ、議会を通して常に行政の民主的運営を行う場とすることこそ定例会の本質的な意義であり、絶対必要な制度であります。ことに地方財政の現状、地方議会運営の実態から見まして、三月の当初予算は全くの骨格予算でありまして、さらに国の予算が大体六、七月ごろにきまってから、すなわち国庫からの交付金なり補助金なりを見て初めてこれに肉づけをし内容を盛っていくのが現状であります。かかる点、さらには膨大かつ複雑な行政事務量、あるいは請願、陳情等の処理からいたしまして、現行の年四回の定例会開会数は必要なる最低線であると確信いたします。
 また改正案の説明において、定例会を廃止し、年一回の通常会とする救済手段として、議員の臨時会開催請求に対しまして、長の招集を義務づけたとしておりますが、この招集義務は現行法においても厳として存在するものであり、今回これに対して都道府県は三十日という期間を付したにすぎないのであります。またこれに期間を付しましても、長にはさらに三十日という猶予期間があるのでありまして、この点から臨時議会の招集をめぐっていろいろな紛糾と無用な混乱が長と議会の間に起るということが予想されるのであります。言うごとく、臨時会招集が保障されるがゆえに定例会を廃止するという理由にはならないのであります。
 以上の理由によりまして定例会廃止には絶対に反対せざるを得ないのでございます。
 次に、最も問題とされておるように考えられておりまするのは、常任委員会の改廃についてでございます。改正案は、人口五万未満の市町村については常任委員会を廃止し、その他については現行行政部門ごとのいわゆる縦割り方式による常任委員会制度を改めて、歳入、歳出、決算、法規、請願陳情並びに一般議案のいわゆる横割り方式による五つの委員会に限定しようとするものでありますが、この理由として現行常任委員会制度あるいはその縦割り方式では弊害が多いということであります。私どもといたしましても、現行常任委員会の運営の面において、確かに一部改善の必要があるということは認めざるを得ないのでありますが、しかしながら一部に弊害があるからといって、直ちに制度そのものを改めるということは厳に戒むべきことと思うのであります。
 そもそも常任委員会制度は、近代行政の膨張と複雑専門化に伴いまして、これら各種行政の調査審議に当り、議会においてこれを専門的に分担してその遺憾なきを期するとともに、本会議における議事の能率化をはかるため設けられた制度であります。そのためには現行行政部門ごとの常任委員会は最も適したものでありまして、実際上におきましても一貫的能率的に運営されており、制度本来の長所を遺憾なく発揮しておるものである、かように信じておるのであります。
 今これを改正案のごとく横割り方式にするならば、一見総合性を持つかのように考えられるのでありますが、実際上の運営といたしましては、各委員会の内容は行政の各部門ごとに執行部全体に関連し、どの委員会にも執行部の側の調査、説明等が必要となり、勢い小委員会または分科会の設置が予想せられ、その結果は縦割り式と横割り式とを併合しなければ審議の万全が期せられないということとなって、かえって事務の混乱と議会運営の非能率を招くことになると思うのであります。ことに改正案のように委員会の種類を定め、これを画一的に地方議会にしいんとするがごときは、地方における自生性を全く無視したやり方であり、ただいま申し上げたように、その内容的にも大きな欠陥があり、これをもって合理化による改善とすることは私どものとうてい承服できないところであります。もとより私どもといたしましても、現在伝えられておる常任委員会の弊害というものは、あくまでその運営の面において自主的に改善すべく一段と努力の必要があり、近い将来必ずやこれら改善の実をあげ得るものと確信しておるのであります。
 以上のような理由によって、常任委員会制度に関する今次改正案は、一連する議会活動の大きな制約を意図するものであり、断固反対せざるを得ないのであります。
 議会事務局の職員を長の任命する職員をもって兼務させることについてこの改正の趣旨としていわれておりますことは、職員組織の簡素合理化とせられているのであります。私どもといたしましても、職員組織の簡素合理化はもとより望むところでありますが、この改正案は制度と運営の問題を全く混同するものであると考えるのであります。およそ長と議会という相対立した機関の事務を同一人が兼務によって処理するということは理論的に不適当であることは明らかなところであります。人事の交流あるいは経費の節減等の問題は、それはそれとして別に十分考慮すべき問題であり、あるいは職員間の事務処理も運営上における考慮はあるとしても、機関の本質を異にする長の機関と議会の機関の職員の兼務を法律をもって規定することは、何といっても議会の独立性を侵害するものであり、これまた一連する議会軽視の極端なるものであって、絶対に承服できないところであります。
 その次には長の不信任決議を議員定数の過半数の決議に引き下げるという点でありますが、この点は知事会代表も述べられましたので、私は簡単に申しまするが、現行法が長の不信任決議を議員定数の三分の二の出席として、その四分の三の賛成を要するとする、いわゆる特別多数議決としたゆえんは、この議決は公選による長の地位を否定する重要な事項であり、その手続については特に慎重ならしめるとともに、二面その乱用を防止しようとする趣旨に出たものであるのであります。従いましてこの議決要件は、軽たに変更すべきでないと考えられますので、地方制度調査会の答申も現行通りとされており、改正案のような過半数議決にすることは賛成しがたいのであります。
 そのほかいろいろ申し上げたい点があるのでございまするが、まことに失礼でございますが、お手元に参考資料をお配りしておりまするので、一つ御一覧を願いたい、かように存ずる次第でございます。
 次に地方財政再建特別措置法案について意見を申し述べたいと存ずるものでありますが、この法案につきましては全国都道府県議長会といたしましては、本法案の必要はこれを認めておるのでありまして、その内容において地方自治の本旨をそこなうような点について国会において修正の上成立せしめられるよう要望いたすものであります。
 今日の地方財政の赤字の原因と理由はどこにあるかということを正確に把握し、かつ究明してこれが根本的な対策と応急的処理とをともに政府は樹立すべきであると信ずるものであります。しかるに本法案をつぶさに検討するとき、政府は赤字の責任と原因は一切地方にあるかのごとき態度で地方の努力と地方住民の犠牲においてこれが解消をはからんとするところにおいて地方公共団体は実質的に国の出先機関と何ら異なるところなきに至らんとしておるのあります。
 そもそも、今日の地方財政の赤字の真の原因は、歴代政府のとった地方財政政策にある。政府の雨後のタケノコのごとく法律を作り、経費を度外視し、地方財政法第十三条に違反して何らの財源を与えることなく、国の委任事務を地方自治体に押し付けたことであり、さらにまた国の仕事をやらすためにひもつきの国庫支出金がふえ、これに伴う、補助事業に対する自治体の負担金が大幅にふえて赤字の増加を来たし、さらに目ぼしい税源は国に取り上げられて地方税源が貧弱なために地方債や銀行からの借入金に依存することになる。それらの利払金がふえる。また中央のなわ張り的の考えで地方の部課等の機構を増加せしめたことによる経費の増加等が赤字を生み出した真の根本的の原因であると考えらるのであります。ゆえに赤字の責任者は国であり政府であるといわねばならぬ。そこで政府は現に生じた赤字一切をたな上げする措置を講ずるとともに、根本的には今後地方に赤字を生ぜしめぬように中央地方を通ずる強力なる行政機構の簡素合理化を徹底的にやって行政費の節減をはかるとともに地方に自主的財源を与えるべきであると思います。
 シヤウプも地方財政が困ったら制度を改正するよりか財源を与えるべきであるといっておるのであります。政府はことここに出でずして財政的に困らしておいて、赤字が出たから制度を変へて地方に大きな責任と犠牲を負わさんとしておるのであります。二十八年度の赤字額が四百二十二億で、二十九年度にはさらに増加して実質的赤字五百八十六億に達せんとしておるのに、本法案によると財政再建資金は二百億で、そのうち政府資金引き受けはわずかに五十億、あとの百五十億円は公募である。これ全く一時を糊塗するがごとき方法によって前に述べたような中央権力によって、ついには民主政治の基盤である地方自治を否定するが、ことき実に憂うべき結果を招こうとしておるのであります。この法律が通りましたならば地方自治体はまさに禁治産の宣告を受けたにひとしいものだということを言っておるものがあります。またこの法律がこのまま通過実施されるならば地方自治体というものは十年間しゅんとして仕事をすることもできない、橋をかけることもできない。学校を建てることもできないというわけであって、こんなばかげた政治はないといって憤慨しておる知事もあるのでございます。どうか政府は深く思いをここにいたされてまして、過去の赤字の全額をたな上げするに足るような政府資金を大幅に増加をして参りますとともに、私がここに申上しげますような諸点を修正されまして、本法案の所期の目的を十分に達成されますように私は善処をお願いするものであり、切にこの国会の修正をお願いしてやまない次第でございます。
 時間の関係もございますので、簡単に修正を求める要網について申し述べたいと存じます。
 一は、赤字団体で財政の再建を申し出ない団体に対しては自治庁長官が再建を行うべきことを勧告することができる規定は削除すべきである。第二条第四項であります。
 二は、財政再建に要する財源に充てるため税の増徴を行うことは法律で定めるべきではない。第二条第三項であります。
 三は、議会事務局の職員を知事部局の職員をもって兼務させるべきでないというのであります。第十条第二項でございます。
 四は、財政再建計画の策定並び実施に関する議会の審議権を制限すべきでないと思うのでありまして、これは第十一条でございます。
 五は、赤字団体が提出するところの財政再建計画に自治庁長官が条件をつけ、またはこれに変更を加えるべきではないと信ずるのでありまして、第三条第一項でございます。
 六は、財政再建のため発行するところの財政再建債の利子を再建団体に負担させるべきではないと考えるのでありまして、第十五条でございます。
 七は、財政再建団体に対する自治庁長官の監督権の乱用的規定ば設けるべきではないと信ずるものであります。第二十条であります。
 八は、財政再建団体の財政運営に自治庁兆間が容喙し、不当な監督権を行使するという規定は緩和すべきであると信ずるものであります。第二十一条であります。
 九は、三十年度以降の赤字団体の起債は抑制すべきではない、かように考えるのであります。第二十三条でございます。
 これらの点につきます詳細な反対修正を求めますところの理由につきましては、お手元に参考資料を配ってございますので、まことに失礼でございますが、これをごらん願いまして御参考に供したいことをお願い申し上げる次第でございます。
 以上簡単でございますが、これをもって参考意見の供述を終る次第であります。御清聴を感謝いたします。

発言情報

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発言者: 梅本敬一

speaker_id: 23695

日付: 1955-07-12

院: 衆議院

会議名: 地方行政委員会